懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第326話 ビタミンを取るんだよ

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「ハジメ、今日はありがとうね」
「何て事はありません。いつでもお呼び下さい。力仕事ならいくらでも手を貸せますので」
「ふふ。頼もしいわ」

 烏間は迎えに来た車に乗ると、窓から見送るハジメに笑みと手を振って別れた。
 王城総理が政権から降りたら自分も里に帰ろう。その時に彼らも誘ってみようかしら。きっと親族達とも上手く馴染んでくれると思う。

 そんな事を考えているとスマホが鳴った。プライベート用の物を取り出し着信相手を見ると珍しい人間からだった。

「もしもし」
『イッヒヒ。ミコかい?』
「あらー、スイ先輩。お久しぶりです。長らく連絡がありませんでしたので、お亡くなりになったのかと」

 何度も世話になった大先輩であるが、これくらいの距離感が一番良いのである。

『イッヒヒ。長生きの秘訣を聞きたいかい?』
「ええ是非」
『毎日ミカンを食べな。イッヒヒ。ビタミンを取るんだよ』

 不老不死の食べ物はミカンであるらしい。

「それで、本題は何でしょうか?」
『イッヒヒ。アレはジョーが片付けたんだろ?』

 その言葉に烏間の目付きが変わる。運転手に合図をすると、道の脇に停車し、運転手は外で待機した。

「……ええ。前任者――森総理の再編成された『国選処刑人』は兄によって機能を失いました」
『イッヒヒ。本当かい?』
「正確には隊長とその他数名を排除し、事実上は壊滅させたと」
『イッヒヒ。それは誰からだい?』
「兄から直接」

“くだらねぇ事しやがりやがって。ミコト! お前は税金で飯食ってるだけか!? とっとと森のアホを総理から引きずり降ろせ!”

「私の怠慢と言う事でこっぴどく怒られました」
『イッヒヒ。そいつぁ、気の毒にねぇ』
「生き残った者も居たハズですが、現時点では権限は無く、『国選処刑人』は兄以外にはいないハズです」

 そもそも、そんな動きがあれば隠しきる事は不可能だ。森陣営は事実上解体され、所属していた議員は神島を恐れて全員が辞任している。

『イッヒヒ。こっちの古い友人がね。『古式』を使うヤツを見たらしいのさ』

 『古式』に似た武術はいくらでもある。しかし、ハッキリと『古式』の使い手を見た、と言う発言は無視出来ない情報だ。
 現在……『古式』を使えるのは兄と交えて生き残った天月と大宮司の頭目。そして、白鷺と後は――

「その使い手は若い男でしたか?」
『中年くらいだそうだよ。イッヒヒ』

 烏間はホッと胸を撫で下ろす。ケンゴも兄から直接教わっていたので、ソレを見られたのであれば、迷い無く始末しに出向いていただろう。

「……その『古式』を見たと言う方も気になる所ですが、それは置いておきます」
『イッヒヒ。それどころじゃないって?』
「心当たりがありますので。失礼します」
『急いだ方が良いねぇ。権力は勘違いしたヤツが振り回すと、芋づる式に国は崩壊するよ。イッヒヒ』

 ピッと通話を切ると次は仕事用のスマホを取り出しある議員へかける。

「黒金筆頭」
『どうされました? 烏間顧問』

 黒金陣営の筆頭――黒金真人くろがねまさとへ烏間は事態の確認をする。

「貴方の抱えた、森、元総理の『国選』の残骸は今、何をしているのかしら?」





 アパートの前にハマーが止まった。中々渋いチョイスの車にオレは、ほぅ……と顎に手を当ててかっこよさを感じる。
 すると、ガチャ、と扉が開き、狭そうに二人のマッチョが降りてきた。

 一人は眼鏡をかけた普通のマッチョ。お父さんって感じ。
 もう一人は外国人のマッチョだ。北欧の血が入ってそうな見た目をしている。
 二人とも国尾さんに匹敵する体躯を持つ。

「大見さん」
「国尾くん。君がノされたんだって?」
「お恥ずかしい! しかし、事実から眼を背けるつもりはありませんよ!」
「マッスラーとしての高みへ更に昇りつつあると言うことだね」

 固い握手を交わす。ん? 大見?

「大見さんって陸君のお父さんですか?」
「おや? 君は?」
「あ、鳳健吾と言います」
「大見さん! 彼は俺の後輩でしてね! 部署は違いますが……中々のマッスラーですよ!」
「ほう……」
「前々から思ってたんですけど……マッスラーってなんですか?」

 その質問に二人はキョトンとオレを見る。

「マッスラーはマッスラーだろ?」
「マッスラーはマッスラーだね」
「マッスラーはマッスラーですか……」

 いや、そんな知ってて当たり前だろ? みたいな口調は、広辞苑に載る程に標準化されてからにして欲しい。

「マサヨシ」
「イント」

 すると、今度は外人マッチョが国尾さんの前に出る。ライバル同士が対面したかのような異様な雰囲気が漂う。

「俺の力が必要かい?」
「是非とも」
「フッ……」
「ふっ……」

 何か通じあった様子で二人は笑う。仲の良い事で。

「鳳。彼はイントだ」
「どーも」
「ドーモ」
「しかし、レジェンドの姿が見えないな」
「ああ、レジェンドは――」

 ドッドッドッ! と騒音レベルのエンジン音を響かせて一台のハーレーがアパートの前に止まる。乗っているのは当然、マッチョである。

「来た!」

 マッチョ全員が注目。
 ハーレーマッチョは、エンジンを切り、ヘルメットとゴーグルを着けたままこちらを見ると、スタンドを降ろして車体から降りた。
 そして、ずんずんと歩いてくる。

「マスター」
「レジェンド」

 ゴンッ! と国尾さんとハーレーマッチョは肘と肘をぶつけ合った。その衝撃で発生した風がオレの前髪をふわり。とんでもねぇパワーだぜ。

「君が助けを求めるとは」
「手間をおかけします」
「いや……それ程の相手なのだろう? この身を存分に使わせてもらうよ」
「心強いです」

 腕を振り回すだけで物を壊しそうな四人である。オレなんか一捻りでトランクに畳まれちゃうなぁ。

「こちらの青年は?」
「あ、鳳健吾と申します。えっと……レジェンド?」
「松林でいい、鳳クン。レジェンドでは呼び難くかろう?」

 ま、まともだ! レジェンドまとも!

「それにしても、国尾君。君は更なる次元へ足を踏み入れたようだね」
「おお! 流石レジェンド! わかりますか!」

 オレは全然わかんない。

「しかし、問題はそこからスタートを切れるかだ。筋肉を愛する精進を怠ってはならんよ?」
「無論です」

 あー、レジェンドはちょっと変な人かも。

「中々の人間山脈だね」

 すると、返しの電話を受け取った赤羽さんが通話を終えてその場に帰ってくる。

「こちらもナビが来た」

 赤羽さんはそう言うが、人の姿はどこにもない。オレがキョロキョロしていると。

「上だよ」
「上?」

 赤羽さんがそう言うと黒い羽が舞い、近くの電線に烏が舞い降りる。めっちゃでけぇ。いや……あれって社員旅行の肝試しで見たヤツじゃ……

「彼が案内をする。公道に従って飛ぶそうだから、後を追えば良い」
「……それ、本気で言ってます?」

 グリム童話じゃないんだから。烏がナビとか……赤羽さん、ボケが始まっちゃった?
 すると、国尾さんがオレの右肩をぽん。

「鳳よ。彼の眼は何一つ嘘をついていない」

 と、松林さんがオレの左肩をぽん。

「行ってみようではないか。それで嘘か真か解る事だ」
「は、はぁ……」

 紙細工みたいに捻り潰されそうな圧に負けて、オレは烏のナビにマッチョなパーティーでショウコさんの救出に向かう事となった。

 このマッチョとオレ達はショウコさんの元へたどり着けるのだろうか……
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