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本編
第54話 幸せは手の届くものですのね(1)
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「伯母様も、結婚はお嫌でしたか?」
伯母である元王妃アデライダ様の前、19代目まで読み終えました。竜の乙女の手記は、死の前日まで書き続けます。伯母様の日記も、私の記録も、まだ手元にありました。
私はガゼボの赤い花の下で午後のお茶を口に運びます。貴族のしきたりやマナーもかなり緩和され、今は紅茶の飲み方一つに数か月かけて教育する必要はないと聞きました。他人を不快にさせない最低限のマナーが出来ていれば、それ以上の細かな作法は省略されるようです。
お茶を口元に運ぶ角度や指の動き、スプーンの置き方まで教え込まれた淑女の仕草は優雅で綺麗ですが、そこまで細かな作法がなければ飲めないお茶に価値はないでしょう。
私達の改革は、多くの貴族に歓迎されました。男女ともに学ぶ作法が減ったことで、心や生活に余裕が出ているそうです。
自分が好きなことに時間を割けるようになり、人々に笑顔が増えました。余暇に新しい趣味を始める貴族が増え、経済が活性化したとも伺っています。良いことですね。内政に力を入れる貴族、家族との時間を優先する方々、どちらも正しいことですから。
伯母様はカップを両手で包むようにして、思わし気に溜め息をつきました。
「そうね、私も逃げ出したかったわ。誰かに助けて欲しかった。愛してもいない男と身体を重ねるなんて、ぞっとしたけれど……」
目の前で驚きに目を瞠るのは、伯母様の2人の娘でした。自ら王族の地位を返上したお二人は、侍女になりたいと願い出ました。しかし婚約者の青年たちが改めて妻に望んだ願いが聞き届けられ、カサンドラ様は侯爵夫人、リアンドラ様は伯爵夫人として新たな生活を営んでいます。
王妃時代のアデライダ伯母様は、娘や息子との時間を極力減らしていました。王妃殿下のお茶会に招待されるのは姪である私と、いずれメレンデス公爵夫人となるフランカのみ。何度かお願いしたこともありますが、頑なに伯母様は彼女達の同席を拒みました。
「あなた達は本当によかったの?」
伯母様が選んだ相手との結婚で構わないのですか。娘達を気遣う言葉を放った伯母様は、僅かに首をかしげて答えを待ちます。己が望んだ子でなかった。義務でしかないとしても、子供達に罪はなかったと……手記を読んだ私に叱られて気づいたそうです。
伯母である元王妃アデライダ様の前、19代目まで読み終えました。竜の乙女の手記は、死の前日まで書き続けます。伯母様の日記も、私の記録も、まだ手元にありました。
私はガゼボの赤い花の下で午後のお茶を口に運びます。貴族のしきたりやマナーもかなり緩和され、今は紅茶の飲み方一つに数か月かけて教育する必要はないと聞きました。他人を不快にさせない最低限のマナーが出来ていれば、それ以上の細かな作法は省略されるようです。
お茶を口元に運ぶ角度や指の動き、スプーンの置き方まで教え込まれた淑女の仕草は優雅で綺麗ですが、そこまで細かな作法がなければ飲めないお茶に価値はないでしょう。
私達の改革は、多くの貴族に歓迎されました。男女ともに学ぶ作法が減ったことで、心や生活に余裕が出ているそうです。
自分が好きなことに時間を割けるようになり、人々に笑顔が増えました。余暇に新しい趣味を始める貴族が増え、経済が活性化したとも伺っています。良いことですね。内政に力を入れる貴族、家族との時間を優先する方々、どちらも正しいことですから。
伯母様はカップを両手で包むようにして、思わし気に溜め息をつきました。
「そうね、私も逃げ出したかったわ。誰かに助けて欲しかった。愛してもいない男と身体を重ねるなんて、ぞっとしたけれど……」
目の前で驚きに目を瞠るのは、伯母様の2人の娘でした。自ら王族の地位を返上したお二人は、侍女になりたいと願い出ました。しかし婚約者の青年たちが改めて妻に望んだ願いが聞き届けられ、カサンドラ様は侯爵夫人、リアンドラ様は伯爵夫人として新たな生活を営んでいます。
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「あなた達は本当によかったの?」
伯母様が選んだ相手との結婚で構わないのですか。娘達を気遣う言葉を放った伯母様は、僅かに首をかしげて答えを待ちます。己が望んだ子でなかった。義務でしかないとしても、子供達に罪はなかったと……手記を読んだ私に叱られて気づいたそうです。
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