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115 救助
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アッシュの咆哮を挑戦と受け取ったキングタイガーが、視線を外さないアッシュに向かいゆっくりと足を踏み出した。
ブラックが俺の足にぴったりと張り付いているが、此方も震えているので《ブラック、彼奴の頭に一発落とせばお前でも楽に勝てるぞ》と教えてやる。
《それでも恐い・・・》
熊ちゃん相手なら気にせずに討伐してくる癖に、同族種だと相手の強さがすり込まれていて恐いのかねぇ。
かく言う俺も正面切って向かって来るキングタイガーに、ションベンチビリそうだわ。
取り敢えず、どんなに恐くても結界を張る事を教えなきゃならないので、肩越しにフードからフラッグを摘まみ出して、結界を張れ! と命じる。
俺にぎゅっと掴まれ怒鳴られた為に、一瞬で結界を展開する。
目の前に結界の淡い光を見てホッとするが、アッシュが外じゃないの。
迫り来るキングタイガーと睨み合っていたアッシュが、迫り来るキングタイガーの脳天に雷撃を落とした。
一瞬の閃光と〈パシーーン〉と鞭打つ様な音が響くと、キングタイガーの動きが止まり、ゆっくりと崩れ落ちた。
やれやれと冷や汗を拭い、キングタイガーをマジックバッグに収めようとしたが入らない。
おいおい、あの強烈な雷撃を受けて即死していないとは、怪物だね。
《どうしたの》
《未だ生きているよ》
《そう、なら貴方の使役獣にしておきなさい》
《えっ・・・此奴は魔法を・・・鑑定して見る》
鑑定結果はただのキングタイガーで、何故こんなのをテイムしろと?。
《アッシュ、ただのキングタイガーだよ》
《貴方がそれを従えていれば、私が目立たないしのんびり出来るのよ》
ちょっ、キングタイガーを自分の代わりに露払いの道具に使う気かよ。
《早くしなさい。グレイ達が気になるので行くわよ!》
テイムしても、気に入らなければ解除して森の奥に捨てるも殺すも出来るのでテイムして、ブラックに治療をしてもらう。
《先に行くので、フラッグとブラックはランディスを守って後から来なさい》
《はい、アッシュママ》
《ランディを守るよ》
周辺にアッシュを脅かす様な野獣の気配もないので、先に行かせてキングタイガーをテイムする。
《聞こえるな、俺はランディスだ。お前の名は・・・キング》
《ランディシュ?》
《ランディだ。取り敢えず俺の後ろを付いてこい》
ブラックにキングの怪我を治療させると。グレイ達の所へと急いだ。
* * * * * * *
「糞ッ、何でこんなに多いんだよ!」
「うるせぇ! 黙って討伐しろ!」
「弱気になるな! 死にたくなけりゃ闘え!」
「〇〇がやられたぞ!」
「陣形を崩すな!」
襲い掛かって来るグレイウルフの群れを、野営用の小屋を背に闘っていたが数が多すぎる。
朝の出発準備中を襲われて、小屋に逃げ込めた奴はウルフに後を追われて防ぎきれず、悲鳴を残して静かになった。
今も目の前で一人、倒れて喰いつかれている。
悲鳴を上げる仲間に止めを刺してやりたいが、猛攻を防ぐのに手一杯だ。
〈ギャン〉とウルフの悲鳴が聞こえると、喰いつかれて恐怖の悲鳴を上げていた奴が静かになった。
同時に飛びかかってきた奴に何かがぶち当たり〈ギャォン〉と悲鳴を上げて横に飛ばされた。
なんだ? と思った瞬間に〈ドーン〉と頭上で爆発が起きて地面に叩きつけられた。
痛みに耐えながら何とか顔を上げると、自分達の周囲に居たグレイウルフが、ストーンランスとアイスランスに撃ち抜かれて倒れている。
凄腕の魔法使いのパーティーに助けられたのかと思い、立あがろうとしてびっくりした。
目の前をタイガーキャットが横切り、先程悲鳴を上げていた男の前で立ち止まり、男の身体に前足を当てると・・・治癒魔法を使っている。
怪我に呻いていた男はタイガーキャットに驚いて固まっていたが、治癒魔法を見てぽかんとしている。
タイガーキャットは、腕を怪我しながら何とか闘っていた男にも治癒魔法を使うと、不意に一角を凝視している。
何かと思いその方向を見ると、巨大なタイガーキャットが悠然と現れて周囲を見回している。
その時になって気付いたが、タイガーキャットの他にシルバーフォックスとフォレストウルフも居て、巨大なタイガーキャットを静かに迎えている。
これは夢かと思ったが、血の匂いと周囲に転がり死に切れていないグレイウルフの呻きが、此は現実だと教えてくれる。
黙って自分達を見下ろす四頭に恐怖を覚えるが、三頭の首には赤い布が巻かれていて使役獣だと判った。それで自分達を襲う意思がないと判り何となく安堵していた。
巨大なタイガーキャットが不意に後ろを振り返ると、他の三頭もそちらを向いた。
つられて顔を向けると、未だ若い男が現れたのでこの四頭を支配するテイマーだと・・・男の背後に巨大なキングタイガーが居るではないか。
《グレイ、ご苦労さん。怪我も治してやったのか》
《あい、ランディ。死にそうな顔をしていたからね》
「手酷くやられた様だが、大丈夫かい」
「あっ・・・ああ、もう駄目だと思っていたが、助かったよ。有り難う」
血塗れの服を着た男二人を含めて六人、疲れ切っていて立っているのもやっとといった感じだ。
「あんたが、この幻獣達の主なのか」
「まぁね」
《ランディ、未だ向かって来る奴がいるよ》
《ファイヤーボールを叩き込んで、追い払え》
《あい》
「どうしたんだ?」
「ああ、未だ何か此方に向かってくる奴がいる様だ」
次の瞬間、木々の間に姿が見えたがファングウルフで〈ドーン〉と爆発が起きると、周辺の木々共々吹き飛ばされ薙ぎ倒されている。
この一発で向かって来ていたウルフの群れは方向を変えて逃げ散った。
《ランディ、この中で死んでいるよ》
ブラックの声に中を覗くと、喰い千切られて半壊した人の遺体が転がっていた。
「群れに襲われた時にそこへ逃げ込んだが、其奴が一番先にやられたよ」
「闘って死ぬか、背中を見せて恐怖に震えて死ぬか。日頃大きな事を言っていたが・・・」
「俺は、死ぬ寸前だったからなぁ」
そう言った男がズルズルと座り込んだ。
見れば足と腹の服が裂け、血でどす黒く汚れている。
俺の視線に気付き、血の汚れを見て「腹に喰いつかれたときには思わず悲鳴が漏れちまったぜ」と自嘲気味に笑っている。
「だがあんたは、死の寸前でもお漏らしをしてないとは、中々見上げた神経だな」
「そりゃー、小便を撒き散らして死ぬのは格好悪いからな。男の美学よ」
「俺は悲鳴を聞いたときに、最後の情けでお前の首を斬り飛ばしてやろうと思ったんだが、ちょっと遅かったな」
「何だそれ?」
「目の前のウルフの相手が忙しくてよ。その直ぐ後に、お前に喰いついていた奴にストーンランスが突き立ってしまい、お前を殺し損ねたよ」
「礼を言うべきか、ちと悩むなぁ」
なかなかにシビアな会話を平然と交わしているが、もう一人の男は、血に汚れ切り裂かれた服を見ながら震えている。
「お取り込み中の所を済まないが、此処はどの辺りになるんだ」
「ん、あんたは何処から来たんだ?」
「それよりも、あんたは貴族になったって聞いたんだが。タイガーキャットの親子を従えたテイマーは一人しかいないはずだが」
「あー! そうだった。すっかり忘れていたぜ」
「それはどうでも良いんだ。此処はどの辺りになるのか教えてくれよ」
「此処から西に向かうとプラシドの近くに出るはずだ。俺は赤い弓ってしがないパーティーのリーダーをしているマドックだ。ウルフレントをベースにしている」
「ランディスだ。プラシドまでどれ位掛かる?」
「俺達の足で5、6日ってとこかな。あんたは王都の近くに領地をもらったと専らの噂だが、何でこんな所に居るんだ?」
「森の奥へ行ってて、帰りに何処か良い猟場がないかなと思って南に下ってみたんだ」
「噂通りだな」
「噂通り?」
「多数の幻獣を従えていて、時々大森林へ行っているってな」
「まぁ、アッシュ達幻獣がいればこそだよ」
「マドック、フリントをどうする?」
「此のまま放置する訳にもいかないので、軽く埋めておくか」
「持ち帰る遺品を回収したら埋めてやるよ。それよりも二人は怪我をしたので体力が落ちている筈だが、街まで戻れるのか? 無理なら俺達もプラシドに向かうので一緒に行ってやるぞ」
「そうしてもらえれば助かるよ」
フラッグに命じて、野営用小屋の中に横たわる遺体を、そのまま地面に沈めて埋めさせた。
転がっているグレイウルフは全て彼等に譲り、フラッグにドームを作らせて彼等の野営用として提供した。
その夜は、タイラント公爵の地下室から掻っ払った酒を提供して、死んだ仲間の弔いとプラシドやウルフレントの状況を聞かせてもらったが、オルソンやラッヒェルの事は、行かないので噂しか知らなかった。
問題の野獣が増えているのかの問いには、グレイウルフの群れに襲われた直ぐ後に、ファングウルフが襲ってくるなんて事は今まで無かった事だと言った。
同時にキングタイガーも来ていたと知ったら、どんな顔をするのか興味が湧いたが黙っておいた。
怪我をした二人の為に2、3日休養してからプラシドに向かう事にした。
* * * * * * *
アルベール街道に近づくにつれ時々冒険者達と出会ったが、驚かれるだけなら未だ良い。
シルバーやファングを交代で先頭を歩かせ、左右をブラックやグレイが守り後方をキングが付いてくる。
シルバーやファングにグレイ辺りまでは驚かれるが、俺の背後に居るキングを見た瞬間に、逃げ出す奴や必死の形相で武器を構える奴と大騒ぎになる。
うんざりして、先頭のシルバーやファングの後ろはマドック達に歩いてもらい、後ろに多数の使役獣が居て最大の奴はキングタイガーだと説明してもらった。
アッシュはキングの後ろを歩いているが、キングの印象が強すぎてアッシュを見てもさして驚かれないのでご機嫌だ。
キングタイガーはタイガーキャットより二回りくらい大きく強面で、確かにアッシュは目立たないよなと納得した。
ブラックが俺の足にぴったりと張り付いているが、此方も震えているので《ブラック、彼奴の頭に一発落とせばお前でも楽に勝てるぞ》と教えてやる。
《それでも恐い・・・》
熊ちゃん相手なら気にせずに討伐してくる癖に、同族種だと相手の強さがすり込まれていて恐いのかねぇ。
かく言う俺も正面切って向かって来るキングタイガーに、ションベンチビリそうだわ。
取り敢えず、どんなに恐くても結界を張る事を教えなきゃならないので、肩越しにフードからフラッグを摘まみ出して、結界を張れ! と命じる。
俺にぎゅっと掴まれ怒鳴られた為に、一瞬で結界を展開する。
目の前に結界の淡い光を見てホッとするが、アッシュが外じゃないの。
迫り来るキングタイガーと睨み合っていたアッシュが、迫り来るキングタイガーの脳天に雷撃を落とした。
一瞬の閃光と〈パシーーン〉と鞭打つ様な音が響くと、キングタイガーの動きが止まり、ゆっくりと崩れ落ちた。
やれやれと冷や汗を拭い、キングタイガーをマジックバッグに収めようとしたが入らない。
おいおい、あの強烈な雷撃を受けて即死していないとは、怪物だね。
《どうしたの》
《未だ生きているよ》
《そう、なら貴方の使役獣にしておきなさい》
《えっ・・・此奴は魔法を・・・鑑定して見る》
鑑定結果はただのキングタイガーで、何故こんなのをテイムしろと?。
《アッシュ、ただのキングタイガーだよ》
《貴方がそれを従えていれば、私が目立たないしのんびり出来るのよ》
ちょっ、キングタイガーを自分の代わりに露払いの道具に使う気かよ。
《早くしなさい。グレイ達が気になるので行くわよ!》
テイムしても、気に入らなければ解除して森の奥に捨てるも殺すも出来るのでテイムして、ブラックに治療をしてもらう。
《先に行くので、フラッグとブラックはランディスを守って後から来なさい》
《はい、アッシュママ》
《ランディを守るよ》
周辺にアッシュを脅かす様な野獣の気配もないので、先に行かせてキングタイガーをテイムする。
《聞こえるな、俺はランディスだ。お前の名は・・・キング》
《ランディシュ?》
《ランディだ。取り敢えず俺の後ろを付いてこい》
ブラックにキングの怪我を治療させると。グレイ達の所へと急いだ。
* * * * * * *
「糞ッ、何でこんなに多いんだよ!」
「うるせぇ! 黙って討伐しろ!」
「弱気になるな! 死にたくなけりゃ闘え!」
「〇〇がやられたぞ!」
「陣形を崩すな!」
襲い掛かって来るグレイウルフの群れを、野営用の小屋を背に闘っていたが数が多すぎる。
朝の出発準備中を襲われて、小屋に逃げ込めた奴はウルフに後を追われて防ぎきれず、悲鳴を残して静かになった。
今も目の前で一人、倒れて喰いつかれている。
悲鳴を上げる仲間に止めを刺してやりたいが、猛攻を防ぐのに手一杯だ。
〈ギャン〉とウルフの悲鳴が聞こえると、喰いつかれて恐怖の悲鳴を上げていた奴が静かになった。
同時に飛びかかってきた奴に何かがぶち当たり〈ギャォン〉と悲鳴を上げて横に飛ばされた。
なんだ? と思った瞬間に〈ドーン〉と頭上で爆発が起きて地面に叩きつけられた。
痛みに耐えながら何とか顔を上げると、自分達の周囲に居たグレイウルフが、ストーンランスとアイスランスに撃ち抜かれて倒れている。
凄腕の魔法使いのパーティーに助けられたのかと思い、立あがろうとしてびっくりした。
目の前をタイガーキャットが横切り、先程悲鳴を上げていた男の前で立ち止まり、男の身体に前足を当てると・・・治癒魔法を使っている。
怪我に呻いていた男はタイガーキャットに驚いて固まっていたが、治癒魔法を見てぽかんとしている。
タイガーキャットは、腕を怪我しながら何とか闘っていた男にも治癒魔法を使うと、不意に一角を凝視している。
何かと思いその方向を見ると、巨大なタイガーキャットが悠然と現れて周囲を見回している。
その時になって気付いたが、タイガーキャットの他にシルバーフォックスとフォレストウルフも居て、巨大なタイガーキャットを静かに迎えている。
これは夢かと思ったが、血の匂いと周囲に転がり死に切れていないグレイウルフの呻きが、此は現実だと教えてくれる。
黙って自分達を見下ろす四頭に恐怖を覚えるが、三頭の首には赤い布が巻かれていて使役獣だと判った。それで自分達を襲う意思がないと判り何となく安堵していた。
巨大なタイガーキャットが不意に後ろを振り返ると、他の三頭もそちらを向いた。
つられて顔を向けると、未だ若い男が現れたのでこの四頭を支配するテイマーだと・・・男の背後に巨大なキングタイガーが居るではないか。
《グレイ、ご苦労さん。怪我も治してやったのか》
《あい、ランディ。死にそうな顔をしていたからね》
「手酷くやられた様だが、大丈夫かい」
「あっ・・・ああ、もう駄目だと思っていたが、助かったよ。有り難う」
血塗れの服を着た男二人を含めて六人、疲れ切っていて立っているのもやっとといった感じだ。
「あんたが、この幻獣達の主なのか」
「まぁね」
《ランディ、未だ向かって来る奴がいるよ》
《ファイヤーボールを叩き込んで、追い払え》
《あい》
「どうしたんだ?」
「ああ、未だ何か此方に向かってくる奴がいる様だ」
次の瞬間、木々の間に姿が見えたがファングウルフで〈ドーン〉と爆発が起きると、周辺の木々共々吹き飛ばされ薙ぎ倒されている。
この一発で向かって来ていたウルフの群れは方向を変えて逃げ散った。
《ランディ、この中で死んでいるよ》
ブラックの声に中を覗くと、喰い千切られて半壊した人の遺体が転がっていた。
「群れに襲われた時にそこへ逃げ込んだが、其奴が一番先にやられたよ」
「闘って死ぬか、背中を見せて恐怖に震えて死ぬか。日頃大きな事を言っていたが・・・」
「俺は、死ぬ寸前だったからなぁ」
そう言った男がズルズルと座り込んだ。
見れば足と腹の服が裂け、血でどす黒く汚れている。
俺の視線に気付き、血の汚れを見て「腹に喰いつかれたときには思わず悲鳴が漏れちまったぜ」と自嘲気味に笑っている。
「だがあんたは、死の寸前でもお漏らしをしてないとは、中々見上げた神経だな」
「そりゃー、小便を撒き散らして死ぬのは格好悪いからな。男の美学よ」
「俺は悲鳴を聞いたときに、最後の情けでお前の首を斬り飛ばしてやろうと思ったんだが、ちょっと遅かったな」
「何だそれ?」
「目の前のウルフの相手が忙しくてよ。その直ぐ後に、お前に喰いついていた奴にストーンランスが突き立ってしまい、お前を殺し損ねたよ」
「礼を言うべきか、ちと悩むなぁ」
なかなかにシビアな会話を平然と交わしているが、もう一人の男は、血に汚れ切り裂かれた服を見ながら震えている。
「お取り込み中の所を済まないが、此処はどの辺りになるんだ」
「ん、あんたは何処から来たんだ?」
「それよりも、あんたは貴族になったって聞いたんだが。タイガーキャットの親子を従えたテイマーは一人しかいないはずだが」
「あー! そうだった。すっかり忘れていたぜ」
「それはどうでも良いんだ。此処はどの辺りになるのか教えてくれよ」
「此処から西に向かうとプラシドの近くに出るはずだ。俺は赤い弓ってしがないパーティーのリーダーをしているマドックだ。ウルフレントをベースにしている」
「ランディスだ。プラシドまでどれ位掛かる?」
「俺達の足で5、6日ってとこかな。あんたは王都の近くに領地をもらったと専らの噂だが、何でこんな所に居るんだ?」
「森の奥へ行ってて、帰りに何処か良い猟場がないかなと思って南に下ってみたんだ」
「噂通りだな」
「噂通り?」
「多数の幻獣を従えていて、時々大森林へ行っているってな」
「まぁ、アッシュ達幻獣がいればこそだよ」
「マドック、フリントをどうする?」
「此のまま放置する訳にもいかないので、軽く埋めておくか」
「持ち帰る遺品を回収したら埋めてやるよ。それよりも二人は怪我をしたので体力が落ちている筈だが、街まで戻れるのか? 無理なら俺達もプラシドに向かうので一緒に行ってやるぞ」
「そうしてもらえれば助かるよ」
フラッグに命じて、野営用小屋の中に横たわる遺体を、そのまま地面に沈めて埋めさせた。
転がっているグレイウルフは全て彼等に譲り、フラッグにドームを作らせて彼等の野営用として提供した。
その夜は、タイラント公爵の地下室から掻っ払った酒を提供して、死んだ仲間の弔いとプラシドやウルフレントの状況を聞かせてもらったが、オルソンやラッヒェルの事は、行かないので噂しか知らなかった。
問題の野獣が増えているのかの問いには、グレイウルフの群れに襲われた直ぐ後に、ファングウルフが襲ってくるなんて事は今まで無かった事だと言った。
同時にキングタイガーも来ていたと知ったら、どんな顔をするのか興味が湧いたが黙っておいた。
怪我をした二人の為に2、3日休養してからプラシドに向かう事にした。
* * * * * * *
アルベール街道に近づくにつれ時々冒険者達と出会ったが、驚かれるだけなら未だ良い。
シルバーやファングを交代で先頭を歩かせ、左右をブラックやグレイが守り後方をキングが付いてくる。
シルバーやファングにグレイ辺りまでは驚かれるが、俺の背後に居るキングを見た瞬間に、逃げ出す奴や必死の形相で武器を構える奴と大騒ぎになる。
うんざりして、先頭のシルバーやファングの後ろはマドック達に歩いてもらい、後ろに多数の使役獣が居て最大の奴はキングタイガーだと説明してもらった。
アッシュはキングの後ろを歩いているが、キングの印象が強すぎてアッシュを見てもさして驚かれないのでご機嫌だ。
キングタイガーはタイガーキャットより二回りくらい大きく強面で、確かにアッシュは目立たないよなと納得した。
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追記:2025/09/20
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もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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