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第676話 ショウコ。お小遣いをやろう。
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「私は流雲昌子と言う。とある事情からビクトリアの下で世話になっている」
「鮫島瀬奈で~す。ジョーさんの付き添いで~す」
「ジョーさんの付き添い……」
「セナは片腕のワシを気遣ってくれているだけた。『神島』とは関係ない」
セナが政府から派遣されたエージェントかと思っていたビクトリアはホッと胸を撫で下ろす。
「“流雲”か……フェイは元気か?」
「――ご老体、前当主の知り合いか?」
流雲飛。
今は引退して、犬と猫と鶏を飼いつつ闘鶏を楽しみながら隠居生活を行う流雲の前当主である。ショウコからすれば、お小遣いやお菓子をくれる優しいお祖父ちゃんだった。
「昔、世話になった事がある。ヤツほどの腕前だ。他に命を殺られる最期ではあるまい」
「そうなのか? 私が知るフェイじぃは、流雲家の墓守りをしつつ動物の世話に勤しむ穏やかな人なのだが」
“ショウコ。お小遣いをやろう。お前の中のお祖父ちゃんの序列を上の方に持って行っておくれ”
「アイツは『魔神』だ。ヤツが仮面を着けたら誰にも止められん」
そう言えば、フェイじぃが仮面を着けた所は見た事がない。フェイじぃの家に行った時に歴代流雲の仮面がズラッと飾られた壁は怖かった思い出だ。
「前当主と言うことは引き継ぎは終えたか。綺麗な孫娘まで居るとは……人としての余生を送っているらしいな」
人としての余生……
ジョーさんにここまで言わせるなんて……ショウコのじぃさんってどんだけヤバいんだ?
ビクトリアの中でジョージの関係者は相変わらず普通ではないと認識させられる。
「ご老体、やはり前当主とは――」
「ジョーで良い。それか、じぃ様でも良いぞ」
「じゃあ、ジョーさん。前当主とはどんな関係なんだ?」
「……」
ショウコの言葉にジョージは当時を思い出す。
“全部終るまで仮面は取らない。もしも、私がお前たちを殺そうとしたら……その前に私を殺せ、ジョー。私を人のままで逝きたい”
仮面と武器を持ち催眠覚醒に入るフェイは、制限を外れると意識を失った。その際は一騎当千。だが同時に敵と味方の区別がつかなくなる。仮面を着けたフェイが武器を振るう事はその場にミサイルを撃ち込むのと大差ない被害を生む。
敵を一掃した後にジョージにも襲いかかってきた。
“止めろ! フェイ! 戦いは終わりだ! 聞こえんのか!? 聞こえないのなら、アホみたいな事になるぞ!”
催眠覚醒に意識を飲み込まれていたフェイはジョージに襲いかかるも、横からトキに、フッ! プス、と麻痺毒の吹き矢を刺されて最大に転んで、びくびく、痙攣した様を思い出す。
「ふふ。友だ。何かと物事を綺麗に着地させられないヤツだったがな」
「そうなのか。いや……確かにフェイじぃはどこか抜けてる所もあった気がする」
「……」
身内話に花を咲かせる中、ビクトリアはジョージの反応を気にしていた。
今……ジョーさんが、ふふ、って……ショウコのじぃさん……ただ者じゃないなぁ。
怒り以外の感情をあまり表に出さないジョーさんが笑う程の相手だ。対等な関係であると見越すと、流雲飛も相当な実力者なのだろう。
「まぁ、ヤツの武勇伝はヤツに聞け。それよりも、サマーを呼んで来てくれないか?」
「こちらセグ1。Jは一つの民家に入った。各々、距離を取って集まれ」
『こっちは“灰崎”を見つけた。Jを見ていた様だが、敵対の意思はないので帰らせた』
下手な騒ぎはリスクになる。市民との摩擦を可能な限り避けるのも訓練だと思えば程よい案配だ。
「他の不確定要素は可能な限り排斥しててくれ。出てきた所に私が声をかける」
その瞬間がある意味一番危険でもある。
Jは連絡手段が無い事もあり、こちらの事情を知らない。基本的には敵だと考えて視線を向けて来るだろう。
その際に会話の余裕を持たせる為に、自分を殺せる手段を数多に用意できる場で話しかける方が生存率は上がるのだ。
『大丈夫か?』
「一応は訓練で顔は会わせてる。それに話が解らない人じゃない」
それでも、緊張はする。彼は気分一つで国を転覆させる相手だ。優れた人格者である事は誰しもが認めているが、巨大過ぎるモノを背負っている故に、警戒心は異常な程に強い。
「HEY」
Jの入って行った一軒家をそれとなく見張っていたセグ1は、そんな声をかけられて衝撃が走った。
思わず視線を声のした方に向けると、長身の神父が聖書を胸に持ち、見下ろしている。
な……神父……? いや、そんな事よりも、気配が……無かっただと!? いくらJの動向に注視していたとは言え、ここまで存在感のあるモノを見落とすなど――
「オマエラ、何者デース」
ひと足先に文化祭から帰還した神父――ガリアは神の元へ帰る前に、家に向けられる数多の眼に気づいていた。
「マイホームをジロジロ見やがってヨー。アンラック。ワタシが日本に居た事を呪いナサーイ」
「鮫島瀬奈で~す。ジョーさんの付き添いで~す」
「ジョーさんの付き添い……」
「セナは片腕のワシを気遣ってくれているだけた。『神島』とは関係ない」
セナが政府から派遣されたエージェントかと思っていたビクトリアはホッと胸を撫で下ろす。
「“流雲”か……フェイは元気か?」
「――ご老体、前当主の知り合いか?」
流雲飛。
今は引退して、犬と猫と鶏を飼いつつ闘鶏を楽しみながら隠居生活を行う流雲の前当主である。ショウコからすれば、お小遣いやお菓子をくれる優しいお祖父ちゃんだった。
「昔、世話になった事がある。ヤツほどの腕前だ。他に命を殺られる最期ではあるまい」
「そうなのか? 私が知るフェイじぃは、流雲家の墓守りをしつつ動物の世話に勤しむ穏やかな人なのだが」
“ショウコ。お小遣いをやろう。お前の中のお祖父ちゃんの序列を上の方に持って行っておくれ”
「アイツは『魔神』だ。ヤツが仮面を着けたら誰にも止められん」
そう言えば、フェイじぃが仮面を着けた所は見た事がない。フェイじぃの家に行った時に歴代流雲の仮面がズラッと飾られた壁は怖かった思い出だ。
「前当主と言うことは引き継ぎは終えたか。綺麗な孫娘まで居るとは……人としての余生を送っているらしいな」
人としての余生……
ジョーさんにここまで言わせるなんて……ショウコのじぃさんってどんだけヤバいんだ?
ビクトリアの中でジョージの関係者は相変わらず普通ではないと認識させられる。
「ご老体、やはり前当主とは――」
「ジョーで良い。それか、じぃ様でも良いぞ」
「じゃあ、ジョーさん。前当主とはどんな関係なんだ?」
「……」
ショウコの言葉にジョージは当時を思い出す。
“全部終るまで仮面は取らない。もしも、私がお前たちを殺そうとしたら……その前に私を殺せ、ジョー。私を人のままで逝きたい”
仮面と武器を持ち催眠覚醒に入るフェイは、制限を外れると意識を失った。その際は一騎当千。だが同時に敵と味方の区別がつかなくなる。仮面を着けたフェイが武器を振るう事はその場にミサイルを撃ち込むのと大差ない被害を生む。
敵を一掃した後にジョージにも襲いかかってきた。
“止めろ! フェイ! 戦いは終わりだ! 聞こえんのか!? 聞こえないのなら、アホみたいな事になるぞ!”
催眠覚醒に意識を飲み込まれていたフェイはジョージに襲いかかるも、横からトキに、フッ! プス、と麻痺毒の吹き矢を刺されて最大に転んで、びくびく、痙攣した様を思い出す。
「ふふ。友だ。何かと物事を綺麗に着地させられないヤツだったがな」
「そうなのか。いや……確かにフェイじぃはどこか抜けてる所もあった気がする」
「……」
身内話に花を咲かせる中、ビクトリアはジョージの反応を気にしていた。
今……ジョーさんが、ふふ、って……ショウコのじぃさん……ただ者じゃないなぁ。
怒り以外の感情をあまり表に出さないジョーさんが笑う程の相手だ。対等な関係であると見越すと、流雲飛も相当な実力者なのだろう。
「まぁ、ヤツの武勇伝はヤツに聞け。それよりも、サマーを呼んで来てくれないか?」
「こちらセグ1。Jは一つの民家に入った。各々、距離を取って集まれ」
『こっちは“灰崎”を見つけた。Jを見ていた様だが、敵対の意思はないので帰らせた』
下手な騒ぎはリスクになる。市民との摩擦を可能な限り避けるのも訓練だと思えば程よい案配だ。
「他の不確定要素は可能な限り排斥しててくれ。出てきた所に私が声をかける」
その瞬間がある意味一番危険でもある。
Jは連絡手段が無い事もあり、こちらの事情を知らない。基本的には敵だと考えて視線を向けて来るだろう。
その際に会話の余裕を持たせる為に、自分を殺せる手段を数多に用意できる場で話しかける方が生存率は上がるのだ。
『大丈夫か?』
「一応は訓練で顔は会わせてる。それに話が解らない人じゃない」
それでも、緊張はする。彼は気分一つで国を転覆させる相手だ。優れた人格者である事は誰しもが認めているが、巨大過ぎるモノを背負っている故に、警戒心は異常な程に強い。
「HEY」
Jの入って行った一軒家をそれとなく見張っていたセグ1は、そんな声をかけられて衝撃が走った。
思わず視線を声のした方に向けると、長身の神父が聖書を胸に持ち、見下ろしている。
な……神父……? いや、そんな事よりも、気配が……無かっただと!? いくらJの動向に注視していたとは言え、ここまで存在感のあるモノを見落とすなど――
「オマエラ、何者デース」
ひと足先に文化祭から帰還した神父――ガリアは神の元へ帰る前に、家に向けられる数多の眼に気づいていた。
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