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第197話 魔王カンナー
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第二厩舎のある区画は、主に馬を主体とした設備が多々存在している。
障害物競技や、全力で走るトラックが配置され、騎手と共に縦横無尽に動き回る馬達の本領を体験出来る場であった。
そして、休憩所となる平屋にはバイキング式の食堂とお土産コーナーも設けられ、発送も出来るように充実している。
「おー、すげ」
壮観な馬の為のフィールドを見てそんな声が出る。
オレとリンカを乗せて、心行くままに駆けたタローは、第二厩舎の区画が好きな様だった。
本来は一度厩舎に寄らなければならない所を、障害物のトラックに寄ったりして、他の客に少し驚かれる。ついでに2人乗りは珍しいのか、少し注目を浴びた。
「ちょっと! ちょっと! 困りますよ!」
第二厩舎の職員さんがオレらを見つけて慌てて走ってくる。
「って、タロー? お前、厩舎から出たのか?」
どうやら、タローが外に居るのは相当な偉業であるらしい。
「あ、すみません。だいぶ走りたかったみたいでして……」
「乗馬の移動は特定の道だけなんです。一旦、降りてもらえますか?」
「あ、はい」
職員さんが気を利かせて台を持ってきてくれて、リンカが降りてオレも降りる。
他のお客さんに迷惑や怪我の可能性から、乗馬による移動は決められた範囲だけらしい。
「タロー、ありがとね」
リンカが首を撫でながらお礼を言うと、タローも頭をすり寄せて満足した事を伝えていた。
「全く、何にびびってたんだかね」
「ブルル……」
と、オレには鼻を鳴らすだけの挨拶で済ませると職員さんと共にとことこと歩いていく。
早々に優劣をつけやがりましたね、タローさん。せめて眼を合わせろい!
「……」
職員さんに連れられて厩舎へ休みに向かうタローをリンカは名残惜しそうに手をふる。
「食事をしたら、タローで競技のトラックに入ってみる?」
「でも、タローは疲れてると思う……」
「乗ってわかったけど、多分タローは競技馬だよ。加速や停止の仕方が安定してたし、息もあんまり切れてなかった。あれくらいじゃまだまだ疲れてないと思う」
競走馬とは違って速さよりも騎手の手合いを読み取り、呼吸を合わせる様に意識している印象を感じた。
「そうか。じゃあ、乗り方教えてくれ。一人で乗ってみたい」
「いいよー」
リンカも馬にハマってしまったか。確かに、ここを目指す際に駆けたタローとの一体感は車や自転車では到底真似出来ないだろう。
オレとしても今回を機にそれを存分に堪能させてあげたい。
「おおーい、色々やる前に食事にしようか!」
すると、到着した社長達も各々馬を要する乗り物から降りていた。
オレたちは他の客と共に平屋へ入る。
「はぁ……全くよ」
第二厩舎の区画に、別の区画から馬車でやってきた短髪の男は馬と触れあう客達で賑わう様を見て嘆息を吐く。
「お遊びの範疇が抜けねぇ施設ばっかじゃねぇか。親父の古臭さは心底がっかりするぜ」
短髪の男は馬車から降りると、引き縄を持っていた職員に告げる。
「おい、競技トラックに馬を走らせろ」
「え? 馬の状態も確認しなければ……それに、走らせるには騎手も……」
「馬に乗れるヤツなら誰でも良いんだよ。とにかく、絶えず馬を入れろ。トラックを空にするな」
その言葉の圧力に職員は、馬車の移動を他の者に任せると上司の元へ走って行った。
「ったくよ」
この牧場の動物は全部道具。客は金を落とすだけのマネキンだ。
「誰のおかげでお前らの給料と家畜どもの餌代が賄えてると思ってんだ」
と、短髪の男はイヤホンマイクを耳につけると、どこかと話を始めた。
「リンカちゃん、リンカちゃん」
「なんだ? ……」
オレは食堂のある平屋のお土産コーナーのあった、猫耳ヘアバンドを反射的に買ってしまった。
「……猫耳をどうするつもりだよ?」
「え? 着けて」
「断る!」
「他の人も皆、着けてるから恥ずかしくないって」
回りのお客さんを見ると、猫耳を着けて楽しそうにしていた。(主に児童)
「ふざけた事抜かすんじゃねぇよ」
「凄く似合うと思うんどけどなー」
「うるさい……」
「前の時は稲妻が走ったし」
「黙れ……」
「いや、ほんと、ホントにさ。着けてくれない? 絶対可愛いから。命をかけてても良い。保証する」
「…………いい加減にしろよ」
少し考える間が生まれてるから、もう少し褒めれば着けてくれそう。
「おお! いいよぉ! 甘奈君! 凄く懐かしいね!」
と、社長も騒がしい。見ると轟先輩の頭の上に牛の角が乗ってるじゃあーりませんか。
牛の方を買ったんですね社長。
「幻想世界を巡った時の事を思い出すよ!」
「しゃ、社長! 声が大きいです! 変な人だと思われます!」
「あぁ! もう外すのかい!? あの時の君はとても美しかったのに! 今でも同じくらい輝いているけどね!」
「もー! 本当に怒りますよ!?」
牛角バンドを頭から取る轟先輩は頬を膨らませて顔を赤くしていた。
ヨシ君は牛角轟先輩をきっちりシャッターに納める。
「おおおおお!!」
その時、テツが雄叫びを上げた。
オレらを含めて全員が何事かと注目する。外から職員さんも慌ただしく入って来た。
「ま、まさに生き写し、だ! こんな所にいらっしゃったのです、ね! 魔王カンナー殿、下!」
と、何故か轟先輩に片膝で頭を垂れるテツ。その行動に轟先輩は、え? え? と困惑気味だ。
オレも意味わからん。とにかく、
「迷惑になるから立ちなさい」
職員さん達に連行してもらおう。
障害物競技や、全力で走るトラックが配置され、騎手と共に縦横無尽に動き回る馬達の本領を体験出来る場であった。
そして、休憩所となる平屋にはバイキング式の食堂とお土産コーナーも設けられ、発送も出来るように充実している。
「おー、すげ」
壮観な馬の為のフィールドを見てそんな声が出る。
オレとリンカを乗せて、心行くままに駆けたタローは、第二厩舎の区画が好きな様だった。
本来は一度厩舎に寄らなければならない所を、障害物のトラックに寄ったりして、他の客に少し驚かれる。ついでに2人乗りは珍しいのか、少し注目を浴びた。
「ちょっと! ちょっと! 困りますよ!」
第二厩舎の職員さんがオレらを見つけて慌てて走ってくる。
「って、タロー? お前、厩舎から出たのか?」
どうやら、タローが外に居るのは相当な偉業であるらしい。
「あ、すみません。だいぶ走りたかったみたいでして……」
「乗馬の移動は特定の道だけなんです。一旦、降りてもらえますか?」
「あ、はい」
職員さんが気を利かせて台を持ってきてくれて、リンカが降りてオレも降りる。
他のお客さんに迷惑や怪我の可能性から、乗馬による移動は決められた範囲だけらしい。
「タロー、ありがとね」
リンカが首を撫でながらお礼を言うと、タローも頭をすり寄せて満足した事を伝えていた。
「全く、何にびびってたんだかね」
「ブルル……」
と、オレには鼻を鳴らすだけの挨拶で済ませると職員さんと共にとことこと歩いていく。
早々に優劣をつけやがりましたね、タローさん。せめて眼を合わせろい!
「……」
職員さんに連れられて厩舎へ休みに向かうタローをリンカは名残惜しそうに手をふる。
「食事をしたら、タローで競技のトラックに入ってみる?」
「でも、タローは疲れてると思う……」
「乗ってわかったけど、多分タローは競技馬だよ。加速や停止の仕方が安定してたし、息もあんまり切れてなかった。あれくらいじゃまだまだ疲れてないと思う」
競走馬とは違って速さよりも騎手の手合いを読み取り、呼吸を合わせる様に意識している印象を感じた。
「そうか。じゃあ、乗り方教えてくれ。一人で乗ってみたい」
「いいよー」
リンカも馬にハマってしまったか。確かに、ここを目指す際に駆けたタローとの一体感は車や自転車では到底真似出来ないだろう。
オレとしても今回を機にそれを存分に堪能させてあげたい。
「おおーい、色々やる前に食事にしようか!」
すると、到着した社長達も各々馬を要する乗り物から降りていた。
オレたちは他の客と共に平屋へ入る。
「はぁ……全くよ」
第二厩舎の区画に、別の区画から馬車でやってきた短髪の男は馬と触れあう客達で賑わう様を見て嘆息を吐く。
「お遊びの範疇が抜けねぇ施設ばっかじゃねぇか。親父の古臭さは心底がっかりするぜ」
短髪の男は馬車から降りると、引き縄を持っていた職員に告げる。
「おい、競技トラックに馬を走らせろ」
「え? 馬の状態も確認しなければ……それに、走らせるには騎手も……」
「馬に乗れるヤツなら誰でも良いんだよ。とにかく、絶えず馬を入れろ。トラックを空にするな」
その言葉の圧力に職員は、馬車の移動を他の者に任せると上司の元へ走って行った。
「ったくよ」
この牧場の動物は全部道具。客は金を落とすだけのマネキンだ。
「誰のおかげでお前らの給料と家畜どもの餌代が賄えてると思ってんだ」
と、短髪の男はイヤホンマイクを耳につけると、どこかと話を始めた。
「リンカちゃん、リンカちゃん」
「なんだ? ……」
オレは食堂のある平屋のお土産コーナーのあった、猫耳ヘアバンドを反射的に買ってしまった。
「……猫耳をどうするつもりだよ?」
「え? 着けて」
「断る!」
「他の人も皆、着けてるから恥ずかしくないって」
回りのお客さんを見ると、猫耳を着けて楽しそうにしていた。(主に児童)
「ふざけた事抜かすんじゃねぇよ」
「凄く似合うと思うんどけどなー」
「うるさい……」
「前の時は稲妻が走ったし」
「黙れ……」
「いや、ほんと、ホントにさ。着けてくれない? 絶対可愛いから。命をかけてても良い。保証する」
「…………いい加減にしろよ」
少し考える間が生まれてるから、もう少し褒めれば着けてくれそう。
「おお! いいよぉ! 甘奈君! 凄く懐かしいね!」
と、社長も騒がしい。見ると轟先輩の頭の上に牛の角が乗ってるじゃあーりませんか。
牛の方を買ったんですね社長。
「幻想世界を巡った時の事を思い出すよ!」
「しゃ、社長! 声が大きいです! 変な人だと思われます!」
「あぁ! もう外すのかい!? あの時の君はとても美しかったのに! 今でも同じくらい輝いているけどね!」
「もー! 本当に怒りますよ!?」
牛角バンドを頭から取る轟先輩は頬を膨らませて顔を赤くしていた。
ヨシ君は牛角轟先輩をきっちりシャッターに納める。
「おおおおお!!」
その時、テツが雄叫びを上げた。
オレらを含めて全員が何事かと注目する。外から職員さんも慌ただしく入って来た。
「ま、まさに生き写し、だ! こんな所にいらっしゃったのです、ね! 魔王カンナー殿、下!」
と、何故か轟先輩に片膝で頭を垂れるテツ。その行動に轟先輩は、え? え? と困惑気味だ。
オレも意味わからん。とにかく、
「迷惑になるから立ちなさい」
職員さん達に連行してもらおう。
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