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093 強制カンパ
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アデーレに命じて、俺の前に置かれたフレイムドッグをテイムさせる。
テイムが成功するとすかさず殺して次の獲物をテイムさせ、その度にアデーレのテイマースキルを鑑定するが、初級中に変化無し。
陽が傾きはじめたので街に戻ると言い出す彼等に、食料はたっぷり保存しているので野営をすると伝えた。
渋る彼等に訳を尋ねると、野営の経験が無い事が判明した。
木の葉も落ち始めたこの季節に、野営の準備が無いのは不味いので急いで街に戻る事にした。
話を良く聞けば装備も手槍や弓程度で、マジックポーチもパーティー名義の最低ランク1-5が一つだけとの事だ。
ギルドに戻ると解体場に直行して、獲物を全て彼等に渡し一日分の銀貨六枚を支払う。
「こんなにして貰っても良いんですか?」
「明日以降も来てくれるのなら野営の装備は此方で用意するが、どうする?」
「お願いします。幻獣がいなくてもテイム出来るだけでも嬉しいですし、自信がつきます。」
アデーレが即座に返事をすると、亭主のガイルやリーダーのエドガも慌てて「お願いします」と頭を下げる。
〈へっ、幻獣だってよ〉
〈万年Fランクパーティーが寝言を言ってるぜ」
〈ばーか、奴等が頭を下げている相手を良く見ろよ」
〈ありゃー噂の幻獣使いだぞ〉
不味った、此処は食堂で酔っ払いが大勢いたんだった。
「おい、万年Fラン、幻獣が手に入ったら俺達のパーティーで使ってやるぞ」
「お前達は草原の片隅で、ゴブリンから逃げ回っているのが似合っているんだ。高望みはするなよ」
実力主義の冒険者の世界とはいえ、屑に揶揄われてエドガ達が顔を伏せている。
気に入らないな。
「お前等、人の話の腰を折って、何をへらへら揶揄ってくれてるの。喧嘩を売っているのなら、俺の前に来て言えよ」
隣で飲んでいた赤ら顔の大男が立ち上がると、仲間達もそれに続いて立ち上がった。
「おうよ。幻獣のお陰で、ちんけな街の侯爵になったチンピラが、意気がるんじゃねえぞ。冒険者の格好をしているんだ、お貴族様とは言わせねえからな」
「だな、俺達に喧嘩を売るんだ、それなりの覚悟はあるんだろうな」
「心配するな。模擬戦で叩き潰してやるからサブマスを呼んで来い。それとも、街の外で心置きなくやるかい?」
「おう、サブマスを呼んで来い!」
隣のテーブルに座る男に命令しているが、仲間ではなさそうで断られている。
「俺を巻き込むなよ。黒い牙の喧嘩だろう。自分達だけでやれや」
「あらっ、軽く扱われているねぇ。低ランク相手にしか意気がれないのかよ」
「糞ッ、お前呼んで来い」
隣の男に命令しているが、其奴は俺の顔を見て躊躇っているので尻を蹴ってやる。
「呼んで来いよ。仲間一人にやらせる気か、後で虐められちゃうよ」
半笑いで言ってやると、憤然とした顔でカウンターの方へ行った。
「よーし、模擬戦決定。俺はチンピラ侯爵に賭けるぞ!」
「チンピラ侯爵なんて言ってると、街を放り出されても知らねぇぞ」
「此処は冒険者ギルドだ。街中じゃ言わねえよ」
「残念、グレイン生まれの冒険者も多いんだぞ。明日辺り警備兵の当たりがキツいぞー」
「街から逃げ出す前に、賭け金は置いて行けよ。俺は黒い牙に賭けさせてもらうわ」
「俺は幻獣遣いに銀貨五枚!」
そこ此処で賭けが始まった所で、サブマス登場。
「なんだ。あんたが模擬戦をするのか?」
「俺が雇っている連中を揶揄われては黙って見過ごせないからな。後悔させてから街から放り出してやる」
「なんちゅう領主様だ」
「よーし。冒険者とお貴族様の模擬戦だ。特等席を確保するぞ」
遠巻きに成り行きを見守っていた奴等が、訓練場に向かっている。
「ランディスさん、大丈夫なんですか?」
「エドガ、さんは無しだ。ちょっと痛めつけてお宝を巻き上げてやる」
「それってまるっきり野盗の台詞ですよ」
「ランディスさ・・・が貴族に見えなくなってきたな」
「幻獣を操っているときはキリッとして格好良かったのにねぇ」
「おらっ、お前達もさっさと来い!」
「あれぇー、俺一人との喧嘩の筈だろう。勝てそうな相手を巻き込むなよ。それとも恐いの?」
揶揄われているのが判るのだろう、憤怒の表情で訓練場に向かう馬鹿。
「大丈夫なんですよね」
「問題ないよ。奴等って精々Dランクが一人か二人で、残りはEランクだね。俺に全財産を賭けておきな」
* * * * * * *
訓練場で向き合うと相手は八人もいた。
〈おい、八対一じゃねぇかよ〉
〈ファングドッグの牙の奴等が、模擬戦なんか受けるかよ〉
〈奴等は薬草採取や、ゴブリン相手が精一杯のパーティーだぞ〉
〈そんな事より、八人相手はキツいんじゃねぇか〉
〈お前は素人かよ。模擬戦は一対一が基本だ!〉
「サブマス、ちんたらしていると陽が暮れちゃうので、全員とやらせてよ」
「大丈夫か? 何かあったら俺達が迷惑するんだぞ」
「ギルドがでしょう、俺は迷惑じゃないし纏めて片づけたいの。彼奴らが恐いって言うのなら一人ずつでも良いけどさ」
「サブマス、俺達は大歓迎だぜ」
「そうそう。早く片付けてエールを飲みたいし」
「お貴族様をフルボッコに出来るチャンスだぜ」
「奴等もやる気満々だし、始めようか」
グレイとの訓練に使っていた、短槍紛いの棍を振り回してやる気を見せる。
グレイを散々殴り、その倍以上殴り返されたが、久しく血を吸っていない棍の恐ろしさを教えてやろう。
刃が付いていないので血を吸う事はなかったが、気分の問題だ。
呆れ顔のサブマスが面倒くさそうに「始めー」の声を掛ける。
さーてと思ったら、フラッグがフードから伸びをして特等席で見物する気の様だ。
正面にいた男がフラッグを見て目を見開いている。
すかさずその男の胸元目掛けて棍を突き入れると、大の字になって後ろに吹き飛んだ。
男のいなくなった場所に飛び込み後ろに回ると、棍をフルスイングで振り左側の三人の背中をしばきあげる。
〈グェッ〉とか〈ギャァー〉とか、心地よい悲鳴が聞こえる。
反対側で狼狽える男の股間にサッカーボールキックを打ち込み、蹲った男の隣りの奴に回し蹴りをお見舞いする。
〈ウゲッ〉と脇腹を抱えて倒れ込む男で六人、一番外側に居た二人が慌てているが遅い!
倒れ込んだ男を飛び越しざまにドロップキックで吹き飛ばし、反対側の男に向かってロケットスタート。
慌てて俺に向きなおりロングソードを模した木剣を構えるが、勢いのまま腹に棍を突き入れる。
くの字に身体を折り後ろに下がったが、七転八倒の苦しみようは見ていてお気の毒様と・・・笑いがこみ上げてくる。
「止めー・・・もう少し手加減してやれよ」
「えっ、此奴等は俺を痛めつけようとしていたんだぞ、この程度で済めば御の字だろう」
〈かぁー、八人をあっと言う間に潰しちまったぜ〉
〈よーし! 銀貨五枚頂きだぜ!〉
〈糞ッ、八人も居て、総掛かりで負けるかよ〉
〈それも一振りもせずに負けやがって。街から出て行け!〉
「どうするんだ、此」
「何を?」
「全員動けない様だが、こんな所に転がっていては困るんだ」
「ギルドのポーションを飲ませれば良いだろう」
「ただでは飲ませられんし、不味いポーションで治るとも思えんのだが」
「ポーション代も持って無いの?」
尋ねて見ると言って、呻いている奴等に確認したが銀貨数枚しか持っていないとの事。
「ギルドが貸せるのはどれ位なの?」
「金貨五枚、500,000ダーラまでなら貸せるが、奴等の稼ぎなら確実に借金奴隷だな」
「彼奴らが此処で転がっているのが嫌なら、金貨五枚で治療してやろうか」
「お前、治癒魔法が使えるのか?」
「俺じゃないよ。使役獣で治癒魔法が使えるのが居るからね」
サブマスは俺の顔と転がって呻いている奴等を交互に見て考えていたが、呻いている奴等の所へ行き何事かを話している。
戻ってくると「ギルドから借金して支払うそうなので、治してやってくれ」とのお言葉。
表からグレイとブラックを連れてきて、グレイの監督でブラックに治療の練習ををさせる。
呻いている奴の額に前足を乗せると、ブラックの前足から額に淡い光りが流れ込む。
野獣で練習をさせたが、人族相手でも問題なく治療出来ている。
グレイは、肉球を押し当てて治療する事までもブラックに伝授していたのかと、吹き出してしまった。
八人の治療を済ませた所でブラックを鑑定したが、167の魔力が143に減っていた。
一人当たり魔力を三つ使っている事になるが、骨折や打撲に内臓損傷の男も治しているので優秀な方かな。
「お前達、ギルドからの借金を払い終わるまで、この街から出て行けないからな。逃げ出せば手配するので犯罪奴隷に落ちるぞ」
「えっ、そんな規約があったの?」
「冒険者ギルドはそんなに甘くねえよ。気楽に金を貸していたら方々で借りる奴が出て来るからな」
「此奴等は街から放り出したかったんだけど」
「諦めるんだな、侯爵殿」
サブマスが嬉しそうに言ってくるのが癪だが、痛めつけたのは俺なので仕方がない。
受付で奴等の治療代金貨40枚を受け取り、エドガには明日はギルドで待っていろと告げて屋敷に戻った。
* * * * * * *
ギルドの食堂へ迎えに行くとエドガ達六人が待っていたので、彼等を連れて冒険者の店に向かった。
少数の冒険者が品定めをしているのを横目に、カウンターに陣取る男に3-10のマジックポーチが欲しいと告げる。
俺の服を上から下まで眺めてから「金貨15枚、1,500,000ダーラだ」と低い声で教えてくれる。
(よーく知っていますよ)心の中で返事をしながらマジックバッグから金貨15枚を取りだしてカウンターに置く。
「後ろの六人で、使用者登録と登録者制限も頼む」
チラリと店の奥を見てから頷き、六人を呼び順番に使用者登録をしてくれた。
「ランディスさん、此って」
「さんは無しだ。昨日黒い牙の奴等が提供してくれた金だ、有り難く使わせてもらえば良いのさ。俺に礼を言う必要は無いぞ」
テイムが成功するとすかさず殺して次の獲物をテイムさせ、その度にアデーレのテイマースキルを鑑定するが、初級中に変化無し。
陽が傾きはじめたので街に戻ると言い出す彼等に、食料はたっぷり保存しているので野営をすると伝えた。
渋る彼等に訳を尋ねると、野営の経験が無い事が判明した。
木の葉も落ち始めたこの季節に、野営の準備が無いのは不味いので急いで街に戻る事にした。
話を良く聞けば装備も手槍や弓程度で、マジックポーチもパーティー名義の最低ランク1-5が一つだけとの事だ。
ギルドに戻ると解体場に直行して、獲物を全て彼等に渡し一日分の銀貨六枚を支払う。
「こんなにして貰っても良いんですか?」
「明日以降も来てくれるのなら野営の装備は此方で用意するが、どうする?」
「お願いします。幻獣がいなくてもテイム出来るだけでも嬉しいですし、自信がつきます。」
アデーレが即座に返事をすると、亭主のガイルやリーダーのエドガも慌てて「お願いします」と頭を下げる。
〈へっ、幻獣だってよ〉
〈万年Fランクパーティーが寝言を言ってるぜ」
〈ばーか、奴等が頭を下げている相手を良く見ろよ」
〈ありゃー噂の幻獣使いだぞ〉
不味った、此処は食堂で酔っ払いが大勢いたんだった。
「おい、万年Fラン、幻獣が手に入ったら俺達のパーティーで使ってやるぞ」
「お前達は草原の片隅で、ゴブリンから逃げ回っているのが似合っているんだ。高望みはするなよ」
実力主義の冒険者の世界とはいえ、屑に揶揄われてエドガ達が顔を伏せている。
気に入らないな。
「お前等、人の話の腰を折って、何をへらへら揶揄ってくれてるの。喧嘩を売っているのなら、俺の前に来て言えよ」
隣で飲んでいた赤ら顔の大男が立ち上がると、仲間達もそれに続いて立ち上がった。
「おうよ。幻獣のお陰で、ちんけな街の侯爵になったチンピラが、意気がるんじゃねえぞ。冒険者の格好をしているんだ、お貴族様とは言わせねえからな」
「だな、俺達に喧嘩を売るんだ、それなりの覚悟はあるんだろうな」
「心配するな。模擬戦で叩き潰してやるからサブマスを呼んで来い。それとも、街の外で心置きなくやるかい?」
「おう、サブマスを呼んで来い!」
隣のテーブルに座る男に命令しているが、仲間ではなさそうで断られている。
「俺を巻き込むなよ。黒い牙の喧嘩だろう。自分達だけでやれや」
「あらっ、軽く扱われているねぇ。低ランク相手にしか意気がれないのかよ」
「糞ッ、お前呼んで来い」
隣の男に命令しているが、其奴は俺の顔を見て躊躇っているので尻を蹴ってやる。
「呼んで来いよ。仲間一人にやらせる気か、後で虐められちゃうよ」
半笑いで言ってやると、憤然とした顔でカウンターの方へ行った。
「よーし、模擬戦決定。俺はチンピラ侯爵に賭けるぞ!」
「チンピラ侯爵なんて言ってると、街を放り出されても知らねぇぞ」
「此処は冒険者ギルドだ。街中じゃ言わねえよ」
「残念、グレイン生まれの冒険者も多いんだぞ。明日辺り警備兵の当たりがキツいぞー」
「街から逃げ出す前に、賭け金は置いて行けよ。俺は黒い牙に賭けさせてもらうわ」
「俺は幻獣遣いに銀貨五枚!」
そこ此処で賭けが始まった所で、サブマス登場。
「なんだ。あんたが模擬戦をするのか?」
「俺が雇っている連中を揶揄われては黙って見過ごせないからな。後悔させてから街から放り出してやる」
「なんちゅう領主様だ」
「よーし。冒険者とお貴族様の模擬戦だ。特等席を確保するぞ」
遠巻きに成り行きを見守っていた奴等が、訓練場に向かっている。
「ランディスさん、大丈夫なんですか?」
「エドガ、さんは無しだ。ちょっと痛めつけてお宝を巻き上げてやる」
「それってまるっきり野盗の台詞ですよ」
「ランディスさ・・・が貴族に見えなくなってきたな」
「幻獣を操っているときはキリッとして格好良かったのにねぇ」
「おらっ、お前達もさっさと来い!」
「あれぇー、俺一人との喧嘩の筈だろう。勝てそうな相手を巻き込むなよ。それとも恐いの?」
揶揄われているのが判るのだろう、憤怒の表情で訓練場に向かう馬鹿。
「大丈夫なんですよね」
「問題ないよ。奴等って精々Dランクが一人か二人で、残りはEランクだね。俺に全財産を賭けておきな」
* * * * * * *
訓練場で向き合うと相手は八人もいた。
〈おい、八対一じゃねぇかよ〉
〈ファングドッグの牙の奴等が、模擬戦なんか受けるかよ〉
〈奴等は薬草採取や、ゴブリン相手が精一杯のパーティーだぞ〉
〈そんな事より、八人相手はキツいんじゃねぇか〉
〈お前は素人かよ。模擬戦は一対一が基本だ!〉
「サブマス、ちんたらしていると陽が暮れちゃうので、全員とやらせてよ」
「大丈夫か? 何かあったら俺達が迷惑するんだぞ」
「ギルドがでしょう、俺は迷惑じゃないし纏めて片づけたいの。彼奴らが恐いって言うのなら一人ずつでも良いけどさ」
「サブマス、俺達は大歓迎だぜ」
「そうそう。早く片付けてエールを飲みたいし」
「お貴族様をフルボッコに出来るチャンスだぜ」
「奴等もやる気満々だし、始めようか」
グレイとの訓練に使っていた、短槍紛いの棍を振り回してやる気を見せる。
グレイを散々殴り、その倍以上殴り返されたが、久しく血を吸っていない棍の恐ろしさを教えてやろう。
刃が付いていないので血を吸う事はなかったが、気分の問題だ。
呆れ顔のサブマスが面倒くさそうに「始めー」の声を掛ける。
さーてと思ったら、フラッグがフードから伸びをして特等席で見物する気の様だ。
正面にいた男がフラッグを見て目を見開いている。
すかさずその男の胸元目掛けて棍を突き入れると、大の字になって後ろに吹き飛んだ。
男のいなくなった場所に飛び込み後ろに回ると、棍をフルスイングで振り左側の三人の背中をしばきあげる。
〈グェッ〉とか〈ギャァー〉とか、心地よい悲鳴が聞こえる。
反対側で狼狽える男の股間にサッカーボールキックを打ち込み、蹲った男の隣りの奴に回し蹴りをお見舞いする。
〈ウゲッ〉と脇腹を抱えて倒れ込む男で六人、一番外側に居た二人が慌てているが遅い!
倒れ込んだ男を飛び越しざまにドロップキックで吹き飛ばし、反対側の男に向かってロケットスタート。
慌てて俺に向きなおりロングソードを模した木剣を構えるが、勢いのまま腹に棍を突き入れる。
くの字に身体を折り後ろに下がったが、七転八倒の苦しみようは見ていてお気の毒様と・・・笑いがこみ上げてくる。
「止めー・・・もう少し手加減してやれよ」
「えっ、此奴等は俺を痛めつけようとしていたんだぞ、この程度で済めば御の字だろう」
〈かぁー、八人をあっと言う間に潰しちまったぜ〉
〈よーし! 銀貨五枚頂きだぜ!〉
〈糞ッ、八人も居て、総掛かりで負けるかよ〉
〈それも一振りもせずに負けやがって。街から出て行け!〉
「どうするんだ、此」
「何を?」
「全員動けない様だが、こんな所に転がっていては困るんだ」
「ギルドのポーションを飲ませれば良いだろう」
「ただでは飲ませられんし、不味いポーションで治るとも思えんのだが」
「ポーション代も持って無いの?」
尋ねて見ると言って、呻いている奴等に確認したが銀貨数枚しか持っていないとの事。
「ギルドが貸せるのはどれ位なの?」
「金貨五枚、500,000ダーラまでなら貸せるが、奴等の稼ぎなら確実に借金奴隷だな」
「彼奴らが此処で転がっているのが嫌なら、金貨五枚で治療してやろうか」
「お前、治癒魔法が使えるのか?」
「俺じゃないよ。使役獣で治癒魔法が使えるのが居るからね」
サブマスは俺の顔と転がって呻いている奴等を交互に見て考えていたが、呻いている奴等の所へ行き何事かを話している。
戻ってくると「ギルドから借金して支払うそうなので、治してやってくれ」とのお言葉。
表からグレイとブラックを連れてきて、グレイの監督でブラックに治療の練習ををさせる。
呻いている奴の額に前足を乗せると、ブラックの前足から額に淡い光りが流れ込む。
野獣で練習をさせたが、人族相手でも問題なく治療出来ている。
グレイは、肉球を押し当てて治療する事までもブラックに伝授していたのかと、吹き出してしまった。
八人の治療を済ませた所でブラックを鑑定したが、167の魔力が143に減っていた。
一人当たり魔力を三つ使っている事になるが、骨折や打撲に内臓損傷の男も治しているので優秀な方かな。
「お前達、ギルドからの借金を払い終わるまで、この街から出て行けないからな。逃げ出せば手配するので犯罪奴隷に落ちるぞ」
「えっ、そんな規約があったの?」
「冒険者ギルドはそんなに甘くねえよ。気楽に金を貸していたら方々で借りる奴が出て来るからな」
「此奴等は街から放り出したかったんだけど」
「諦めるんだな、侯爵殿」
サブマスが嬉しそうに言ってくるのが癪だが、痛めつけたのは俺なので仕方がない。
受付で奴等の治療代金貨40枚を受け取り、エドガには明日はギルドで待っていろと告げて屋敷に戻った。
* * * * * * *
ギルドの食堂へ迎えに行くとエドガ達六人が待っていたので、彼等を連れて冒険者の店に向かった。
少数の冒険者が品定めをしているのを横目に、カウンターに陣取る男に3-10のマジックポーチが欲しいと告げる。
俺の服を上から下まで眺めてから「金貨15枚、1,500,000ダーラだ」と低い声で教えてくれる。
(よーく知っていますよ)心の中で返事をしながらマジックバッグから金貨15枚を取りだしてカウンターに置く。
「後ろの六人で、使用者登録と登録者制限も頼む」
チラリと店の奥を見てから頷き、六人を呼び順番に使用者登録をしてくれた。
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「さんは無しだ。昨日黒い牙の奴等が提供してくれた金だ、有り難く使わせてもらえば良いのさ。俺に礼を言う必要は無いぞ」
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追記:2025/09/20
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