懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第193話 ジャパン・ラブ・クラブ

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 その集会はある牧場で行われた。

 銀髪のロシア系アメリカ人――クラウザー。
 青眼に刈り上げた金髪のショートドレッドのアメリカ人――マックス。
 物静かな細目に褐色の大陸系アメリカ人――ヴェイグ。

 彼らは海外支部のオープニングメンバー。本日は休日を利用して同僚の牧場を手伝いに訪れていた。

「揃ったな」
「ああ。時間通りや」
「始めよう……」
「……」

 重々しい雰囲気の中、晴天の下に外に机と椅子を用意し、円卓の会合さながらに全員が神妙な面持ちだった。
 周囲を、モー、と牛が徘徊し、若い者達は乗馬を楽しんでいる。

「第二回。ジャパン・ラブ・クラブによる、情報交換会や!」

 マックスの言葉を皮切りに全員が拍手で始める。





「まずは私だ」

 手を上げたのはクラウザー。彼は海外支部のチーフであり、その威厳はマフィアにも劣らない。

「日本にはシンセングミと言う精鋭のサムラーイ集団が居ると言う。しかしだな……最近YouTubeで日本のニュースを見れる様になったんだが……シンセングミどころかサムラーイの姿が全く無い。彼らは一体どこにいるんだ?」

 真剣なクラウザーの質問に他の二人も神妙な面持ちで考える。

「確かに……日本に行ったときは和服の者も殆んど見なかった」

 ヴェイグも数年前だが観光でマックスと一緒に日本へ行った事があった。

「俺もや。最近、仕入れた情報は偽物やったからな。もしかしたら架空の存在なんとちゃうか?」
「いや、映画や文化資料を見る限り、創作とは考えづらい」

 ふむぅ……と三人は腕を組んでその謎に頭を捻らせる。

「そのクエスチョン。ワタシがアンサーするネ」

 その時を声を上げたのは、純血日本人であるケンゴと三年間同棲し、数週間前には日本へ行った、場の面子では最も最新の情報を握る女――ダイヤ・フォスターだった。
 彼女は両肘をテーブルに乗せ、台形に組んだ手の甲に顎を乗せていた。

「ジャパンの事なら何でも知ってるヨー!」

 会社の中で最新の日本へ足を踏み入れたのは彼女だけ。三人は息をのむ。

「シンセングミとサムラーイは、キョートのムービームラって所にホームしてるヨ! だから普段はアナライズできないのサ!」

 ダイヤはケンゴから、新撰組? 映画村に行けば会えるぞ、と聞いており自信満々な答えに三人は各々の疑問が一気に解決する。

「そ、そうだったのか」
「活動範囲とサムラーイしか住めない集落があるのか……」
「それなら納得やな!」

 ツッコミ役と正しい答えを持つ者が不在の集会だった。





「次は俺だ」

 ヴェイグが手を上げる。

「全員、日本食についてどう思う?」
「そうやな。ケンゴが送ってくれたカレーは普通に辛さも控えめで旨かったで」
「ああ。ラーメンも中々美味で家族にも好評だった」

 マックスとクラウザーは、帰国したケンゴから送られて来た日本の日持ちするお歳暮を思い出して語る。

「待ってくれ、二人とも。二人の食べ物は他国の料理を日本風に改造したものだ。それは日本食とは言えない」
「ヴェイグ、何が言いたい?」

 クラウザーは話の主旨を問う。

「単刀直入に言う。この中でナットーを食した者はいるか?」

 場に電撃が走る。

「ナットー……あれは映像でしか見たことがないな」
「そもそもナットーって食べ物なんか? どうやって食うんや……?」
「フッフッフ……キャンディーよりも甘いヨ、ミンナ」

 すると、またしてもダイヤが声を上げる。

「ワタシは! サマーベジタブルと一緒にナットーを食べられるネ!」

 ダイヤは坂東スペシャル――夏野菜納豆サラダうどんを食べている自撮写真をその場の面子に証拠として提出した。隣には苦戦するように食べるケンゴの姿も写っている。

「! なんだと!」
「ナットーだけではなく野菜と共に!?」
「なんて女や!」

 彼らの中で、納豆を食える=凄い、と言う方程式は普通に成り立つらしい。





「最後は俺や」

 最後にマックスが手を上げる。

「ケンゴが居るときにな。サンボの参考になると思ってYouTubeでカラーテの試合を見たんや。そしたら、アイツら何もない所に向かって、オス! とか言ってんねん。アレってなんやねん」
「オス? そもそも“オス!”とはなんだ?」
「謎の習慣だな」
「ニックスが隣に居たのなら、アイツに聞いたのか?」
「聞いたで。けどな“オレもわかんね”って言いよったわ」

 日本人のケンゴすら分からない日本の現象に三人は考察を重ねる。

「……ジャパンは仏教が根強く残る国家と聞く。テンノーも健在で、潜在意識に何かしら刷り込まれているのでは?」
「凄まじい闇を暴いてる気がしてきたで……」
「それか、彼らにしか見えないモノがいるとか」
「やめてやヴェイグ。俺はお前と違ってシャーマンの側面はないんや」
「一気に寒気のする話題になってきたな」

 日本にはヤナギの下に立つゴーストが日常で現れると彼らは映画で知っている。得体の知れない日本人の習慣に鳥肌を感じていると、

「その質問、ワタシがアンサーヨ」

 ダイヤが静かに口を開く。

「ソレがジャパンスピリット! ジャパニーズはあらゆるモノに感謝するネ! そのハートが形となって、彼らは何もない空間に“オス!”するのサ!」
「な……なんと言う崇高なスピリットだジャパニーズ!」
「まさか……儀式だけでなく、日常的にも自然崇拝の概念が!?」
「やるやんけ! ジャパン!」

 微妙に間違った情報であるが、彼らは納得しているので誰も口を挟まなかった。

 その後はダイヤの日本遠征話が入り、ケンゴとの関係とリンカ、ヒカリとの関わりに一花咲かせた。

「お姉様ー、そろそろ休憩も終わりですよー!」

 運動音痴なリンクに乗馬を教えていたサンは、ダイヤ達へ声をかける。

「もう時間ネ」
「今回も有意義な会合だったな」
「次はスカイプでニックスも交えるか」
「それええな。リアルタイムで整合性が取れるやん」

 三人は立ち上がろうとすると、全員椅子からコントの様に一斉に転げ落ちた。

「ぐあ!?」
「な、なんや……これは……」
「あ、足が……」
「なんか動かせないヨ……」
「お姉様!? 大丈夫ですか!?」

 サンが慌てて駆け寄る。

「足、足が……」
「足!? お姉様、どこか怪我を?!」
「アー! サン、触らないデー!」

 と騒ぎ立てる五人の様子をハルサに乗ったミストは視界に移す。

「なんで椅子の上で正座なんてしてたんだろ?」

 足が痺れて悶える大人四人に、変なの、と頭をかしげた。





「そう言えば、ダイヤ」
「ンー?」
「ニンジャ居ったんやろ? YouTubeでもニュースになっとったで」
「……マックス」
「な、なんや? そんなに殺気立って……」
「アレはゴキブリと同じヨ。サーチ&デストロイネ」
「お、おう……」

 この話題は触れるべきではないとマックスは胸にしまった。
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