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145 危険人物
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屋敷に戻ると、オルヴァがトレーに書状を乗せて持って来た。
差出人はヒューヘン宰相、俺の用事が終わるのを待っていた様だ
魔法師団長のことで話し合いたいとの事、俺も聞きたい事もあるので王城に向かった。
* * * * * * *
与えられた控えの間に座ってお茶を飲む前に、ヒューヘン宰相補佐官のボリスが迎えに来た。
侍従でなくボリスが来るとは、余程重要な事の様だ。
宰相の応接室に通されると国王陛下も居るではないか。
跪く事無く軽く頭を下げるだけにしたが、壁際の近衛騎士の気配が変わりグレイが呻り声を上げる。
陛下も背後に控えるグレイに目を走らせたが、黙って立あがった。
「グレイン侯爵、漸く会えたな。魔法師団長の造反によりアッシュを死なせ、貴殿にも重傷を負わせたことを謝罪する」
陛下が謝罪の言葉を口にして腰を折るのを見た近衛騎士達が、目を見開いている。
「ついては貴殿に多大な被害を与えた謝罪として、商業ギルドの君の口座に3,000,000,000ダーラを振り込ませてもらった。我々に出来る精一杯の謝罪と思ってくれたまえ」
ヒューヘン宰相の言葉に、あの金はそれかと理解した。
俺がアッシュを失う事は、国家間の戦闘行為に匹敵すると・・・いや、敵対しないための譲歩?詫びかな。
今更蒸し返してもアッシュは戻らないし、元凶の始末はつけてきたので黙って頷いておく。
「一つ聞かせてくれないか」
「女神教の事なら、教皇と大教主が替わります。それと教団が暗示スキル持ちを王国に差し出しますが、利用しないで下さい」
「暗示スキル! やはり居たのか」
「王国も利用することは考えないで貰います」
「約束しよう。何処か寒村に送り、監視下に置くように指示しておこう」
「その・・・教皇猊下と大教主は」
「魔法師団長と同じくゴブリンの相手をしてもらいました。レジナント教皇は、余計な事はしないと思いますよ」
俺の言葉に、女神教は俺が完全掌握していると確信したのか、ほっとした顔で頷く二人。
春の晩餐会への出席を懇願されて渋々了承したが、一月近く間があるのでグレインに戻る事にした。
* * * * * * *
屋敷に戻ると新たな問題が発生していた。
俺の大怪我や死亡説が流れていたのだが、手足を失った状態で領地に戻ってきた。
大繁殖以後、俺が複数のテイマーに使役獣や幻獣を譲っていることが広く知れ渡っていたので、テイマーやテイマーを含むパーティーがグレインに集まって来ていて、俺と接触することを望んでいた。
それが暫くすると、複数のパーティーと共に森に消えてしまった。
俺が冒険者であり、大繁殖の時には群れの討伐等でプラシドからオルソン、ラッヒェル、ファブリスの冒険者ギルドに顔を出していた。
領地に戻られては貴族の館に乗り込むのは無理だが、又森に消えたのならグレインで稼ぎながら待てば良い、と考えた者が多数いたようだ。
エドガ達に絡んだり強要した奴等は、街の警備隊を使って放り出したそうだが、そんな奴等は此れからも湧いて出る。
俺との接触は俺が野獣や幻獣を譲った相手に頼み込むのが手っ取り早い。
誰しもそう考えて、エドガ達ファングドッグの牙やマイルズに俺との橋渡しを頼んだり脅したりしているらしい。
中にはケイシーの事を探り出して彼女の父親に捩じ込んだり、一度雇った剛力の槍と剣のリーダー、デイルに絡んで叩き潰された奴もいるとのこと。
一年ぶりに俺が領地に戻り王都に出掛けたことが知れ渡ると、近々俺が現れると思われてそれが一層激しくなった。
特に被害を受けているのが俺との接触が多いエドガ達で、何とかして欲しいと執事のハリスンに泣きついた。
話を聞いて頭が痛くなったが放置する訳にはいかない。
春の晩餐会に出席しなければならないので、往復や準備を考えれば半月少々しか時間が無いので、使役獣を望む者達を手荒く選別することにした。
* * * * * * *
久し振りに冒険者ギルドに顔を出すと、俺の顔を見知っている連中が驚きジロジロと見てくる。
食堂に行くとマイルズやエドガ達の姿はなかったが、デイル達剛力の槍と剣のメンバーが朝食を食べていた。
俺に気付いたウォルドやスタンリーが、お目々まん丸で俺を見ている。
手足を無くした俺を担いで運んだのに、一年少々で手足が生えて歩いているのだから無理もないか。
「デイル、少し良いか」
「ランディスさん、噂は聞いていたが本当に手足が有るんだな」
「グレイやブラックは治癒魔法持ちだからな。それよりも、俺に紹介しろとごねる奴がいるらしいな」
苦笑いになるデイル達。
「俺達に絡んで来るには体力不足の奴で、少しばかり痛めつけたら街から逃げ出しましたよ」
「それでだ、俺から使役獣を譲られたい奴がいたら、俺の屋敷に行き、執事補佐のジェイコに、パーティー名と名前を告げるように言ってくれないか。ファングドッグの牙のエドガ達やマイルズにも会えば伝えてくれ」
「それは良いですが、碌でもない奴等もいますよ」
「使役獣が欲しい奴に譲るには、俺なりの条件が有るのさ」
ニヤリと笑って伝えると察した様で、皆もにやにやと笑いだした。
* * * * * * *
宰相補佐官のボリスは、女神教の大教主ヘルムントから、宰相閣下にご相談したいことがあると面会の申し出を受けた。
近々女神教本部から何か言ってくると聞かされていたボリスは、了承し日時を指定した返事を返した。
当日王城を訪れたヘルムント大教主は、ヒューヘン宰相と面談し時候の挨拶を済ませると、ランディスに命じられたとおり、暗示スキル持ちが教団内で見つかったので、ホールデンス王国に引き渡したいと告げた。
「暗示スキルですか・・・どの程度の能力なのですか。言っては失礼だが、その能力は教団にとって貴重なスキルだと思われるが」
ヒューヘン宰相の皮肉っぽい言葉に、頷くヘルムント大教主。
「仰るとおりです。ですが創造神アルティナ様を信奉する我が女神教の教団には必要在りませんし、ホールデンス王国の法に従うのも教団の責務です」
「因みに、どの程度の能力なのですか?」
「巷で囁かれる、出会えば一瞬にして支配下に置ける様なものではありません。何度も接触し語りかける事により相手の意識に干渉するようです」
なる程な、出会って直ぐに支配下に置ける様な能力なら、自分達が支配される恐れがあるので危なくて近くに置いておけない。
故に魔法師団長の祈りの席に同席させて、ゆっくりと洗脳したのか。
グレイン侯爵に脅されて仕方なく手放すが、我が国の法に従うとは殊勝な言葉だ。
ヒューヘン宰相は胸の奥で笑いながら、ヘルムント大教主に礼を言う。
「ご存じの様に、魅了スキルや暗示スキルは極めて危険なスキルのなので、辺境の地に送り一生監視下に置く事になります。教団のお心遣いに感謝し、その者の生活は王国が保証いたしますのでご安心下さい」
礼を言って帰っていくヘルムント大教主を見送りながら、グレイン侯爵に脅されてすっ飛んで来ると思ったが、教団の面子を考えて来るのが遅かったなと笑っていた。
* * * * * * *
「表のファングドッグとブラックウルフ二頭は、あんた達の使役獣かい?」
「そうだが、あんた達は?」
「俺達はヴァレリアン街道沿いのニールセンから来た〔疾風の剣〕だ。以前はニールセン辺りを彷徨いていたランディスってテイマーが貴族になり、幻獣をテイマーに分けていると聞いてやってきたのさ。噂では幻獣を三頭ももらったって聞いたのだが本当らしいな」
「ええ、確かに三頭譲ってもらったわ。ランディス様には色々と仕事を回してもらい、大変お世話になっているわ」
「なら、話が早い。俺達にもテイマースキル持ちが居るのだが、そのランディスに俺達を紹介してくれねぇか。勿論タダでとは言わねぇ、幻獣を分けて貰えたら礼は弾むつもりだ」
「お礼は必要無いわ」
「なんでぇ、俺達の頼みを断ろうってのか」
「俺達が侯爵様を紹介する必要はないって事だ、好きなときに御領主様のお屋敷に行けよ。通用門で執事補佐のジェイコって方に伝えるように言って、パーティー名とあんた達の名前とテイマーの名前を告げれば良いのさ。後は向こうの都合次第だな」
「嘘じゃなかろうな」
「あんた達に嘘を言っても、恨まれるだけで金にならんからな。信じられなきゃ、侯爵様がギルドに顔を出すまで、食堂で飲みながら待つんだな」
「この間顔を出したときは、一年以上間があったので待つのも大変よ」
「今も王都に行っているって聞いたから、飲み代を稼ぎながら待つ方がよいと思うぞ」
デイルからランディスの言付けを聞いてホッとしていたので、気楽に伝言内容を伝えながら、このパーティーは駄目だとジェイコに知らせる事に決めた。
冒険者をしている以上礼儀正しくとは言わないが、信用ならない奴は話したり態度を見ればある程度判る。
疾風の剣と名乗った奴等は、断れば脅したりお前の幻獣を寄越せと言ってくるタイプとみた。
礼儀正しくランディスに会いたいと願ってきた者達にも同じ事を伝えたが、彼等は用件を伝えて戻ってくると、どの様な返事をもらったかとか礼を言ってくるので直ぐに判る。
* * * * * * *
王都に居る間にと仕立て直した服に袖を通して馬車に乗る。
お供のグレイとブラックは馬車に乗り、シルバーとキラが馬車の後に従う。
春の晩餐会の為に領地からやって来た貴族達の馬車が、続々と王城の専用通路に集まって来る。
護衛騎士が一人も居らず野獣が二頭のみ従う馬車に、他の貴族の馬車は近寄ってこない。
大繁殖の時ドラゴン多数討伐したが、王国魔法部隊から攻撃を受けて瀕死の重傷を負ったこと。
常に背後を守っていたタイガーキャットを失って怒り狂い、ドラゴン討伐中の魔法部隊相手に反撃して多大な被害を与えた。
王国はそれを咎める事をせずに、首謀者の魔法師団長をグレイン侯爵に引き渡した事などで、グレイン侯爵はホールデンス王国では手を出してはならない危険人物として認識されていた。
その危険人物が乗る馬車だ、護衛騎士が一人も居ない質素な馬車でも、万が一を恐れて誰も近寄らない。
差出人はヒューヘン宰相、俺の用事が終わるのを待っていた様だ
魔法師団長のことで話し合いたいとの事、俺も聞きたい事もあるので王城に向かった。
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与えられた控えの間に座ってお茶を飲む前に、ヒューヘン宰相補佐官のボリスが迎えに来た。
侍従でなくボリスが来るとは、余程重要な事の様だ。
宰相の応接室に通されると国王陛下も居るではないか。
跪く事無く軽く頭を下げるだけにしたが、壁際の近衛騎士の気配が変わりグレイが呻り声を上げる。
陛下も背後に控えるグレイに目を走らせたが、黙って立あがった。
「グレイン侯爵、漸く会えたな。魔法師団長の造反によりアッシュを死なせ、貴殿にも重傷を負わせたことを謝罪する」
陛下が謝罪の言葉を口にして腰を折るのを見た近衛騎士達が、目を見開いている。
「ついては貴殿に多大な被害を与えた謝罪として、商業ギルドの君の口座に3,000,000,000ダーラを振り込ませてもらった。我々に出来る精一杯の謝罪と思ってくれたまえ」
ヒューヘン宰相の言葉に、あの金はそれかと理解した。
俺がアッシュを失う事は、国家間の戦闘行為に匹敵すると・・・いや、敵対しないための譲歩?詫びかな。
今更蒸し返してもアッシュは戻らないし、元凶の始末はつけてきたので黙って頷いておく。
「一つ聞かせてくれないか」
「女神教の事なら、教皇と大教主が替わります。それと教団が暗示スキル持ちを王国に差し出しますが、利用しないで下さい」
「暗示スキル! やはり居たのか」
「王国も利用することは考えないで貰います」
「約束しよう。何処か寒村に送り、監視下に置くように指示しておこう」
「その・・・教皇猊下と大教主は」
「魔法師団長と同じくゴブリンの相手をしてもらいました。レジナント教皇は、余計な事はしないと思いますよ」
俺の言葉に、女神教は俺が完全掌握していると確信したのか、ほっとした顔で頷く二人。
春の晩餐会への出席を懇願されて渋々了承したが、一月近く間があるのでグレインに戻る事にした。
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屋敷に戻ると新たな問題が発生していた。
俺の大怪我や死亡説が流れていたのだが、手足を失った状態で領地に戻ってきた。
大繁殖以後、俺が複数のテイマーに使役獣や幻獣を譲っていることが広く知れ渡っていたので、テイマーやテイマーを含むパーティーがグレインに集まって来ていて、俺と接触することを望んでいた。
それが暫くすると、複数のパーティーと共に森に消えてしまった。
俺が冒険者であり、大繁殖の時には群れの討伐等でプラシドからオルソン、ラッヒェル、ファブリスの冒険者ギルドに顔を出していた。
領地に戻られては貴族の館に乗り込むのは無理だが、又森に消えたのならグレインで稼ぎながら待てば良い、と考えた者が多数いたようだ。
エドガ達に絡んだり強要した奴等は、街の警備隊を使って放り出したそうだが、そんな奴等は此れからも湧いて出る。
俺との接触は俺が野獣や幻獣を譲った相手に頼み込むのが手っ取り早い。
誰しもそう考えて、エドガ達ファングドッグの牙やマイルズに俺との橋渡しを頼んだり脅したりしているらしい。
中にはケイシーの事を探り出して彼女の父親に捩じ込んだり、一度雇った剛力の槍と剣のリーダー、デイルに絡んで叩き潰された奴もいるとのこと。
一年ぶりに俺が領地に戻り王都に出掛けたことが知れ渡ると、近々俺が現れると思われてそれが一層激しくなった。
特に被害を受けているのが俺との接触が多いエドガ達で、何とかして欲しいと執事のハリスンに泣きついた。
話を聞いて頭が痛くなったが放置する訳にはいかない。
春の晩餐会に出席しなければならないので、往復や準備を考えれば半月少々しか時間が無いので、使役獣を望む者達を手荒く選別することにした。
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久し振りに冒険者ギルドに顔を出すと、俺の顔を見知っている連中が驚きジロジロと見てくる。
食堂に行くとマイルズやエドガ達の姿はなかったが、デイル達剛力の槍と剣のメンバーが朝食を食べていた。
俺に気付いたウォルドやスタンリーが、お目々まん丸で俺を見ている。
手足を無くした俺を担いで運んだのに、一年少々で手足が生えて歩いているのだから無理もないか。
「デイル、少し良いか」
「ランディスさん、噂は聞いていたが本当に手足が有るんだな」
「グレイやブラックは治癒魔法持ちだからな。それよりも、俺に紹介しろとごねる奴がいるらしいな」
苦笑いになるデイル達。
「俺達に絡んで来るには体力不足の奴で、少しばかり痛めつけたら街から逃げ出しましたよ」
「それでだ、俺から使役獣を譲られたい奴がいたら、俺の屋敷に行き、執事補佐のジェイコに、パーティー名と名前を告げるように言ってくれないか。ファングドッグの牙のエドガ達やマイルズにも会えば伝えてくれ」
「それは良いですが、碌でもない奴等もいますよ」
「使役獣が欲しい奴に譲るには、俺なりの条件が有るのさ」
ニヤリと笑って伝えると察した様で、皆もにやにやと笑いだした。
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宰相補佐官のボリスは、女神教の大教主ヘルムントから、宰相閣下にご相談したいことがあると面会の申し出を受けた。
近々女神教本部から何か言ってくると聞かされていたボリスは、了承し日時を指定した返事を返した。
当日王城を訪れたヘルムント大教主は、ヒューヘン宰相と面談し時候の挨拶を済ませると、ランディスに命じられたとおり、暗示スキル持ちが教団内で見つかったので、ホールデンス王国に引き渡したいと告げた。
「暗示スキルですか・・・どの程度の能力なのですか。言っては失礼だが、その能力は教団にとって貴重なスキルだと思われるが」
ヒューヘン宰相の皮肉っぽい言葉に、頷くヘルムント大教主。
「仰るとおりです。ですが創造神アルティナ様を信奉する我が女神教の教団には必要在りませんし、ホールデンス王国の法に従うのも教団の責務です」
「因みに、どの程度の能力なのですか?」
「巷で囁かれる、出会えば一瞬にして支配下に置ける様なものではありません。何度も接触し語りかける事により相手の意識に干渉するようです」
なる程な、出会って直ぐに支配下に置ける様な能力なら、自分達が支配される恐れがあるので危なくて近くに置いておけない。
故に魔法師団長の祈りの席に同席させて、ゆっくりと洗脳したのか。
グレイン侯爵に脅されて仕方なく手放すが、我が国の法に従うとは殊勝な言葉だ。
ヒューヘン宰相は胸の奥で笑いながら、ヘルムント大教主に礼を言う。
「ご存じの様に、魅了スキルや暗示スキルは極めて危険なスキルのなので、辺境の地に送り一生監視下に置く事になります。教団のお心遣いに感謝し、その者の生活は王国が保証いたしますのでご安心下さい」
礼を言って帰っていくヘルムント大教主を見送りながら、グレイン侯爵に脅されてすっ飛んで来ると思ったが、教団の面子を考えて来るのが遅かったなと笑っていた。
* * * * * * *
「表のファングドッグとブラックウルフ二頭は、あんた達の使役獣かい?」
「そうだが、あんた達は?」
「俺達はヴァレリアン街道沿いのニールセンから来た〔疾風の剣〕だ。以前はニールセン辺りを彷徨いていたランディスってテイマーが貴族になり、幻獣をテイマーに分けていると聞いてやってきたのさ。噂では幻獣を三頭ももらったって聞いたのだが本当らしいな」
「ええ、確かに三頭譲ってもらったわ。ランディス様には色々と仕事を回してもらい、大変お世話になっているわ」
「なら、話が早い。俺達にもテイマースキル持ちが居るのだが、そのランディスに俺達を紹介してくれねぇか。勿論タダでとは言わねぇ、幻獣を分けて貰えたら礼は弾むつもりだ」
「お礼は必要無いわ」
「なんでぇ、俺達の頼みを断ろうってのか」
「俺達が侯爵様を紹介する必要はないって事だ、好きなときに御領主様のお屋敷に行けよ。通用門で執事補佐のジェイコって方に伝えるように言って、パーティー名とあんた達の名前とテイマーの名前を告げれば良いのさ。後は向こうの都合次第だな」
「嘘じゃなかろうな」
「あんた達に嘘を言っても、恨まれるだけで金にならんからな。信じられなきゃ、侯爵様がギルドに顔を出すまで、食堂で飲みながら待つんだな」
「この間顔を出したときは、一年以上間があったので待つのも大変よ」
「今も王都に行っているって聞いたから、飲み代を稼ぎながら待つ方がよいと思うぞ」
デイルからランディスの言付けを聞いてホッとしていたので、気楽に伝言内容を伝えながら、このパーティーは駄目だとジェイコに知らせる事に決めた。
冒険者をしている以上礼儀正しくとは言わないが、信用ならない奴は話したり態度を見ればある程度判る。
疾風の剣と名乗った奴等は、断れば脅したりお前の幻獣を寄越せと言ってくるタイプとみた。
礼儀正しくランディスに会いたいと願ってきた者達にも同じ事を伝えたが、彼等は用件を伝えて戻ってくると、どの様な返事をもらったかとか礼を言ってくるので直ぐに判る。
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王都に居る間にと仕立て直した服に袖を通して馬車に乗る。
お供のグレイとブラックは馬車に乗り、シルバーとキラが馬車の後に従う。
春の晩餐会の為に領地からやって来た貴族達の馬車が、続々と王城の専用通路に集まって来る。
護衛騎士が一人も居らず野獣が二頭のみ従う馬車に、他の貴族の馬車は近寄ってこない。
大繁殖の時ドラゴン多数討伐したが、王国魔法部隊から攻撃を受けて瀕死の重傷を負ったこと。
常に背後を守っていたタイガーキャットを失って怒り狂い、ドラゴン討伐中の魔法部隊相手に反撃して多大な被害を与えた。
王国はそれを咎める事をせずに、首謀者の魔法師団長をグレイン侯爵に引き渡した事などで、グレイン侯爵はホールデンス王国では手を出してはならない危険人物として認識されていた。
その危険人物が乗る馬車だ、護衛騎士が一人も居ない質素な馬車でも、万が一を恐れて誰も近寄らない。
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追記:2025/09/20
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コメント頂けるとするかもしれないです。
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