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第167話 あれれー? おかしいぞぉー
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「寝技ですか……必要あります?」
正直な所、七海課長を侮っていた。
天月さんの超人的な身体能力は周知の情報。それだけでも、七海課長ではいろんな面で勝てないと思っていたが……それは素人眼だった。
「七海課長なら立ったままでも勝てそうですけど……」
少し案山子になってわかったが七海課長も十分に常人の枠から飛び出した身体能力を持つ。天月さんはスポーツマンなので、部は七海課長にあるだろう。
「あれは来ない、これは来ない、って考えが許されるのはガキまでだ。あらゆる状況を想定して出来るだけ対処しておくのが大人だろうが」
七海課長は大人だからこそ備える事の出来る範囲は広い事を語る。
「まぁ、お前が嫌なら止めとくぜ」
「課長命令使ってましたよね……?」
「細かいことを振り返すな。まぁ、強要はパワハラになるからな。俺もそこまでお前にやれとは言わねぇよ」
後頭部を掻きながら七海課長は諦める。うーん……うむ。
「いいですよ。付き合います」
オレは乱暴な物言いでも真摯で部下の事を考えてくれている七海課長の心意気に手を貸したいと思った。
「急に手の平を返したな。俺と密着できるチャンスとでも思ったか?」
ニヤニヤしながら七海課長が言う。それもちょっとあるかも……
「い、いえ! そんなことは――」
「フッ。わかってるよ。お前はそんなヤツじゃないしな」
と、七海課長はオレの肩に、ぽん、と手を置く。
「シオリからお前の事は色々と聞いてる。まぁ、アイツが一方的に話してばかりなんだがな――」
ペタン。とオレはいつの間にか足を払われて尻から座っていた。いや、座らされた。これは――
「よっ」
オレが状況の理解に追い付く間に七海課長は背後に回り込むと、脳への血流を止める完璧なチョークをかけてきた。オレは絞められてから2秒でホールドする。
「コレに持っていければ良いんだけどな」
「い、今のって――」
「師範の奥の手だ。最近教えてもらった」
「『神島』から唯一盗んだ技だ。少しアレンジしてあるけどね」
オレらの様子を見守るシモンさんは七海課長の使った技に満足しているご様子。
「私は『崩し』と呼んでいる。少しばかりセンスが必要だが、条件が揃えば誰にでもできるし、どんな巨体でも座らせる事ができる」
「そんで、このまま背後から締めるのが鉄板だな」
七海課長は座るオレの前に、ストンと同じ様に座った。
「オラ、手を出して来い」
少し道着が崩れて七海課長の谷間が見えそうになっている。て言うかスポーツブラが少し見えてたりする……
「あの……課長――」
と、少し伸ばしたオレの手を七海課長は掴むと引き寄せる。そのまま後ろに倒れる様に首と脇を両足で挟んだ。流れる様な三角絞め。
「うげ?!」
「まぁ、こんな簡単には行かないけどな」
ギリギリと締め付けられる。全く身動きが取れねぇ……なんやかんやで良い匂いもするし……あぁ……お花畑が……
「おっと悪ぃ」
七海課長はオレが白目を向いていた様子に、ぱっ、とホールドを解く。オレは、くはー、くはー、と全身を使って脳に酸素を送る。
「お前からも何か仕掛けてこい。サンボやってんだろ?」
「サンボは投げ技主体ですけど……くはー」
「投げた後の押さえ技はくらいはあんだろ? ほれ、かけてみろよ」
「でもオレは素人同然ですよ?」
「いいんだよ別に。咄嗟にやられると反応が遅れるかもしんねぇから、意識に入れておくだけだ」
と、七海課長はペタンと仰向けになる。緩んだ道着も相まってちょっとエッチな感じ……くっ! 耐えろオレのオレ! これは練習……これは練習……イキリ立つと社会的にも物理的にも永遠の別れとなるぞい!
「それじゃ……」
オレは脳にジジィのインストールを完了し、悟りの境地を維持しつつ七海課長へ手を――
「お前……何やってんだ?」
出そうとしたところで、背後からここにいるハズの無い声が聞こえる。
あれれー? おかしいぞぉー、リンカは脳内インストールしていないハズなのに声が聞こえるぞー、おっかしいなぁー。
「お帰り、リョウ」
「ただいま。お疲れ様です、ケイさん」
「おう。隣のヤツはお前と同じ学校のヤツか?」
「はい。後輩です。鮫島、彼女は七海恵さん。オレの姉弟子だ」
「そうなんですか」
オレは振り向けず汗がだらだら。幻聴ではない事を認識させるリンカの視線が背中に突き刺さる。
「で、お前は何をやろうとしてたんだ?」
オレの耳元でリンカは囁く。横目で彼女を見ると……笑ってる。でも眼は全く笑ってない。
「……ふぅ」
オレは立ち上がると自然な動きで道場の出口へ歩き、
「待てぇい!!」
「ダッシュ!」
「ノーランド! GO!」
「ばうー!」
「くそぅ! またお前か!!」
逃げ出した所を、リンカの掛け声で飛びかかった大型犬に覆い被さられて身動きを封じられた。じたばた。
「だっはっは! お前の後輩おもしれぇな」
そんなオレらの様子に七海課長は爆笑していた。
正直な所、七海課長を侮っていた。
天月さんの超人的な身体能力は周知の情報。それだけでも、七海課長ではいろんな面で勝てないと思っていたが……それは素人眼だった。
「七海課長なら立ったままでも勝てそうですけど……」
少し案山子になってわかったが七海課長も十分に常人の枠から飛び出した身体能力を持つ。天月さんはスポーツマンなので、部は七海課長にあるだろう。
「あれは来ない、これは来ない、って考えが許されるのはガキまでだ。あらゆる状況を想定して出来るだけ対処しておくのが大人だろうが」
七海課長は大人だからこそ備える事の出来る範囲は広い事を語る。
「まぁ、お前が嫌なら止めとくぜ」
「課長命令使ってましたよね……?」
「細かいことを振り返すな。まぁ、強要はパワハラになるからな。俺もそこまでお前にやれとは言わねぇよ」
後頭部を掻きながら七海課長は諦める。うーん……うむ。
「いいですよ。付き合います」
オレは乱暴な物言いでも真摯で部下の事を考えてくれている七海課長の心意気に手を貸したいと思った。
「急に手の平を返したな。俺と密着できるチャンスとでも思ったか?」
ニヤニヤしながら七海課長が言う。それもちょっとあるかも……
「い、いえ! そんなことは――」
「フッ。わかってるよ。お前はそんなヤツじゃないしな」
と、七海課長はオレの肩に、ぽん、と手を置く。
「シオリからお前の事は色々と聞いてる。まぁ、アイツが一方的に話してばかりなんだがな――」
ペタン。とオレはいつの間にか足を払われて尻から座っていた。いや、座らされた。これは――
「よっ」
オレが状況の理解に追い付く間に七海課長は背後に回り込むと、脳への血流を止める完璧なチョークをかけてきた。オレは絞められてから2秒でホールドする。
「コレに持っていければ良いんだけどな」
「い、今のって――」
「師範の奥の手だ。最近教えてもらった」
「『神島』から唯一盗んだ技だ。少しアレンジしてあるけどね」
オレらの様子を見守るシモンさんは七海課長の使った技に満足しているご様子。
「私は『崩し』と呼んでいる。少しばかりセンスが必要だが、条件が揃えば誰にでもできるし、どんな巨体でも座らせる事ができる」
「そんで、このまま背後から締めるのが鉄板だな」
七海課長は座るオレの前に、ストンと同じ様に座った。
「オラ、手を出して来い」
少し道着が崩れて七海課長の谷間が見えそうになっている。て言うかスポーツブラが少し見えてたりする……
「あの……課長――」
と、少し伸ばしたオレの手を七海課長は掴むと引き寄せる。そのまま後ろに倒れる様に首と脇を両足で挟んだ。流れる様な三角絞め。
「うげ?!」
「まぁ、こんな簡単には行かないけどな」
ギリギリと締め付けられる。全く身動きが取れねぇ……なんやかんやで良い匂いもするし……あぁ……お花畑が……
「おっと悪ぃ」
七海課長はオレが白目を向いていた様子に、ぱっ、とホールドを解く。オレは、くはー、くはー、と全身を使って脳に酸素を送る。
「お前からも何か仕掛けてこい。サンボやってんだろ?」
「サンボは投げ技主体ですけど……くはー」
「投げた後の押さえ技はくらいはあんだろ? ほれ、かけてみろよ」
「でもオレは素人同然ですよ?」
「いいんだよ別に。咄嗟にやられると反応が遅れるかもしんねぇから、意識に入れておくだけだ」
と、七海課長はペタンと仰向けになる。緩んだ道着も相まってちょっとエッチな感じ……くっ! 耐えろオレのオレ! これは練習……これは練習……イキリ立つと社会的にも物理的にも永遠の別れとなるぞい!
「それじゃ……」
オレは脳にジジィのインストールを完了し、悟りの境地を維持しつつ七海課長へ手を――
「お前……何やってんだ?」
出そうとしたところで、背後からここにいるハズの無い声が聞こえる。
あれれー? おかしいぞぉー、リンカは脳内インストールしていないハズなのに声が聞こえるぞー、おっかしいなぁー。
「お帰り、リョウ」
「ただいま。お疲れ様です、ケイさん」
「おう。隣のヤツはお前と同じ学校のヤツか?」
「はい。後輩です。鮫島、彼女は七海恵さん。オレの姉弟子だ」
「そうなんですか」
オレは振り向けず汗がだらだら。幻聴ではない事を認識させるリンカの視線が背中に突き刺さる。
「で、お前は何をやろうとしてたんだ?」
オレの耳元でリンカは囁く。横目で彼女を見ると……笑ってる。でも眼は全く笑ってない。
「……ふぅ」
オレは立ち上がると自然な動きで道場の出口へ歩き、
「待てぇい!!」
「ダッシュ!」
「ノーランド! GO!」
「ばうー!」
「くそぅ! またお前か!!」
逃げ出した所を、リンカの掛け声で飛びかかった大型犬に覆い被さられて身動きを封じられた。じたばた。
「だっはっは! お前の後輩おもしれぇな」
そんなオレらの様子に七海課長は爆笑していた。
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