懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

文字の大きさ
181 / 701

第180話 ヒカリ、覚醒

しおりを挟む
「あ! それオレのアイテムボックス!」
「ストリーム狙って後ろをついてくるのが悪い」
「しかも、三連赤って……使う気ないでしょ!?」
「ふふーん。どうかなー」
「ぐぁ!? ぶつかった!」
「はい三位ー」

 ピュキィン!

「はっ!?」
「どうした? 八位」
「いや……順位はね。今、この地球上のどこかで……とんでもない戦いが始まった気がする」
「…………いや、普通にどっかで誰か戦ってるだろ」
「それもそっか。そう言えば、リンカちゃん。新コース出たって知ってる?」

 ケンゴとリンカの休日は夕方までマ○カーで潰れていた。





 良かった……
 ヒカリはダイキがサウナ室から出て行った様子に安堵していた。

 あれ以上隣に居たらわたしの心臓が炸裂していた!

 細身でも引き締まったダイキの身体はやはり男の子であると認識させられる。
 歳の近い異性の隣に半裸で座る。その行為でさえ、心臓が口から出そうになるのに、更に胸元を晒すなど……炸裂寸前だった。

 先にダイキが限界を迎えた様子で出て行ってくれたおかげで心臓の高ぶりは平時にまで落ち込んでいる。

「フッ。君はどこまで俺について来れるかな? このサウナマスターと称えられる国尾にね」
「なによ……サウナマスターって」

 ただサウナに入るだけでしょ。と言う所までツッコミを入れる体力さえも惜しい。

「わかってないね。それも当然か。経験とは知識であり、鍛練であり、戦闘力のようなモノ。多くのサウナを経験してきた俺に一日の長があると言うことさ」
「……何を言ってんのよ」
「まぁ聞きな。俺はいつも考えていた。生物としての限界……それを超える為にはどうすればいいのか、とね」
「……」

 ヒカリは、半分ほど聞き流して暑さを意識しない様にする。

「そして俺は見つけたよ。究極の形……俺の中にある“愛”。これを自らの体力に変換する」
「――なん……ですって?」

 暑さで思考をやられ始めたヒカリは幻覚の様に現れた国尾の頭の上の数値を見て驚愕する。

国尾HP850/900→860/900(愛を変換)

 彼は……嘘を……ついていない!? そして、体力が回復している!?

「今の君に解るハズだ。俺と言う存在の高さを。そして、誰に挑んだのかをね」

 ただのホモではなかった。いや、ただのホモで在りなさいよ。なんで人間超えてんのよ……

不公平アンフェアかと思うかい? いいや、公平フェアだね。君は最初から負けてたんだ。この国尾の土俵に入った時点でね。これ以上、辛い思いをする事はない。今すぐここから出て服を着るんだ。ダイキ君は俺が導いておく」
「ふふ……あっはは」

 ヒカリは笑うと、バサッと前髪をたくしあげて国尾を見る。

「言ったでしょ? わたしは負けず嫌いなの。あんたが、サウナマスターでも愛を体力に変換しようが関係ない。わたしは……谷高光だ!」

 熱さで何を言っているのか解らなくなっているヒカリであるが、その闘志は全く折れる気配がない。その様に国尾は、

「君は知る時期だ。自分のいる所がいかに小さな水溜まりだったと言うことを!」





 国尾が愛を体力に変換すると言うのならヒカリにも同じような勝算はあった。
 ポカリの一気飲み。あれによって体内には必要以上の水分が蓄えられている。故にまだ、舞えるのだ!

 ヒカリ水分600/500(100はポカリ超過分)

「なるほど……確かに君はポカリをイッキしていたね。この状況を読んでの行動だとしたら称賛を与えよう」

 国尾HP800/900

「けど相手が悪かったね」

 国尾HP800/900→880/900(愛を変換)

「くっ!」

 ヒカリ水分550/500(50はポカリ超過分)

 この人、化け物か!? しかし、この体格に筋肉量を考えれば同じ時間の消耗度合いはあちらが多い。
 こっちは暑さを意識せず消耗を抑えれば――

「勝機はある!」
「フッ。今までも君のような戦士は居たよ。しかし、誰もが俺よりも先にサウナを後にした。この意味がわかるかい? 俺はサウナマスターと名乗るのではなく称えられている・・・・・・・のだよ」

 国尾HP800/900→850/900(愛を変換)
 ヒカリ水分500/500

 超過分ストックが無くなったか……しかし、読み通り消耗はあちらの方が大きい。愛が尽きれば……先にわたしが勝てる!

「ほっほう……俺は大人気なかったようだ、谷高ちゃん。改めて詫びよう。そして、教えよう。俺の愛の総量をね」

 国尾愛∞

「――なんだ……と……」

 ヒカリ水分350/500

 授業と漫画以外で眼にするその数値に動揺しヒカリは一気に水分を消費してしまった。
 しまった! くっ! これ以上、相手に流されるな!

 心を強く保て。父の言葉を思い出し、それ以上の消耗は何とか止める。

 ヒカリ水分320/500

「ほっほほ。闘志は折れず……か。中々、楽しませてくれるね。しかし、これは無意味な戦いだと気づいた方が良い」

 国尾HP800/900→890/900(愛を変換)

「俺には勝てないよ?」
「……」

 会話さえもままならない。無駄な思考を削ぎ、意識も精神も全てを無として周囲に溶け込ませる。

「ほっ……」
「――」

 極限の今だから分かる。心臓を中心にゆっくりと全身を把握していく。世界を知り、そこに自分が居ると知り、その境界線が少しずつ解けて行く――

「……ふっ。そうか……谷高ちゃん。君も――」

“国尾。お前は己に囚われ過ぎている。自分をコントロール出来ない奴はいつか手痛い敗北を知る事になるぞ”

 ソレは国尾が記憶する唯一の敗北。上司との戦いサウナで負けを認め、退室する際に背中に受けた言葉だった。

「課長と同じ到達者か!」

 国尾はヒカリが目の前で覚醒した様を目の当たりにして、わっ! と笑った。

 国尾HP750/900
 ヒカリ水分310/500

「――勝負はここからよ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

処理中です...