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第511話 『古式』でやれ
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「『古式』でやれ」
母屋に戻り、勝負する事になったとばっ様が説明すると、ジジィは迷うことなくそう言った。
「……じっ様。マジで言ってる?」
「お前らが共通し、更に実力差が狭い勝負は『古式』しかない。嫌なら他に案を出せ」
「むむむ……」
これは社会でも共通する事だ。
何かと意見を言うばかりでは人を納得させる事は出来ない。代わりの案を出すことで、物事は初めて別の方向へ流れを切るのである。
「ふむ。どれどれ」
ばっ様はノートPCを用意してLIVE中継を始めた。そして、自身のスマホを操作してどこかへ連絡をしている。いつの間にか、里にはハイテクなネットワークが築かれているようだ。
「『古式』でやるのは良いけど、勝敗はどう決めるんじゃ?」
「それはお前らのどっちかが敗けを認めた時だ」
敗け……ねぇ。オレはアヤを見る。姿勢良く立っているが、絶対に敗けを認める様子はない。無論、オレもそうだ。
「それって……終わらないんじゃ……」
「それはお前が決める事だ」
と、ジジィは断言する様に言う。言うだけなら本当に簡単だよな。
「…………じゃあ、オレが勝った場合は?」
「今後、お兄様の行う事に対し、私は全て支援致します。絶対に違える事なく」
「やれやれ。わかったよ」
悪くない条件ではある。この勝負の決め所は、アヤにオレの事を諦めさせる事だ。彼女を何度も捌けるとは限らない。この一回で全部終わりにする。
「あー、うん。見えとるな? 楓、アイツにも連絡し、観るように言え」
ばっ様は楓叔母さんに連絡していた。
『小鳥遊』は里のインフラを管理する鳥。他の鳥や外との交流や交渉は全て任されている。
観客は……恐らく『古式』を知る関係者。しかし、戦う側としてはあまり関係ない。
「殺し合いじゃない。お前ら、解っているな?」
「当たり前じゃ」
「はい。お兄様、胸をお借りします」
ジジィの言葉は過度な痛め付けは避けるように意識させる為のモノ。力強くで従わせた勝敗など意味がないと言っていた。
アヤは姿勢良く立ったまま、気迫だけが膨れ上がる。あれれ? アヤがどんどん巨大になって……いく? なんてプレッシャーだ! こりゃ、泥沼戦法でグダグダにするしかねぇ!
「ケンちゃんや、アヤと組んず解れずじゃな。ラッキースケベし放題じゃのう」
「マジのマジなんだから、そう言うこと言うのヤメテ」
チャッ、とマイクイヤホンを着けたばっ様が膝にノートPCを乗せながら言う。ただでさえ、技量的には勝ち目が薄いってのに、オレに精神攻撃をしてくるなよな……
「使え」
すると、ジジィがオレとアヤの間に1本の木刀を突き立てた。あ、これって……ちょっと勝機が見えてきたかも。
「ん?」
夕刻にて圭介は『白鷺剣術』の指導の為に、道場に顔を出していた所、スマホにLINEから通知が来た事に一旦、席を外す。
確認すると、そこには一つのLIVE、URLが貼られており、タップして開く。
そこには、ケンゴとアヤが向かい合って立っていた。
「……全員! 一時中断!」
圭介の声に場の全員が稽古の手を止める。
「リタ」
「はい」
「このスマホの映像を大画面に写せるか?」
「すぐに出来ます」
「やってくれ」
『白鷺剣術』はまだまだ発展途上の流派。
自らの動きを見直す為に、普段から動きを録画して門下生と共に大きな画面で共に観るのが圭介のやり方だった。
「他の者は椅子を用意」
プロジェクターを乗せる台、映像を映す幕が慣れた様に道場に設置され、門下生は椅子を持って各々に座る。リタの分は圭介が用意した。
「お嬢」
「アヤお嬢様だ」
「確か今、師範の故郷『カミシマ』へ行っているのだろう?」
「相手の男は誰だ?」
「組手……にしては、雰囲気が違うな」
「……旦那様、お嬢様の相手は誰なのですか?」
門下生は目の前で展開されるLIVE映像を観て、始まる前から各々の意見を述べる。
圭介も全ての状況が理解出来ているワケではない。しかし、ある程度は推測出来る。
「身内だ。全員、この仕合は我々の求める力の根幹を知る事になる。その意味を読み取るのだ」
圭介がそう言うも、門下生たちは半信半疑だった。
彼らはアヤの実力を知っている。圭介の弟子の中では一番強く、特に刀を使った剣術においては比肩する門下生はいない。
圭介本人でさえも、アヤからは三本の内、二本は取られる程にその技量は洗練されている。
二人の間に刺さる1本の木刀。アレをアヤが手にした瞬間に勝負は決まるだろう。
「……ケンゴ」
しかし、圭介の懸念はアヤよりもケンゴの方にあった。
「あら。随分と懐かしい」
帰宅の送迎車に乗りながらハジメから本日の報告を聞き終えた烏間美琴は、古いネットワークから流れてきたLIVE映像のURLを見てそんな声を漏らした。
昔、『神島』は、公には叶わない“仕合”の配信を仲介を提供する事業を行っていた。
しかし、ネットワークが進んだ今では彼らを介さずとも自由に配信出来る為に、その事業は廃れている。
しかも、今回は身内にだけ送られている様だ。
「あら。アヤと、ケンゴ?」
まだ、二人の関係の最終的な報告は何も聞いていない。その件は後でアヤに聞いてみるとして、現状の映像から考えられる結論は――
「夫婦喧嘩かしら?」
母屋に戻り、勝負する事になったとばっ様が説明すると、ジジィは迷うことなくそう言った。
「……じっ様。マジで言ってる?」
「お前らが共通し、更に実力差が狭い勝負は『古式』しかない。嫌なら他に案を出せ」
「むむむ……」
これは社会でも共通する事だ。
何かと意見を言うばかりでは人を納得させる事は出来ない。代わりの案を出すことで、物事は初めて別の方向へ流れを切るのである。
「ふむ。どれどれ」
ばっ様はノートPCを用意してLIVE中継を始めた。そして、自身のスマホを操作してどこかへ連絡をしている。いつの間にか、里にはハイテクなネットワークが築かれているようだ。
「『古式』でやるのは良いけど、勝敗はどう決めるんじゃ?」
「それはお前らのどっちかが敗けを認めた時だ」
敗け……ねぇ。オレはアヤを見る。姿勢良く立っているが、絶対に敗けを認める様子はない。無論、オレもそうだ。
「それって……終わらないんじゃ……」
「それはお前が決める事だ」
と、ジジィは断言する様に言う。言うだけなら本当に簡単だよな。
「…………じゃあ、オレが勝った場合は?」
「今後、お兄様の行う事に対し、私は全て支援致します。絶対に違える事なく」
「やれやれ。わかったよ」
悪くない条件ではある。この勝負の決め所は、アヤにオレの事を諦めさせる事だ。彼女を何度も捌けるとは限らない。この一回で全部終わりにする。
「あー、うん。見えとるな? 楓、アイツにも連絡し、観るように言え」
ばっ様は楓叔母さんに連絡していた。
『小鳥遊』は里のインフラを管理する鳥。他の鳥や外との交流や交渉は全て任されている。
観客は……恐らく『古式』を知る関係者。しかし、戦う側としてはあまり関係ない。
「殺し合いじゃない。お前ら、解っているな?」
「当たり前じゃ」
「はい。お兄様、胸をお借りします」
ジジィの言葉は過度な痛め付けは避けるように意識させる為のモノ。力強くで従わせた勝敗など意味がないと言っていた。
アヤは姿勢良く立ったまま、気迫だけが膨れ上がる。あれれ? アヤがどんどん巨大になって……いく? なんてプレッシャーだ! こりゃ、泥沼戦法でグダグダにするしかねぇ!
「ケンちゃんや、アヤと組んず解れずじゃな。ラッキースケベし放題じゃのう」
「マジのマジなんだから、そう言うこと言うのヤメテ」
チャッ、とマイクイヤホンを着けたばっ様が膝にノートPCを乗せながら言う。ただでさえ、技量的には勝ち目が薄いってのに、オレに精神攻撃をしてくるなよな……
「使え」
すると、ジジィがオレとアヤの間に1本の木刀を突き立てた。あ、これって……ちょっと勝機が見えてきたかも。
「ん?」
夕刻にて圭介は『白鷺剣術』の指導の為に、道場に顔を出していた所、スマホにLINEから通知が来た事に一旦、席を外す。
確認すると、そこには一つのLIVE、URLが貼られており、タップして開く。
そこには、ケンゴとアヤが向かい合って立っていた。
「……全員! 一時中断!」
圭介の声に場の全員が稽古の手を止める。
「リタ」
「はい」
「このスマホの映像を大画面に写せるか?」
「すぐに出来ます」
「やってくれ」
『白鷺剣術』はまだまだ発展途上の流派。
自らの動きを見直す為に、普段から動きを録画して門下生と共に大きな画面で共に観るのが圭介のやり方だった。
「他の者は椅子を用意」
プロジェクターを乗せる台、映像を映す幕が慣れた様に道場に設置され、門下生は椅子を持って各々に座る。リタの分は圭介が用意した。
「お嬢」
「アヤお嬢様だ」
「確か今、師範の故郷『カミシマ』へ行っているのだろう?」
「相手の男は誰だ?」
「組手……にしては、雰囲気が違うな」
「……旦那様、お嬢様の相手は誰なのですか?」
門下生は目の前で展開されるLIVE映像を観て、始まる前から各々の意見を述べる。
圭介も全ての状況が理解出来ているワケではない。しかし、ある程度は推測出来る。
「身内だ。全員、この仕合は我々の求める力の根幹を知る事になる。その意味を読み取るのだ」
圭介がそう言うも、門下生たちは半信半疑だった。
彼らはアヤの実力を知っている。圭介の弟子の中では一番強く、特に刀を使った剣術においては比肩する門下生はいない。
圭介本人でさえも、アヤからは三本の内、二本は取られる程にその技量は洗練されている。
二人の間に刺さる1本の木刀。アレをアヤが手にした瞬間に勝負は決まるだろう。
「……ケンゴ」
しかし、圭介の懸念はアヤよりもケンゴの方にあった。
「あら。随分と懐かしい」
帰宅の送迎車に乗りながらハジメから本日の報告を聞き終えた烏間美琴は、古いネットワークから流れてきたLIVE映像のURLを見てそんな声を漏らした。
昔、『神島』は、公には叶わない“仕合”の配信を仲介を提供する事業を行っていた。
しかし、ネットワークが進んだ今では彼らを介さずとも自由に配信出来る為に、その事業は廃れている。
しかも、今回は身内にだけ送られている様だ。
「あら。アヤと、ケンゴ?」
まだ、二人の関係の最終的な報告は何も聞いていない。その件は後でアヤに聞いてみるとして、現状の映像から考えられる結論は――
「夫婦喧嘩かしら?」
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