懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第449話 今日は寝るよ!

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「そう言う事ですか」

 オレは七海課長より、事の顛末を全て聞いた。
 ジジィの負傷と新たにロクじぃが迎えた二人の『雛鳥』。その辺りの事情を把握しつつ、取りあえず熊肉のBBQの残りをいただく。

「ゴ兄」
「ゴの兄貴」
「お? 久しぶりじゃな。竜二に至っては六年ぶりか。でかくなったな」

 既に時間は暁時。
 一通りの食事を終えた銃士隊の爺さんズは、銃蔵への移動準備を始める。
 その僅かな間にシズカと竜二が声をかけてきた。

「兄貴……六年も里に寄りつかんと、相当にじっ様と拗らせてたなぁ」
「ホントな。頑固ジジィには困ったもんじゃて」
「ゴ兄……コエを助けてくれや」
「おう。里の年下は皆オレの弟妹じゃ。絶対に助け出すわい」

 オレの言葉にシズカは良い笑顔で楓叔母さん達と銃蔵へ歩いて行った。

 仕方なくとは言え、里に帰ってきたのだ。色んな人と積る話はいくらでもある。
 しかし、誰もが今何を優先するのかを把握しており、最低限のあいさつのみで各々の役割へ戻る。

「やっぱり、来ちまったか」
「ゲンじぃ」

 オレは熊肉をもふもふ食べながら、申し訳なさそうにするゲンじぃを見る。

「まぁ、怪我したって聞いたら一応ね。もう御歳90近いジジィだからさ。ポックリ逝く前に遺産の遺言をちゃんと聞いておかなきゃ損すると思って」
「ガハハ! ジョーはまだ20年は死なねぇぜ? 無論、俺もな」

 元気いっぱいで何よりだよ。しかしまぁ、相当にギリギリだったんだろう。
 ジジィが怪我をするなんてよっぽどの事だ。と言うよりも初めて見たかも。
 飛龍を含む『三犬豪』は優秀なサポートだが、熊吉相手ではその威圧も半減だ。人間相手なら滅茶苦茶有能なんだけどね。

「ケンちゃんや」
「ばっ様。じっ様は?」
「永眠に近い状態でぐっすりじゃ。そのまま霊柩車に乗せても違和感無いで」
「地獄の底から転生して報復してきそうだから老衰させようや」

 ばっ様のブラックジョークのキレが少し悪い。やっぱり、ジジィがやられた事を気にしてるご様子。

「それで、ケンちゃんや」
「今度は何? ワシ飯食っとるんやけど……」
「次はどうする?」

 もぐもぐしながら、ばっ様に言われて皆の視線が集まってる事に気がつく。
 え? 嘘でしょ? オレが決めるの? ばっ様の方が良いと思うが、そのばっ様が投げてきたのだ。返しのボールを投げても受け取らないだろう。

「今日は寝るよ!」

 ビシッと言い放つオレに全員がコケた。

「ほら! もう夜になるし、皆も疲れてるし、じっ様も診なきゃいけないし、今日にやれることは何もない! コエちゃんは心配だけど、二次被害はもっと駄目! だから今日はもう解散解散」

 納得が行かない者はいたものの、状況は客観的に見れば無理をする場面ではない事は明らかだ。そのまま強い反発も無く就寝する流れとなった。





「トキ」
「お? あの世から帰ってきよったか」
「たわけ」

 意識を取り戻したジョージは横で看病していたトキから起き抜けジョークを食らう。
 額を押さえつつも身体を起こした。

「タツヤはどうした? 帰ったか?」
「ケンちゃんがきちんと対応したで。二日の猶予をもらったわ」
「……バカが。何も許容させずに追い返せ」
「今さら言っても、もう遅いわ♪」

 トキはリンゴを剥いて切らずにジョージへ渡す。それを取るとジョージはそのまま噛り始めた。

「こんなんじゃ腹が膨れん」
「点滴は打ったでな。ヨミの指示に従って、朝まで横にならんと、手足切り落とされても知らんで♪」
「今日はもう動かん」

 流石に頭に血が上り過ぎたと反省する。少し発熱しているようで意識がフラついた。

「あのアホは何やってやがる」
「色々と会社に連絡しとるわ。休日申請とかをな。身内の怪我を盾に何とか話を通すんじゃて」
「……アイツ、明日も居るつもりか」
「嬉しいじゃろ?」
「目障りなだけだ」

 そうは言いつつも、僅かな嬉しみが混じった様子である事をトキは見逃さない。

「ワシは嬉しいで。無論、里の皆もな」
「…………ふん」

 ジョージはリンゴを高速でしゃくると、渡された薬を飲んで再び横になる。

「朝まで寝る。アイツの好きにさせとけ」
「明日が楽しみじゃのう? じっ様や」





 食事を終えて、各々で順番に風呂に入っての就寝の流れ。全員が眠る方へ行動をシフトする中、ユウヒは懐中電灯を持ってまばらな人目を掻い潜り玄関ホールを後にした。

「コエ……今から行くからね!」

 靴を履いて公民館から飛び出す。その時、ばっ! と目の前に影が飛び出す。

「ひゃっ!?」
「ストップだ。ユウヒちゃん」

 現れた黒い影はケンゴだった。彼はゴールキーパーのように現れるとユウヒの前に立ちはだかる。
 彼女の様子から行動を先読みしたのだ。

「ど、どいて! コエを助けに行くんだから!」
「しー、しー! 大きな声を出すとロクじぃに見つかるよ」
「あ……」

 ロクはヨミと共に公民館の回りに鳴子罠の設置を行っている。本日は交代で見張りをする予定だ。

「……ケンゴ兄さん。コエを……助けに行かなきゃいけないの……」
「駄目だよ。熊吉の餌になるのがオチだ。それに君は幼い」
「……うぅ」

 ケンゴに見つかった時点でユウヒの計画は破綻した。コエを助けには――

「だから、オレと二人で行こう」

 その言葉に顔を上げる。

「なんで……? さっきはもう寝るって……」
「そりゃ、夜になったら誰だって寝るよ。でもさ、悩みを抱えたまま眠ると寝付きが悪いからね」

 ケンゴはそれなりの装備を身に付けていた。元よりコエを助けに行く予定だったらしい。

「それに、コエちゃんを助ける為には君が必要だ。オレに手を貸してくれない?」

 いつも差し伸べられる手は自分を護るモノばかりだった。
 しかし、ケンゴの差し出した手は初めて自分を対等に見てくれるモノで、その手を強くとる。

「……うん。コエを助けに行きましょ!」
「期待してるよ、お姉ちゃん」

 ケンゴはそう言って笑うと、ユウヒも答える様に笑った。

「ユウヒさん、ケンゴ様」

 すると、背後からアヤが現れた。騒ぎすぎたか、とケンゴはユウヒを抱えて出発する事も考える。

「私も同行させて頂きたく存じます」
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