懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話

六剣

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第689話 見~た~なぁ~

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「お前ら、今日はもう帰って良い」

 ジョージは待機していたセグ1とセグ3へ本日は引き上げる様に告げていた。

「梟の所にはタクシーで行く。今日は世話をかけたな」
「いえ……」

 チラッ、とジョージは背後でケンゴに案内されている赤羽を見る。明らかに敵視したその視線にこれから起こるのは生死をかけた戦いであると二人に想像させた。

「ジョーさん……我々に出来る事は……」
「足手まといかもしれませんが、囮くらいにはなりますよ」
「家族の所に帰れ。『霞部隊』は本来なら無かったモノだ。次の召集まで日常を大切に過ごせ」

 その言葉に二人は自然と敬礼し、じゃあな、と背を向けてケンゴの部屋に向かうジョージの様子を見送った。

「帰るか」
「ああ」

 そして、車に行きながら二人は少しだけ冷静になる。
 良く考えれば、ジェンガで人が死ぬのか?





「……」

 文化祭から帰路につくリンカは、今後の身の振り方を考えていた。
 ようやく彼と付き合う事になった。名実共に彼氏と彼女になったワケなのだが……これからの関係を考えると――

「なんか、あんまり変わんないかなぁ」

 休日に一緒に過ごすのは普通にデフォルトだったし、食事なんかも一緒に食べてたし、お母さんも彼の事は気に入ってくれてるし、後は――

「あたしの年齢か」

 問題はソコに尽きる。しかし、ただ歳を取るだけではなく、ちゃんと就職して彼と一緒に生活を支えて、子供も――

「……早い早い早い」

 ほわほわ、と浮かんでいた彼との10年後くらいの未来を、ぶんぶんと手で払う。
 背を追いかけてばかりだった彼の手をようやく掴んだのだ。焦らずに、彼に頼り頼られる大人になって行こう。

「……あ」

 そんな考えをしているとアパートに着いてしまった。買い物をし忘れた……まぁ、着替えて彼を誘って一緒に行こう。それくらいなら普段の流れだし問題ないハズ。
 夕飯を三人で囲いつつ、お母さんにも彼との関係が進んだ事をきちんと伝えなきゃ。

「……?」

 アパートを見上げると、妙なオーラが二階から漂っている。心無しか、電柱に停まるカラスも多い気がする。
 取りあえず、二階に上がり。自分の部屋の前まで行くとそのオーラの明確な位置が解った。

「……何やってんだか」

 それは彼の部屋からだ。また、面倒事でも背負い込んだのか、つくづく、じっとするのが性に合わないらしい。
 来客だったら失礼なので、LINEで状況を聞いて見よう。女性関連だったら、問答無用で突撃する。

「夕飯ウチで食べるか? と」

 返信を待つ間に部屋に入る。母が休みなので鍵は開ている。

「おかえりなさ~い、リンちゃん~」
「ただいま」

 すると母が台所でトントンやっていた。買い物を済ませてくれたのか、夕飯の支度をしている様だ。

「ご飯作ってくれてるんだ?」
「ん~ちょっとね~」

 彼が『里帰り』した際にお土産に持ってきた熊肉は鮫島家が調理を任されているのだ。
 相変わらず良い匂いだ。料理をする母の足下にはジャックが、くれくれ視線を見上げてる。蹴られると危ないのでジャックを抱えて奥へ引っ込む。

「♪~♪~」

 お母さん、機嫌が良いなぁ。昼間に何かあったのだろうか?
 制服を脱いで普段を着替える。すると、居間にあるテーブルに写真の束が置いてあった。

「…………? 何これ?」

 写っていたのは世にも奇妙な二人。
 一人はメイド服を着た母だ。なんと言うか……サイズが……。うん……なんか、ギリギリまだ着れる感。娘としてちょっと複雑。好きな人は好きそうだけど。
 そんで、もう一人はアヌビスである。例えばではなく、アヌビスの被り物をした人物が執事服を着て共に写っている。
 背景はお婆さんのお店だろう。写真を何枚か見ると、際どいポーズや下からのアングルとか、男ウケが良さそうな写真ばかりだ。
 しかし、アヌビスが絶妙に割り込んで、ロソショットを阻止している。なんだか……アヌビスの方が常識人に見えなくもない。見た目は完全に異常者のソレだけど。

 世界を三巡ほどさせた世界観の写真はカオスと言うより他は無い。お母さんも何でメイド服をチョイスしたのか。もういい歳なのに――

「見~た~なぁ~」
「ひっ!?」

 後ろから地獄から沸き上がるような声に、驚いて写真を落とした。
 あらら~と、お母さんは落ちた写真を拾う。

「リンちゃん、酷いわ~。お母さんのメモリアルを勝手に見るなんて~」
「……それならちゃんと仕舞っときなよ」

 あたしも拾うのを手伝う。するとお母さんは一枚の写真――メイド母とアヌビス執事が横に並んで写ったモノを拾い上げて嬉しそうに目に止めた。

「……そんなにあの店楽しかった?」

 物珍しいモノが揃う『スイレンの雑貨店』は、あたしも最初の頃はワクワクした。今は“罠”にかけられてから、ちょっと苦手意識があるが。

「ふふ。そうね~必死なあの人を思い出すと~ふふ♪」
「?」

 仕舞っといて~と母は写真を手渡してくる。あたしはソレを見るが、やはり混沌しか感じない一枚だ。
 しかし、母にとっては随分と意味合いが違うらしい。なんにせよ、楽しかった様子なので夕食時に話を振ってみようかな。

「よし。出来た~」

 母が調理を終えたらしい。出来上がったのは、熊肉の甘辛焼き。焼き豆腐を混ぜた逸品はご飯が進みそうな匂いがしている。そして、盛り付けられたのは皿は二つ。ジャックが期待して尻尾を振っていた。

「ごめんね、ジャック~。これは隣の部屋用なの~」
「ニャッ!?」

 母の言葉を理解したのか、ジャックは短く鳴く。

「リンちゃん~」
「なに?」
「これを持って、ケンゴ君を助けに行ってあげて~」
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