懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第143話 おぉおいぃ!!

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「逃げろ?」

 屋上の気持ち良い晴天の下、食事を始めたオレたちに連絡が入る。
 今はあまり使われない同期のLINEグループに泉から“逃げろ”のメッセージにオレらは頭に疑問詞をつけた。

「なんだこれ?」
「主語が抜けていますなぁ」

 取りあえず、何が? と返してスマホを仕舞うと、加賀へ向き直る。

「それで加賀。いつから姫さんと付き合い始めたんだ?」

 オレはコンビニで買った、新作のおこわおにぎりを頬張りながらさっきの姫さんと加賀の様子を問い詰める。
 あのイチャイチャ具合の距離感は先輩後輩の枠をまたいでいた。

「え? 別に付き合ってなんてねーぞ」

 しかし、加賀の口から返ってきたのは少し違った解答であった。姫さんから貰った弁当を食べながら、ははは、と笑う。

「何言ってんだよ、鳳。俺みたいなヤツが、姫さんみたいな美女と付き合えるワケないだろー」

 加賀は本気でそう思っている様子だ。
 確かに、姫さんは何かと世話焼きな所があるなぁ。オレもヘルプであの人の下に就いた時は、良くして貰ったっけ。素で天然なんだよ。あの人。

「それに……しばらくは女性関係はいいんだ……」
「おいおい。なんかあったのか?」

 何か暗いモノを思い出す様な加賀にオレは問う。

「加賀殿はストーカー被害に合いましてな。それが軽いトラウマなのですぞ」
「え? 初耳」

 ヨシ君は、一つの写真をオレに見せてくる。それは、バス停でバスを待っている所を反対側の歩道から撮った写真。
 ショートヘアーで横顔からでも整った美形である事が解る。ヒカリちゃんやシズカには劣るものの、標準的な目線では美少女に当たる女の子だった。多分高校生。

「可愛いじゃん」
「ひっ、ヨシ君! それまだ持ってたのか!?」

 写真を見た加賀は、ざっと遠ざかる。相当精神をやられてやがるな……

「失礼。念のためですぞ」
「普通に可愛いじゃん」
「そいつ……中身はミザリーなんだよ……」

 ミザリーって……あのヒューマンサイコホラーのタイトルにもなってるヤバい女か。あれ、実話らしいが……

「んなもん、現実にいるわけ――」

 ないだろ、と言おうとしたオレに加賀は、マジなんだよ、と目力で訴えてくる。
 言葉の否定ではない様子から、オレも事の深刻さを理解した。

「けど、姫さんは違うと思うぜ?」
「俺も分かってるんだけどよ……人間の腹の中なんて何が潜んでるかわかんねぇだろ?」

 こりゃ……重症だな。オレも人の事は言えんが。

「でも、ストーカーの件は終わってるんだろ?」
「箕輪殿が処理をしました。接近禁止も指定しております。特定の人間以外は守秘義務を強いておりますゆえ」
「オレも胸の内に仕舞っとくわ」

 加賀の女性に対する考え方は当人次第か。にしても、オレが居ない間にいろんな事が起こってるなぁ。

「おぉおいぃ!!」

 その時、どこからともなく声が響く。
 え? 上から聞こえたけど……上は空だ。晴天だ。しかもこの声は――

「国尾さん……?」
「声はしましたな」
「声はしたぞ……」

 オレらは嫌な予感に辺りを見回す。しかし、あの体格が隠れる場所など拓けた屋上には存在しない。

「俺はココだぜ!」

 また天からの声。

「え? どこだ?」
「どこからですかな?」
「ど、どこから来やがる?」

 キィ……と屋上の扉が不気味に開く。

「ココだぜ!」

 わっ! と笑顔で狭そうに扉をくぐるマッチョメン。
 どうやって空から声を降らせていたのか全くもって不明だが、国尾さんとエンカウントした。

「今は……昼休みオフだぜ! ほっほう!」

 やっば……止められる人も居なければ袋小路じゃん……





「それでさ。姫って加賀の事、アリなの?」
「ぶふー。ごほっ!」

 紙パックのジュースを買って飲んでいた姫野は茨木の発言に思わず握り潰した。圧力で勢い良く出た中身に思わずむせる。

「え? 姫先輩、そうなんですか?」
「い、いや違うよ!」
「いや……違わないでしょ。普通は弁当なんか手作りしないって」
「なんだ、姫。加賀に気があんのか?」
「ちょっと栄養配分が気になっただけですよ! 七海課長!」

 それって加賀の事を常に見てるってことじゃん、と茨木と泉は思ったが姫野のリアクションが面白いので口には出さない。鬼灯は微笑ましく傍観者を決め込んでいた。

「お前らは先輩後輩だと思ってたけどな。沖縄の一件で枠がぶち壊れたか」

 2泊3日の沖縄磯研修の一件で大きく関係が変わったのは加賀と姫野が一番だろう。

「あんなヤツのどこが良いんですか? カニにびびる雑魚ですよ?」
「当人にしかわからない魅力があるんだろうよ、泉。恋は盲目ってヤツ」
「もー、私先に帰るからね! 失礼しますっ!」

 からかわれる事を察した姫野は顔を赤くして一人席を立ち、歩いて行った。

「あらら」
「お前ら、もうちょっと引っ張れよな」

 話のネタが居なくなった事に七海は茨木と泉を見る。すみませーん、と二人は簡単に謝った。

「そう言えば、七海課長はどうなのです?」
「あ?」

 静観を決め込んでいた鬼灯が口を開く。

「他の支部からの派遣で来るのは間違いなく天月君ですよ?」
「……クソみたいに面倒な事になりそうだ」

 と、七海は心底うんざりした様子で舌打ちをした。
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