懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第431話 むっつりもいい加減にしろ!

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「1課の人達は流石ね。七海課長が居なくてもキチンと回っているわ」
「逆ですよ~。居ないからこそ、キチッとしておこうって皆思ってるんです」

 鬼灯先輩が1課のヘルプに行ったのは、課の様子を見る事も考えの一つだったようだ。

「少し緩くて気持ちが浮わついてますけど……詩織先輩が来てくれたおかげで、改めて引き締まりましたから!」

 優しくても、ガッカリさせたくないと思わせる鬼灯先輩の魅力にはオレも共感出来る。
 先輩は優しいし怒らないけど、サボッちゃおーって気にはなれないんだよなぁ……あれ? これってもしかして、自らの魅了チャームをコントロールしてらっしゃる?

「そう言ってくれると、本当に嬉しいわ」
「午後もばりばりに働きますからね!」
「ふふ。無理をし過ぎると七海課長が戻った時にバテちゃうわよ?」

 ま、泉は幸せそうだから良いか。1課全体でも上手く回ってる様だし。
 鬼灯先輩の居ない3課は少し寂しいが、こちらも獅子堂課長が居ない分、皆しっかり動いている。

「前から聞こうと思ってたんですけど、鬼灯先輩って学生時代は凄くモテたんじゃないですか?」
「はぁ? なに言ってんのよ鳳。詩織先輩がモテないワケないじゃない!」

 オメーに聞いてねぇよ。

「ええ。あまり自慢する事では無いけれど」

 本人は控えめに言ってはいるが当時は凄かったんだろうなぁ。

「あぁ、いいなぁ。私も当時に生まれたかったです~。詩織先輩と学生時代を過ごしたかったぁ」
「ふふ。その時に泉さんが居てくれたら、学生時代はもっと楽しかったわね」
「やっぱり、ガードする人とか居たんですか? 鬼灯先輩って凄く魅力を振り撒いてますし」

 当時からこの魅了チャームを放っていたのなら、思春期真っ盛りの男子高校生は黙ってなかっただろう。

「ええ。物静かでとても強い幼馴染みが側に居てくれたの。アルバイトをしてた所のお孫さんだったんだけどね」
「へー」
「初耳です!」

 あまり自分の周りを語らない鬼灯先輩がその辺りを喋ってくれるなんて、少し意外だ。

「どこでアルバイトをしてたんですか?」

 泉のヤツ……ここぞとばかりにぐいぐい行くなぁ。

「ユニコ君の商店街は知ってるかしら?」
「はい。この辺りでは有名なマスコットが居る商店街ですよね」

 あの獣は可能性だらけだ。裏の顔を知ってる身としては、触らぬ神に祟りなし、が存分に当てはまる存在だと思っている。昨日は社長が入ってたし……

「そこにある古い店で『スイレンの雑貨店』と言う所よ」
「雑貨店ですか?」
「…………」

 初耳の泉は質問を続けるが、オレは自分の中で幾つかの点が繋がった気がした。確認の為に聞いてみる。

「あの……鬼灯先輩」
「なに?」
「もしかして、写真を撮られたりしました?」
「――ふふふ。そう。鳳君はスイレンさんの店に行ったのね?」
「まぁ、成り行きですが」
「ちょっとちょっと! 私にも教えてよ!」

 鬼灯先輩の話題になると泉は九官鳥の様にうるさい。蓋をするためにも教えてやるか。

「ちょっと諸事情があって、例の雑貨店に行ったんだ。そこで……まぁ、店主のお婆さんと仲良くなってな。コスプレカタログの前任者の写真を見せてもらった。あれ、高校生時代の鬼灯先輩ですよね?」
「スイレンさんも困ったものね」

 鬼灯先輩はそう言うが、特に困った様子はない。
 今思えば、あの写真の女子高生はどこかで見たことがある気がしていた。そりゃそうだ。成長した本人がすぐ近くに居たんだからさ。

「コ、コスプレ……」
「浴衣とかメイド服とかバニーガールとか……ノリノリな感じでしたよ」
「ええ。凄く楽しくてノリノリだったわ」
「くっ……こうしちゃ居られない!」

 すると泉のヤツは席から勢い良く立ち上がる。

「今日、何としても定時であがって! その雑貨店に行ってきます!」

 見せてもらうつもりか?
 おいおい。小動物が魔女の店にいけば即効で捕まって、あやしい薬の材料にされるぞ。

「泉さん。その店は少し特殊なの。出来るなら付き添いの人が一緒の方が良いわ」

 少し特殊……で済むレベルじゃないからな。あの店は罠だらけで入店者を補食する。

「ぬぅ……詩織先輩の高校生時代を拝むには険しいと言うことか……」
「何なら、陸君と一緒に行くと良いわ」
「えぇ!!? ぼ、僕ですか!?」

 隣に泉が座ってからわかりやすい程に緊張して黙り込んでいた陸君が驚きに声を上げる。

「ええ。一度行っている鳳君よりも、弁護士の陸君の方が良いと思うわ」

 確かに……オレも逆転弁護士ムーヴでお婆さんを丸め込めたから、本物ならばさぞ有効だろう。

「陸! あんたは今日定時!?」
「え、て、定時ですけど……」
「よし。じゃあ終業後にちょっと付き合いなさい。行くわよ……『スイレンの雑貨店』へ!」
「う、うん」

 こうしちゃ居られない! と泉は席を立つと鬼灯先輩に、失礼します! と言って食堂を後にした。少しでも早く仕事を終わらせるつもりなのだろう。

「じゃ、じゃあ僕も行きます……」
「陸君、泉さんの事をよろしくね」
「はい」

 そう言うと陸君も去って行った。

「ふふ。それにしても、鳳君がスイレンさんの店に行くなんてね」
「まぁ……さっきも言いましたが成り行きですよ」

 オレは席を少し移動。鬼灯先輩の対角側に座り直す。ここまで来たらオレはもう少しだけ今回の会話に踏み込んで見る事にした。

「鬼灯先輩。ガードしてた人ってやっぱり先輩と付き合ってたんです?」
「いいえ。当時は本当にただのお友達だったわ。彼自身、そう言うことに距離を置く様な性格って事をもあってね」

 何とも贅沢なヤツだ。鬼灯先輩のサイドをポジショニングしておいて、好意の欠片も無いとは! むっつりもいい加減にしろ!

「でも……彼が一番私を救ってくれたの」

 すると鬼灯先輩は本当に嬉しそうな笑みを作る。まぁ、この笑顔を作れるならソイツの事を許してやるか。ん? お前は何様だって? 後輩様ですが、なにか?

「ちなみに、その方のお名前とかをお伺いしても?」
「『スイレンの雑貨店』。その店主でもある人の名前は“真鍋翠蓮”と言うの。これで良い?」
「…………え? 真鍋?」

 話を整理すると……鬼灯先輩のアルバイト先である『スイレンの雑貨店』は当時ガードしてた人のお婆さんがやってる店で――

「鬼灯」

 考え込んでいると、横から気配も無しに4課のおさ――真鍋・・課長が話しかけて来た。

「どうか致しましたか? 真鍋課長」
「国尾と大見姉妹の件で意見が欲しい。少し時間は取れるか?」
「問題ありませんが、今は1課のヘルプに入ってまして」
「先ほどすれ違った1課の泉君に事情は話した。昼の始めはこのまま4課へ来てくれ」
「はい」

 ああ。なるほどね。護ってるのはフィジカル、頭脳共に日本最強の侍ってことね。むっつりとか……心で叫んで本当にスミマセン……

「鳳君、少し鬼灯を借りる」
「あ、問題ないです。オレももう課に戻るつもりなので」

 そう言いつつ、オレは手を振って去っていく鬼灯先輩に手を振り返した。

「……鬼灯先輩と付き合うには、真鍋課長を越えないといけないのか」

 無理ゲーも良い所だ。あんなん、誰も手を出せないだろ。
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