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第467話 犯人ムーヴ
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決定的現場と言うモノは、見られた瞬間に全てを失う程の暴露現場である。
推理系のエンタメ作品ならば観賞する者にしか知る事が出来ない場面で行われるのが一般的だ。
物語の絶妙なスパイス。その場面をどこに、どのタイミングに組み込むかで、作品の質が評価されるだろう。
おいおい、何の話しだい? って思ってるそこのアナタ! オレが何を言いたいかって言うと――
現実における“暴露現場”と言うモノは言い訳の一つも立たない程に社会的に抹殺される決定的な状況に他ならないのだ!
「なんだよ。もう女の番か」
ババァの策略に誘導されたアヤさんが布一枚で浴室に現れると言う事態は何とか収まった。
しかぁし! 神様って奴は本当に悪戯好きだぜ。へっ! オレに何の恨みがあるんだい?
こんな時に……七海課長を連れて来なくてもいいでしょーが!!!!
「――」
オレは咄嗟に立ち上がるとフリーズしてるアヤさんの口を背後から抑えて、浴室に引きずり込む犯人ムーヴを取るしか選択肢が無かった。
ピシャッて閉めた浴室の戸は曇りガラス。“人が居る”程度しか判断できないので人数までは分からないだろう。
「ん?」
間一髪、七海課長の注意は戸を開けた時にはこちらには無かったらしい。閉めた音に反応して、こちらに視線が向いた様だ。
「ごめん……アヤさん。少しだけ静かにしてて」
「…………」
返事を聞かずに背後からアヤさんの口を抑えて捕まえるオレは完全にヤバいヤツだ。ここを見られるとマジで終わる。
「アヤか? もう入ってんのか?」
「七海課長ですか? どうしましたー?」
オレは七海課長と会話を始める。厚さ30センチもない扉越し。シャワーの音である程度は紛れているとは言え、少しでもアヤさんが声を上げれば察しの良い七海課長はすぐに気づくだろう。
くっそー。今日は修羅場まみれじゃねーか!!
「おお? 悪りぃ、鳳まだ入ってたのか。いやな、アヤが入っていくのを見たからよ。もう女たちの番なのかと思ってな」
「え? ソウナンデスカー?」
ここにアヤさんが入って行くのを見られたのか……
確認の為に覗いたのならそのまま去る可能性は高い。しかし、少しでも疑念があったら脱衣所を調べられ、アヤさんの着物を発見されてしまうぞい! オレの話術で何とかするしかねぇ!!
「おいまさか……アヤと一緒に入ってんのか?」
ひょ、ひょえぇぇ!!? バ、バレた!? 心臓が死ぬレベルで高鳴り始める。
「なーんてな。真面目なアヤがそんな事をするワケねぇか」
アヤさんの人徳に救われた! でもね……七海課長……彼女、真面目だからやっちゃってるんですよ……
「女は風呂が長げぇからよ。そこんトコを考慮してくれると助かるわ」
「はい! 少し浴槽に浸かったら、掃除して上がりまぁす!」
「何叫んでんだ?」
「あ、いや、ほらですね! シャワーの音で声が聞こえないと思いまして!」
「別に響くから聞こえてるよ」
じゃあな。と、七海課長は脱衣所を出て行った。
曇りガラス越しにも様子を観察したがアヤさんが居る痕跡は気づかれなかったと見て良いだろう。
「……行ったか……」
それでもオレの心臓は高鳴りっぱなしだ。
“ああー、そうそう”とか言って引き返してくる可能性も全然あり得るので、しばらく現状維持で警戒する。
「……ふぅぅぅぅぅぅ」
完全に戻らない様子を認識し、人生で最大の安堵の息が出る。
修羅場を越えた現状は鉄壁の安全地帯となった。他の女性陣にもオレが入ってる事を七海課長は周知して、近づかない様にしてくれるだろう。
もう……ホントに今日だけで10年ほど寿命が縮んだよぉ……
「……んん」
アヤさんの籠った声と上目遣いにオレは彼女を抑え込んで居た事を思い出し、咄嗟に手放す。
「あ、ご、ごめっ! ほんっと! ほんっとにごっめ!」
オレは語彙力まで思考が回らずに、傷のあるレコードの様に言葉が飛び飛びに謝罪する。
「わ、私の方こそ! その……ケンゴ様の立場を考えておりませんでした……」
目の前で申し訳なさそうに、恥ずかしそうに目を背けるアヤさん。
いや……マジ可愛いんだけど……。タオルもだいぶ水分を吸って身体に張り付いてるし。エロも混ざってとんでもないコンボです。
「まぁ……こんな事になるからね。あんまり、ばっ様の事ばかり鵜呑みにしちゃダメだよ?」
「……はい」
偉そうに言うが、オレの脳はピンク色に埋まりつつある。彼女には早々に退場してもら――いや、待てよ。今、濡れてるアヤさんが外に出て行ったらそれこそ“詰み”なのでは? 明らかに不自然だし……
「し、失礼いたします」
「あっ! ちょっと待って!」
オレは去るアヤさんの手を咄嗟に取った。特に強い力では無かったが、彼女は抵抗する事無く停止してくれた。
「…………」
シャワーの流れる音だけがオレ達の間に響く。
アヤさんに状況を説明して……いや、そうなった場合……彼女はどうする? 一緒に風呂に入るのか? くっくそぅ! あのババァ! ここまで見越して仕掛けて来たのか! 何て深い策謀なんだ! 見事ぉ!
「あ……あの……ケンゴ様」
オレが熱と煩悩と戦ってる間にアヤさんは向かい合う様にこちらを向いていた。もう、タオルなんて意味が無いんじゃないってくらい、透けて張り付いている。あ、やっべ……反応しちゃっ――
「……夜伽の経験はございませんが……知識はあります。よろしければ……お静めいたしましょうか?」
アヤさんは顔を火照らせてそう言った。
推理系のエンタメ作品ならば観賞する者にしか知る事が出来ない場面で行われるのが一般的だ。
物語の絶妙なスパイス。その場面をどこに、どのタイミングに組み込むかで、作品の質が評価されるだろう。
おいおい、何の話しだい? って思ってるそこのアナタ! オレが何を言いたいかって言うと――
現実における“暴露現場”と言うモノは言い訳の一つも立たない程に社会的に抹殺される決定的な状況に他ならないのだ!
「なんだよ。もう女の番か」
ババァの策略に誘導されたアヤさんが布一枚で浴室に現れると言う事態は何とか収まった。
しかぁし! 神様って奴は本当に悪戯好きだぜ。へっ! オレに何の恨みがあるんだい?
こんな時に……七海課長を連れて来なくてもいいでしょーが!!!!
「――」
オレは咄嗟に立ち上がるとフリーズしてるアヤさんの口を背後から抑えて、浴室に引きずり込む犯人ムーヴを取るしか選択肢が無かった。
ピシャッて閉めた浴室の戸は曇りガラス。“人が居る”程度しか判断できないので人数までは分からないだろう。
「ん?」
間一髪、七海課長の注意は戸を開けた時にはこちらには無かったらしい。閉めた音に反応して、こちらに視線が向いた様だ。
「ごめん……アヤさん。少しだけ静かにしてて」
「…………」
返事を聞かずに背後からアヤさんの口を抑えて捕まえるオレは完全にヤバいヤツだ。ここを見られるとマジで終わる。
「アヤか? もう入ってんのか?」
「七海課長ですか? どうしましたー?」
オレは七海課長と会話を始める。厚さ30センチもない扉越し。シャワーの音である程度は紛れているとは言え、少しでもアヤさんが声を上げれば察しの良い七海課長はすぐに気づくだろう。
くっそー。今日は修羅場まみれじゃねーか!!
「おお? 悪りぃ、鳳まだ入ってたのか。いやな、アヤが入っていくのを見たからよ。もう女たちの番なのかと思ってな」
「え? ソウナンデスカー?」
ここにアヤさんが入って行くのを見られたのか……
確認の為に覗いたのならそのまま去る可能性は高い。しかし、少しでも疑念があったら脱衣所を調べられ、アヤさんの着物を発見されてしまうぞい! オレの話術で何とかするしかねぇ!!
「おいまさか……アヤと一緒に入ってんのか?」
ひょ、ひょえぇぇ!!? バ、バレた!? 心臓が死ぬレベルで高鳴り始める。
「なーんてな。真面目なアヤがそんな事をするワケねぇか」
アヤさんの人徳に救われた! でもね……七海課長……彼女、真面目だからやっちゃってるんですよ……
「女は風呂が長げぇからよ。そこんトコを考慮してくれると助かるわ」
「はい! 少し浴槽に浸かったら、掃除して上がりまぁす!」
「何叫んでんだ?」
「あ、いや、ほらですね! シャワーの音で声が聞こえないと思いまして!」
「別に響くから聞こえてるよ」
じゃあな。と、七海課長は脱衣所を出て行った。
曇りガラス越しにも様子を観察したがアヤさんが居る痕跡は気づかれなかったと見て良いだろう。
「……行ったか……」
それでもオレの心臓は高鳴りっぱなしだ。
“ああー、そうそう”とか言って引き返してくる可能性も全然あり得るので、しばらく現状維持で警戒する。
「……ふぅぅぅぅぅぅ」
完全に戻らない様子を認識し、人生で最大の安堵の息が出る。
修羅場を越えた現状は鉄壁の安全地帯となった。他の女性陣にもオレが入ってる事を七海課長は周知して、近づかない様にしてくれるだろう。
もう……ホントに今日だけで10年ほど寿命が縮んだよぉ……
「……んん」
アヤさんの籠った声と上目遣いにオレは彼女を抑え込んで居た事を思い出し、咄嗟に手放す。
「あ、ご、ごめっ! ほんっと! ほんっとにごっめ!」
オレは語彙力まで思考が回らずに、傷のあるレコードの様に言葉が飛び飛びに謝罪する。
「わ、私の方こそ! その……ケンゴ様の立場を考えておりませんでした……」
目の前で申し訳なさそうに、恥ずかしそうに目を背けるアヤさん。
いや……マジ可愛いんだけど……。タオルもだいぶ水分を吸って身体に張り付いてるし。エロも混ざってとんでもないコンボです。
「まぁ……こんな事になるからね。あんまり、ばっ様の事ばかり鵜呑みにしちゃダメだよ?」
「……はい」
偉そうに言うが、オレの脳はピンク色に埋まりつつある。彼女には早々に退場してもら――いや、待てよ。今、濡れてるアヤさんが外に出て行ったらそれこそ“詰み”なのでは? 明らかに不自然だし……
「し、失礼いたします」
「あっ! ちょっと待って!」
オレは去るアヤさんの手を咄嗟に取った。特に強い力では無かったが、彼女は抵抗する事無く停止してくれた。
「…………」
シャワーの流れる音だけがオレ達の間に響く。
アヤさんに状況を説明して……いや、そうなった場合……彼女はどうする? 一緒に風呂に入るのか? くっくそぅ! あのババァ! ここまで見越して仕掛けて来たのか! 何て深い策謀なんだ! 見事ぉ!
「あ……あの……ケンゴ様」
オレが熱と煩悩と戦ってる間にアヤさんは向かい合う様にこちらを向いていた。もう、タオルなんて意味が無いんじゃないってくらい、透けて張り付いている。あ、やっべ……反応しちゃっ――
「……夜伽の経験はございませんが……知識はあります。よろしければ……お静めいたしましょうか?」
アヤさんは顔を火照らせてそう言った。
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