ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学

文字の大きさ
47 / 71

47 ダンジョン生成

しおりを挟む
 「ブラウン兵を集めろ! 大至急だ」
 
 頷いたブラウンだが唐突な命令は何時もの事なので、側近に軍の召集と魔法部隊に待機を命令する様にと走らせた。
 
 「ユーヤ様、何事ですか?」
 
 「冒険者ギルドから程近い場所に、ダンジョンが生成されている」
 
 「ダンジョンですって、まさか」
 
 「さっき確認してきた。10日前から冒険者ギルドは知っていた様だが、黙って自分達で事を済ますつもりだったんだ」

 「まさか・・・そんな勝手な事を」
 
 「転移陣の名前は〔ミズホダンジョン〕だ。隊列を組む必要は無い数名ずつでも良いから周辺警備に送り込め。冒険者が邪魔をする様なら、切り捨てろと命じておけ! 防衛軍指揮官を呼べ!」
 
 「判りました。全ての業務を停止して防衛に回します」
 
 「庁舎の横に50人程度送れる大型の転移陣を造るので、そこから人を送れ。俺は一度向こうへ行き、転移魔法陣を大きくて往路と復路の二つの魔法陣を造って来る」
 
 現場に行くと混乱を極めていたが、その場の高位の者に命じてダンジョンが形成されようとしている場所から少し離して丸く線を引く。
 その線より外側に300メートル離して線を引かせると、それより中に人を入れるなと命じ転移魔法陣の位置も遠ざけた。
 
 後ほど土魔法使いを集めて、土柱の柵を造らせる目安にするのでと説明して即座に総合政務庁舎に引き返した。
 
 「ブラウン、テレンザに使者を送り、非常事態だと告げてアルカートを呼べ!」
 
 集まる土魔法使い達に「理由は聞くな黙って神殿へ行き、ハラムニ様にミズホの街の安全を祈れ。祈り終ったら何にも言わずに庁舎横の転移魔法陣から現場に跳び土柱で柵を造れ」と命じた。

 但し柵の太さは30cm高さ10mで揃え、柱の間隔は10~15cmで弓や魔法が撃てる幅にしておけと指示。
 
 100m毎に幅1m高さ2.5mの出入口を設けて土魔法使いを配置し、魔物が溢れたら土魔法で出入口を封鎖する任務を与える。
 ダンジョンを含め直径約650メートルなら一周2キロちょいだな。
 25~30cm間隔で柱の太さが30cmとして、4.000本少々必要か。
 間に合えば良いが。
 
 土魔法使いの指揮者に状況を尋ねると、集まった土魔法使いは約80人だが未だ増えている様だとの返事で、一人平均12~3本造れているとの事だ。
 昼夜を問わず遣れば、4日少々で内周の柵が完成する勘定になる。

 柵が完成すれば外周柵を作らねばならないが、300m離した外の柵は4km近いので倍の柱が必要になる。
 胸算用に苛立つが、此処で対処を誤れば街の外掘り迄魔物が押し寄せる事になる。
 万が一に備え街の外の冒険者ギルド周辺のホテルや食堂等の人員を街中に移動させる。
 ギルドの連中には残って、万が一に備えてもらうとするか。
 
 続々集まる魔法部隊にも同じ命令を下し、現場では土魔法使いを守り防衛軍の援護に付けと命じる。
 到着した総指揮官に第一防衛線の柵構築が終われば、その柵より300m外にもう一つの柵を造るので、冒険者ギルドの連中は中に入れるな。
 従わなければ即座に切り捨てろと命令する。

 「部隊の一部を派遣して、冒険者ギルドを封鎖しサブマスを拘束しろ。職員はギルド内に留め置け、従わなければ殺せ! 冒険者や周辺の者達は街に避難させろ」
 
 そうこうしていると、テレンザ国王アルカートのお出ましだ。
 人には聞かせられない内容なので、ドームの中へ招き入れヨークスさまから聞いた話を伝える。
 そして冒険者ギルドが10日程前から知っていて、黙って自分達で事をなそうとしていたと教える。
 
 「後何日でダンジョンが出現するのか分からないが、10日が失われた事は間違いない。取り合えず2重の柵を造るのが第一目標だ」
 
 「兵を回そうか」
 
 「いや未だいい。それよりお前の方だヨークス様の言葉に依れば、1年の猶予が有るが、それも多分の話だ。今回の様にギルドが自分達の利益で国を無視すれば、下手をすれば街の一つや二つ死に絶えるぞ。テレンザの王都冒険者ギルドのギルマスは未だフリックスだろ、あの強欲な間抜けにまともな対応が出来るとも思えんぞ」
 
 「ダンジョンの出現場所は判るか」
 
 「未だはっきりとは分からないが、神々に頼んでいるのでそのうち判るだろう。準備だけはしておけよ」
 
 「分かった。兵は要らんと言ったが慣れさせる為にも、ナンセンと兵2.000名を回すので、訓練がてら使ってくれ」
 
 「分かった鍛えてやるよ。ナンセンは元気か」
 
 「奴は龍神族だぞ、頑健そのものさ」
 
 「それから事が落ち着いたら、冒険者ギルドを潰すかも知れないが手出しは無用だぞ」
 
 アルカートは、苦笑いとともに肩を竦めて帰って行った。
 翌日にはナンセンが兵を連れて続々と転移魔法陣から現れた。
 
 「タカツカ公爵閣下自らのお出迎え、感謝いたします」
 
 「そんな気はさらさら無いのに、出世すると口が上手くなるよな。ナンセン伯爵閣下。聞いたと思うが、此処でしっかり訓練しておけよ」
 
 「ああ、そうさせて貰うよ。然し、冒険者ギルドも舐めくさっていやがるな」
 
 「落ち着いたら落し前はつけるよ。庁舎横にダンジョンへの転移魔法陣が在る、現地へ跳んで現場司令官のホングスに配置を聞いてくれ。それと冒険者達が騒いだり妨害する様なら、問答無用で切り捨てろと命令している。俺の責任で好きにしてくれ」
 
 「分かった行って来るが、間に合えば良いな」
 
 現場に向かうナンセンを見送り、何をすべきか考える。
 先ず国内の冒険者に触れを出し、事情を説明して要請に応える者のみを防衛部隊に組み込む。
 ヤマト国内の冒険者ギルドは何時でも封鎖出来るよう手筈を整える。
 封鎖の状況になればギルドに変わって業務を仕切る者の手配だな。
 あのギルマスを尋問して、ギルド本部が知っているのか確認の必要もある。

 臨時の二重柵が完成した後は、魔物が溢れ出た場合の対応方法の検討が必要だが、今は出たとこ任せでやるしかない。
 遣ることが次々と出てくるが、先にやっておく事が在る。
 
 「ブラウンダンジョンに行って来る。ギルマスを尋問して、ギルド本部も知っていたのなら相応の対応が必要だからな」
 
 現場に着くと、ルーシュを虎並の大きさにしてギルマスを埋めた場所に行く。
 くたびれ果てた顔のギルマスを掘りだしすと、ルーシュに首を咥わえさせ現場指揮所まで運ぶ。
 
 「さてとお前の名前は?」
 
 「例え一国の王であろうと、冒険者ギルドに逆らえばただじゃ済まない。覚悟をしておけ。高が公爵を名乗る、冒険者上がりの糞餓鬼に何が出来ると思っている」
 
 後ろから尻を蹴り飛ばしたのはナンセンだった。

 「その前に魔物が出たら、お前を最初の犠牲者・・・いや餌にしてやるので覚悟をしておけよ」
 
 《ルーシュ手足を踏み潰してやって》
 
 〈ギャー〉いきなりルーシュに手足を猫パンチで潰されたギルマスの悲鳴が響く。
 
 「名前は」
 
 「お、おっ、お前、如きに」
 
 《ルーシュ、殺さない程度に腹を叩いて、死にそうなら治癒で治してね》 
 
 〈グヮー止めろ〉とか聞こえるが知った事か。
 
 「名前は」
 
 「・・・・・・」
 
 《ルーシュ、治して挙げて》
 
 ルーシュがギルマスを治癒の光りで包むと、怪我の治ったギルマスが驚愕の表情でルーシュを見つめている。
 
 「誰か、火魔法を使える者を呼んで来い」
 
 魔法部隊の一人が、直立して俺の前に立つ。
 
 「あー気楽にしろ。そいつの手足を魔法で炙ってくれ、殺さない程度にな。この騒ぎの元凶なので、質問に素直に答えるまでじっくりと炙ってやれ」
 
 地面に転がされ、手足や体を火魔法で焼かれ悲鳴を上げ続ける男。
 再びルーシュの治癒魔法で火傷を治されたギルマスに問い掛ける。
 
 「名前は」
 
 「己に名乗る名前はない! 糞餓鬼が必ずお前をなぶり殺しにしてやるからな」
 
 「そうか、もういいよ。ギルド本部に殴り込むつもりだが、その時はお前も連れて行ってやるよ。生きていればの話だがな」
 
 〈カンカンカン〉連続した鐘の音が聞こえてくる。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

処理中です...