懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

文字の大きさ
124 / 701

第123話 ヒップタッチトレイン

しおりを挟む
「忘れ物ないか?」
「ノープロブレムネ」

 オレとダイヤは鮫島家で朝食までお世話になると、準備を済ませて出社する。
 世話になりっぱなしだ。何かお礼を考えないとなぁ。

「おはよう、ケンゴ君」
「おはようございます、赤羽さん」
「グッドモーニング! Mr.アカバネ!」

 階段を降りると朝早くから敷地内の雑草をむしっている赤羽さんに各々で挨拶をする。

「赤羽さん、すみません。あのコインなんですけど……実は失くしちゃいまして」
「おや? そうかい」

 あら? 意外と気にしてない感じだな。

「折角お土産に貰ったのにすみません」
「仕方ないさ。物は失くなるモノだからね」

 すると、赤羽さんは一枚のコインを弾いてくる。あれ、ループしてる? と思いつつオレは、パシッとキャッチした。

「これって……」
「ベガスのカジノコインヨ」

 肩口にダイヤが覗いてくる。

「ラスベガスに行った時に大勝してね。ポケットに紛れてたんだ」
「今度はお土産っぽいです」
「なんだか物足りなさそうだね。呪術儀式の始祖仮面とかもあるけどそっちの方が良いかい?」
「いや、これで良いです」

 この人は1ヶ月ほどの旅で世界のどこを歩いて来たんだ? インディージョーンズにも引けを取らない大冒険をしてそう。

「仕事、頑張ってね」
「はい」
「イッテクルヨ!」

 駅に向かって歩き出す。その際に塀の上にいるジャックと、近くの電線の上に停まってるデカイカラスがやたら気になった。





『扉が閉まります。気をつけてください』
「おっとと」

 いつもの通勤ラッシュに巻き込まれたオレは吊革か扉の近くを確保するべく手を伸ばした。二駅ほど上がった所で降りるので、出来ればドアの近くを確保したい所。

「コレガ、ジャパンのラッシュアワーネ!」

 この混雑化。ダイヤは女性専用車両に乗せるべきなのだろうが、降りる駅を教えるためにも今回だけ一緒の車両に乗る。

「降りる駅を間違うと遅刻になるからな。ちゃんと覚えるように」
「OK」

 JRが動き出し、乗車率200%の車両内は移動する重心に少し揺れる。すし詰め状態だ。吊革を確保出来なかったダイヤはオレにしがみつく形を取っている。

「せめて窓際が良かったか」

 オレは平気だが、ダイヤはあまり経験のない。景観を楽しむような状況ではないが、少しでも窮屈さを軽減できればと考える。

 加速と減速をする度に電車は揺れ、その都度、アメリカで育った胸がオレに押し立てられる。出てこい、煩悩退散ジジィ! オレと殺し合え!

「? ニックス」

 脳内シミュレートで、キェー、と荒ぶる鷹のポーズを取るオレは銃を構えるジジィと向かい合う。阿保が、と撃ち殺された所でダイヤが話しかけてきた。

「どうした? 次で降りるぞ」
「OK」
「忘れ物でもしたのか?」
「そうジャナイネ」

 なんだ? とこの時は特に気にしなかった。JRは駅に付き、ここだ、とオレはダイヤと雪崩の様に出ていく社会人に混ざって下車する。

「この駅で降りるんだ。次からは別車両に乗るから降り間違えるなよ」
「ウン」

 と、ダイヤは閉まる車両を見ていた。

「なんか気になる事でも?」
「ウーン、ジャパンにヒップタッチ文化あるネ?」
「何言ってんだ? そんなわけ――」

 ダイヤの言葉にオレは車両を見るが、既に数多の乗車客によってすし詰め状態だった。
 発進のアラームが鳴り響き、扉が閉じる。

「ダイヤ。大丈夫か?」
「エ? 何がデス?」

 日本の事情に深くないダイヤはオレの真剣な表情に困惑の様子だった。

「……悪かった。オレの考えが浅はかだったよ」
「急にドーシタネ、ニックス」
「取りあえず会社に行きながら説明するよ」

 オレはダイヤに痴漢と言うものが深刻な問題になっているかを説明した。





「よし、朝の伝達事項は以上! ケンゴは引き続き、ダイヤ女子についてやってくれ! そんじゃ、仕事開始だ!」

 獅子堂課長の朝礼にも参加して業務が始まった。何人かはヘルプ先の課へ行き、オレはダイヤを連れて鬼灯先輩のデスクへ。

「おはようございます」
「おはよう、鳳君。ダイヤさん」
「オハヨー、シオーリ」

 元気なダイヤに鬼灯先輩は微笑ましく笑う。マスクは着けてない所を見ると、完全に回復したようだ。
 すると、鬼灯先輩はオレの雰囲気を察した。

「どうしたの?」
「実はですね――」

 オレは今朝の電車でダイヤが痴漢された事を相談する。当人は気にしてなくても犯人がエスカレートする可能性もあるからだ。

「そうなの……ダイヤさんは平気?」
「ショージキ、ニックス達がナンデ騒いでるノカワカラナイヨ」
「先輩、ダイヤは向こうだと会社に近い場所に住んでるんです。だから徒歩で行けるので余りラッシュ時の電車には乗らないんですよ」
「そうなの」

 事の深刻さをあまり理解していないダイヤに言葉で危機感を持たせるのは難しい。

「今日はダイヤさんはどうするの?」
「1課と2課に連絡して、何か社内で出来るヘルプがないか聞こうかと思ってます」
「4課には行った?」
「フォーオフィス?」
「そう言えばまだでした」

 昨日は七海課長に止められたんだった。理由は食堂で相席した火防議員が来訪したからだったんだろう。

「それなら丁度いいかもしれないわ。私が事前連絡はしておくから、今から行ってきなさい」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...