【完結】最初で最後の恋をしましょう

関鷹親

文字の大きさ
12 / 95

12 朝食

しおりを挟む
 すっかりと心地よく深い眠りに就いていたフェリチアーノは、翌朝見慣れぬ部屋で目を覚ました事で一瞬頭が混乱したが、すぐさま昨夜の出来事を思い出し朝までぐっすりと王宮の一室で寝入ってしまった事実に、今度は自身の神経の図太さに呆れてしまうのだった。

 カーテンを少し開ければまだ日は登り始めたばかりの時間で、外はまだ薄暗い。時計が無くとも体は記憶しているようで、どこで寝ようともこの時間に起きてしまうのは変わらないようだった。
 幾分か体の重みや疲労感が消えており、それだけ深く寝入ってしまった事もさることながら、やはり家に居るか居ないか、と言うのは重要な事なのだとフェリチアーノは思った。

 朝日がしっかりと顔を出せば、扉が軽く叩かれる。返事をすれば、何人ものメイドや従僕が部屋へと入って来て、フェリチアーノの身支度を手伝っていった。
 いつの間にか用意されていた真新しい衣服に着替えさせられたところで、再び扉が叩かれる。

「おはようフェリチアーノ、良く寝れたか?」

 部屋に入って来たテオドールに驚いたものの、昨夜と変わらずに親し気に接してくれる様子に少しだけほっとしてしまう。

「朝食を一緒にどうかと思って呼びに来たんだ」
「ご一緒して良いんですか?」
「俺の恋人だろ? 問題ないよ」

 差し出された腕に手を乗せるとそう言われ、フェリチアーノは思わずくすぐったくなり、小さく笑ってしまった。
 しかし連れられた先で待ち構えていたのは、この国の王と王妃、そして王太子と第二王子とその妃達だった。
 てっきり二人だけでの食事だと思い込んでいたフェリチアーノは、目の前に居る高貴な人々を前に足が竦んでしまったのは言うまでもない。

 伯爵家ではあるが今までフェリチアーノが王族と直接関わる事等無かった。テオドールは腹を括った上にその気さくな性格から、フェリチアーノの緊張は昨夜からそれ程無いのだが、その他の王族となると話は別だ。
 まさか翌日にしかも朝食の席で会う事になる等考えても居なかったのだ。とんだ不意打ちだと眉を顰めてテオドールを僅かに見れば、フェリチアーノが何故そんな表情で自身を見て来るのかが解らずテオドールは困ったような表情を作っていた。

「テオドール、まさか私達が居る事を彼に言っていなかったのかい?」

 二人の様子に見かねた様に声を掛けた王太子フェルナンドの言葉に、テオドールはハッとした。

「すまないフェリチアーノ、いつもの事だから頭からすっかり抜け落ちてた……」
「い、いえ……びっくりしてしまいましたが、大丈夫ですよ。毎日朝食は一緒に取られているのですか? とても家族仲が良いのですね、羨ましいです」

 いつまでも狼狽えていてはいけないと気合を入れ直したフェリチアーノは、ゆっくりと微笑みながらテオドールの失態を気にしない様に話題を逸らした。

 テーブルに着けば綺麗に並べられた美しい食器類が並び、出来立ての朝食がすぐに給仕される。
 朝からこんな食事が出て来るのかとフェリチアーノは感心してしまう。そう言えば朝食をこんな形でまともに食べた事も、フェリチアーノには随分と久しぶりな事だった。
 思わず緩んでしまった顔を、隣に居たテオドールは見逃してはおらず、フェリチアーノが自身の失態に怒りを抱いては居無さそうな事に安堵した。

「テオドールよ、昨夜の事は一通り聞いたが、また随分と面白い事を考えたな?」
「恋人ごっこでしたか? ねぇ陛下、私は先程の光景を見て思ったのですが、テオドールはほら、お相手が今までいなかったでしょう? 彼とのごっこ遊び、私は予行演習にはぴったりな案だと思いましたよ」
「確かに先程の行動を見ていればね、他国の王女を迎えると言うのに、アレくらいの気遣いすら出来ないと言うのはねぇ? 私も母上の意見に賛成ですよ父上」
「なんでもフェリチアーノさんはその手の事に慣れていらっしゃるとか? 先程のフォローも上手くできていましたから、私も彼なら良いと思いますわ」

 まさかの人々からごっこ遊びへの賛同が得られていき、フェリチアーノは流石に唖然としてしまう。
 昨夜のロイズからの視線や態度から歓迎されはしないだろうと考えてはいたが、その逆になるとは思っても居なかったのだ。

 しかも目の前の高貴な人々はフェリチアーノの家族を通り越し、しっかりとフェリチアーノ自身を見てそう評価しているのだ。
 その事にフェリチアーノは少しばかりの嬉しさを噛み締めた。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

恵方巻を食べてオメガになるはずが、氷の騎士団長様に胃袋を掴まれ溺愛されています

水凪しおん
BL
「俺はベータだ。けれど、クラウス様の隣に立ちたい」 王城の厨房で働く地味な料理人ルエンは、近衛騎士団長のクラウスに叶わぬ恋をしていた。身分も属性も違う自分には、彼との未来などない。そう諦めかけていたある日、ルエンは「伝説の恵方巻を食べればオメガになれる」という噂を耳にする。 一縷の望みをかけ、ルエンは危険な食材探しの旅へ! しかし、なぜかその旅先にはいつもクラウスの姿があって……? 勘違いから始まる、ベータ料理人×氷の騎士団長の胃袋攻略ラブファンタジー!

ブレスレットが運んできたもの

mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。 そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。 血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。 これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。 俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。 そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?

【運命】に捨てられ捨てたΩ

あまやどり
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜

若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。 妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。 ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。 しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。 父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。 父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。 ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。 野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて… そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。 童話の「美女と野獣」パロのBLです

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~

上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。 ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。 「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」 そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。 完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか? 初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。

『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで

るみ乃。
BL
聖クロノア学院で、記憶と感情が静かに交差する。 「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」 記憶を失ったベータの少年・ユリス。 彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオンだった。 封じられた記憶。 拭いきれない心の傷。 噛み合わない言葉と、すれ違う想い。 謎に包まれた聖クロノア学院のなかで、 ふたりの距離は、近づいては揺れ、また離れていく。 触れたいのに、触れられない。 心を開けば、過去が崩れてしまう。 それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。 ――やがて、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。 過去と向き合い、誰かと繋がることでしか見えない未来がある。 許し、選びなおし、そしてささやかな祈り。 孤独だった少年たちは、いつしか「願い」を知っていく。 これは、ふたりの愛の物語であると同時に、 誰かの傷が、誰かの救いへと変わっていく物語。 運命に抗うのは、誰か。 未来を選ぶのは、誰なのか。 優しさと痛みが交差する場所で、物語は紡がれる。

処理中です...