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第414話 好きって言われたら
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カシャリ、カシャリとお婆さんのシャッターを切る音が室内に響く。
「イッヒッヒ。今度は壁に寄りかかって見ようか」
「こんな感じ?」
「音無さん、構図的にはこうした方が良いし、楽だよ」
プロのモデルであるショウコさんは、被写体に関しては先輩バニーなので、後輩バニーのカレンさんにレクチャーしている。
三人のバニーの中で、一番被写体の経験が無いのがカレンさんだ。ショウコさんとお婆さんに補佐されて探り探りで撮られている。
ポーズは物を持ったシーンと壁に寄りかかったシーンの2パターン。カタログに載せるだけなのでそんなにバリエーションも必要無いのだとか。
ちなみにリンカとショウコさんはバニースーツでの撮影は一通り済ませ、カレンさんが最後である。
「正直……三人も撮る必要があるのか不明だな」
「時期によって変えるらしいよ。同じ写真ばかりじゃマンネリ化するんだってさ」
オレは道具と撮影に使う小道具をカウンターの裏から探していた。
次はメイド服らしい。これまた男の夢の一つだ。欲を言うなら上手いこと説得して猫耳を装備してくれないかなぁ。
「また善からぬ事を企んでるな?」
「そんな事はないよ?」
チャキとたこ焼き返しを取り出すリンカにオレは内心はドキドキだけど真顔で返す。
さっきのおっぱいキャッチの件は、ショウコさんとカレンさんの説得によって、事故として何とか場を収めた。
「……あのさ」
「ん?」
オレはカウンターの下にあると言われている小道具入れを探しながらリンカに受け答えする。
「流雲さん……綺麗だよな」
「モデルさんだからね。今は休業中だけど、リンカちゃんの事は知ってたみたいだよ?」
「そうなのか?」
「最初に雑誌に載った時の撮影ですれ違ったとかで」
「……全然覚えてない」
リンカとしても他の事には眼が入らなかった時期だったのだろう。中学の頃は精神的に塞ぎ込んでた様だし。
「話し掛けなかったらしいからね。さっきは会話した?」
「……いいや」
「ショウコさんはいい人だよ。リンカちゃんも友達になれると思う」
小道具小道具……全然見つからないな。一通り這うように探したが、埃とケーブルの束くらいしか見当たらん。
「……そっちからしたらさ」
「ん?」
「流雲さんって……どう見えてる?」
オレはカウンター下から顔を出す。リンカはカウンターに寄りかかる様にお婆さんの撮影を見ており、その表情はわからない。
「高嶺の花かな。それも雲を突き破る程に高い山のに山頂に咲いてるヤツ」
「……なんだその例え」
「本来ならオレみたいなのは一生お近づきにならない存在ってこと」
結局の所、ショウコさんと関わったのは本当に彼女の気まぐれだ。
事が全て終わった今では、何故オレを選んだのかは問う様な事でないと思っている。
まぁ、真面目ながらも程よく天然なショウコさんの事だ。ダーツを投げた先の的にオレの名前があった程度の選別だったのだろう。
「……でも、流雲さんはお前に好意があるぞ」
「……まぁ、それも何となく察してるよ」
しかし、それはピンチを助けてもらった事による心象でしかない。オレの役割の場所に別の誰かが当てはまってもショウコさんはその人物に好意を抱いていたハズだ。
別にオレが彼女にとっての特別なワケじゃない。
「じゃ、じゃあ! 流雲さんに好きって言われたら……どうするんだ?」
「それは言われたよ」
「い、言われたのか……」
ん? 何故にリンカが落ち込むんだ?
「でも、それって只の吊り橋効果だからね」
「……どういう事?」
「ほら、ショウコさんと同棲した理由ってストーカー被害を何とかする為って言ったでしょ? その件を身体を張って解決したから変に好印象を与えてるだけ」
「…………そんな事あるのか?」
「可能性はゼロじゃないと思うよ。それにもう少ししたらショウコさんも気づくよ。あんなモブに何でときめいてたんだ? ってさ」
それこそ、夢から覚めるみたいに。そうなったら顔を合わせたら挨拶を交わす程度の間柄になるだろう。まぁ、それが本来の関係なんだと思うが、ショウコさんとは良い友達のような関係に落ち着ければ良いと思ってる。
「…………ぃちゃんは格好いいよ」
リンカがボソリと何かを言った。少し聞き取れなかったので聞き返す。
「え? 何? なんて?」
「……お前は格好いいよって言ったんだ」
その言葉にリンカが懐いてくれていた全盛期を思い出す。派手な事をする度に、おにいちゃんカッコいい! っ眼を輝かせてくれたなぁ。
「――――ありがとう。リンカちゃんも可愛いよ」
と、オレがその様に返すのも通例である。
「……他人の胸を両手で掴むヤツの可愛いなんて薄っぺらい」
「うぐぐぐぅぅ!!?」
どうやら、昔のように“おにいちゃん”って呼んで貰うようになるには、もっと好感度が必要らしい。
「今回は知り合いだけだったから良かったけど、知らない人だったら即捕まるぞ」
「……気をつけるよ」
「…………」
「イッヒッヒ。次はメイド服だねぇ」
「あのミニスカのヤツね。ミニスカの意味が全くわからないけど、本来の用途よりもかなり歪曲してるよね。ん? ショウコ、どうしたの?」
ショウコは少し離れたカウンターで、リンカとケンゴが会話をしている様子を少しだけ見て、眼を外す。
「何でもない。次はメイド服か」
そう言ってショウコは衣装室へ向かう。ケンゴと話しているリンカも、カレンに呼ばれて三人で衣装室へ入る。
「イッヒッヒ。今度は壁に寄りかかって見ようか」
「こんな感じ?」
「音無さん、構図的にはこうした方が良いし、楽だよ」
プロのモデルであるショウコさんは、被写体に関しては先輩バニーなので、後輩バニーのカレンさんにレクチャーしている。
三人のバニーの中で、一番被写体の経験が無いのがカレンさんだ。ショウコさんとお婆さんに補佐されて探り探りで撮られている。
ポーズは物を持ったシーンと壁に寄りかかったシーンの2パターン。カタログに載せるだけなのでそんなにバリエーションも必要無いのだとか。
ちなみにリンカとショウコさんはバニースーツでの撮影は一通り済ませ、カレンさんが最後である。
「正直……三人も撮る必要があるのか不明だな」
「時期によって変えるらしいよ。同じ写真ばかりじゃマンネリ化するんだってさ」
オレは道具と撮影に使う小道具をカウンターの裏から探していた。
次はメイド服らしい。これまた男の夢の一つだ。欲を言うなら上手いこと説得して猫耳を装備してくれないかなぁ。
「また善からぬ事を企んでるな?」
「そんな事はないよ?」
チャキとたこ焼き返しを取り出すリンカにオレは内心はドキドキだけど真顔で返す。
さっきのおっぱいキャッチの件は、ショウコさんとカレンさんの説得によって、事故として何とか場を収めた。
「……あのさ」
「ん?」
オレはカウンターの下にあると言われている小道具入れを探しながらリンカに受け答えする。
「流雲さん……綺麗だよな」
「モデルさんだからね。今は休業中だけど、リンカちゃんの事は知ってたみたいだよ?」
「そうなのか?」
「最初に雑誌に載った時の撮影ですれ違ったとかで」
「……全然覚えてない」
リンカとしても他の事には眼が入らなかった時期だったのだろう。中学の頃は精神的に塞ぎ込んでた様だし。
「話し掛けなかったらしいからね。さっきは会話した?」
「……いいや」
「ショウコさんはいい人だよ。リンカちゃんも友達になれると思う」
小道具小道具……全然見つからないな。一通り這うように探したが、埃とケーブルの束くらいしか見当たらん。
「……そっちからしたらさ」
「ん?」
「流雲さんって……どう見えてる?」
オレはカウンター下から顔を出す。リンカはカウンターに寄りかかる様にお婆さんの撮影を見ており、その表情はわからない。
「高嶺の花かな。それも雲を突き破る程に高い山のに山頂に咲いてるヤツ」
「……なんだその例え」
「本来ならオレみたいなのは一生お近づきにならない存在ってこと」
結局の所、ショウコさんと関わったのは本当に彼女の気まぐれだ。
事が全て終わった今では、何故オレを選んだのかは問う様な事でないと思っている。
まぁ、真面目ながらも程よく天然なショウコさんの事だ。ダーツを投げた先の的にオレの名前があった程度の選別だったのだろう。
「……でも、流雲さんはお前に好意があるぞ」
「……まぁ、それも何となく察してるよ」
しかし、それはピンチを助けてもらった事による心象でしかない。オレの役割の場所に別の誰かが当てはまってもショウコさんはその人物に好意を抱いていたハズだ。
別にオレが彼女にとっての特別なワケじゃない。
「じゃ、じゃあ! 流雲さんに好きって言われたら……どうするんだ?」
「それは言われたよ」
「い、言われたのか……」
ん? 何故にリンカが落ち込むんだ?
「でも、それって只の吊り橋効果だからね」
「……どういう事?」
「ほら、ショウコさんと同棲した理由ってストーカー被害を何とかする為って言ったでしょ? その件を身体を張って解決したから変に好印象を与えてるだけ」
「…………そんな事あるのか?」
「可能性はゼロじゃないと思うよ。それにもう少ししたらショウコさんも気づくよ。あんなモブに何でときめいてたんだ? ってさ」
それこそ、夢から覚めるみたいに。そうなったら顔を合わせたら挨拶を交わす程度の間柄になるだろう。まぁ、それが本来の関係なんだと思うが、ショウコさんとは良い友達のような関係に落ち着ければ良いと思ってる。
「…………ぃちゃんは格好いいよ」
リンカがボソリと何かを言った。少し聞き取れなかったので聞き返す。
「え? 何? なんて?」
「……お前は格好いいよって言ったんだ」
その言葉にリンカが懐いてくれていた全盛期を思い出す。派手な事をする度に、おにいちゃんカッコいい! っ眼を輝かせてくれたなぁ。
「――――ありがとう。リンカちゃんも可愛いよ」
と、オレがその様に返すのも通例である。
「……他人の胸を両手で掴むヤツの可愛いなんて薄っぺらい」
「うぐぐぐぅぅ!!?」
どうやら、昔のように“おにいちゃん”って呼んで貰うようになるには、もっと好感度が必要らしい。
「今回は知り合いだけだったから良かったけど、知らない人だったら即捕まるぞ」
「……気をつけるよ」
「…………」
「イッヒッヒ。次はメイド服だねぇ」
「あのミニスカのヤツね。ミニスカの意味が全くわからないけど、本来の用途よりもかなり歪曲してるよね。ん? ショウコ、どうしたの?」
ショウコは少し離れたカウンターで、リンカとケンゴが会話をしている様子を少しだけ見て、眼を外す。
「何でもない。次はメイド服か」
そう言ってショウコは衣装室へ向かう。ケンゴと話しているリンカも、カレンに呼ばれて三人で衣装室へ入る。
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