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81 沈めていた物2
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夜会の会場からすぐ様アガットが追い出された後、涙が止まらなくなってしまったフェリチアーノを支えながらテオドールは休憩室へと向かった。
はらはらと流れ続ける涙は止まるどころか、更に奥から溢れて止まらなかった。今まで言わずに来た感情を口に出した途端、押し込められていた感情がまるで湧き出る泉のように吹き出して止まらない。
声を殺して泣くフェリチアーノを何も聞かずに、そしてその心を守る様に抱きしめ続けた。
幼児をあやすように大丈夫だと囁きながら頭を、背を撫でられる。まわされる腕の力強さと、密着した場所から伝わる体温に、安心出来る場所だとわかりフェリチアーノの感情は更に乱れていった。
「嫌い、きらいっあんな人達……」
デュシャン家への負の感情を吐露することなど無かった。負の感情を欠片でも出してしまえば耐えられなかった為に、最初は意識的に、最終的には無意識に閉じ込めた。
長年押し込めていた物をすぐには外に出す事は出来ない。セザールが葬られた時ですら、フェリチアーノはその感情を表に出す事は出来なかった。
テオドールとグレイス家での優しさに包まれ、時間をかけて漸く今それが溶け出したのだ。
ディッシャーはそれがいつ来るかはわからないとテオドールに伝えていた。その時は寄り添い、その感情を上手く言葉にして外に吐き出せる様に支えなくてはならないと。今がまさにその時だった。
胸に支えていたシコリが砕け、胸の奥深くに溜まり続けた決して綺麗とは言えない、ドロドロとした物が涙と共に出てくる。
本来であれば口汚く罵り謗る言葉を吐き出せたのだろうが、上手く感情を言葉に出来ず戸惑いと怒りと憤りを涙として流していた。
嫌いだと涙声で繰り返し言う言葉が、今のフェリチアーノにはそれだけの言葉を口に出すだけでも精一杯だった。
「フェリをこんなふうにしてしまった彼等は俺も嫌いだよ」
上手く出てこない言葉を導く様に、テオドールがそれを口にしたとしても決して離れてはいかないと安心させる様にテオドールも言葉を紡ぐ。
ぎゅっと更に力を込められた腕に、フェリチアーノはとうとうそれを口にする事が出来た。
「祖父も母も、あの家も、彼等は全部僕から奪っていく……セザールだって……僕は、僕は彼等が憎くて堪らないっ……!!」
抱き込んでいるフェリチアーノの頭に頬をつけながら、テオドールはフェリチアーノの感情に寄り添う。
テオドールの抱いている物と、フェリチアーノが長年抱え続けた物は事なるが、それでも少しは寄り添える筈だとテオドールはフェリチアーノが落ち着くまで抱きしめ続けた。
泣き腫らしたフェリチアーノは疲れ果て、そのままテオドールの腕の中で安心し切った顔で眠りについた。その顔を安堵の表情で見つめていたテオドールだが、すぐにロイズへグレイス邸へ戻る事を伝えると、眠るフェリチアーノを抱えあげ馬車へと向かった。
その様子をテラスに出ていたシャロンが憎々しげに見ていた。フェリチアーノを抱き抱えるテオドールは、腕の中を見てはその瞳を溶けさせその存在が愛おしいのだと誰が見てもわかる様な柔らかい表情をしていた。
アガットをあしらった時も、今まで誰も見たことがない様な表情で彼女を見ていた。あれが全てフェリチアーノの為になされている物だと思うだけで腹立たしさが募る。
王子妃と言う地位が欲しかっただけであった思いは、いつしか二人を見る度に話を聞く度に、違う思いへと変化していた。
テオドールの先に居るのフェリチアーノの存在に自身をいつしか重ねてしまったのだ。しかし現実ではテオドールはシャロンに靡く事はなく、あの愛おしげに見つめる視線と熱がシャロンに向く事は無い。
現実との乖離はシャロンの中で嫉妬として、確実に大きく育っていってしまった。
手にした扇子がミシミシと鳴り続け、遂にはバキンと音を立ててへし折れてしまう。それでも嫉妬の炎が収まるわけがなく、テラスの床に叩きつける様に扇子を投げ捨てた。
カツカツと踵を鳴らしながら歩いていれば、会場の隅で柱の影に隠れる様にして達ウィリアムを見つけた。
その表情は笑みを浮かべては居るが暗い様に見えた。劇場でのウィリアムの立ち回りを見ていた。彼がテオドールに近づこうと思っていたのは明白だ。
これは使えるとほくそ笑んだシャロンは、自身の信じる未来を掴むために足を踏み出した。
はらはらと流れ続ける涙は止まるどころか、更に奥から溢れて止まらなかった。今まで言わずに来た感情を口に出した途端、押し込められていた感情がまるで湧き出る泉のように吹き出して止まらない。
声を殺して泣くフェリチアーノを何も聞かずに、そしてその心を守る様に抱きしめ続けた。
幼児をあやすように大丈夫だと囁きながら頭を、背を撫でられる。まわされる腕の力強さと、密着した場所から伝わる体温に、安心出来る場所だとわかりフェリチアーノの感情は更に乱れていった。
「嫌い、きらいっあんな人達……」
デュシャン家への負の感情を吐露することなど無かった。負の感情を欠片でも出してしまえば耐えられなかった為に、最初は意識的に、最終的には無意識に閉じ込めた。
長年押し込めていた物をすぐには外に出す事は出来ない。セザールが葬られた時ですら、フェリチアーノはその感情を表に出す事は出来なかった。
テオドールとグレイス家での優しさに包まれ、時間をかけて漸く今それが溶け出したのだ。
ディッシャーはそれがいつ来るかはわからないとテオドールに伝えていた。その時は寄り添い、その感情を上手く言葉にして外に吐き出せる様に支えなくてはならないと。今がまさにその時だった。
胸に支えていたシコリが砕け、胸の奥深くに溜まり続けた決して綺麗とは言えない、ドロドロとした物が涙と共に出てくる。
本来であれば口汚く罵り謗る言葉を吐き出せたのだろうが、上手く感情を言葉に出来ず戸惑いと怒りと憤りを涙として流していた。
嫌いだと涙声で繰り返し言う言葉が、今のフェリチアーノにはそれだけの言葉を口に出すだけでも精一杯だった。
「フェリをこんなふうにしてしまった彼等は俺も嫌いだよ」
上手く出てこない言葉を導く様に、テオドールがそれを口にしたとしても決して離れてはいかないと安心させる様にテオドールも言葉を紡ぐ。
ぎゅっと更に力を込められた腕に、フェリチアーノはとうとうそれを口にする事が出来た。
「祖父も母も、あの家も、彼等は全部僕から奪っていく……セザールだって……僕は、僕は彼等が憎くて堪らないっ……!!」
抱き込んでいるフェリチアーノの頭に頬をつけながら、テオドールはフェリチアーノの感情に寄り添う。
テオドールの抱いている物と、フェリチアーノが長年抱え続けた物は事なるが、それでも少しは寄り添える筈だとテオドールはフェリチアーノが落ち着くまで抱きしめ続けた。
泣き腫らしたフェリチアーノは疲れ果て、そのままテオドールの腕の中で安心し切った顔で眠りについた。その顔を安堵の表情で見つめていたテオドールだが、すぐにロイズへグレイス邸へ戻る事を伝えると、眠るフェリチアーノを抱えあげ馬車へと向かった。
その様子をテラスに出ていたシャロンが憎々しげに見ていた。フェリチアーノを抱き抱えるテオドールは、腕の中を見てはその瞳を溶けさせその存在が愛おしいのだと誰が見てもわかる様な柔らかい表情をしていた。
アガットをあしらった時も、今まで誰も見たことがない様な表情で彼女を見ていた。あれが全てフェリチアーノの為になされている物だと思うだけで腹立たしさが募る。
王子妃と言う地位が欲しかっただけであった思いは、いつしか二人を見る度に話を聞く度に、違う思いへと変化していた。
テオドールの先に居るのフェリチアーノの存在に自身をいつしか重ねてしまったのだ。しかし現実ではテオドールはシャロンに靡く事はなく、あの愛おしげに見つめる視線と熱がシャロンに向く事は無い。
現実との乖離はシャロンの中で嫉妬として、確実に大きく育っていってしまった。
手にした扇子がミシミシと鳴り続け、遂にはバキンと音を立ててへし折れてしまう。それでも嫉妬の炎が収まるわけがなく、テラスの床に叩きつける様に扇子を投げ捨てた。
カツカツと踵を鳴らしながら歩いていれば、会場の隅で柱の影に隠れる様にして達ウィリアムを見つけた。
その表情は笑みを浮かべては居るが暗い様に見えた。劇場でのウィリアムの立ち回りを見ていた。彼がテオドールに近づこうと思っていたのは明白だ。
これは使えるとほくそ笑んだシャロンは、自身の信じる未来を掴むために足を踏み出した。
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