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46 助言
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ミリアに強引に連れられて来たテオドールは不満そうな顔を隠しもせずグラスに口をつけており、そんな姿にミリアは苦笑を隠し得なかった。
「もうそんなに不機嫌そうにしないでってば」
「少しでも一緒に居たいのに引き離した姉上が悪いです」
「まぁまぁ少しくらい良いじゃない。ちゃんと話がしたかったのよ」
「先程の話じゃ足りませんでしたか?」
「そうね、足りないわ。と言うよりもあの場では出来ない話だもの」
一体何お話をしようとしているのだろうと首を傾げたテオドールに、ミリアは困った子供を見るように笑うと一つ息をついてから真剣な表情になる。
「貴方達の事情はお母様から全て聞いてるの」
「成程、そうでしたか」
「貴方が悩んでる事もわかってる。だから私が少し助言をしようと思ったのよ。お父様もお兄様もフェリチアーノに丸投げすぎるのだもの」
テオドールはまさかミリアが事情を知っているとは思わなかった為、驚きに目を見開いた。
ミリアもまた他の人々と同じく新聞記事や噂を聞いて興味を持ち、本人達から詳しく話を聞こうと今日の晩餐会を開いたのだとばかり思って居たからだ。
それに王族に準ずるミリアが全ての事情を知りつつも、助言をくれると言事にも驚いていた。
父や兄は言わずもがな、婚約回避の相談など出来るはずもなく、他の親族にもこんな考えを相談する事も悩みを打ち明ける事もやはり出来るわけがなく、一人暗闇を彷徨い歩いているような物だったのだ。
けれども兄姉の中で一番仲の良いミリアが何故助言をしようと思ったのか疑問も残る。彼女もまた王族の一員で、私より公を選ぶ筈であるのに。
「驚くのも無理はないわね。これは謂わば私から貴方へのお礼と言うか、贖罪よ」
「どう言う事ですか?」
「貴方は私と夫が恋愛結婚だと思っているでしょう? それは大きな間違いよ。彼と私は貴方達と同じ様に利害の一致から始まった関係だもの」
「冗談でしょう? だって今も昔もあんなに仲睦まじいじゃないですか」
「今はちゃんと愛があるわよ? だけれど当時はそんな物無かったわ。私も彼も政略結婚なんて話は出ていなかったけれどそんな物嫌だったし、恋人を探すのも面倒だったのよ。だったら気が合う幼馴染の相手を恋人として据えて居た方が楽だと気が付いたの。虫除けにもなるしね? 勿論本当に好きな相手が出来ればいつでも解消する予定であったけれど、そうはならなかった」
「信じられません」
「そうでしょうね? だって私達は真実味を増す為に幼い貴方を一番に騙して利用したんですもの。よく思い出してごらんなさい。いつも私達と一緒にいて、私達がいかに相思相愛で素晴らしいかを周りに語って居たのは貴方でしょうテオドール」
ミリアから語られる真実にテオドールは頭を殴られた様な感覚に陥った。
幼い頃のミリアとその夫であるジャン・グレイス侯爵との結婚を後押ししたのは確かにテオドールだった。
二人は物語に出てくるような素敵な恋人同士で、テオドールの憧れであったと言ってもいい。しかしそれが全て偽りだったと言われれば同様しない訳がない。
「私達は私達の安寧の為にテオ、貴方を利用した。だから少しでも罪を償いたいのよ。許してくれるかしら?」
「……今は幸せなのですか?」
「勿論、今は嘘偽りなく彼に愛情があるのよ。それは彼も同じ」
「だったらいいです、姉上の提案を受け入れます」
「ふふ、良かった! ずっと謝りたかったのよ、その機会ができて嬉しいわ」
沈んだ空気を一掃するように明るく笑ったミリアに、テオドールもそれに合わせて困った様に笑った。
直接的な支援や援護射撃が今の時点でミリアから受けれない事は分かっているが、助言だけでも貰えると言うのならこれ程心強い事はなかった。
それからテオドールは自分が知り得る限りの情報をミリアに話す。
恋人ごっこの期限も、フェリチアーノの家族の事も、そして最終的に婚約を回避してフェリチアーノと共に歩んでいきたいという想いも全てミリアに打ち明けた。
テオドールの話を決して馬鹿にせず、フェリチアーノの事情を聞いても眉を顰める事もせず、一所懸命話すテオドールをミリアは真剣な表情で耳を傾けていた。
「もうそんなに不機嫌そうにしないでってば」
「少しでも一緒に居たいのに引き離した姉上が悪いです」
「まぁまぁ少しくらい良いじゃない。ちゃんと話がしたかったのよ」
「先程の話じゃ足りませんでしたか?」
「そうね、足りないわ。と言うよりもあの場では出来ない話だもの」
一体何お話をしようとしているのだろうと首を傾げたテオドールに、ミリアは困った子供を見るように笑うと一つ息をついてから真剣な表情になる。
「貴方達の事情はお母様から全て聞いてるの」
「成程、そうでしたか」
「貴方が悩んでる事もわかってる。だから私が少し助言をしようと思ったのよ。お父様もお兄様もフェリチアーノに丸投げすぎるのだもの」
テオドールはまさかミリアが事情を知っているとは思わなかった為、驚きに目を見開いた。
ミリアもまた他の人々と同じく新聞記事や噂を聞いて興味を持ち、本人達から詳しく話を聞こうと今日の晩餐会を開いたのだとばかり思って居たからだ。
それに王族に準ずるミリアが全ての事情を知りつつも、助言をくれると言事にも驚いていた。
父や兄は言わずもがな、婚約回避の相談など出来るはずもなく、他の親族にもこんな考えを相談する事も悩みを打ち明ける事もやはり出来るわけがなく、一人暗闇を彷徨い歩いているような物だったのだ。
けれども兄姉の中で一番仲の良いミリアが何故助言をしようと思ったのか疑問も残る。彼女もまた王族の一員で、私より公を選ぶ筈であるのに。
「驚くのも無理はないわね。これは謂わば私から貴方へのお礼と言うか、贖罪よ」
「どう言う事ですか?」
「貴方は私と夫が恋愛結婚だと思っているでしょう? それは大きな間違いよ。彼と私は貴方達と同じ様に利害の一致から始まった関係だもの」
「冗談でしょう? だって今も昔もあんなに仲睦まじいじゃないですか」
「今はちゃんと愛があるわよ? だけれど当時はそんな物無かったわ。私も彼も政略結婚なんて話は出ていなかったけれどそんな物嫌だったし、恋人を探すのも面倒だったのよ。だったら気が合う幼馴染の相手を恋人として据えて居た方が楽だと気が付いたの。虫除けにもなるしね? 勿論本当に好きな相手が出来ればいつでも解消する予定であったけれど、そうはならなかった」
「信じられません」
「そうでしょうね? だって私達は真実味を増す為に幼い貴方を一番に騙して利用したんですもの。よく思い出してごらんなさい。いつも私達と一緒にいて、私達がいかに相思相愛で素晴らしいかを周りに語って居たのは貴方でしょうテオドール」
ミリアから語られる真実にテオドールは頭を殴られた様な感覚に陥った。
幼い頃のミリアとその夫であるジャン・グレイス侯爵との結婚を後押ししたのは確かにテオドールだった。
二人は物語に出てくるような素敵な恋人同士で、テオドールの憧れであったと言ってもいい。しかしそれが全て偽りだったと言われれば同様しない訳がない。
「私達は私達の安寧の為にテオ、貴方を利用した。だから少しでも罪を償いたいのよ。許してくれるかしら?」
「……今は幸せなのですか?」
「勿論、今は嘘偽りなく彼に愛情があるのよ。それは彼も同じ」
「だったらいいです、姉上の提案を受け入れます」
「ふふ、良かった! ずっと謝りたかったのよ、その機会ができて嬉しいわ」
沈んだ空気を一掃するように明るく笑ったミリアに、テオドールもそれに合わせて困った様に笑った。
直接的な支援や援護射撃が今の時点でミリアから受けれない事は分かっているが、助言だけでも貰えると言うのならこれ程心強い事はなかった。
それからテオドールは自分が知り得る限りの情報をミリアに話す。
恋人ごっこの期限も、フェリチアーノの家族の事も、そして最終的に婚約を回避してフェリチアーノと共に歩んでいきたいという想いも全てミリアに打ち明けた。
テオドールの話を決して馬鹿にせず、フェリチアーノの事情を聞いても眉を顰める事もせず、一所懸命話すテオドールをミリアは真剣な表情で耳を傾けていた。
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