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102 チンピラテイマー
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「エドガ達に仕事を頼みたいのだが受けて貰えないか」
「ランディスさん・・・ランディスの頼みなら喜んで」
「個人的に頼む事で、パーティーに月金貨三枚、仕事は普通にしていれば良いよ。普通に生活して、街の不満や不正噂話等を聞いたら、それを書状にしてハリスンとレイゼンに送るだけ」
「ハリスンさんは判りますけど、レイゼン?」
「レイゼンはこの街の行政官だな。元は代官が治めていたときに代官の補佐と書記をしていた男だよ。あの屋敷に居た筈だけど会った事がないかな。それと、テイマースキル持ちが居たら教えてよ」
「誰でも良いのですか」
「質の悪いのは駄目だよ。無理に探す必要はないからね」
「やっぱり幻獣を探すのですか?」
「そうじゃない、ナンガスの町に行って来たんだが野獣が増えていると聞いた。町や村に被害が出ない様に、使役獣を増やしたいのさ。ウルフクラスの使役獣が居れば、それだけで十分役に立つ筈だし」
「ウルフ系だと、上手く鍛える事が出来れば立派な戦力になります」
「その時は、アデーレに使役獣の扱い方の指導をお願いするよ。勿論その分の賃金は支払うからさ」
「何時でも声を掛けて下さい。お役に立てる様に頑張ります」
やっぱり此のパーティーは真面目ちゃん揃いだわ。
エドガ達と別れてギルマスに面会を求めると、直ぐに執務室に案内された。
「侯爵殿、今日は何のご用で」
「このギルドに土魔法使いってどの程度居ます。と言うか、町の防壁造りが出来る土魔法使いかな」
「ナンガスに行っていたんだってな」
「あの防壁じゃ、少し大きなバッファローが突撃すれば壊れますよ」
「代理人の話を聞いたか?」
「いま調べさせていますが、町の安全を余り考えていない様なので近いうちに・・・ね。それとこの間紹介してくれたテイマー、少しはテイムの練習をしていますか」
「俺が知る訳ないだろう」
「暇な時にホーンラビットやゴブリンでも良いので、テイムの練習をしろと言っておいてよ」
「おっ、幻獣を世話してやるのか」
「あのねぇ、幻獣なんて何十頭もテイムして一頭居るかどうかなんだよ。ウルフ程度で良ければ、俺達なら直ぐにテイムさせる事が出来るんだよ。野獣をテイムするには、幼獣から育てるか弱らせてテイムするのは知っているだろう」
「ああ、弱らせてテイムしても、怪我をしたりして使い物になるのは極僅かだって事もな」
「その弱らせたり怪我をしている野獣でも、俺達ならテイムしてから治せるんだよ」
「そうだった。お前の幻獣は治癒魔法が使えたんだったな」
「幼獣からテイムして鍛えるのが理想だろうけど、成獣をテイムしたら、使役獣を連れているテイマーに躾の方法を教えてもらえば早いだろう」
「ん、それはお前が教えるんじゃないのか」
「俺って此でも侯爵で、結構忙しいんだよ」
ギルマスが胡散臭げな目で俺を見てくるが、本当の事だぜ。
* * * * * * *
ギルマスとの話を終えて下に降りていくと、エドガ達がガラの悪そうな奴等に取り囲まれていたので、気配を消して静かに近づく。
「だから、侯爵様の手助けであの仔を手に入れたのよ。ヴォルグはたまたまテイムした時に、幻獣と判っただけよ」
「そうだぜ、テイムする前に幻獣だと判っていてテイムするなんて、出来る筈がないだろう」
「それならお前が俺達のパーティーに入れば良かろう。どうせ薬草採取やゴブリン程度しか相手に出来なかったお前等だ、幻獣を手に入れて意気がる何て千年早いんだよ」
「断る! 此でも俺達はグレイン侯爵様の配下なので、勝手な事は出来ない。どうしても引き抜きたければ、グレイン侯爵様に話をつけてきてくれ」
「ふん、グレイン侯爵様か。幻獣を連れているだけで貴族になった小僧に、頭を下げろってか」
「チンピラテイマーに、頭なんか下げられるかよ」
「あまり舐めた事を言ってると、森で会った時に後悔するぞ」
「後悔するのはお前達だよ」
俺の声に慌てて振り向いた奴の金タマを蹴り上げると、白目を剥いて座り込んでしまった。
「てめぇー、やりやがったな!」
「誰だ、おめえは?」
食堂で飲んでいた連中が〈喧嘩だ!〉〈おー、やれやれー〉とか〈どっちが強いんだ?〉〈賭けるか〉なんて、嬉しそうにはしゃいでいる。
「俺達相手に喧嘩を売るとは良い度胸だ」
「ギルドの中で手を出したんだ、地下牢行きの覚悟はあるんだろうな」
「お喋りするより先に手を出せよ」
凄む男の横っ面を張り倒し、隣の男を蹴り付ける。
「ランディスさん!」
「話は後で、此奴等を叩きのめしてからだ!」
〈誰だ、暴れている奴等は!〉
〈静かにしろ!〉
〈お前等、誰も動くな!〉
凄んでいた奴等がギルド職員に剣を突きつけられて手を上げている。
剣を突きつけてきた職員が、俺の顔を見て戸惑っている。
「俺達は其奴に殴られただけだぜ」
「其処に転がっている奴は、其奴にいきなり股を蹴り上げられたんだぞ!」
「俺達は其奴等と話をしていただけなのに、いきなり殴りつけられただけだ!」
「侯爵殿・・・何をやっているんですか?」
手を上げて自分達は悪くないと叫んでいた奴らが、ギョッとした顔で俺を見るので、ご挨拶。
「どうも、チンピラテイマーでーす」
俺とサブマスの顔を見比べて震えている馬鹿。
その馬鹿を突き飛ばし〈逃げろ!〉と吠えて、職員に体当たりをして逃げ出した奴等。
不意を突かれてまんまと逃げられた職員が、逃げ遅れた奴等を取り押さえているので《アッシュ、今飛び出して行った奴等を捕まえてよ》とお願いしておく。
《任せて、ランディ》
《グレイ、殺しちゃ駄目よ》
《あい》
「サブマス、其奴等は俺の配下を脅していたんだ。アデーレと幻獣を引き抜こうとして断られたら『森で会った時に後悔するぞ』なんてね」
《ランディ、捕まえたよ》
《面倒だから早く来てね》
《ランディ、どうするの?》
「大変だー、使役獣が暴れているぞ!」
「タイガーキャットに食われているぞー!」
《失礼な奴ね。こんな不味そうなものを食べないわよ》
《ランディ、沢山集まって来たよ》
「サブマス、侯爵様の幻獣が、逃げ出した奴等を踏みつけてます!」
表の騒ぎを見に行った職員が、サブマスに怒鳴っている。
それを聞いたサブマスが、不味いポーションを一気飲みした様な顔で俺を見ている。
素知らぬ顔で表に出ると、アッシュに踏みつけられている奴の顔を蹴り上げてやる。
「よう、俺の使役獣をを馬鹿にしていたが、情けない格好だな」
「糞っ垂れ!」
「侯爵殿、好き勝手をやられては困りますなぁ」
「ん、俺の配下に無理難題を言った挙げ句に『幻獣を連れているだけで貴族になった小僧』なんて満座の中で侮辱したんだぞ。ギルドの中だろうと何処だろうと、身分証を与えている者を脅された挙げ句に侮辱されては、黙って見過ごす訳にはいかないよ。それと以前聞いたが、碌でもないテイマーの居るパーティーって此奴等なの」
「言った通りだろう」
(はいはい、そうですねぇ)と心の中で返事をしておく。
「ギルドでの処分はどうなるの?」
「実害はなかったし面倒なので、この街から追放だな」
「じゃー、領主に対する不敬って事で牢に放り込んで、行政担当に処分させるよ」
「厳しい侯爵様だねぇ」
「俺が身分証を与えている奴に手を出せば、どうなるのかをきっちり教えておかなくっちゃ、また馬鹿が湧いて出るだろう」
丁度使役獣が暴れているとの騒ぎで、警備兵が駆けつけて来たので引き渡してお終い。
警備兵の隊長を呼び、二度と俺の領地に近寄らない様にきっちり脅してから、街から放り出せと言っておく。
* * * * * * *
エドガから連絡を受けてギルドに出向くと、巣立ちの儀を済ませたばかりの様な新人二人を紹介された。
「この二人がテイマースキルを授かっています。で、俺達がヴォルグを連れているのを聞いて尋ねて来たんです。この坊主はマイルズ、ホルセン村の出で、チムスの町の連中とグレインに出てきて三月ほどだそうです。こっちは俺の知り合いの娘で、兄弟が多くて家を出なきゃならないがメイドや変な勤め先は嫌だと言ってます。テイマースキルを授かったので、親父について冒険者になりたいそうなんです」
「知り合いって、冒険者なの」
「はい、俺達より腕は良いのですが、その分危険も多くて、娘が使役獣を手に入れられたらと願っています」
「マイルズとケイシーか、冒険者になり使役獣を従えるって事は、野獣と対峙する事が多くなる。その分危険も多くて死ぬ確率も高くなるが、その覚悟はあるのか?」
「村では食っていけません。仲間三人と薬草採取や小物を狩って何とかやっていますが、使役獣が手に入れば仲間も少しは楽になると思うのです」
「私も父ちゃん達の足手まといになりたくないので、使役獣が欲しいです」
「何かテイムした経験は有るか?」
「有りません」
「俺も無いです」
「俺は何百頭と野獣を討伐してきて運良く幻獣を複数頭従えているが、それは死に損ねた野獣を鑑定して幻獣と判った奴をテイムしたからだ。お前達が使役獣を手に入れても、幻獣に当たる確率は限りなく低い。それでも良いのなら野獣を手に入れる手伝いはしてやる」
「お願いします!」二人が立ち上がり勢いよく頭を下げる。
「エドガ達は今、一日平均どれ位稼いでいる?」
「俺達ですか、平均七万ダーラ前後ですかね」
堅実に稼いでいる様で何よりなので、一日金貨一枚で彼等を雇う事にした。
俺一人じゃド素人二人の面倒はみきれないし、テイムした野獣の扱い方を教えるのに丁度良い先生だろう。
エドガ達の了解を得たので、マイルズとケイシーに暫く森に入るので仲間や親の許可をもらってこいと告げる。
「私は大丈夫ですが、森に行く用意は・・・」
「仲間がいますが、そんな金も野営の経験もありませんので」
食堂の片隅で貧しい食事をしていたマイルズの仲間達を呼び寄せ、腹一杯食べさせる。
「ランディスさん・・・ランディスの頼みなら喜んで」
「個人的に頼む事で、パーティーに月金貨三枚、仕事は普通にしていれば良いよ。普通に生活して、街の不満や不正噂話等を聞いたら、それを書状にしてハリスンとレイゼンに送るだけ」
「ハリスンさんは判りますけど、レイゼン?」
「レイゼンはこの街の行政官だな。元は代官が治めていたときに代官の補佐と書記をしていた男だよ。あの屋敷に居た筈だけど会った事がないかな。それと、テイマースキル持ちが居たら教えてよ」
「誰でも良いのですか」
「質の悪いのは駄目だよ。無理に探す必要はないからね」
「やっぱり幻獣を探すのですか?」
「そうじゃない、ナンガスの町に行って来たんだが野獣が増えていると聞いた。町や村に被害が出ない様に、使役獣を増やしたいのさ。ウルフクラスの使役獣が居れば、それだけで十分役に立つ筈だし」
「ウルフ系だと、上手く鍛える事が出来れば立派な戦力になります」
「その時は、アデーレに使役獣の扱い方の指導をお願いするよ。勿論その分の賃金は支払うからさ」
「何時でも声を掛けて下さい。お役に立てる様に頑張ります」
やっぱり此のパーティーは真面目ちゃん揃いだわ。
エドガ達と別れてギルマスに面会を求めると、直ぐに執務室に案内された。
「侯爵殿、今日は何のご用で」
「このギルドに土魔法使いってどの程度居ます。と言うか、町の防壁造りが出来る土魔法使いかな」
「ナンガスに行っていたんだってな」
「あの防壁じゃ、少し大きなバッファローが突撃すれば壊れますよ」
「代理人の話を聞いたか?」
「いま調べさせていますが、町の安全を余り考えていない様なので近いうちに・・・ね。それとこの間紹介してくれたテイマー、少しはテイムの練習をしていますか」
「俺が知る訳ないだろう」
「暇な時にホーンラビットやゴブリンでも良いので、テイムの練習をしろと言っておいてよ」
「おっ、幻獣を世話してやるのか」
「あのねぇ、幻獣なんて何十頭もテイムして一頭居るかどうかなんだよ。ウルフ程度で良ければ、俺達なら直ぐにテイムさせる事が出来るんだよ。野獣をテイムするには、幼獣から育てるか弱らせてテイムするのは知っているだろう」
「ああ、弱らせてテイムしても、怪我をしたりして使い物になるのは極僅かだって事もな」
「その弱らせたり怪我をしている野獣でも、俺達ならテイムしてから治せるんだよ」
「そうだった。お前の幻獣は治癒魔法が使えたんだったな」
「幼獣からテイムして鍛えるのが理想だろうけど、成獣をテイムしたら、使役獣を連れているテイマーに躾の方法を教えてもらえば早いだろう」
「ん、それはお前が教えるんじゃないのか」
「俺って此でも侯爵で、結構忙しいんだよ」
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* * * * * * *
ギルマスとの話を終えて下に降りていくと、エドガ達がガラの悪そうな奴等に取り囲まれていたので、気配を消して静かに近づく。
「だから、侯爵様の手助けであの仔を手に入れたのよ。ヴォルグはたまたまテイムした時に、幻獣と判っただけよ」
「そうだぜ、テイムする前に幻獣だと判っていてテイムするなんて、出来る筈がないだろう」
「それならお前が俺達のパーティーに入れば良かろう。どうせ薬草採取やゴブリン程度しか相手に出来なかったお前等だ、幻獣を手に入れて意気がる何て千年早いんだよ」
「断る! 此でも俺達はグレイン侯爵様の配下なので、勝手な事は出来ない。どうしても引き抜きたければ、グレイン侯爵様に話をつけてきてくれ」
「ふん、グレイン侯爵様か。幻獣を連れているだけで貴族になった小僧に、頭を下げろってか」
「チンピラテイマーに、頭なんか下げられるかよ」
「あまり舐めた事を言ってると、森で会った時に後悔するぞ」
「後悔するのはお前達だよ」
俺の声に慌てて振り向いた奴の金タマを蹴り上げると、白目を剥いて座り込んでしまった。
「てめぇー、やりやがったな!」
「誰だ、おめえは?」
食堂で飲んでいた連中が〈喧嘩だ!〉〈おー、やれやれー〉とか〈どっちが強いんだ?〉〈賭けるか〉なんて、嬉しそうにはしゃいでいる。
「俺達相手に喧嘩を売るとは良い度胸だ」
「ギルドの中で手を出したんだ、地下牢行きの覚悟はあるんだろうな」
「お喋りするより先に手を出せよ」
凄む男の横っ面を張り倒し、隣の男を蹴り付ける。
「ランディスさん!」
「話は後で、此奴等を叩きのめしてからだ!」
〈誰だ、暴れている奴等は!〉
〈静かにしろ!〉
〈お前等、誰も動くな!〉
凄んでいた奴等がギルド職員に剣を突きつけられて手を上げている。
剣を突きつけてきた職員が、俺の顔を見て戸惑っている。
「俺達は其奴に殴られただけだぜ」
「其処に転がっている奴は、其奴にいきなり股を蹴り上げられたんだぞ!」
「俺達は其奴等と話をしていただけなのに、いきなり殴りつけられただけだ!」
「侯爵殿・・・何をやっているんですか?」
手を上げて自分達は悪くないと叫んでいた奴らが、ギョッとした顔で俺を見るので、ご挨拶。
「どうも、チンピラテイマーでーす」
俺とサブマスの顔を見比べて震えている馬鹿。
その馬鹿を突き飛ばし〈逃げろ!〉と吠えて、職員に体当たりをして逃げ出した奴等。
不意を突かれてまんまと逃げられた職員が、逃げ遅れた奴等を取り押さえているので《アッシュ、今飛び出して行った奴等を捕まえてよ》とお願いしておく。
《任せて、ランディ》
《グレイ、殺しちゃ駄目よ》
《あい》
「サブマス、其奴等は俺の配下を脅していたんだ。アデーレと幻獣を引き抜こうとして断られたら『森で会った時に後悔するぞ』なんてね」
《ランディ、捕まえたよ》
《面倒だから早く来てね》
《ランディ、どうするの?》
「大変だー、使役獣が暴れているぞ!」
「タイガーキャットに食われているぞー!」
《失礼な奴ね。こんな不味そうなものを食べないわよ》
《ランディ、沢山集まって来たよ》
「サブマス、侯爵様の幻獣が、逃げ出した奴等を踏みつけてます!」
表の騒ぎを見に行った職員が、サブマスに怒鳴っている。
それを聞いたサブマスが、不味いポーションを一気飲みした様な顔で俺を見ている。
素知らぬ顔で表に出ると、アッシュに踏みつけられている奴の顔を蹴り上げてやる。
「よう、俺の使役獣をを馬鹿にしていたが、情けない格好だな」
「糞っ垂れ!」
「侯爵殿、好き勝手をやられては困りますなぁ」
「ん、俺の配下に無理難題を言った挙げ句に『幻獣を連れているだけで貴族になった小僧』なんて満座の中で侮辱したんだぞ。ギルドの中だろうと何処だろうと、身分証を与えている者を脅された挙げ句に侮辱されては、黙って見過ごす訳にはいかないよ。それと以前聞いたが、碌でもないテイマーの居るパーティーって此奴等なの」
「言った通りだろう」
(はいはい、そうですねぇ)と心の中で返事をしておく。
「ギルドでの処分はどうなるの?」
「実害はなかったし面倒なので、この街から追放だな」
「じゃー、領主に対する不敬って事で牢に放り込んで、行政担当に処分させるよ」
「厳しい侯爵様だねぇ」
「俺が身分証を与えている奴に手を出せば、どうなるのかをきっちり教えておかなくっちゃ、また馬鹿が湧いて出るだろう」
丁度使役獣が暴れているとの騒ぎで、警備兵が駆けつけて来たので引き渡してお終い。
警備兵の隊長を呼び、二度と俺の領地に近寄らない様にきっちり脅してから、街から放り出せと言っておく。
* * * * * * *
エドガから連絡を受けてギルドに出向くと、巣立ちの儀を済ませたばかりの様な新人二人を紹介された。
「この二人がテイマースキルを授かっています。で、俺達がヴォルグを連れているのを聞いて尋ねて来たんです。この坊主はマイルズ、ホルセン村の出で、チムスの町の連中とグレインに出てきて三月ほどだそうです。こっちは俺の知り合いの娘で、兄弟が多くて家を出なきゃならないがメイドや変な勤め先は嫌だと言ってます。テイマースキルを授かったので、親父について冒険者になりたいそうなんです」
「知り合いって、冒険者なの」
「はい、俺達より腕は良いのですが、その分危険も多くて、娘が使役獣を手に入れられたらと願っています」
「マイルズとケイシーか、冒険者になり使役獣を従えるって事は、野獣と対峙する事が多くなる。その分危険も多くて死ぬ確率も高くなるが、その覚悟はあるのか?」
「村では食っていけません。仲間三人と薬草採取や小物を狩って何とかやっていますが、使役獣が手に入れば仲間も少しは楽になると思うのです」
「私も父ちゃん達の足手まといになりたくないので、使役獣が欲しいです」
「何かテイムした経験は有るか?」
「有りません」
「俺も無いです」
「俺は何百頭と野獣を討伐してきて運良く幻獣を複数頭従えているが、それは死に損ねた野獣を鑑定して幻獣と判った奴をテイムしたからだ。お前達が使役獣を手に入れても、幻獣に当たる確率は限りなく低い。それでも良いのなら野獣を手に入れる手伝いはしてやる」
「お願いします!」二人が立ち上がり勢いよく頭を下げる。
「エドガ達は今、一日平均どれ位稼いでいる?」
「俺達ですか、平均七万ダーラ前後ですかね」
堅実に稼いでいる様で何よりなので、一日金貨一枚で彼等を雇う事にした。
俺一人じゃド素人二人の面倒はみきれないし、テイムした野獣の扱い方を教えるのに丁度良い先生だろう。
エドガ達の了解を得たので、マイルズとケイシーに暫く森に入るので仲間や親の許可をもらってこいと告げる。
「私は大丈夫ですが、森に行く用意は・・・」
「仲間がいますが、そんな金も野営の経験もありませんので」
食堂の片隅で貧しい食事をしていたマイルズの仲間達を呼び寄せ、腹一杯食べさせる。
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追記:2025/09/20
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