懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第478話 叱ってくれる家族

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 小鳥遊静夏たかなししずか
 父さんの妹――楓叔母さんの子供であるシズカはオレのイトコに当たる。兄の竜二と共に昔から家族の様に接してきた便宜上は妹分だ。

 田舎生活でも色褪せない艶のある長い黒髪。程よく育ってきた突起が分かる半袖のTシャツ。自分を出すようになってからはスカートの類いを嫌い、常にズボンか短パンを好んで履くシズカは、それだけならば田舎の元気娘で済むだろう。

 しかし、彼女の非凡性はその類い稀な美麗な容姿にある。一体、どこの遺伝子情報から構築されたのかと問いたくなる程の美少女ぶりはモデルをやっているヒカリちゃんやショウコさんにも引けを取らないレベルなのだ。

 それは街中を一人で歩いているだけで拉致されそうになる程である。(その時は、国尾さんのおかげで事なきを得たとか)

 通り過ぎれば同性、異性問わずに一度は振り向く天然物の美少女。それがシズカなのだ。
 まぁその分、ちょっとばかり神様の悪戯心が心に入ってしまっているが。

「ケイさーん!」

 既に起き始めた銃士ジジィ達へ銃と、朝食のおにぎりを配ってるシズカは、来訪したオレと七海課長へ手を振って駆け寄ってくる。
 
「おはよ、シズカ」
「おはようさん」
「おはよ、ゴ兄。おはようございます。ケイさん」

 全く、お盆におにぎりとショットガンを乗せてワンコみたいに走って来るんじゃない。
 ちなみにシズカは七海課長に好意がある。

「昨日はお疲れ様です、ケイさん。でも……本当に大丈夫ですか?」

 シズカは七海課長が二メートルの熊と相対した事による心的ストレスを気にしていた。普通ならトラウマもんだからなぁ。

「大丈夫だって、言ったろ? 熊に襲われたくらいでビビる程、ヤワじゃねぇよ」

 心配、ありがとな。と七海課長はシズカの頭を撫でる。

「なんなら一緒に寝るか? 俺の寝言でも聞けば、ビビって無いって分かるだろ」
「え? 寝る……? 一緒に? ケイさんと?」
「おう。なんか問題あるか?」

 七海課長は里に来る前からシズカとは面識があり、その時にシズカの方が惚れたらしい。
 男のオレから見ても、七海課長は男らしいし性別抜きに尊敬に値する方である事は間違いない。
 社内でも皆の兄貴分に近い人だからなぁ。スタイルは良いんだけど、この人でエロい事は一切想像できない。大宮司道場で寝技をやった時にムラっと来たが、それでも普段の“燃料”には程遠い人だ。

 え? 鬼灯先輩? 何度か自家発電の燃料にしたことありますけどなにか?

「え? う……うん……良いのかなぁ……」
「女同士なんだから気にすんな。何なら風呂から一緒にやるか?」
「お、お風呂!? いや、それはダメ! 絶対に駄目!」
「そういや、お前は難しい年頃だったな。そう言うのが苦手な時期か」

 からかう形になった七海課長は顔を真っ赤にするシズカの反応に、ハハハと笑う。
 違うんですよ七海課長。純粋に異性・・として見て、恥ずかしがってるだけです。

「おはよう、ケンゴ。七海君も」
「おはようございます」
「おはよう、叔父さん」

 次に現れたのはシズカの父親である小鳥遊総司たかなしそうじ叔父さん。『小鳥遊』は叔父さんの家柄である。

 冷えた雰囲気を感じる叔父さんは、何と言うか感情的になる事が少なく、機械のように粛々と物事をこなす。
 里の地酒『神ノ島』の製造の総指揮を取る社長でもあり、ジジィの同年代以外で意見出来る数少ない人間の一人。ちなみに『古式』も銃も使えない、一般人です。

「さっき、お義母さんから連絡を貰ったよ。コエを助けて熊吉を仕留めたそうだね」
「色々と成り行きでそうなった」
「ふむ。私としては誉める事は出来ないよ。しかし、結果として人命が救われた事を加味すると、怒るのも少し違う気もする。よって、互いを相殺して誉めるも怒るも無しにする」
「おっけ」

 総司叔父さんは結構、数字で物事を判断することが多い人だ。元々、里のインフラ関係を担当していた『小鳥遊』の気質が強く現れている。

「でも、楓はそうは行かないかもね」
「え?」
「ケンゴー」

 すると銃蔵から、おいでおいで、とこちらを手招きする楓叔母さんの姿が。

「行っといで」
「うん」

 七海課長と三犬豪の事は『小鳥遊』の二人に任せて、オレは呼ばれるままに楓叔母さんの元へ向かう。





「叔母さん。おはよう。どうしたんじゃ?」

 オレは銃蔵の中に引っ込んだ叔母さんの後を追って中へ。

「おはよ、ケンゴ。ふむふむ」

 すると、少し背伸びをしてオレの頬を両手で掴むと角度を変えて顔を見てくる。何やってんだろ?

「叔母さん?」
「怪我は?」

 多分、昨晩の熊吉との死闘の事を言ってると思われる。

「無いよ」
「よし」

 その瞬間、パァン! と風船が破裂した様な音が響いた。オレは何が起こったのか解らず、少し棒立ちしていると、右頬にじわじわと痛みを感じる。

「……叔母さん」
「何をやっとるか! 銃をたずに! しかも夜! 熊どもの所に自分から行くなど! 馬鹿か! お前は!!」

 それは社会で向けられる怒りとはまた違う。心に深く響く怒りが向けられてくる。

「……ごめんなさい」

 言い訳をするなんて思い付かない程にオレは子供のように叔母さんに謝った。

「ケンゴ。お前はもう大人じゃ。社会に出て、沢山の経験と山場を越えて来たんじゃろう。けどな……コレは違うぞ。危険だと解っている所へ自ら行くなど……じっ様の真似をするな」

 叔母さんはオレに、間違えた事をしたと真っ直ぐ伝えて来る。

「ワシはお前の直接の親じゃない。けどな……それでもお前は二人と居ない大切な家族なんじゃ。里に居る限りは、お前よりも頼りになる大人は沢山おる。もう危険な事はしないと約束せぇ」
「……ごめん。こんな事は二度としないよ」

 ジジィは厳しさの延長からの叱りであるが、叔母さんからの叱りは心底心配しての事だと深く伝わる。

「まったく。まだまだ言いたい事、聞きたい事はあるが、とりあえずは――」

 と、叔母さんは雰囲気をリセットする様にオレの背中をバチィィ! と叩く。痛ってぇぇぇ!!?

「お帰りケンゴ」
「た、ただいま……叔母さん……こひゅ……」

 痛みに悶えるオレに、愛が乗るビンタは痛かったろう? と叔母さんは笑った。

 痛すぎて息が出来ねぇ……
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