懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第479話 刺されない様にな

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「……」
「おはようさん、じっ様」

 目を覚ましたジョージはすぐ側で待っていたトキに声をかけられた。
 手当てを受けた右腕を見て、昨日の記憶を即座に思い返すと身体を起こす。

「……トキ。全員に連絡を取れ。害獣どもを殲滅し、コエを助けに行く」
「熱がある癖に何を言っとるか」

 冷えピタを額に貼り付けつつ、トキはさほど力を使わずにジョージを制した。

「……この体たらくじゃ足手まといか……」
「熊公どもはワシらでもやれるわい。こんな機会じゃないと休まん癖に、動こうとするでないわ」
「……せめてコエを――」
「カモン!」

 トキは埒があかないと、指を鳴らす。すると、入り口で待機指示を出していたコエが顔を覗かせた。

「――コエ」
「じぃ様」

 そのまま歩くとコエはジョージの横に正座する。

「……誰が助けに来た? ゲンとロクか?」

 考えられるのはあの二人しか居ない。コエは首を横に振る。

「ケンゴ兄さんが助けに来てくれたんだ。私は……じぃ様が……怪我したって……死んじゃうって思うと……うぅ……」
「ワシは大丈夫だ。泣くな」

 ジョージは左手で安堵の涙を見せるコエの頭を優しく撫でる。

「全く、女泣かせな所は昔から変わっとらんのう、じっ様や」
「やかましい。とにかく、コエ。お前が無事で良かった。よく、頑張ったな」

 自分と姉を見つけてくれた時の優しい声色でそう言うジョージにコエも、うん、と笑って返事を返した。

 コエはそのまま皆のいる広間へ向かい、ジョージは改めてトキへ状況確認を求める。

「状況」
「熊吉とオマケに一頭を殺った」
「誰が仕留めた?」
「熊吉はケンゴとアヤじゃ。ジョーの銃で脳天を抜いたらしい。もう一頭の方は蓮斗が素手で殺った」
「素手……か?」
「ゲンの話だと、正面から殴り勝ったらしいわ」

 誤認かと思ったが、ゲンが側で見ていたのなら本当だろう。超人体質……思った以上にやるらしい。

「怪我は?」
「ケンゴとアヤは無傷。蓮斗は軽傷じゃ」
「そうか。全員、大事はないか」

 自分以外に酷く傷ついた者は居ない様子にジョージは安堵の息を吐く。

「仕留めた熊は即日解体。残りの熊は確実に仕留めろ。指揮はロクに執らせい」
「もうそのつもりで動いとるわ。朝食を食べたら本格的に追い込みを始めるで」
「手は抜くな。中途半端は新しい熊吉を生む」
「任せいよ。今日いっぱいは横になれや」

 ジョージの食事を取りにトキは立ち上がる。

「トキ」
「便所か?」
「違う。あのマヌケを呼べ」





「鳳、お前は『古式』を習ってんのか?」
「護身術程度です」

 銃蔵にて、熊たちの状況と解体要員の派遣を叔母さんに告げてオレと七海課長は公民館に戻っていた。

「そっか。前に道場でリョウと戦った時に変な違和感があった理由が解ったぜ」

 あー、やっぱり、あの時に感づかれてたのか。
 オレのバトルスタイルはサンボを表に出しつつ、しれっと『古式』を行使する。
 しかし、結局は素人の動きの延長でしか無いので熟練者には妙だと気づかれてしまうだろう。

「……七海課長。お願いがあるんですが」
「なんだ?」
「オレが外で『古式』を使った事は黙ってて貰えませんか?」
「別に構わねぇが……理由くらいは教えて欲しいモンだな」
「祖父に言われてるんですよ。“教えはするが絶対に使うな”って」

 見られた奴を皆殺しうんぬんの件は黙ってておこう……

「そうは言うが、何度か使った事はあったろ?」

 力を手にしたら試したい。それは誰しもが一度は通る考えだ。そこを自制出来るかは環境によって変わってくる。

「……使わなきゃ護れない状況ばかりでして」
「アッハッハ。解ったよ。話は合わせてやる。お前が自分からトラブルに突っ込んで行くからな。『古式』使わなかったら、何度か死んでるんじゃねぇの?」
「うっ……」

 言われて見れば……確かにそうだ。て言うか、普通の社会人として生きてて何度も死にかけるって、普通ならあり得ないよなぁ。

「今回も銃をぶっぱなして一匹仕留めたんだろ? 普通に銃刀法違反だけどな」
「……緊急避難って事になりませんかね?」
「気にすんな。俺も空気が読めるから黙っててやるよ。それに、そうなるとアヤも共犯になっちまう」

 と、七海課長は何かを思い出した様に、

「お前、アヤの事はどうすんだ?」
「あ、もしかして話を聞いてます?」
「一通りな。死ぬほど優良物件な女だぞ? 俺と詩織を足して年齢下げたチートキャラだ」

 七海課長もオレと同じこと考えてら。やっぱり、アヤさんは身近な人間に置き換えるとそれが妥当なスペックだよなぁ。

「加えて、海外では貴族地位に親の方もお前とは仲いいんだろ?」
「息子みたいに思ってくれてます」
「断る理由はあんのか?」

 リンカの事もあるが、アヤさんの様子を見るにきちんと話をしなければとも思っている

「少しアヤさんと話してみますよ。なんか……このまま行くのは色々と違う気がするので」

 そう言うと七海課長は、フッ、と笑う。何を意図した、フッ、なんですか?

「お前にはリンカの事もあるしな。アヤの事は話してんのか?」
「こっちに来る時に何度か連絡を入れたんですけど、まだ返しが無いんですよ」

 今日は平日なのでリンカは学校だ。電話してもすぐに帰ってくる可能性は低いが、着信履歴には残しておこう。

「まぁ、俺から言うことは一つだ」

 七海課長はオレの肩に、ぽん、と手を置いて追い抜く。

「刺されない様にな」
「……」

 だ、大丈夫なハズ! 今までの女性関係の物事は全部円満に納めて来たのだ! 誰にも刺される様な事は……無かったと思う……

 一抹の不安を少し抱えつつ、公民館に帰還。すると三犬豪はジジィの起きている気配を感じ取ったのか、ビジュアルが変わる。

「おはよー、ケンゴ兄さん」
「お、戻ったな。朝飯は皆待っとるぞ」

 現れたユウヒちゃんとばっ様がそう言って三犬豪の餌を持って公民館から出てきた。

「昼は俺が何か作るよ、トキ婆」
「昼は熊肉のBBQの予定じゃな」
「いいね。外でやるのか?」

 と、会話をしながら中へ。三犬豪へはユウヒちゃんが“待て”と“よし”をして食べさせる。
 オレも程よい空腹感を感じつつ、大広間へ。

「おっと、ケンちゃんは先にそっち」

 と、ばっ様は診療室を指差した。

 モーニングジジィかぁ……心休まる帰省では無いにしろ、クライマックス続きなのは勘弁して欲しいモノである。
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