596 / 701
第595話 ワンダーランド
しおりを挟む
それは青天の霹靂だった。
なんだ……? なんだコレは――
校門にて、来客のチケットを確認する文化祭委員会の生徒は現れた三人の大人に驚愕していた。
女性二人、男性一人。その女性二人が明らかに異質なのである。
「これで入れますか?」
そう言って差し出されるチケットを照れながら受けとる。彼女は眼を合わせてくれるだけで全てを見透かされる様な神々しさがある。その口から放たれる発言や丁寧な物腰などの一挙動が向けられる度に、心を打たれる様な魅力が魂を駆け抜ける。
「最近の文化祭はセキュリティが徹底しているな」
二人目の女性は美人な容姿の内面に潜む我の強さが滲み出ていた。立ち姿から己の志に絶対の自信を持つと言わんばかりにオーラが隠すこと無く溢れ、ソレはこれから戦に向かう戦国武将の如き気迫である。
「あ、チケットお願いしまーす」
この男の人は二人に比べてラフ画の様に映り、対応が楽だった。
「ん?」
風紀委員長の佐久真は文化祭委員会から流れてきた情報をLINEで受け取る。外からの入場者の事は、文化祭用のLINEグループで共有されているのだ。
届くメンバーは校内の幹部人のみであるが。
『招待客』
『谷高影様、鬼灯詩織様、鳳健吾様、来場』
「どんどん外から来るようになったな」
「佐久真君、お客さん来たの?」
そのLINEを横から暮石が覗き込む。
「鬼灯先輩のお姉さんだっけ? みんな興味あるよねー」
「鬼灯先輩は謎の多い人だからな」
「あの人は……まだかな」
「チケットを渡したからと言って確実に来るとは限らないぞ」
「うん……分かってる」
「……来たら連絡するよ」
そう言って佐久真は風紀委員長の腕章を今一度、グイっと引き上げると校内の警邏へ向かった。
受付で貰った『文化祭の栞』を片手にオレは思った以上の光景に心から湧き立つモノを抑えるので必死だった。
目の前には祭りの屋台の様に多くの出店が並び、それを運営しているのは全て生徒なのだ。
看板やメニュー表は全て手作り。通常の祭りでは絶対に見ることの出来ない特別な空間は、お祭り魂を持つオレからすればワンダーランドだね。
「あぁ、どうしよう。何から手を着けて良いのかわからないぃ」
正直な所、リンカのクラスがやっている『猫耳メイド喫茶』くらいしか期待していなかった。しかし、ここに己の無知を恥じよう。
採算を考える大人の運営する祭りの出店とは違い、手探りの様な荒い部分が良い味を出している。こりゃ、全ての店を回る価値はあるぜ!
「大学の祭りに比べると些かランクは落ちるが、未熟が垣間見える分、普段とは違うインスピレーションを得られそうだ!」
「アクセサリーを売り出している所もあるのね」
エイさんと鬼灯先輩も『文化祭の栞』を片手に楽しめる雰囲気を感じたらしい。可能ならば、オレも文化祭を行う側にも回りたかったぜ。絶対楽しいに決まってる!
「私はヒカリの『猫耳メイド喫茶』へ行こう。二人はどうする?」
エイさんの提案。
ふむ、大本命をいきなり堪能するのも悪くない。リンカとは昨日から顔を合わせてないし、告白するタイミングを話す為にも寄っておくか。
「オレも『猫耳メイド喫茶』! に行きます」
やっべ、テンション上がり過ぎて、“喫茶!”に力入っちゃった。
オレは社会人。周りの学徒達へ大人の威厳を損なわせてはならぬ。
「私は『制服喫茶』に行きます。ここでお別れね、鳳君」
「名残惜しいですが……また状況が交わる事があればエスコートさせていただきやす」
「ふふ。変な口調になってるわよ?」
オレの前世の魂が少し出て来ちまった。さぞ、有名なお祭り男だったのだろう。
「それでは、谷高さん失礼します」
「エイと呼んでくれ。ここには娘も居る。名字では聞き分けしづらいからな」
「わかりました、エイさん」
と、鬼灯先輩は一足先に校内へ向かう。
校内であれば変に絡まれる事も無いだろう。一応、鬼灯先輩は伊達眼鏡をかけて己の“魅了”を少し抑えているし。
「ふむ……」
オレは文化祭の栞を確認。
『制服喫茶』は三階にあるので三年生のクラスか。つまり、鬼灯先輩の妹君は三年生と言う事だ。『猫耳、メイド!(勝手に力が入る) 喫茶』でリンカに聞いて見るかな。
「我々も行くぞケンゴ。まずは『猫耳メイド喫茶』からだ」
「はーい」
と、これから敵の首級を殺りに行く様な気迫を纏うエイさんは校舎に侵入。オレも後に続く。
うわ、都会の高校って本当に綺麗だな。通うだけでテンションが上がりそう。
『神ノ木の里』の校舎なんて、100%木造建築で現代文明を感じられるモノなんて、窓と黒板と黒板消しくらいしか無かったぞ。まぁ、里には殆ど生徒が居なかった事もあるが。
ずんずんと武将オーラを出すエイさんに廊下の生徒達は道を開けてくれる。
社会人が誤解されそうだが、彼女が特別なだけです。すると、
「ちょっと! その雰囲気は抑えてって言ったでしょ!」
「ヒカリ!」
正面からヒカリちゃんの声。迎えに来てくれたようだ。猫耳メイド姿で。最高かよ。
なんだ……? なんだコレは――
校門にて、来客のチケットを確認する文化祭委員会の生徒は現れた三人の大人に驚愕していた。
女性二人、男性一人。その女性二人が明らかに異質なのである。
「これで入れますか?」
そう言って差し出されるチケットを照れながら受けとる。彼女は眼を合わせてくれるだけで全てを見透かされる様な神々しさがある。その口から放たれる発言や丁寧な物腰などの一挙動が向けられる度に、心を打たれる様な魅力が魂を駆け抜ける。
「最近の文化祭はセキュリティが徹底しているな」
二人目の女性は美人な容姿の内面に潜む我の強さが滲み出ていた。立ち姿から己の志に絶対の自信を持つと言わんばかりにオーラが隠すこと無く溢れ、ソレはこれから戦に向かう戦国武将の如き気迫である。
「あ、チケットお願いしまーす」
この男の人は二人に比べてラフ画の様に映り、対応が楽だった。
「ん?」
風紀委員長の佐久真は文化祭委員会から流れてきた情報をLINEで受け取る。外からの入場者の事は、文化祭用のLINEグループで共有されているのだ。
届くメンバーは校内の幹部人のみであるが。
『招待客』
『谷高影様、鬼灯詩織様、鳳健吾様、来場』
「どんどん外から来るようになったな」
「佐久真君、お客さん来たの?」
そのLINEを横から暮石が覗き込む。
「鬼灯先輩のお姉さんだっけ? みんな興味あるよねー」
「鬼灯先輩は謎の多い人だからな」
「あの人は……まだかな」
「チケットを渡したからと言って確実に来るとは限らないぞ」
「うん……分かってる」
「……来たら連絡するよ」
そう言って佐久真は風紀委員長の腕章を今一度、グイっと引き上げると校内の警邏へ向かった。
受付で貰った『文化祭の栞』を片手にオレは思った以上の光景に心から湧き立つモノを抑えるので必死だった。
目の前には祭りの屋台の様に多くの出店が並び、それを運営しているのは全て生徒なのだ。
看板やメニュー表は全て手作り。通常の祭りでは絶対に見ることの出来ない特別な空間は、お祭り魂を持つオレからすればワンダーランドだね。
「あぁ、どうしよう。何から手を着けて良いのかわからないぃ」
正直な所、リンカのクラスがやっている『猫耳メイド喫茶』くらいしか期待していなかった。しかし、ここに己の無知を恥じよう。
採算を考える大人の運営する祭りの出店とは違い、手探りの様な荒い部分が良い味を出している。こりゃ、全ての店を回る価値はあるぜ!
「大学の祭りに比べると些かランクは落ちるが、未熟が垣間見える分、普段とは違うインスピレーションを得られそうだ!」
「アクセサリーを売り出している所もあるのね」
エイさんと鬼灯先輩も『文化祭の栞』を片手に楽しめる雰囲気を感じたらしい。可能ならば、オレも文化祭を行う側にも回りたかったぜ。絶対楽しいに決まってる!
「私はヒカリの『猫耳メイド喫茶』へ行こう。二人はどうする?」
エイさんの提案。
ふむ、大本命をいきなり堪能するのも悪くない。リンカとは昨日から顔を合わせてないし、告白するタイミングを話す為にも寄っておくか。
「オレも『猫耳メイド喫茶』! に行きます」
やっべ、テンション上がり過ぎて、“喫茶!”に力入っちゃった。
オレは社会人。周りの学徒達へ大人の威厳を損なわせてはならぬ。
「私は『制服喫茶』に行きます。ここでお別れね、鳳君」
「名残惜しいですが……また状況が交わる事があればエスコートさせていただきやす」
「ふふ。変な口調になってるわよ?」
オレの前世の魂が少し出て来ちまった。さぞ、有名なお祭り男だったのだろう。
「それでは、谷高さん失礼します」
「エイと呼んでくれ。ここには娘も居る。名字では聞き分けしづらいからな」
「わかりました、エイさん」
と、鬼灯先輩は一足先に校内へ向かう。
校内であれば変に絡まれる事も無いだろう。一応、鬼灯先輩は伊達眼鏡をかけて己の“魅了”を少し抑えているし。
「ふむ……」
オレは文化祭の栞を確認。
『制服喫茶』は三階にあるので三年生のクラスか。つまり、鬼灯先輩の妹君は三年生と言う事だ。『猫耳、メイド!(勝手に力が入る) 喫茶』でリンカに聞いて見るかな。
「我々も行くぞケンゴ。まずは『猫耳メイド喫茶』からだ」
「はーい」
と、これから敵の首級を殺りに行く様な気迫を纏うエイさんは校舎に侵入。オレも後に続く。
うわ、都会の高校って本当に綺麗だな。通うだけでテンションが上がりそう。
『神ノ木の里』の校舎なんて、100%木造建築で現代文明を感じられるモノなんて、窓と黒板と黒板消しくらいしか無かったぞ。まぁ、里には殆ど生徒が居なかった事もあるが。
ずんずんと武将オーラを出すエイさんに廊下の生徒達は道を開けてくれる。
社会人が誤解されそうだが、彼女が特別なだけです。すると、
「ちょっと! その雰囲気は抑えてって言ったでしょ!」
「ヒカリ!」
正面からヒカリちゃんの声。迎えに来てくれたようだ。猫耳メイド姿で。最高かよ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる