106 / 701
第106話 二回目の笑顔
しおりを挟む
「ここでいいのか?」
「はい」
リンカは最寄駅の改札前まで大宮司に送ってもらっていた。
雑居ビルの一階でヒカリを見つけたリンカは呆れながら抱き着かれて、無事でよかった、うえーん、と泣かれた。
そして、ヒカリは大宮司にも今まで誤解していた旨を謝り、少しは二人の間も柔らかくなる。
ちなみに、もう一人居たでしょ? と言うリンカの問いにヒカリは、なんの事でしょう? と目を合わせず口笛で誤魔化した。
「なんか……身内が迷惑をかけたみたいで」
ヒカリとは学校の最寄り駅で別れた。ロッカーの荷物を回収し、そのまま母に迎えに来てもらうとのこと。
ちなみに一階に居たヤクザ達は仮屋を確保しに来たのだ。もし、ユニコ君が立ち塞がらなければ安全に事が収まったかもしれない。
「いや……迷惑をかけたのは俺だの方だ」
と、大宮司は頭をリンカに下げる。
「すまない鮫島。俺は仮屋に脅されていたんだ」
大宮司は事の顛末を全て語る。
仮屋から電話があった時、ヤツのビジネス邪魔をしたことを言及された(駅でシズカを助けようとした件)。そして、既に組が動いている事を言われ、どうすれば良いか聞いた所、女の一人でも連れてこいとの事だった。
「やつは言った。弟はいつでも拐える。女を連れてくれば組に口を聞いてやる、と」
大宮司も出来る限りの手を打つ事にしたが、姉弟子と親友から連絡は無く、リンカが連れ去れる瞬間に、弟は無事であると来たのだ。
「俺は……君より弟を取った……本当にすまない」
リンカの親切心につけこんで、不必要な危険に晒した事を大宮司は黙って居られる性格ではなかった。
「仕方ないですよ」
そんな彼女の言葉に大宮司は顔を上げる。
「駿君を護れるのは先輩だけです。兄弟ってそれだけ頼りにされているんですよ。特に……お兄さんは本当に頼りになるんです」
自分もかつてはそうだった。その背中はいつも目の前にあって、呼んだら振り向いてくれて、遅れそうになったら止まって駆けよってくれる。
「だから、帰って駿君に言ってあげてください。お前を護ったぞ、って」
「……鮫島」
「あたしには護ってくれる人が先輩の他にも沢山居ますから」
まぁ、その中でも筆頭のヤツは本当に落ち着きがない、ばか、なのだが。
「もし、君がどうしようもない窮地に陥った時、必ず俺に声をかけてくれ。どこからでも駆けつけ――」
「ふふ。そんなに堅苦しくなくてもいいでしょう? あたしと先輩の関係は、そんなに浅くないですし」
それじゃ先輩、また明日。とリンカは大宮司に言うと、ああ、と言う返答を聞き改札を抜けて行った。
オレは最寄駅に着くと改札を抜ける。
あの時、逃亡する直前にオレはヒカリちゃんに居ることは口止めしてもらったのだ。
理由は……ヤーさんの前で正体をバラされる訳には行かないからである。断じてリンカに怒られるのが怖かったわけではないのだ!
「あ~疲れたなぁ……」
その後、テツから連絡を受けて格納庫に戻り、ユニコ君をパージ。脱いだユニコ君とは何とも言えない視線を交わして別れた。もう二度とお前を駆る事はあるまい。
「あの商店街にはしばらく近づかない方がいいな」
「なにがいいって?」
「ほほ!?」
オレは駅から出た所で横からリンカに話しかけられた。時間はだいぶズレていたハズ……
「やっぱり」
「リ、リンカちゃん! 奇遇だねぇ! オレは残業だったんだ! 君も何か用事かい?!」
顔を合わせるのは昨日の夜以来だが、今のオレには別の気まずさがある。
「……はぁ。一つ、聞く」
と、リンカは呆れた様に人差し指をオレの前に立てる。
「あたしはキスした時、凄くドキドキした。お前は?」
「あ……えっとですね。リンカちゃんの事は妹みたいなもので……その……誠に言いづらいんですが……男女的に付き合うのは――」
「――おい」
「はひぃ!」
オレは背筋を伸ばす。
「あたしの“初めて”の感想がソレかよ」
リンカの視線に冷や汗が止まんねぇ。しかし、怒ってる様に見えないのはオレの感覚がバグったのか?
「えっと……オレも初めてだったので、よくわかりませんっっ!」
「――あっそ」
と、くるっと背を向けるとリンカは歩き出す。なんだ……どういう判定を下したんだ……? オレは困惑するも、彼女の背中からはどこか嬉しそうな気配を感じた。
「なにボサッとしてんだ。帰るぞ」
「はい」
オレもリンカの後に続くと、不意に彼女は振り向くと顔を近づけた。そして、唇に当たる感触が――
「――期待したか?」
リンカは人差し指をオレの唇に当てていた。
「いえ……びっくりしました」
「ふーん。お前って本当に変なヤツ」
リンカは嬉しそうに笑った。
オレに向けてくれたその笑顔の発動条件は……全くわからない。
やっぱり……女子高生は未知の生物だ。
田舎の夜ではリンリンリンと、虫達の夏の合唱が続いていた。
あらゆる所から山のように届くお歳暮。基本的には日持ちする食品関係なので全て老婆が管理している。
「おっ」
その中で一番高いモノを見つけた。差出人は『鳳健吾』。缶詰やハムの詰め合わせだ。
「奮発したのぅ。ケンくん」
そして、次のお歳暮を手に取り、その届け先を見て老婆は笑った。そして、テレビを見ている老人の元へ行く。
「お歳暮、来とったで」
「毎年、アホほど来るじゃろが」
「やな。今年はケンくんからも来てるわ」
老婆も老人と同じ卓に座ってバラエティ番組を見る。そして、
「今もマスコットらしいで。ユーニーコ君」
「……やめーや」
「ほっほっほ」
商店街から毎年お歳暮が届く度に老人は妻にいじられているのだった。
「はい」
リンカは最寄駅の改札前まで大宮司に送ってもらっていた。
雑居ビルの一階でヒカリを見つけたリンカは呆れながら抱き着かれて、無事でよかった、うえーん、と泣かれた。
そして、ヒカリは大宮司にも今まで誤解していた旨を謝り、少しは二人の間も柔らかくなる。
ちなみに、もう一人居たでしょ? と言うリンカの問いにヒカリは、なんの事でしょう? と目を合わせず口笛で誤魔化した。
「なんか……身内が迷惑をかけたみたいで」
ヒカリとは学校の最寄り駅で別れた。ロッカーの荷物を回収し、そのまま母に迎えに来てもらうとのこと。
ちなみに一階に居たヤクザ達は仮屋を確保しに来たのだ。もし、ユニコ君が立ち塞がらなければ安全に事が収まったかもしれない。
「いや……迷惑をかけたのは俺だの方だ」
と、大宮司は頭をリンカに下げる。
「すまない鮫島。俺は仮屋に脅されていたんだ」
大宮司は事の顛末を全て語る。
仮屋から電話があった時、ヤツのビジネス邪魔をしたことを言及された(駅でシズカを助けようとした件)。そして、既に組が動いている事を言われ、どうすれば良いか聞いた所、女の一人でも連れてこいとの事だった。
「やつは言った。弟はいつでも拐える。女を連れてくれば組に口を聞いてやる、と」
大宮司も出来る限りの手を打つ事にしたが、姉弟子と親友から連絡は無く、リンカが連れ去れる瞬間に、弟は無事であると来たのだ。
「俺は……君より弟を取った……本当にすまない」
リンカの親切心につけこんで、不必要な危険に晒した事を大宮司は黙って居られる性格ではなかった。
「仕方ないですよ」
そんな彼女の言葉に大宮司は顔を上げる。
「駿君を護れるのは先輩だけです。兄弟ってそれだけ頼りにされているんですよ。特に……お兄さんは本当に頼りになるんです」
自分もかつてはそうだった。その背中はいつも目の前にあって、呼んだら振り向いてくれて、遅れそうになったら止まって駆けよってくれる。
「だから、帰って駿君に言ってあげてください。お前を護ったぞ、って」
「……鮫島」
「あたしには護ってくれる人が先輩の他にも沢山居ますから」
まぁ、その中でも筆頭のヤツは本当に落ち着きがない、ばか、なのだが。
「もし、君がどうしようもない窮地に陥った時、必ず俺に声をかけてくれ。どこからでも駆けつけ――」
「ふふ。そんなに堅苦しくなくてもいいでしょう? あたしと先輩の関係は、そんなに浅くないですし」
それじゃ先輩、また明日。とリンカは大宮司に言うと、ああ、と言う返答を聞き改札を抜けて行った。
オレは最寄駅に着くと改札を抜ける。
あの時、逃亡する直前にオレはヒカリちゃんに居ることは口止めしてもらったのだ。
理由は……ヤーさんの前で正体をバラされる訳には行かないからである。断じてリンカに怒られるのが怖かったわけではないのだ!
「あ~疲れたなぁ……」
その後、テツから連絡を受けて格納庫に戻り、ユニコ君をパージ。脱いだユニコ君とは何とも言えない視線を交わして別れた。もう二度とお前を駆る事はあるまい。
「あの商店街にはしばらく近づかない方がいいな」
「なにがいいって?」
「ほほ!?」
オレは駅から出た所で横からリンカに話しかけられた。時間はだいぶズレていたハズ……
「やっぱり」
「リ、リンカちゃん! 奇遇だねぇ! オレは残業だったんだ! 君も何か用事かい?!」
顔を合わせるのは昨日の夜以来だが、今のオレには別の気まずさがある。
「……はぁ。一つ、聞く」
と、リンカは呆れた様に人差し指をオレの前に立てる。
「あたしはキスした時、凄くドキドキした。お前は?」
「あ……えっとですね。リンカちゃんの事は妹みたいなもので……その……誠に言いづらいんですが……男女的に付き合うのは――」
「――おい」
「はひぃ!」
オレは背筋を伸ばす。
「あたしの“初めて”の感想がソレかよ」
リンカの視線に冷や汗が止まんねぇ。しかし、怒ってる様に見えないのはオレの感覚がバグったのか?
「えっと……オレも初めてだったので、よくわかりませんっっ!」
「――あっそ」
と、くるっと背を向けるとリンカは歩き出す。なんだ……どういう判定を下したんだ……? オレは困惑するも、彼女の背中からはどこか嬉しそうな気配を感じた。
「なにボサッとしてんだ。帰るぞ」
「はい」
オレもリンカの後に続くと、不意に彼女は振り向くと顔を近づけた。そして、唇に当たる感触が――
「――期待したか?」
リンカは人差し指をオレの唇に当てていた。
「いえ……びっくりしました」
「ふーん。お前って本当に変なヤツ」
リンカは嬉しそうに笑った。
オレに向けてくれたその笑顔の発動条件は……全くわからない。
やっぱり……女子高生は未知の生物だ。
田舎の夜ではリンリンリンと、虫達の夏の合唱が続いていた。
あらゆる所から山のように届くお歳暮。基本的には日持ちする食品関係なので全て老婆が管理している。
「おっ」
その中で一番高いモノを見つけた。差出人は『鳳健吾』。缶詰やハムの詰め合わせだ。
「奮発したのぅ。ケンくん」
そして、次のお歳暮を手に取り、その届け先を見て老婆は笑った。そして、テレビを見ている老人の元へ行く。
「お歳暮、来とったで」
「毎年、アホほど来るじゃろが」
「やな。今年はケンくんからも来てるわ」
老婆も老人と同じ卓に座ってバラエティ番組を見る。そして、
「今もマスコットらしいで。ユーニーコ君」
「……やめーや」
「ほっほっほ」
商店街から毎年お歳暮が届く度に老人は妻にいじられているのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる