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12 朝食
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すっかりと心地よく深い眠りに就いていたフェリチアーノは、翌朝見慣れぬ部屋で目を覚ました事で一瞬頭が混乱したが、すぐさま昨夜の出来事を思い出し朝までぐっすりと王宮の一室で寝入ってしまった事実に、今度は自身の神経の図太さに呆れてしまうのだった。
カーテンを少し開ければまだ日は登り始めたばかりの時間で、外はまだ薄暗い。時計が無くとも体は記憶しているようで、どこで寝ようともこの時間に起きてしまうのは変わらないようだった。
幾分か体の重みや疲労感が消えており、それだけ深く寝入ってしまった事もさることながら、やはり家に居るか居ないか、と言うのは重要な事なのだとフェリチアーノは思った。
朝日がしっかりと顔を出せば、扉が軽く叩かれる。返事をすれば、何人ものメイドや従僕が部屋へと入って来て、フェリチアーノの身支度を手伝っていった。
いつの間にか用意されていた真新しい衣服に着替えさせられたところで、再び扉が叩かれる。
「おはようフェリチアーノ、良く寝れたか?」
部屋に入って来たテオドールに驚いたものの、昨夜と変わらずに親し気に接してくれる様子に少しだけほっとしてしまう。
「朝食を一緒にどうかと思って呼びに来たんだ」
「ご一緒して良いんですか?」
「俺の恋人だろ? 問題ないよ」
差し出された腕に手を乗せるとそう言われ、フェリチアーノは思わずくすぐったくなり、小さく笑ってしまった。
しかし連れられた先で待ち構えていたのは、この国の王と王妃、そして王太子と第二王子とその妃達だった。
てっきり二人だけでの食事だと思い込んでいたフェリチアーノは、目の前に居る高貴な人々を前に足が竦んでしまったのは言うまでもない。
伯爵家ではあるが今までフェリチアーノが王族と直接関わる事等無かった。テオドールは腹を括った上にその気さくな性格から、フェリチアーノの緊張は昨夜からそれ程無いのだが、その他の王族となると話は別だ。
まさか翌日にしかも朝食の席で会う事になる等考えても居なかったのだ。とんだ不意打ちだと眉を顰めてテオドールを僅かに見れば、フェリチアーノが何故そんな表情で自身を見て来るのかが解らずテオドールは困ったような表情を作っていた。
「テオドール、まさか私達が居る事を彼に言っていなかったのかい?」
二人の様子に見かねた様に声を掛けた王太子フェルナンドの言葉に、テオドールはハッとした。
「すまないフェリチアーノ、いつもの事だから頭からすっかり抜け落ちてた……」
「い、いえ……びっくりしてしまいましたが、大丈夫ですよ。毎日朝食は一緒に取られているのですか? とても家族仲が良いのですね、羨ましいです」
いつまでも狼狽えていてはいけないと気合を入れ直したフェリチアーノは、ゆっくりと微笑みながらテオドールの失態を気にしない様に話題を逸らした。
テーブルに着けば綺麗に並べられた美しい食器類が並び、出来立ての朝食がすぐに給仕される。
朝からこんな食事が出て来るのかとフェリチアーノは感心してしまう。そう言えば朝食をこんな形でまともに食べた事も、フェリチアーノには随分と久しぶりな事だった。
思わず緩んでしまった顔を、隣に居たテオドールは見逃してはおらず、フェリチアーノが自身の失態に怒りを抱いては居無さそうな事に安堵した。
「テオドールよ、昨夜の事は一通り聞いたが、また随分と面白い事を考えたな?」
「恋人ごっこでしたか? ねぇ陛下、私は先程の光景を見て思ったのですが、テオドールはほら、お相手が今までいなかったでしょう? 彼とのごっこ遊び、私は予行演習にはぴったりな案だと思いましたよ」
「確かに先程の行動を見ていればね、他国の王女を迎えると言うのに、アレくらいの気遣いすら出来ないと言うのはねぇ? 私も母上の意見に賛成ですよ父上」
「なんでもフェリチアーノさんはその手の事に慣れていらっしゃるとか? 先程のフォローも上手くできていましたから、私も彼なら良いと思いますわ」
まさかの人々からごっこ遊びへの賛同が得られていき、フェリチアーノは流石に唖然としてしまう。
昨夜のロイズからの視線や態度から歓迎されはしないだろうと考えてはいたが、その逆になるとは思っても居なかったのだ。
しかも目の前の高貴な人々はフェリチアーノの家族を通り越し、しっかりとフェリチアーノ自身を見てそう評価しているのだ。
その事にフェリチアーノは少しばかりの嬉しさを噛み締めた。
カーテンを少し開ければまだ日は登り始めたばかりの時間で、外はまだ薄暗い。時計が無くとも体は記憶しているようで、どこで寝ようともこの時間に起きてしまうのは変わらないようだった。
幾分か体の重みや疲労感が消えており、それだけ深く寝入ってしまった事もさることながら、やはり家に居るか居ないか、と言うのは重要な事なのだとフェリチアーノは思った。
朝日がしっかりと顔を出せば、扉が軽く叩かれる。返事をすれば、何人ものメイドや従僕が部屋へと入って来て、フェリチアーノの身支度を手伝っていった。
いつの間にか用意されていた真新しい衣服に着替えさせられたところで、再び扉が叩かれる。
「おはようフェリチアーノ、良く寝れたか?」
部屋に入って来たテオドールに驚いたものの、昨夜と変わらずに親し気に接してくれる様子に少しだけほっとしてしまう。
「朝食を一緒にどうかと思って呼びに来たんだ」
「ご一緒して良いんですか?」
「俺の恋人だろ? 問題ないよ」
差し出された腕に手を乗せるとそう言われ、フェリチアーノは思わずくすぐったくなり、小さく笑ってしまった。
しかし連れられた先で待ち構えていたのは、この国の王と王妃、そして王太子と第二王子とその妃達だった。
てっきり二人だけでの食事だと思い込んでいたフェリチアーノは、目の前に居る高貴な人々を前に足が竦んでしまったのは言うまでもない。
伯爵家ではあるが今までフェリチアーノが王族と直接関わる事等無かった。テオドールは腹を括った上にその気さくな性格から、フェリチアーノの緊張は昨夜からそれ程無いのだが、その他の王族となると話は別だ。
まさか翌日にしかも朝食の席で会う事になる等考えても居なかったのだ。とんだ不意打ちだと眉を顰めてテオドールを僅かに見れば、フェリチアーノが何故そんな表情で自身を見て来るのかが解らずテオドールは困ったような表情を作っていた。
「テオドール、まさか私達が居る事を彼に言っていなかったのかい?」
二人の様子に見かねた様に声を掛けた王太子フェルナンドの言葉に、テオドールはハッとした。
「すまないフェリチアーノ、いつもの事だから頭からすっかり抜け落ちてた……」
「い、いえ……びっくりしてしまいましたが、大丈夫ですよ。毎日朝食は一緒に取られているのですか? とても家族仲が良いのですね、羨ましいです」
いつまでも狼狽えていてはいけないと気合を入れ直したフェリチアーノは、ゆっくりと微笑みながらテオドールの失態を気にしない様に話題を逸らした。
テーブルに着けば綺麗に並べられた美しい食器類が並び、出来立ての朝食がすぐに給仕される。
朝からこんな食事が出て来るのかとフェリチアーノは感心してしまう。そう言えば朝食をこんな形でまともに食べた事も、フェリチアーノには随分と久しぶりな事だった。
思わず緩んでしまった顔を、隣に居たテオドールは見逃してはおらず、フェリチアーノが自身の失態に怒りを抱いては居無さそうな事に安堵した。
「テオドールよ、昨夜の事は一通り聞いたが、また随分と面白い事を考えたな?」
「恋人ごっこでしたか? ねぇ陛下、私は先程の光景を見て思ったのですが、テオドールはほら、お相手が今までいなかったでしょう? 彼とのごっこ遊び、私は予行演習にはぴったりな案だと思いましたよ」
「確かに先程の行動を見ていればね、他国の王女を迎えると言うのに、アレくらいの気遣いすら出来ないと言うのはねぇ? 私も母上の意見に賛成ですよ父上」
「なんでもフェリチアーノさんはその手の事に慣れていらっしゃるとか? 先程のフォローも上手くできていましたから、私も彼なら良いと思いますわ」
まさかの人々からごっこ遊びへの賛同が得られていき、フェリチアーノは流石に唖然としてしまう。
昨夜のロイズからの視線や態度から歓迎されはしないだろうと考えてはいたが、その逆になるとは思っても居なかったのだ。
しかも目の前の高貴な人々はフェリチアーノの家族を通り越し、しっかりとフェリチアーノ自身を見てそう評価しているのだ。
その事にフェリチアーノは少しばかりの嬉しさを噛み締めた。
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