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53 離宮へ
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離宮へ行く準備が整い馬車に揺られながらフェリチアーノはセザールと共に、テオドールが待つ湖畔の離宮へと向かっていた。
王都から一日はかかる場所にある離宮は、静かでとても美しいのだとテオドールは言っていた。
そんなテオドールだが、この二週間会う事は叶わなかった。週に一度は必ず会えるのだがフェリチアーノといる為に長めに離宮に居る事にした為、急いで近々の仕事を片付けていた為でもあった。
本来であればテオドールが屋敷まで迎えに来る筈だったのだが、それも先に離宮へ向かわねばならなくなり、フェリチアーノはセザールを伴って離宮へと向かっていたのだ。
道中も一緒に居られると思っていた為に落胆も大きかったがこればかりは仕方が無かった。
フェリチアーノも暫く屋敷を離れる為の準備に忙しくしていた。執務もある程度終わらせ、大事な物は気づかれぬ様に別宅に移した。
忙しなく動く日々であったが、寂しさが紛れる事は決してなかった。
テオドールと会えないと言うだけで気持ちは沈むばかり。相変わらず手紙は貰うが、それだけでは足りないのだと心が叫んでいた。
ここまで人恋しいと感じたのは祖父と母が亡くなった時以来だ。休まる事の無い屋敷に居るよりも、王宮にいる方がマシであるし、何よりテオドールが一緒にいればどこでだって安心できるのだ。
そんな気持ちが表情に出ていたのだろう。セザールはウキウキとしている雰囲気を出すフェリチアーノを微笑ましく見ていた。
少しでもあの屋敷から離れ愛する人と共に居れるのならば嬉しい事はない。幼い頃より本来なら背負わなくてもいい重責を一人背負って生きてきた主人が安らげる場所ができたと言う事はとても好ましい事だった。
「楽しそうですね、坊っちゃま」
「そうだね、とても楽しいよ」
「坊っちゃまは滞在中は屋敷の事は忘れて楽しまれて下さいませね」
そうセザールが言えば、苦笑しながらフェリチアーノは頷いた。
アレやこれやと連日準備に奔走するフェリチアーノを家族はよくは思わなかった。アガットなどは何度かフェリチアーノの部屋に忍び込み何か無いかと物色をしたり、マティアスには顔を合わす度にいつもより更に嫌味を言われ、アンベールやカサンドラからは準備金を少しは家族の為に使えと直接言ってきたりもしたのだ。
頭の痛い日々ではあったが、それもテオドールと暫く過ごす為だと思えば頑張れた。
「セザールには申し訳ないけれど、後を頼むよ」
「お任せ下さい、坊っちゃま。私はその為に居るのですから」
柔らかく微笑まれ、それに応える様にフェリチアーノも微笑み返した。
その時馬の嘶きが突如聞こえ、ガタガタと音を立てながら馬車が急停車した。体勢を崩し座席から倒れた二人は何が起こったのかと警戒し、扉を開ける事なく外の音に聞き耳を立てた。
外では複数の足音と悲鳴が聞こえて来る。外がどうなっているかなど見なくても解った。
恐怖に震えていれば乱暴に扉が開かれ、粗野な格好をした破落戸達が嫌らしい笑みを浮かべて立っていた。
「おお、別嬪さんと爺さんか。なるほどなぁ、さてお前達。手荒な真似はしたく無いんでね、大人しく言う事を聞いてもらおうか」
頭であろう男がそう言うと、手下の男達に腕を取られ馬車の中から引き摺り出された。外へと出れば御者の男は惨たらしい姿で既に息絶えていた。
比較的に治安が良い道を通っていた筈であった。破落戸が出るなどと言う噂も聞かなかった為、完全に油断していたと言ってもいい。
そうでなくてもフェリチアーノの頭には長距離の移動で護衛を雇うと言う事が頭から抜けていた。
今までそんな金は無く、領地へ戻る際も護衛を雇うことなど無かった。その為に今回も護衛を雇う事なく離宮へ向かっていたのだ。
とんだ失態を犯してしまったとフェリチアーノは内心で舌打ちする。サライアスから支給される給金には、こんな時の為の護衛を雇う分も含まれていたのでは無いかと思い至る。
いつもであれば王都から離れることも無く、テオドールと居る間は彼に付いている騎士達が居る為、安全は確保されていた。
要は平和ボケをしていたといっても良い。そんな自らの油断から招いた事態に悔しさが込み上げた。どうすればこの場を無事に乗り切れられるかと頭を回す。
幸い馬車の荷台には離宮で過ごす為に準備した物が積んである。それらは決して安くは無いものだ。テオドールからの資金で買い揃えた物である為、それらを差し出すのは心苦しくはあるが、この場を乗り切るにはそうする他ないだろう。
フェリチアーノを庇うように前に出ていたセザールを下がらせ交渉をしようと一歩踏み出せば、男が徐に剣を振るい目の前のセザールを切り付けた。
王都から一日はかかる場所にある離宮は、静かでとても美しいのだとテオドールは言っていた。
そんなテオドールだが、この二週間会う事は叶わなかった。週に一度は必ず会えるのだがフェリチアーノといる為に長めに離宮に居る事にした為、急いで近々の仕事を片付けていた為でもあった。
本来であればテオドールが屋敷まで迎えに来る筈だったのだが、それも先に離宮へ向かわねばならなくなり、フェリチアーノはセザールを伴って離宮へと向かっていたのだ。
道中も一緒に居られると思っていた為に落胆も大きかったがこればかりは仕方が無かった。
フェリチアーノも暫く屋敷を離れる為の準備に忙しくしていた。執務もある程度終わらせ、大事な物は気づかれぬ様に別宅に移した。
忙しなく動く日々であったが、寂しさが紛れる事は決してなかった。
テオドールと会えないと言うだけで気持ちは沈むばかり。相変わらず手紙は貰うが、それだけでは足りないのだと心が叫んでいた。
ここまで人恋しいと感じたのは祖父と母が亡くなった時以来だ。休まる事の無い屋敷に居るよりも、王宮にいる方がマシであるし、何よりテオドールが一緒にいればどこでだって安心できるのだ。
そんな気持ちが表情に出ていたのだろう。セザールはウキウキとしている雰囲気を出すフェリチアーノを微笑ましく見ていた。
少しでもあの屋敷から離れ愛する人と共に居れるのならば嬉しい事はない。幼い頃より本来なら背負わなくてもいい重責を一人背負って生きてきた主人が安らげる場所ができたと言う事はとても好ましい事だった。
「楽しそうですね、坊っちゃま」
「そうだね、とても楽しいよ」
「坊っちゃまは滞在中は屋敷の事は忘れて楽しまれて下さいませね」
そうセザールが言えば、苦笑しながらフェリチアーノは頷いた。
アレやこれやと連日準備に奔走するフェリチアーノを家族はよくは思わなかった。アガットなどは何度かフェリチアーノの部屋に忍び込み何か無いかと物色をしたり、マティアスには顔を合わす度にいつもより更に嫌味を言われ、アンベールやカサンドラからは準備金を少しは家族の為に使えと直接言ってきたりもしたのだ。
頭の痛い日々ではあったが、それもテオドールと暫く過ごす為だと思えば頑張れた。
「セザールには申し訳ないけれど、後を頼むよ」
「お任せ下さい、坊っちゃま。私はその為に居るのですから」
柔らかく微笑まれ、それに応える様にフェリチアーノも微笑み返した。
その時馬の嘶きが突如聞こえ、ガタガタと音を立てながら馬車が急停車した。体勢を崩し座席から倒れた二人は何が起こったのかと警戒し、扉を開ける事なく外の音に聞き耳を立てた。
外では複数の足音と悲鳴が聞こえて来る。外がどうなっているかなど見なくても解った。
恐怖に震えていれば乱暴に扉が開かれ、粗野な格好をした破落戸達が嫌らしい笑みを浮かべて立っていた。
「おお、別嬪さんと爺さんか。なるほどなぁ、さてお前達。手荒な真似はしたく無いんでね、大人しく言う事を聞いてもらおうか」
頭であろう男がそう言うと、手下の男達に腕を取られ馬車の中から引き摺り出された。外へと出れば御者の男は惨たらしい姿で既に息絶えていた。
比較的に治安が良い道を通っていた筈であった。破落戸が出るなどと言う噂も聞かなかった為、完全に油断していたと言ってもいい。
そうでなくてもフェリチアーノの頭には長距離の移動で護衛を雇うと言う事が頭から抜けていた。
今までそんな金は無く、領地へ戻る際も護衛を雇うことなど無かった。その為に今回も護衛を雇う事なく離宮へ向かっていたのだ。
とんだ失態を犯してしまったとフェリチアーノは内心で舌打ちする。サライアスから支給される給金には、こんな時の為の護衛を雇う分も含まれていたのでは無いかと思い至る。
いつもであれば王都から離れることも無く、テオドールと居る間は彼に付いている騎士達が居る為、安全は確保されていた。
要は平和ボケをしていたといっても良い。そんな自らの油断から招いた事態に悔しさが込み上げた。どうすればこの場を無事に乗り切れられるかと頭を回す。
幸い馬車の荷台には離宮で過ごす為に準備した物が積んである。それらは決して安くは無いものだ。テオドールからの資金で買い揃えた物である為、それらを差し出すのは心苦しくはあるが、この場を乗り切るにはそうする他ないだろう。
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