懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第192話 カントリー・イン

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「なんだ? なんだ?」

 喫煙所からトイレへ向かった残りの面子も、ナンパ三人衆と仮屋殿が警察に連れて行かれる場面に驚いていた。

「鳳。何があったんだ?」

 田中が寄ってくる。
 真鍋課長、七海課長、鬼灯先輩、箕輪さんが警察に事情を説明し、他の面子は金田さんに挨拶しながらバスへ帰還。

「田中、佐藤にも言っとけ」
「何を?」

 オレは轟先輩と社長を見る。

「轟先輩は狙うな」
「轟さんと黒船社長ってデキてたのか?」
「付き合ってるって話は聞かないけどな」

 二人は社長と秘書と言う関係にしては距離が相当近い。あれで付き合ってないのか?

「終わった様ですな」
「ヨシ君……今までどこに?」

 店の中から現れたヨシ君。その後ろからパイルダーオンした国尾姉弟がのそり。

「表を映す監視カメラの前を塞いでいたのですぞ。社長の指示で」

 ヨシ君は鬼灯先輩のグループLINE経由で届いたメッセージを見せる。カメラよろしく、と社長のモノがあった。どうやら、国尾さんの身体と、肩に乗った樹さんによって物理的にカメラを塞いでいたらしい。

「中々にハードな事があったようだね! 是非とも観てみたかったが、どうせまた機会はあるだろう! 私はその時を待つことにするよ! なぁ! 田中君!」
「俺に同意を求めないでくださいよ……」
「鳳。お前らも気を付けろよ」

 と、国尾さんが言う。意外と全体を見ている様だ。中々に頼もしい言葉を頂いた。

「何かあったら、俺が護ってやるからな!」
「ははは……なるべく手間をかけない様に致します……」

 尻狙いは変わらないらしい。

「遠慮すんな! ほっほう!」
「さぁ! 尿意を解消したな、諸君! バスに戻るぞ!」

 鬼灯先輩達の事情聴取はまだ時間がかかりそうなので先にバスへ。ふと、視界の端に轟先輩と社長の姿が映る。





「大丈夫かね? 甘奈君」
「だ、大丈夫でしゅ! です!」

 轟は立ち上がると、ふんす、と腕を上げて見せた。

「ふっはっは! それは残念だ! 君が立てないのなら、抱えてあげるつもりだったのだがね! 実に残念だ!」
「え……あ……その……」
「それでは行こうか! 安心したまえ! 二度と君が恐い思いをすることはないと誓おう!」
「えっと……えっと! せ、正十郎さん……」

 轟は黒船のアロハの袖を掴み、ぼそりと言う。

「ありがとう……ございます」
「え? やっぱり歩けないと? 仕方ないね!」
「わっ! 違っ――」

 ふわり、と体重を感じさせない様子で黒船は轟を抱える。お姫様だっこで。

「行くよ!」
「え……あ……うん……はい……お願いしましゅ」

 真っ赤になった顔を両手で隠す轟は、満更でもない様子でそう言う。他の注目も浴びているが、当人はそんな事を考えている暇はない。

「持ち帰りか? 式には呼べよ」
「ふふ。嬉しそうね、甘奈」

 その様子を見ていた七海と鬼灯は笑う。顔を隠した轟は更に顔を朱くして、しゅーと湯気を出した。





 バスは山の中に入り、その先にある高原地帯に設けられた牧場施設の駐車場で止まった。

『滝沢カントリー』。
 それが次なる目的地だった。動物との触れ合いや、乗馬などが出来、牛の乳絞りなどの体験も出来る様だ。休日と言う事もあり、観光バスも多く止まっている。

「諸君、昼はここだ! 次の出発は17時を目安としておいてくれたまえ! レッツ! アニマル!」
「施設のパンフレットです。皆さん、時間に気をつけてくださいね」

 社長の言葉とバスから降りる面々に施設のパンフレットを轟先輩から手渡された。

「佐藤先輩! 牛乳ソフトクリームが美味しそうッス!」
「飲食施設までここからだと結構距離があるな」
「走るッス!」
「岩戸……どんだけ元気なんだお前は」
「姉貴、先にプロテインの補充をせねば」
「おお、そろそろだったな、マサ。飯から行こうか! 私が奢るよ!」
「遠慮しないッスよ?」
「死ぬほど食べたまえ! 田中君も行こう!」
「なんか、いつもの面子と変わらないですね……」
「良いねー、先に何か食べに行くならアタシらも同席しちゃおうかなー」
「全然オーケーですよ、茨木さん」
「ほら、加賀君も」
「先に飯ですか、姫さん」

 時間的には昼には少し早いが、佐藤、岩戸さん、樹さん、国尾さん、田中、カズ先輩、姫さん、加賀は食事を済ませてから施設を回る様だ。

「アニマルフレンドコーナー……」
「あら、ケイ。気になるの?」
「……先に飯から行くか」
「足は徒歩しか無いのかしら?」
「向こうに馬車がある。定員は四人までらしいが」
「それなら、私も相席良いですかー?」

 七海課長、鬼灯先輩、真鍋課長、泉は普段は見ることさえも無い馬車の移動を楽しむ様だ。

「錬治、アニマルカフェがあるぞ。行こう」
「お前も好きだねぇ~」

 箕輪夫妻は動物と戯れられつつ飲食が出来る所を選んでいた。

「さてと、馬に行こうかな」
「ほっほ。社長は豪気なお方ですな」
「ここまで来たら乗っておかなければね! 行こう! ヨシ君! 甘奈君と鮫島君も!」
「鳳殿が乗馬の経験がある様ですぞ」
「そうなのかい? 鳳君も行こう! ウエスタンをやろう!」
「いいですよ」
「馬かぁ……乗るのは始めてかも……」
「日本に居たら中々乗る機会はないよね」

 社長、ヨシ君、轟先輩、オレ、リンカのパーティーの最初の目的地は乗馬だ。

 オレ達は犬と猫のような一般的な動物以外との接点は皆無な都会人である。
 人工物の少ない環境にテンションが上がるのは人類の中に流れる自然への帰巣本能故なのだろうか……

「そう言えば、ダイヤさんの実家もこんな感じなのか?」

 リンカが本場の牧場経験者(銃撃も含む)であるオレに尋ねてくる。

「そうだね。流石に『滝沢カントリー』の方が敷地は広いけど」
「ダイヤさんの実家も馬や牛が沢山居たよ」
「私は全部乗ってみたけどね! やはり馬が一番良い! 牛は駄目だ! 犬は乗れない!」
「お二方も行ったんですか」
「一度、ご挨拶にね」

 社長と轟先輩は、ダイヤの実家にも顔を出した様だ。それにしても……社長、牛に乗ったんですか……

「ダイヤさん、元気してるかな」
「アイツはいつも元気だよ」

 リンカはアメリカ娘の事を思い出す様に空を見上げる。今頃は、シスターズかマックス達とワイワイやってるだろう。
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