懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第377話 アホ面に見えるな

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「うぅ……アタシ、ケイの事。嫌いよ」
「さっきの事はただの冗談だと思うけどね」

 宿題の続きをしながら、ユウヒは先程の七海との接触を思い返し、机に伏す様にぶーたれる。

「見た目はとても綺麗なのに! 中身が全然ダメよ! やっぱり、レディ足るもの! 外と内のどちらかが欠落したらそれはレディでは無いのよ!」

 ユウヒは、ちんちくりん、と言ってくる七海に、ワタシも呼び捨てにするわよ! と言い返すと、別に良いぜ、とニヤニヤしながらを返された。完全に弄ばれている。

「言わんとする事はわかるけど。ケイさんはああいう大人なんだと思うよ」

 強気な口調とSっ気は感じたが、決して悪い人間ではないと言うのがコエから見た七海である。

「そう言う事じゃ無いのよ、コエ! ケイは不良よ! 不良! じっ様と顔を合わせれば間違いなく怒られるわ!」

 ユウヒにだけああいう反応だと思うけどなぁ。とコエは思ったが、変に言うとまたややこしくなりそうなので、姉が気づくまで黙っておく事にする。

「でも、今回の件が終わるまで公民館で生活するワケだし。ある程度の距離感は掴んで置いた方が良いと思うよ」

 七海と獅子堂夫妻はジョージの元へ挨拶に行っていた。一時間もすれば戻るハズなので、それまでに何かしらの対策を考えておかねばならない。

「ゲンさんもヨミさんも良い人だし。後はユウヒ次第だと思うけどね」
「コエは恐いもの無さげでいいなぁ」
「ワタシは、ユウヒが居るから恐くないんだ」

 その言葉にユウヒは、どれだけ環境が変わっても妹からは頼られていると再認識し、誇らしくなる。

「なら、ワタシに任せなさい! ケイの中身をまともなレディにするために! この一週間で、不誠実な中身をてってーてきに正してやるわよ!」

 いつも自分を引っ張ってくれる姉。しかし、何かとアクセルを踏みっぱなしにする癖があるため、ブレーキをかけるのが自分の役目であるとコエは認識している。





「THE、田舎って感じの母屋だな」
「まぁ、田舎だしな」
「築100年は越えてる建物よ」

 それでもしっかりと建っているのは、住む者達が丁寧に管理しているからである。
 七海、ゲン、ヨミの三人は里の長であるジョージの元へ顔を出す為に、彼の住居へやってきた。

「レトリバーか」

 ゲンが路肩にレンタカーを駐車している間に、門をくぐった七海とヨミは扉の前に伏す様に眠っていた、ゴールデンレトリバーの武蔵に視線を向けられる。

「ハハハ」

 武蔵を見て思わず七海は笑う。
 通っている道場の主の所にもゴールデンレトリバーは居るが、アレと比べて随分と面構えが違う。
 愛想なんぞ、切り捨てたような視線。ペットとしてではなく、狩猟犬として本質を限界まで引き出されて育てられた面構えをしていた。

「ノーランドがアホ面に見えるな」

 ていうか、ビジュアルが全く違うな。
 犬一匹でコレか。七海は噂の“神島”との対面が一層楽しみになった。
 すると、その雰囲気を七海から察したのか。武蔵は戦意を纏い、立ち上がる。

「番犬っつうよりも番兵だな」
「おすわり!」

 母屋の中から聞こえてきた声に武蔵は反応すると、その場にペタンと座った。

「武蔵。ウチかじっ様が居る時は、吼える、噛みつく、追う、は殺る前に呼べ言うたじゃろ」

 開放されている戸から、トキが歩いて出てくる。

「なんだ。武蔵いんのか」

 七海側も駐車を終えたゲンがのそりと門をくぐった。

「七海。あんまり刺激するなよ? ジョーの飼い犬三匹は、子犬の頃から育てられて狩猟犬としての本能を呼び起こされた、ガチの戦闘犬だ。全盛期は過ぎてるが、それでも大人くらいは追って仕留めるぞ」
「法律的にソレがセーフなのがやべぇな」

 この母屋の主は狩猟生活でもしているのだろうか。現代社会において、そう言った経験を犬に積ませる事が可能な程に、背後の山には化け物共がひしめき合っているらしい。

「ゲン。よう来た」
「お前はどんどんババァになるなぁ、トキ!」

 旧友でもあるトキとの再会。彼女の性格を知るゲンは先制攻撃をかます。

「言うわい。蝙蝠がトラウマで田舎から出ていった小心者が」
「お前! それは言っちゃならん事だろ!」

 ジジィ、蝙蝠苦手なのかよ。七海はゲンの意外な一面を知る。

「トキ」
「ヨミ」

 眼を合わせるババァーズ。何かを通わせる様に暫し無言。そして、

「よう来たな」
「ええ。貴女も息災のようで」

 何だったんだ? と七海は二人の間にしか伝わらないナニかを流石に感じ取れ無かった。

「トキ、ジョーは居るか?」
「さっきの帰って来たわい。しかし、残念じゃったのぅ。ついさっきまで超絶な和風美人が居ったんじゃが」
「ああ。圭介の娘だろ?」
「今は楓んトコの手伝いをしておる。追々顔を合わせるじゃろ。ちなみにケンちゃんの許嫁じゃ」
「…………は? マジ?」

 その辺りを何も知らなかったゲンは目が点になる。
 七海は会話に完全に置いてけぼりにされたので、武蔵の頭を撫でようとじっと間合いを図っていた。
 武蔵も、おすわりの状態から油断の欠片もなく七海を見る。
 犬の癖に……思った以上にコイツはやりやがる……

「詳しい事はじっ様に聞けや。縁側に居るで」
「そうするわ。七海、挨拶に行くぞ」
「ああ」

 武蔵から視線を外す際に、帰るまでに撫でてやるからな、と不敵な笑みを残してゲンの後に続いた。
 トキとヨミも、今夜何食うー? 猪解体させて。と、母屋の中に去り、武蔵はペタン、と再び伏せて眠った。
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