【完結】✴︎私と結婚しない王太子(あなた)に存在価値はありませんのよ?

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
65 / 109
本編

第47話 狡いですよね、私(1)

しおりを挟む
 目が覚めると気分の悪さは消えていました。目を開くとテユ様の笑顔があって、どきどきと胸が高鳴るのです。この気持ちって、何かしら。

 美人は3日で飽きる――そんな言葉をフランカが口にしていたわ。でも慣れたり飽きる気がしないの。まだ2日目ですが、明日になってもテユ様の顔を見たら照れると思いますわ。

 テントにすると言って水の魔法を使ったテユ様でしたが、氷はすでに溶かされて跡形もありませんでした。

 赤くなった顔を隠すと、さらりと銀髪が滑りました。そうだわ、具合が悪いからって解いていたのでした。慌てて両手で髪を掴みます。

「結うのであれば我がやろう」

 で、出来ますの? 私が、鏡もなしに綺麗に結うのは無理ですわ。迷った末、そっと手を離しました。ブラシが必要ないほど銀髪は柔らかく、さらりと背を滑ります。ですから、結うのは技術が必要でした。

「さきほどと同じで構わぬか?」

「はい。お願いします」

 首筋に時折触れる彼の指先を意識してしまいます。温かい指先は侍女より荒い動きですけれど、優しく気遣う動きで髪をかき上げました。

 髪を留めてリボンを付けてもらいます。これで一安心ですわね。

「ありがとうございます」

「いや、そなたの髪に触れる口実だ。我の方こそ礼を言うべきだろう」

「き、器用ですのね」

 話題を逸らそうと褒めれば、微笑んだ彼の膝の上に座っていることに気づきました。飛び降りるのも失礼ですし、どうしましょう。

「おや……陛下は手が早い」

「よくぞ言ったものよ。他人の事など言えた義理か」

 リオ兄様のからかう口調に、テユ様がきっちりやり返す。抱き締めて膝から下ろさないのは、リオ兄様も同じではありませんか。振り返った先で見つけた光景は、こちらとほとんど変わりありません。真っ赤なフランカの顔に、きっと私も同じように赤いのだわと俯きました。

「さて、せっかく来たのだ。しっかり楽しもうではないか」

 ようやく膝から下ろしてもらえましたが、しっかり手を取ってエスコートされています。これはまあ……婚約者ですもの。許される範囲ですが、家族以外の男性と明るい場所で密着するのは恥ずかしいですね。

 足元に注意するよう声をかけるテユ様に、あまり照れた様子はありません。私だけが動揺しているみたいで、悔しいですわ。

 滑りやすい水際で、裾に気をつけながらしゃがみました。水は澄んでいて、小さな魚の群れが泳いでいるのが見えます。すごく綺麗な水だわ。

「お魚ですわ!」

「ああ、気を付けろ。そなたが思うより深いぞ」

 言われてきょとんとする。今までに来たことがある湖はすべて、遠くまで浅かったのですが?

「ここまで魚が来ているなら、膝より上まで水が来る。しかもこの水の色では、もっと深いだろう」

 簡単そうに推測するその知識に驚きました。魚の泳いでいる姿で、そんなことがわかるなんて。目を輝かせて次々と質問します。

 水の色から深さだけでなく、水温もおおよそ分かると聞いて、さらに驚きました。気づけばリオ兄様とフランカは声が聞こえないほど離れた場所にいます。

 きっと気を使ってくださったのでしょう。いえ、私も気を使うべきなのでしょうけれど。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。

乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。 唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。 だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。 プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。 「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」 唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。 ──はずだった。 目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。 逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。

【完結】悪役令嬢の断罪から始まるモブ令嬢の復讐劇

夜桜 舞
恋愛
「私がどんなに頑張っても……やっぱり駄目だった」 その日、乙女ゲームの悪役令嬢、「レイナ・ファリアム」は絶望した。転生者である彼女は、前世の記憶を駆使して、なんとか自身の断罪を回避しようとしたが、全て無駄だった。しょせんは悪役令嬢。ゲームの絶対的勝者であるはずのヒロインに勝てるはずがない。自身が断罪する運命は変えられず、婚約者……いや、”元”婚約者である「デイファン・テリアム」に婚約破棄と国外追放を命じられる。みんな、誰一人としてレイナを庇ってはくれず、レイナに冷たい視線を向けていた。そして、国外追放のための馬車に乗り込むと、馬車の中に隠れていた何者かによって……レイナは殺害されてしまった。 「なぜ、レイナが……あの子は何も悪くないのに!!」 彼女の死に唯一嘆いたものは、家族以上にレイナを知る存在……レイナの親友であり、幼馴染でもある、侯爵令嬢、「ヴィル・テイラン」であった。ヴィルは親友のレイナにすら教えていなかったが、自身も前世の記憶を所持しており、自身がゲームのモブであるということも知っていた。 「これまでは物語のモブで、でしゃばるのはよくないと思い、見て見ぬふりをしていましたが……こればかりは見過ごせません!!」 そして、彼女は決意した。レイナの死は、見て見ぬふりをしてきた自身もにも非がある。だからこそ、彼女の代わりに、彼女への罪滅ぼしのために、彼女を虐げてきた者たちに復讐するのだ、と。これは、悪役令嬢の断罪から始まる、モブ令嬢の復讐劇である。

【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい

三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。 そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

悪役令嬢は間違えない

スノウ
恋愛
 王太子の婚約者候補として横暴に振る舞ってきた公爵令嬢のジゼット。  その行動はだんだんエスカレートしていき、ついには癒しの聖女であるリリーという少女を害したことで王太子から断罪され、公開処刑を言い渡される。  処刑までの牢獄での暮らしは劣悪なもので、ジゼットのプライドはズタズタにされ、彼女は生きる希望を失ってしまう。  処刑当日、ジゼットの従者だったダリルが助けに来てくれたものの、看守に見つかり、脱獄は叶わなかった。  しかし、ジゼットは唯一自分を助けようとしてくれたダリルの行動に涙を流し、彼への感謝を胸に断頭台に上がった。  そして、ジゼットの処刑は執行された……はずだった。  ジゼットが気がつくと、彼女が9歳だった時まで時間が巻き戻っていた。  ジゼットは決意する。  次は絶対に間違えない。  処刑なんかされずに、寿命をまっとうしてみせる。  そして、唯一自分を助けようとしてくれたダリルを大切にする、と。   ────────────    毎日20時頃に投稿します。  お気に入り登録をしてくださった方、いいねをくださった方、エールをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。  

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

婚約破棄される前に、帰らせていただきます!

パリパリかぷちーの
恋愛
ある日、マリス王国の侯爵令嬢クロナは、王子が男爵令嬢リリィと密会し、自分を「可愛げのない女」と罵り、卒業パーティーで「婚約破棄」を言い渡そうと画策している現場を目撃してしまう。 普通なら嘆き悲しむ場面だが、クロナの反応は違った。

ハーレムエンドを迎えましたが、ヒロインは誰を選ぶんでしょうね?

榎夜
恋愛
乙女ゲーム『青の貴族達』はハーレムエンドを迎えました。 じゃあ、その後のヒロイン達はどうなるんでしょうね?

処理中です...