懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第67話 元の鞘

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「リンちゃん。忘れ物はない?」
「大丈夫」

 盆休み三日目の昼前。
 二日世話になった実家のカーテンや雨戸を下ろし、戸締まりをしっかり確認してあたしと母は持ってきた荷物を確認していた。

「お母さん、荷物を積んでおくからリンちゃんは三鷹さんに鍵を預けて来てくれる?」
「うん」

 丁度、ケイタの様子も見ておきたかったので、あたしは鍵を返しに隣の家へ。

「ん?」
「あなたは……」

 すると、三鷹さん家のインターホンを鳴らそうとしている銭湯の番頭に座っていた女の子と出会った。

「鮫島さんの娘さん」
「えっと……鮫島凛香です」
吉澤友子よしざわともこです」

 初対面では無いが名乗り会うのは始めてだ。彼女の年齢はケイタと同じくらいだろう。
 お互いに、ペコリと頭を下げる。

「母の事、知ってるの?」
「はい。鮫島瀬奈さんってこの当たりだと美人さんで有名だったらしいので。スタイルも良いですし」
「そうなんだ」
「知ってる人からすれば、あんまり歳を取ってるように見えないとかで……実はお姉さんだったりします?」
「あはは。ないない」

 自分は見慣れているので違和感はないが、久しぶりに見る身内からすれば母の容姿は殆んど変わってないらしい。
 まぁ……貴女もその血を継いでそうですが。とトモコちゃんはあたしの身体をみて、ボソッと口にする。

「トモコちゃんはケイタに用事?」
「はい。何を心変わりしたのか、夏休みが明けたら学校に行くと言い出し、情報をくれと」
「そうなんだ」

 ちゃんと家族とは話が出来た様で良かった。唯一気になってた事だったけど、これで無事に帰れる。

「トモコちゃんはケイタと仲良いの?」
「と言うよりも腐れ縁ですね。小学校から今まで、何故かずっと一緒のクラスなので」

 呆れるトモコちゃん。中学一年生なのにしっかりしてるなぁ。

「ようやく面倒ごとが減りそうで良かったです。先生も腐れ縁と言うだけで、何かとわたしに三鷹の事を任せていましたから」
「まんざらでも無かったでしょ?」
「ご冗談を。あまりに面倒なので最近は放置してたくらいですよ」
「そ、そうなんだ」

 トモコちゃんの様子から二人の関係は本当に友達の腐れ縁と行った様子だ。

「騒がしいね。人ん家の前で」





 ガチャっと三鷹家の扉が開くと、そこから小柄な老婆――三鷹弥生が現れた。

「こんにちは、弥生さん」
「トモコかい。ケイタに聞いてるよ。それと、そっちは――」

 弥生から向けられる鋭い視線にリンカは思わず強ばる。

「鮫島凛香です。鍵を預けに来ました」
「そうかい。遠路はるばるよく来たね」

 と、次に穏やかな雰囲気を向けられて緊張が解ける。

「上がりますね。リンカさんも、また機会があれば話しましょう」

 それでは、とトモコは弥生の脇を抜けて三鷹家へ入って行った。

「もう帰るのかい?」
「はい」
「あんたの事はセナから聞いてるよ。凄く出来た娘だって嬉しそうに自慢してたさ」
「そうですか」

 知らぬ所でも母は自分の事を見ていてくれてリンカは素直に嬉しくなった。弥生は鍵を手渡しで受け取る。

「霊園に行ったんだろ? 慰霊碑には祈ったかい?」
「え? い、いえ……」

 唐突にそう告げる弥生に、霊園の慰霊碑には特に何もしなかった事を思い出す。

「変な人はいましたけど……」
「変なヤツ?」
「なんか、慰霊碑を背にして寝てました」

 その言葉に弥生はあからさまに怒りを漲らせる。

「誰だい? そのクズは」
「え、えっと……阿見笠流って人……」

 圧に負けて思わず名前を口にするリンカ。まずかったかなぁ、と思っていると意外にも弥生は怒りをしぼませた。

「……まったく。バカが……そうまでして父親と話をしたいか……」
「あの……」

 置いてけぼりなリンカに一人納得する弥生は、すまないねぇ、と再び穏やかな雰囲気になる。

「リンカ、本当に愛する家族ってもんは減りはするけど増える事はなかなかに難しい。親子二人でこれからも大変かもしれないけど、仲良くね」
「はい。あたしたちは大丈夫です」

 リンカの様子から母親以外にも頼れる者はいる様子だと弥生は察する。

「そうかい。何かあればすぐに連絡しな。セナに連絡先は教えてあるからね」
「ありがとうございます」

 お祖母ちゃんが居ればこんなかんじかなぁ、と思いながらリンカはお礼を言うと三鷹家を後にした。





 あたしは流れる帰り道の景色を助手席でぼーっと眺めていた。
 どことなく心に虚無感がある。この感覚は前に何度も感じたことのあるモノだ。
 高速道路の味気の無い景色に飽きて、スマホを見るが特に連絡はない。

「……」
「早く会いたいわね~」

 母に心を読まれた様な発言にスマホをしまい、顔を再び外へ向ける。

「別に」
「ふふ。ごめんね~リンちゃん。制限速度は守らないといけないから~」
「さっきから何を言ってるのさ」

 でも、そんな調子の母だからこそ安心して側に居れる。

「連絡してみれば~?」
「いいって」

 彼と離れてたった二日だと言うのに……

「あたし……完全に病気かも……」

 すぐにでも会って話したい。電話をすればすぐに出てくれるとは思うが……僅かに残った恥ずかしさが、それを踏みとどまらせる。

「お土産はリンちゃんが渡しに行きなさいな~」
「三日だけのお土産ってのも変だけどね」
「お母さんの地元のお菓子だから美味しいわよ~」

 そんなこんな話していると見慣れた街に帰ってきた。
 見慣れた信号。見慣れた道。見慣れたアパートが見えるが一度通り過ぎて少し先にあるレンタル駐車場に車を止める。着いた時刻は夕刻になっていた。

「お母さんはレンタル店に車を持って行って貰うから、リンちゃんは先にどうぞ~」
「もう、いいから! 先に行くよ!」

 最後までからかう母の言葉であるが、そんなのはあまり気にならず早足になる。
 アパートの階段が見えてきた所で、彼の姿が――

「ただい――」

 思わず昔のように手を振ろうとした所で、我に返った。
 彼は部屋の前で見知らぬ美少女と楽しそうに話し、手を振って見送る場面だったから――





 シズカがジジィカーに乗って去った後、オレは向けられる視線に気がつき、そちらに眼を向ける。
 するとリンカが階段下から見上げていた。

「あ、リンカちゃん。おかえ――」

 と、階段を降りながら話しかけると、逆に近づき、

「今の……誰だ?」

 いつもと変わらぬ、棘のある口調でそう言った。
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