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110 屑の犠牲
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「ランディス殿は、テイマーを必要としていると伺っておりますが」
「野獣が増えている様だとの噂を何度か耳にしました。グレインに所属する周辺町村の防壁が痛んでいて、補強をしなければならないのですが直ぐには無理なのです。一人前の冒険者パーティーもそう簡単には揃えられません。テイマーなら、さほど時間を掛けずに一人前の戦力に育てられますので」
「野獣が増えている、ですか。調べておく必要がありそうですね」
ヘイラート様と話していると、妙齢の女性がブラックの手前で立ち止まっている
「ご紹介の機会がありませんでしたが、私の妻エレン・ホールデンスです」
ヘイラート様に紹介され、微笑みを浮かべて腰を折るが目が笑っていない。
ヘイラート様に用があるのか目配せをしているので、俺も彼女に自己紹介だけで場を離れた。
壁際に用意された飲み物を受け取り喉を潤していると、見覚えのある顔がやって来て頭を下げた。
「ランディス・グレイン侯爵様、お礼のご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。貴男様の執り成しにより、ロクサンヌ領に転封になりましたが伯爵家を継承できました。私に御用があれば、何なりとお申し付け下さい」
「ラルフ・ツアイスだったな。気持ちは受け取っておくよ」
* * * * * * *
王都から戻ると、ハリスンから各町村の防壁補強を始めたと報告を受けた。
ヒューヘン宰相、王国が世話してくれた執事だ、中々手際良く行政官の尻を叩いている様だ。
防壁の拡張計画書を手渡されて、冒険者達の宿の数や規模はどうするのか尋ねられて困った。
各町村どころか、グレインの街に冒険者がどれ位の数いるのかも知らない。
ハリスンやレイゼンに尋ねても、冒険者は流民として納税台帳にも登録がなく不明だと言われてしまった。
慌てて冒険者ギルドに行き尋ねる事にしたが、厄介事が膨れ上がっている気がする。
* * * * * * *
グレイン冒険者ギルドに飛び込み、ギルマスに面会を求めて冒険者の数を尋ねたが、返事は無情だ。
「侯爵殿、今食堂で飲んだくれている奴の数なら数えられるが、ギルドの外にいる奴の数を数えろと言われてもなぁ」
「食堂にはどれ位の人数が座れるんだ?」
「テーブルが30位は有ったはずだが、毎日同じ奴が飲んだくれていると思うか」
だよなぁー、毎日ギルドに顔を出す奴なんて日銭の必要な低ランクの者くらいだろう。
馴れた冒険者ならホテルに泊まらず野営をして、獲物の処分にギルドへ来るだけになる。
8人掛けテーブルが30として240人・・・な事はないな。
レイゼンに冒険者が泊まるホテルの数と部屋数を調べさせ、同数の部屋数にすると・・・民業圧迫になるかな。
村になると、小屋や村長宅の納屋なんかに泊まらせて貰っていると言っていたので尚の事だろう。
取り敢えずレイゼンにホテルの数と部屋数を調べる様に命じておき、俺はチムスの町とホルセン村に行き冒険者が寝泊まりしている場所を見てくる事にした。
* * * * * * *
馬車でホルセン村へ調べに行く事にしたが、アッシュは直ぐに戻って来るのなら面倒だとお留守番。
一晩泊まりになるので、残る五頭をお供に連れていく。
公爵家の紋章入り馬車で出掛けたので、入場門警備の者が慌てていた。
村長宅に馬車を横付けして村長とご対面となったが、侯爵だと名乗ったが冒険者の服を着た小僧なので胡散臭い目で見られた。
こんな時は護衛の騎士を連れて来ないと信用されないよな。
侯爵家の紋章入りワッペンを胸に付け身分証を示して、ヘイラート様の様に横柄な態度で接することにした。
冒険者が泊まる所を見せてもらったが、牛馬の飼料置き場で干し草の褥と洒落たものと、倉庫の一角にごろ寝の酷いもの場所だ。
チムスの町は一応宿はあるが、ホテルも部屋数も制限されていたので粗末な部屋、天井の高いカプセルホテルといった感じの部屋が銅貨三枚3,000ダーラ。
二段ベッドの部屋が4,000ダーラで、ベッド数×2,000ダーラだそうだ。
食堂のエールも一杯銅貨一枚の1,000ダーラ。
グレインの冒険者ギルドのエールが一杯600ダーラなので、僻地とはいえ吹っ掛け過ぎだろう。
冒険者登録したばかりの若者はとても生活出来ないので、地元を捨てて出て行くのも無理はない。
チムスの町を出る間際にマイルズを見掛けたが、使役獣のクロウは居るのにフリッツ、カールトン、バルトの姿が見えない。
代わりにむさいおっさん連中が彼の前後を挟んでいるので不審に思い、馬車を止めさせた。
「マイルズ、フリッツ達はどうした?」
「ランディスさん・・・」
「誰だ、おめえは?」
「フォレストウルフにシルバーフォックスか」
「腕の良いテイマーの様だが」
「馬車に乗っているんだ、相当稼いでいる様だな」
「お前等は馬鹿か? それとも馬車の紋章が見えないのか?」
「何おぅー、ドチンピラが偉そうに」
「まて、黙れ! 其奴は貴族だぞ」
「何か御用でしょうか・・・」
「用があるから声を掛けたんだが、マイルズ、フリッツ達はどうした?」
「マイルズはチンピラと組んでいては稼げないので、俺達〔無頼の舞〕に加わったんでさぁ」
「幾らお貴族様とはいえ、仲間を顎で使うのは止めて貰えませんか」
「偉そうに貴族だなんて抜かしているが、護衛の一人も連れていない貧乏貴族かよ」
「お前に聞いていない。馬車の紋章を見て何処の誰だかも解らない馬鹿か」
《グレイ、奴等の後ろから尻バッチンを喰らわしてやれ》
《あい、ランディ》
《マイルズには駄目だよ》
「俺の領地で好き勝手をされては黙って見過ごせないな」
「ふん、馬車の中から偉そうに抜かすな! 護衛の騎士はいないし御者は震えていてお前を守る気はなさそうだぞ」
《クロウ、マイルズを守って動くなよ》
《ランディ・・・?》
《そうだ、グレイやフラッグも居るぞ》
言っている側から、マイルズの横に立つ男の尻で〈バシン〉と音がして腰を突き出して座り込んだ。
「おい、どうした?」
〈バシン〉〈バシン〉〈バシン〉と連続音が響き、グレイとブラックがマイルズを取り囲んでいた男達を睨んでいる。
「糞ぅぅ、何をしやがった」
「尻が・・・」
《誰も逃がすなよ》
《任せて、逃げたら黒焦げにしてやるから》
馬車を降りるとマイルズの手の中に、俺の配下を示す身分証を握らせて血を一滴落とせと囁いておく。
尻に雷撃を受けて唸っている奴等に、マイルズが血を落とした身分証を目の前に翳して振って見せる。
「マイルズはランディス・グレイン侯爵、つまり俺の使用人の身分証を有する者だ。冒険者登録をしていても、俺の配下であることに変わりない。お前達は侯爵である俺に断りもなく、使用人を勝手に連れ回している」
「嘘だ! 奴はそんな物は持っていない筈だぞ!」
「それじゃ、此は何だ?」
「・・・侯爵様、本当に俺達は其奴が仲間になりたいからと言ってきたので・・・」
「嘘です! オークを討伐して街に戻る途中で剣を突きつけて、仲間になれと脅されたんです。断ったらフリッツ達は散々殴られて・・・そのままだとフリッツ達が殺されると思ったので、仲間になるからと言って殴るのを止めてもらったんです。マジックポーチも登録者制限が掛かっていても俺が使えるからと、フリッツから取り上げて持たされています」
「立派な犯罪だな」
「侯爵様、俺達はそんな事をしていませんぜ。其奴の言い分はおかしいだろう」
「そうですよ。俺達は善良な冒険者で・・・」
煩いので口に蹴りを入れて喋れなくしてやる。
「このマジックポーチは俺がフリッツに持たせた物だ。さっきお前が『マイルズはチンピラと組んでいては稼げないので、俺達〔無頼の舞〕に加わったんでさぁ』と言ったよな。それをマイルズは否定している。警備兵に引き渡してじっくりと取り調べさせてもらうぞ」
「糞っ垂れがぁー」
腰の剣に手を掛けた奴の顔にアイスバレットがぶち当たり歯を撒き散らして倒れた。
ナイス、ブラック。
「マイルズ、何時何処でやられたんだ」
「五日前に西門から小一時間位の所です。俺は狩りの為に付き合わされて・・・」
「俺達は殺しちゃいませんぜ」
「ちょっと喧嘩になっただけですよ」
「其奴が大袈裟に言っているだけです!」
「そうそう、此奴が仲間になったのでそのまま狩りに出掛けていたんですよ」
『俺達は殺しちゃいませんぜ』か、馬鹿が!
「マイルズ、其奴等を縛って数珠繋ぎにしろ。抵抗したら殺しても良いぞ」
マイルズにロープを投げて縛らせ、俺も反対側から後ろ手に縛り数珠繋ぎにする。
屑共を縛り上げているとドタバタと大勢の足音が近づいて来た。
「侯爵殿、何事ですか?」
「此奴等が、俺の使用人達を殴り町の外に放置したらしい。それと此処に居るマイルズを無理矢理仲間に引き込んでいたので捕まえただけですよ」
「サブマス、ちょっと喧嘩になっただけです」
「其奴が若い連中だけじゃ稼げないので、俺達ベテランの仲間になりたいと言って喧嘩になっただけです」
「マイルズが仲間と喧嘩になったので、ちょっと助太刀をしただけですよ」
「それを侯爵様が大袈裟にしているだけです」
「サブマス、此奴はさっき『俺達は殺しちゃいませんぜ』と言った。警備兵に引き渡して取り調べる。それとフリッツ達を散々殴って町の外に放置したと証言があるので、確かめに行って来る。邪魔はするなよ」
尻が焦げた奴等を治療してから、マイルズに案内させてフリッツ達が殴られた場所に向かったが、現場は草が踏み荒らされ血の跡が点々と残っていた。
ファングに匂いを嗅がせてから、マイルズを待たせて匂いを追跡させた。
倒れた草叢に血の跡が点々と残り、余り遠くない所で野獣に食い荒らされた三人の遺体が草叢に散らばっていた。
「此奴は酷ぇな」
「此奴等にやられたときに、死に物狂いで反撃するべきだったが、経験不足で思いつかなかったんだな」
追放された時に、必死で逃げて反撃したことを思い出したが、成人して間もないフリッツ達は決断出来なかったのだろう。
三人の残骸をフラッグに埋めさせると、屑共をチムスに連れ戻して代官に預けた。
マイルズには三人の死亡と埋葬だけを伝え、此の儘放置できないのでグレインの屋敷に連れ戻った。
「野獣が増えている様だとの噂を何度か耳にしました。グレインに所属する周辺町村の防壁が痛んでいて、補強をしなければならないのですが直ぐには無理なのです。一人前の冒険者パーティーもそう簡単には揃えられません。テイマーなら、さほど時間を掛けずに一人前の戦力に育てられますので」
「野獣が増えている、ですか。調べておく必要がありそうですね」
ヘイラート様と話していると、妙齢の女性がブラックの手前で立ち止まっている
「ご紹介の機会がありませんでしたが、私の妻エレン・ホールデンスです」
ヘイラート様に紹介され、微笑みを浮かべて腰を折るが目が笑っていない。
ヘイラート様に用があるのか目配せをしているので、俺も彼女に自己紹介だけで場を離れた。
壁際に用意された飲み物を受け取り喉を潤していると、見覚えのある顔がやって来て頭を下げた。
「ランディス・グレイン侯爵様、お礼のご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。貴男様の執り成しにより、ロクサンヌ領に転封になりましたが伯爵家を継承できました。私に御用があれば、何なりとお申し付け下さい」
「ラルフ・ツアイスだったな。気持ちは受け取っておくよ」
* * * * * * *
王都から戻ると、ハリスンから各町村の防壁補強を始めたと報告を受けた。
ヒューヘン宰相、王国が世話してくれた執事だ、中々手際良く行政官の尻を叩いている様だ。
防壁の拡張計画書を手渡されて、冒険者達の宿の数や規模はどうするのか尋ねられて困った。
各町村どころか、グレインの街に冒険者がどれ位の数いるのかも知らない。
ハリスンやレイゼンに尋ねても、冒険者は流民として納税台帳にも登録がなく不明だと言われてしまった。
慌てて冒険者ギルドに行き尋ねる事にしたが、厄介事が膨れ上がっている気がする。
* * * * * * *
グレイン冒険者ギルドに飛び込み、ギルマスに面会を求めて冒険者の数を尋ねたが、返事は無情だ。
「侯爵殿、今食堂で飲んだくれている奴の数なら数えられるが、ギルドの外にいる奴の数を数えろと言われてもなぁ」
「食堂にはどれ位の人数が座れるんだ?」
「テーブルが30位は有ったはずだが、毎日同じ奴が飲んだくれていると思うか」
だよなぁー、毎日ギルドに顔を出す奴なんて日銭の必要な低ランクの者くらいだろう。
馴れた冒険者ならホテルに泊まらず野営をして、獲物の処分にギルドへ来るだけになる。
8人掛けテーブルが30として240人・・・な事はないな。
レイゼンに冒険者が泊まるホテルの数と部屋数を調べさせ、同数の部屋数にすると・・・民業圧迫になるかな。
村になると、小屋や村長宅の納屋なんかに泊まらせて貰っていると言っていたので尚の事だろう。
取り敢えずレイゼンにホテルの数と部屋数を調べる様に命じておき、俺はチムスの町とホルセン村に行き冒険者が寝泊まりしている場所を見てくる事にした。
* * * * * * *
馬車でホルセン村へ調べに行く事にしたが、アッシュは直ぐに戻って来るのなら面倒だとお留守番。
一晩泊まりになるので、残る五頭をお供に連れていく。
公爵家の紋章入り馬車で出掛けたので、入場門警備の者が慌てていた。
村長宅に馬車を横付けして村長とご対面となったが、侯爵だと名乗ったが冒険者の服を着た小僧なので胡散臭い目で見られた。
こんな時は護衛の騎士を連れて来ないと信用されないよな。
侯爵家の紋章入りワッペンを胸に付け身分証を示して、ヘイラート様の様に横柄な態度で接することにした。
冒険者が泊まる所を見せてもらったが、牛馬の飼料置き場で干し草の褥と洒落たものと、倉庫の一角にごろ寝の酷いもの場所だ。
チムスの町は一応宿はあるが、ホテルも部屋数も制限されていたので粗末な部屋、天井の高いカプセルホテルといった感じの部屋が銅貨三枚3,000ダーラ。
二段ベッドの部屋が4,000ダーラで、ベッド数×2,000ダーラだそうだ。
食堂のエールも一杯銅貨一枚の1,000ダーラ。
グレインの冒険者ギルドのエールが一杯600ダーラなので、僻地とはいえ吹っ掛け過ぎだろう。
冒険者登録したばかりの若者はとても生活出来ないので、地元を捨てて出て行くのも無理はない。
チムスの町を出る間際にマイルズを見掛けたが、使役獣のクロウは居るのにフリッツ、カールトン、バルトの姿が見えない。
代わりにむさいおっさん連中が彼の前後を挟んでいるので不審に思い、馬車を止めさせた。
「マイルズ、フリッツ達はどうした?」
「ランディスさん・・・」
「誰だ、おめえは?」
「フォレストウルフにシルバーフォックスか」
「腕の良いテイマーの様だが」
「馬車に乗っているんだ、相当稼いでいる様だな」
「お前等は馬鹿か? それとも馬車の紋章が見えないのか?」
「何おぅー、ドチンピラが偉そうに」
「まて、黙れ! 其奴は貴族だぞ」
「何か御用でしょうか・・・」
「用があるから声を掛けたんだが、マイルズ、フリッツ達はどうした?」
「マイルズはチンピラと組んでいては稼げないので、俺達〔無頼の舞〕に加わったんでさぁ」
「幾らお貴族様とはいえ、仲間を顎で使うのは止めて貰えませんか」
「偉そうに貴族だなんて抜かしているが、護衛の一人も連れていない貧乏貴族かよ」
「お前に聞いていない。馬車の紋章を見て何処の誰だかも解らない馬鹿か」
《グレイ、奴等の後ろから尻バッチンを喰らわしてやれ》
《あい、ランディ》
《マイルズには駄目だよ》
「俺の領地で好き勝手をされては黙って見過ごせないな」
「ふん、馬車の中から偉そうに抜かすな! 護衛の騎士はいないし御者は震えていてお前を守る気はなさそうだぞ」
《クロウ、マイルズを守って動くなよ》
《ランディ・・・?》
《そうだ、グレイやフラッグも居るぞ》
言っている側から、マイルズの横に立つ男の尻で〈バシン〉と音がして腰を突き出して座り込んだ。
「おい、どうした?」
〈バシン〉〈バシン〉〈バシン〉と連続音が響き、グレイとブラックがマイルズを取り囲んでいた男達を睨んでいる。
「糞ぅぅ、何をしやがった」
「尻が・・・」
《誰も逃がすなよ》
《任せて、逃げたら黒焦げにしてやるから》
馬車を降りるとマイルズの手の中に、俺の配下を示す身分証を握らせて血を一滴落とせと囁いておく。
尻に雷撃を受けて唸っている奴等に、マイルズが血を落とした身分証を目の前に翳して振って見せる。
「マイルズはランディス・グレイン侯爵、つまり俺の使用人の身分証を有する者だ。冒険者登録をしていても、俺の配下であることに変わりない。お前達は侯爵である俺に断りもなく、使用人を勝手に連れ回している」
「嘘だ! 奴はそんな物は持っていない筈だぞ!」
「それじゃ、此は何だ?」
「・・・侯爵様、本当に俺達は其奴が仲間になりたいからと言ってきたので・・・」
「嘘です! オークを討伐して街に戻る途中で剣を突きつけて、仲間になれと脅されたんです。断ったらフリッツ達は散々殴られて・・・そのままだとフリッツ達が殺されると思ったので、仲間になるからと言って殴るのを止めてもらったんです。マジックポーチも登録者制限が掛かっていても俺が使えるからと、フリッツから取り上げて持たされています」
「立派な犯罪だな」
「侯爵様、俺達はそんな事をしていませんぜ。其奴の言い分はおかしいだろう」
「そうですよ。俺達は善良な冒険者で・・・」
煩いので口に蹴りを入れて喋れなくしてやる。
「このマジックポーチは俺がフリッツに持たせた物だ。さっきお前が『マイルズはチンピラと組んでいては稼げないので、俺達〔無頼の舞〕に加わったんでさぁ』と言ったよな。それをマイルズは否定している。警備兵に引き渡してじっくりと取り調べさせてもらうぞ」
「糞っ垂れがぁー」
腰の剣に手を掛けた奴の顔にアイスバレットがぶち当たり歯を撒き散らして倒れた。
ナイス、ブラック。
「マイルズ、何時何処でやられたんだ」
「五日前に西門から小一時間位の所です。俺は狩りの為に付き合わされて・・・」
「俺達は殺しちゃいませんぜ」
「ちょっと喧嘩になっただけですよ」
「其奴が大袈裟に言っているだけです!」
「そうそう、此奴が仲間になったのでそのまま狩りに出掛けていたんですよ」
『俺達は殺しちゃいませんぜ』か、馬鹿が!
「マイルズ、其奴等を縛って数珠繋ぎにしろ。抵抗したら殺しても良いぞ」
マイルズにロープを投げて縛らせ、俺も反対側から後ろ手に縛り数珠繋ぎにする。
屑共を縛り上げているとドタバタと大勢の足音が近づいて来た。
「侯爵殿、何事ですか?」
「此奴等が、俺の使用人達を殴り町の外に放置したらしい。それと此処に居るマイルズを無理矢理仲間に引き込んでいたので捕まえただけですよ」
「サブマス、ちょっと喧嘩になっただけです」
「其奴が若い連中だけじゃ稼げないので、俺達ベテランの仲間になりたいと言って喧嘩になっただけです」
「マイルズが仲間と喧嘩になったので、ちょっと助太刀をしただけですよ」
「それを侯爵様が大袈裟にしているだけです」
「サブマス、此奴はさっき『俺達は殺しちゃいませんぜ』と言った。警備兵に引き渡して取り調べる。それとフリッツ達を散々殴って町の外に放置したと証言があるので、確かめに行って来る。邪魔はするなよ」
尻が焦げた奴等を治療してから、マイルズに案内させてフリッツ達が殴られた場所に向かったが、現場は草が踏み荒らされ血の跡が点々と残っていた。
ファングに匂いを嗅がせてから、マイルズを待たせて匂いを追跡させた。
倒れた草叢に血の跡が点々と残り、余り遠くない所で野獣に食い荒らされた三人の遺体が草叢に散らばっていた。
「此奴は酷ぇな」
「此奴等にやられたときに、死に物狂いで反撃するべきだったが、経験不足で思いつかなかったんだな」
追放された時に、必死で逃げて反撃したことを思い出したが、成人して間もないフリッツ達は決断出来なかったのだろう。
三人の残骸をフラッグに埋めさせると、屑共をチムスに連れ戻して代官に預けた。
マイルズには三人の死亡と埋葬だけを伝え、此の儘放置できないのでグレインの屋敷に連れ戻った。
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追記:2025/09/20
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