懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第202話 障害馬術

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 障害馬術、勝負ルール。
 円形のフィールドに設けられた五つのバーを飛び越える競技である。バーを飛び越える順番は自由だが角度は様々であり、必然と進入ルートは決まってくる。
 バーにはレベル1、レベル2、レベル3の三段階の高さがあり、レベルが上がる毎に高くなり、越える難易度は上がるのだ。
 勝負は最低五回。
 一回目はレベル1、二回目はレベル2、三回目はレベル3と行った具合に進めば進むほど難易度は上がっていく。しかし、四回目はレベル1からになり、勝負の肝は、レベル1、2でどれだけ勝ちを拾えるかと言う所だった。





 一回戦目『高さレベル1』。

「っと、こんなモンか」

 カイは巧みな騎乗を見せ、慣れた様にレベル1をパーフェクトに納める。見ていても鮮やかな手並みは乗り馴れていると言うレベルの上を行く操馬であった。

「お前の番だぜ」

 入れ違いで戻ってくると次はケンゴがスタートした。
 タローは軽快にトラックに入り、一つ目、二つ目とバーを飛び越える。しかし、

「……合わないか」
「くっくっく……」

 三つ目のバーの前でタローは止まった。ケンゴは仕方無しにソレを飛ばして他を先に越えるが、そのまま流れでトラックを出てしまった。

 一回戦の結果。
 カイ……クリア五回。
 ケンゴ……クリア四回。

「あの角度はその駄馬じゃ飛べねぇよ。今さら馬を代えようなんて言うなよ」

 カイは小馬鹿にするようにケンゴを笑う。
 競技馬としてここで走っていたタローを使っていたカイは一度も三つ目のバーを越えたことがなかった事を知っていた。
 
「……お前の番だ。行けよ」
「はっ!」

 鼻で笑うとカイは二回戦目を走り始める。





「一回戦目は負けですね……」

 轟はケンゴとタローが跳べなかった事実は覆らない事に少し不安になる。

「馬は基本的に直進しかしない動物なのだよ。故に障害物は流れで乗り越えるのが最適だ」

 黒船は、その為のルートを知るカイが先行になったのを僥倖と捉えた。しかし、同じ様にルートを取ったケンゴとタローは三つ目を越えられなかった。

「鳳殿は越えられませんでしたな」
「障害物を乗り越えるにはルートの最適を掴むだけでは不可能なのだよ。馬は生き物だ。人間も脳で手足を動かさなければ歩くことはできまい?」

 障害物競技とは、馬と騎手の意思と呼吸を合わせる事で初めて障害物を越える事が可能となる。

「相手は素人ではないにしろ、ミスがないと仮定すると、この敗北は致命的かもね」
「……くっ! 鳳同士!」
「勝ちます」

 皆が不安を心に宿す中、リンカだけは疑わなかった。

「絶対に勝つよ」

 こちらの視線を全く異に返さない程、集中しているケンゴをリンカは見る。

「ふっ! これは失礼! そうだね、彼はやると言ったら結果を残す男だ!」





 二回戦目『高さレベル2』。
 カイは難なく二回戦もパーフェクトで回りきる。安定した完璧な動きは彼の素性を知るケンゴからすれば当然だと認識していた。

“兄は……元々障害馬術の選手だったんです。オリンピックの候補選手にまで選ばれたんですが選考に落ちて以来、しばらく姿を消していました”

 カイの馬術はミクの言っていた事を裏付けるには十分なモノを披露する。素人目にもミスはないと思わせた。

「ほら、行けよ」

 戻ってきたカイの言葉にケンゴはスタートする。タローと共に一つ目、二つ目と跳ぶ。

「――タロー」

 やはり、三つ目で止まった。レベル1よりも、高くなったバーに必然と脚を止めたのである。
 ケンゴはタローの首筋を軽く撫でると仕方無しに四つ目へ向かい跳ぶ。そして、五つ目でまたしてもタローは脚を止めた。

「はっはは! なんだよ、そりゃ! 勝負にならねぇよ!」

 その様にカイは笑う。こんなレベルで息巻いて来たのか、と。
 しかし、そんなカイの嘲笑をケンゴは無視する様に五つ目のバーの前を折り返し何度かトライする。

「……ったく。もういいぜ。ソレOKにしてやるよ」

 と、カイが声を上げた。

「事を円滑に進めるためだ。どうせ、ソレが跳ぼうが跳べまいが、二回戦目もお前の敗けだよ。だから、そのバーはクリア判定でいい」

 対戦者が認め、跳ぶ前なら目の前のバーはクリアにしても良いとの事。カイの提案を聞いていたケンゴだったが、

「……」

 無視をし、後に三回程トライしてタローは五つ目のバーを危なげに越えた。

「俺の集中力を切らそうって作戦かぁ?」

 二回戦の結果。
 カイ……クリア五回。
 ケンゴ……クリア四回。

 既にケンゴの二敗。次を落とせば敗けは確定となる。

「この程度で俺が落ちるかよ。小賢しい事を考えるよりもテメェとガキの今後を考えて置くんだな」

 高笑いするカイはトラックへ。三回戦目が始まる。





 オリンピックの選考に落ちて、荒れていた兄は姿を消した。その数年後に『滝沢カントリー』が経営難に陥り閉鎖まで考えていた時、兄は帰ってきた。
 そして、兄の提案で幾つかの施設を追加した。更に負債のかかる可能性が高かったが、何故か事業は安定し『滝沢カントリー』は持ち直す事が出来たのだ。
 しかし、その裏では――

“あ? そうだよ。馬どもを走らせてソレを賭けにしてる。バレるかよ。顧客は海外だし、俺は映像をリアルタイムで流してるだけだ。収益の一部は俺に入ってくる。その金でここは立ち直ったんだ。馬の世話しか出来ねぇお前は口を挟むんじゃねぇよ”

 しかし……最近はそれだけではないとも気がついた。兄は薬剤を使って勝つ馬の調子を意図的にコントロールしているのだ。
 あの子達を道具としか見ない兄。何頭かは立てなくなり、処理せざる得なくなった事もある。
 しかし、タローだけは兄を背に乗せてトラックを走った時に暴れて兄を落馬させた。今思えば兄が何かするのを察したのだろう。

「ふざけんな! その駄馬を今すぐ処理しろ!」

 健康な馬を処理するには少し横暴だった事と私の必死の説得で厩舎へ引っ込める事で何とかなった。その後、タローは移動馬となり、兄が施設にいる時は厩舎から出てこなくなった。

「――タロー」

 でも、タローは厩舎を出て兄と向き合う事を選んだのだ。なら……私は――

「……お父さん。やっぱりきちんと決断しよう」

 父に連絡を取る。未来ではなく、今を変える為に。
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