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「………は?」
世のご令嬢の理想を詰め込んだような王太子にしては随分と間の抜けた顔と声を披露してしまうオルフェウス。
「だっ…だから…こっ…婚約の解消をと…」
こちらもこちらで、売り言葉に買い言葉のように発した言葉に即後悔しつつ、だけど引けずにモゴモゴと尻すぼみになりながら婚約解消を突きつける姿は皆の憧れる公爵令嬢とは程遠い。
実はオルフェウスは拗らせ過ぎて気付いていないが、アリシアもまたオルフェウスのことが好き過ぎて時々おかしなことになる。
そして現在のこの状況こそがまさしくそのおかしなことで、要するにアリシアのヤキモチがピークに達しているのである。
それなのにこの王太子、あまりのダメージにアリシアの様子には一切気付かず、
「今…今…こっ…婚約解消…くっ…こん…婚約…かっ…解消…と言ったのか?
おっ…お前ごときが…いっ…一国の王太子に…
今っ!今なら間違いで無かったことにしてやるぞっ!
ま…まさか…ほ…ほ…本気では…ななないよなっ?
あああやまれば…その…許してやるぞ」
と顔色を悪くしながら情けなく、しかもかみかみで、だがあくまで上から言う。
これでは威厳も何もあったものではない。
だがそれも仕方ない。
実際オルフェウスの内心は半泣き状態なのだから。
そして感情的に思いもしないことを口走って引けなくなったアリシアもまた内心半泣き状態で、オルフェウスの様子に気付くことはなかった。
それどころか、半ばやけくそになって
「いいい嫌ですわ!
わ…私…知っているのですよ!
ででで殿下が…っ…サリバン伯爵令嬢と…その…あの…ここっ…恋仲だってことをっっ!」
とこちらも情けなく噛み噛みで数ヶ月前から皆が口々に話すオルフェウスの噂を突きつけた。
そしていろいろがピークに達したのか
「そして…か…彼女と私を比べて…
もう嫌っ!
どうせっ…私なんてっ…っ…うぅっ…うっ…ひっ…」
と卑屈に叫び、泣き崩れてしまったのである。
これにはさすがのオルフェウスも驚き、焦り、慌てふためいた。
オルフェウスにとってはいつもの口喧嘩だったはずがこの結果。
これが慌てずにいられるわけがない。
が、オルフェウスはそんなアリシアに言葉をかけることができず、ただただ拳をきつく握り締めたまま立ち尽くした。
この時のオルフェウスは噂を否定することはできても、その理由を説明することができなかったからである。
そして目の前で泣き崩れた愛しい愛しい婚約者の姿に、オルフェウスもまた泣きたくなっていた。
世のご令嬢の理想を詰め込んだような王太子にしては随分と間の抜けた顔と声を披露してしまうオルフェウス。
「だっ…だから…こっ…婚約の解消をと…」
こちらもこちらで、売り言葉に買い言葉のように発した言葉に即後悔しつつ、だけど引けずにモゴモゴと尻すぼみになりながら婚約解消を突きつける姿は皆の憧れる公爵令嬢とは程遠い。
実はオルフェウスは拗らせ過ぎて気付いていないが、アリシアもまたオルフェウスのことが好き過ぎて時々おかしなことになる。
そして現在のこの状況こそがまさしくそのおかしなことで、要するにアリシアのヤキモチがピークに達しているのである。
それなのにこの王太子、あまりのダメージにアリシアの様子には一切気付かず、
「今…今…こっ…婚約解消…くっ…こん…婚約…かっ…解消…と言ったのか?
おっ…お前ごときが…いっ…一国の王太子に…
今っ!今なら間違いで無かったことにしてやるぞっ!
ま…まさか…ほ…ほ…本気では…ななないよなっ?
あああやまれば…その…許してやるぞ」
と顔色を悪くしながら情けなく、しかもかみかみで、だがあくまで上から言う。
これでは威厳も何もあったものではない。
だがそれも仕方ない。
実際オルフェウスの内心は半泣き状態なのだから。
そして感情的に思いもしないことを口走って引けなくなったアリシアもまた内心半泣き状態で、オルフェウスの様子に気付くことはなかった。
それどころか、半ばやけくそになって
「いいい嫌ですわ!
わ…私…知っているのですよ!
ででで殿下が…っ…サリバン伯爵令嬢と…その…あの…ここっ…恋仲だってことをっっ!」
とこちらも情けなく噛み噛みで数ヶ月前から皆が口々に話すオルフェウスの噂を突きつけた。
そしていろいろがピークに達したのか
「そして…か…彼女と私を比べて…
もう嫌っ!
どうせっ…私なんてっ…っ…うぅっ…うっ…ひっ…」
と卑屈に叫び、泣き崩れてしまったのである。
これにはさすがのオルフェウスも驚き、焦り、慌てふためいた。
オルフェウスにとってはいつもの口喧嘩だったはずがこの結果。
これが慌てずにいられるわけがない。
が、オルフェウスはそんなアリシアに言葉をかけることができず、ただただ拳をきつく握り締めたまま立ち尽くした。
この時のオルフェウスは噂を否定することはできても、その理由を説明することができなかったからである。
そして目の前で泣き崩れた愛しい愛しい婚約者の姿に、オルフェウスもまた泣きたくなっていた。
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