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フェンデル公爵の叱責で、アリシアは自分も素直にオルフェウスと向き合ってこなかったことに気付く。
いや、本当は分かっていたが、そうすることが怖かったのだ。
なので、アリシアはその気まずさから長い間俯いていた。
が、いつまでも続く沈黙にそっと顔を上げる。
すると、アリシア以上に気まずそうなオルフェウスと厳しい顔のフェンデル公爵、呆れたような複雑な表情でそれを見守る使用人と護衛騎士の姿があった。
アリシアはその光景に、自分が腹を括ってオルフェウスと向き合うしか解決する方法がないと感じる。
それに、今更だが、素直に自分の気持ちを言葉にしなければ、本当にこのまま婚約解消になってしまう。
売り言葉に買い言葉とはいえ、とんでもないことを口にしたと、アリシアはひたすら後悔していたのだ。
ーーここできちんと自分の想いを伝えた上で、オルフェウス様の本当の気持ちを聞かなきゃ!!そして、それでもサリバン伯爵令嬢が好きだと言われたら、その時は……うん、その時は仕方がない!!
アリシアは今までの自分のことを思い返して唇を噛み、意を決した。
これからのことを想像すると泣きそうな気持ちにもなるが、グッと拳を握り締めて堪え、凛と顔を上げ、オルフェウスを真っ直ぐに見て口を開いた。
「オルフェウス様、私の話を聞いてくださいっ!!」
ドレスの中で密かに足が震えるが、自分の弱さを一生懸命に叱咤してオルフェウスと向かい合う。
そして、いよいよしっかりと自分の気持ちを伝えようと次の言葉を紡ぐーー
はずが、その言葉はオルフェウスによって遮られた。
アリシアは同様に腹を括って意を決したオルフェウスの長い腕に絡め取られ、その胸に抱きしめられたのだ。
そして、突然のことに驚くアリシアを見つめて
「アリシア、すまなかった。私はアリシアの気持ちを聞くことも、考えることもしていなかった。それどころか、自分の気持ちさえ伝えていなかった。今頃気付いても遅いのかもしれないが、それでも諦められないんだ。私は、私は…その…あの…私は……っ…アリシアのことがすっ…その…っ…すっ…すっ…好きなんだっ!は…初めて見た時から…そ…その…っ…ア…ア…アリシアだけなんだっ!!」
と言った。
あまりに王子様らしくない不器用な告白に、今度こそアリシアはオルフェウスの言葉に嘘がないと思えたのだった。
いや、本当は分かっていたが、そうすることが怖かったのだ。
なので、アリシアはその気まずさから長い間俯いていた。
が、いつまでも続く沈黙にそっと顔を上げる。
すると、アリシア以上に気まずそうなオルフェウスと厳しい顔のフェンデル公爵、呆れたような複雑な表情でそれを見守る使用人と護衛騎士の姿があった。
アリシアはその光景に、自分が腹を括ってオルフェウスと向き合うしか解決する方法がないと感じる。
それに、今更だが、素直に自分の気持ちを言葉にしなければ、本当にこのまま婚約解消になってしまう。
売り言葉に買い言葉とはいえ、とんでもないことを口にしたと、アリシアはひたすら後悔していたのだ。
ーーここできちんと自分の想いを伝えた上で、オルフェウス様の本当の気持ちを聞かなきゃ!!そして、それでもサリバン伯爵令嬢が好きだと言われたら、その時は……うん、その時は仕方がない!!
アリシアは今までの自分のことを思い返して唇を噛み、意を決した。
これからのことを想像すると泣きそうな気持ちにもなるが、グッと拳を握り締めて堪え、凛と顔を上げ、オルフェウスを真っ直ぐに見て口を開いた。
「オルフェウス様、私の話を聞いてくださいっ!!」
ドレスの中で密かに足が震えるが、自分の弱さを一生懸命に叱咤してオルフェウスと向かい合う。
そして、いよいよしっかりと自分の気持ちを伝えようと次の言葉を紡ぐーー
はずが、その言葉はオルフェウスによって遮られた。
アリシアは同様に腹を括って意を決したオルフェウスの長い腕に絡め取られ、その胸に抱きしめられたのだ。
そして、突然のことに驚くアリシアを見つめて
「アリシア、すまなかった。私はアリシアの気持ちを聞くことも、考えることもしていなかった。それどころか、自分の気持ちさえ伝えていなかった。今頃気付いても遅いのかもしれないが、それでも諦められないんだ。私は、私は…その…あの…私は……っ…アリシアのことがすっ…その…っ…すっ…すっ…好きなんだっ!は…初めて見た時から…そ…その…っ…ア…ア…アリシアだけなんだっ!!」
と言った。
あまりに王子様らしくない不器用な告白に、今度こそアリシアはオルフェウスの言葉に嘘がないと思えたのだった。
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