懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第584話 ……うわ。こっち見てる

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「ショウコー、ご苦労様。凄い綺麗だったよー」
「ありがとう、ビクトリア」

 舞台袖から降り、体育館の非常口から外に出たショウコは、迎えたビクトリアに向き直りながら仮面を外す。

「映像の方はどんな感じだ?」
「もう、完璧。見てるアタシも共感しちゃってさ。心が軽いのなんの」
「大袈裟だな。実際にナニかを祓っているワケではないと言うのに」
「そんな事無いって。でも、そう言う謙虚な気持ちが惹き付けるんだろうねぇ」

 と、ワァァ! と言う歓声の声が聞こえる。どうやら次のゲストが舞台上に上がったらしい。

「帰ろう。私の役目は終わりだ」

 伝える事は出来た。後は受け取った者達がどの様に感じるかは各々の価値観によるだろう。

「ああ、その事だけどサ。言伝てを預かってるよ。ショウコが良ければだけどね」
「ん?」

 ビクトリアは、カメラを配置する際に遭遇した教頭と校長からあることを提案されていた。





 佐々木光之助。
 この名前の人物が歩いていれば1000人中、999人が一度は足を止めるだろう。
 それ程に知名度のある俳優であり、彼が主役を勤めた映画『ワールド・アドベンチャー』は続編の製作が決定しているなど、期待値も高い。
 そんな世界でも大人気俳優が、そこらに落ちてそうな高校にサプライズで現れれば、沸き立つな、と言うのが無理な話だ。

『いやー、どうもー! 皆歓声をありがとう、声のボリュームを落として落として。俺の声が皆に消されちゃう』

 教頭からマイクを受け取った佐々木は、宥める様なジェスチャーと口調で告げた。
 それによって少し歓声は収まり変わりに、ハハハ、と笑い声が起こる。
 スマホを取り出し、動画を撮り始める者も多数。
 その様子を別角度でリンカ達は見ていた。

「うわ、ホントに佐々木光之助だ。誰が呼んだゲストなのかしらね。リン、どう思――って何で鬼のお面つけてるのよ?」
「色々あってね」

 遠山と辻丘は佐々木に視線を向けているが、ヒカリと大宮司は、鬼のお面を着けたリンカへ視線を向ける。

「夏にさ。祭りにあの人が来たって知ってる?」
「え? そう言えば……近くの祭りに飛び入り参加たのよね。狐の面を着けた浴衣女子を巡って、くも男が現れて、仮面ラ○ダーとか色んなイロモノがか乱入したカオスな動画がSNSでバズって――――まさか……」
「浴衣女子はあたし。くも男はお隣さん。箕輪先生もその場に居て、色々と助けてくれて何とかなったんだけど……」

 当然ながら地元のニュースでも取り上げられ、程の珍事件として記録されただろう。

「ケン兄……ホントに退屈しないね」
「帰ってきて1ヶ月もしないでソレだからね」
「常にフルスロットルで生きてないと呼吸出来ないのかしら?」

 昔なら、そんなケンゴの武勇伝に眼を輝かせたが、悲しきかな。今の彼女達は高校生。純粋なケンゴの行動力に、スゲー! となる歳は通り過ぎたのである。

「って事だから。面倒な事になる前にあたしは逃げる」

 顔を隠し、あの時は違ってメイド服ではあるが、声から判明する可能性がある。
 あの『闇鍋みたいな仮面舞踏会』は周知しる者達もこの場には多い。なんなら、佐々木光之助が来ると知って、彼の事を調べてソレにたどり着いた者も大半だろう。

「けど、どうやって出る?」
「……」
「――ダメか」

 大宮司は威圧を飛ばすが、佐々木のビッグオーラによって完全に打ち消されてしまう。

「何とか人を掻き分けて出口まで向かう」
「俺が先導しよう」
「ありがとうございます、大宮司先輩」
「私も出よー」

 すみません、通して、と三人で謝りつつ出口へ向かって移動を開始した時、

『じゃあ、俺ばっかり喋っても仕方無いから、質問を一つだけ受け付けようかな? 何個も答えてたら日が暮れちゃうからね。生々しい質問は無しにしてくれよ?』

 その言葉に多くの生徒が手を上げ、視線を一望させた佐々木は一人の生徒を当てる。

『はい、そこの君。眼鏡をかけて腕章を着けた男子生徒の君だ』

 全員の視線が壁際に立つ遠山と辻丘に向けられる。リンカ、ヒカリ、大宮司は間一髪で場から離脱していた。

「フォォォ! これが生徒会長効果ァ! 辻丘よ、当たっちまったぜ!」
「お願いですから……まともな質問をしてくださいよ?」

 舞台から佐々木が降り、マイクを手渡す様に遠山に差し出した。

「君が俺に聞きたいことは?」
「大スター。貴方のアクションは俺も劇場で見ました! しかし、一つ思ったのです! 貴方は本当に強いのかと言うことを!」

 遠山は等しき喋るとマイクを返した。佐々木はマイクを受け取る。

「映画の演出もあるけど、俺自身も格闘技は習っているよ。そうだな……この中で格闘技系の部活の子は居るかな? なるべく、経験者が良い。その子と対戦すれば、俺が素人じゃないって解るだろうからね」

 その言葉にざわつきが止まった。
 本当に“場が凍りつくと言う言葉”がこれ程当てはまる状況は無かっただろう。

「ん? これはアレかな? 相当な実力者がこの体育館に居るのかい?」

 その雰囲気を佐々木は感じ取り、皆を安心させる様に告げる。
 すると、生徒達は体育館の出口へ向かうリンカ(鬼の面装備)、ヒカリ、大宮司まで避ける様に道を開けた。

「え? なに?」
「……うわ。こっち見てる」
「ん? どうした? 鮫島――」

 二人の先頭を歩いていた大宮司は、振り向くと佐々木と眼が合った。
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