ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学

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49 神の手から零れた一雫

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 呼び名が面倒なので内周を第一防壁、外周を第二防壁とし最終的にその外に本格的な第三防壁を築く事にする。
 第一防壁は溢れ出た魔物の小物は通り易くし中大型の魔物は通り辛くする。
 大物の出口は間隔を離して数箇所にする。
 同時に小物の討伐と中型の魔物の力を削ぐ。
 第二防壁で第一防壁を抜けて来た小物と中型の魔物の討伐と大型の魔物の力を削ぐ事にする。
 第三防壁で全ての魔物の進行を食い止め殲滅する。
 第一第二防壁を二重にして内部に人を潜ませ矢狭間を付けて魔法攻撃と石弩で攻撃する。
 各防壁は地下道で繋ぎ人の被害を最小限にとどめる。
 
 武器職人をかき集めて弓より強力な石弩を大量生産させれば素人でも狙いをつけて撃てるので戦力強化も出来る。
 石弩の大型を作れば、大物も倒せる可能性が上がるのでこれも作らせる。
 弦を引くのは滑車か歯車で引けば良かろう。
 鏃は土魔法で作れば生産も容易だし素人でも作れる、強化は優秀な土魔法使いに遣らせれば良い。
 
 ブラウンに防壁構築責任者任命と。武器製造の手配を頼まなければならない。
 
 「ユーヤ様、テレンザ王国の国王陛下がお見えです」
 
 「通せ」
 
 「俺達は下がっているよ」
 
 「いいよ、気にするな」
 
 「おう、気にする必要はないぞ。どうだった、魔物が溢れたと聞いてな」
 
 「なんとか凌いだが、急ぎ追加の防壁の構築をしている最中だ」
 
 「その防壁の詳細を教えて呉れ。後々役立つ筈だからな」
 
 「セルーシャ、その紙を取ってくれ」
 
 差し出された紙に書き込まれた図を示しながら説明する。
 
 「すると第一防壁は完成しているのだな」
 
 「壁としてなら完成しているが此を二重壁にし、壁内部から強力な石弩で中大型の魔物もある程度倒せる様にするつもりだ」
 
 「大工事だな。魔法使いは足りているのか」
 
 「いやお前の所にもっと土魔法使いを寄越せと、連絡をする所だったんだ」
 
 「皆も意見が有るなら遠慮無く言ってくれ」
 
 セルーシャが恐る恐る手を挙げる。

 「セルーシャ何か良い案が有るかい」
 
 「第一防壁を二重にするって事は第二防壁も二重にするのですか」
 
 「勿論第一防壁を抜けたら前後から攻撃するし、第二防壁を抜けても後ろからも攻撃出来る様にするつもりだ。基本的に第二防壁で防げればよし。それが不可能な場合に備えて第三防壁を造るんだ」
 
 「広い範囲で防ぐのなら、全てを見渡せ指示出来る場所が必要になります。柵の3倍程度の高さの塔を一つか二つ建てて指揮すれば効率的な防御が出来ると思います」
 
 「確かに城なら外敵の動きを知る為の塔を建てる。これは内向きだが、魔物の動きを知る為にも必要だな」
 
 「はい、これ等を地下道で結べば人の配置も安全に素早く出来ると思います」
 
 「ふむ、180度の2分割で全てが見渡せるな」
 
 「それを第二防壁の所に建てれば、ほぼ全てが見渡せます。第一防壁の壁際が見えませんが、第一防壁は大中小の魔物を振り分ける役目上、さして問題にはならないと思います」
 
 話しを聞きながら、第二防壁の上に二カ所丸印を付ける。
 
 「第一防壁の魔物を振り分けるにはどうすれば効率的かな」
 
 「12~24程度のゲートを付け小型の魔物しか通れないゲート、中型の魔物も通れるゲートと、等間隔に振り分ければどうでしょうか。魔物がこちらの思い通り動くと仮定しての話しです。それでも溢れ出た魔物は外に向かいます、そこに小物が無理すれば通れる、普通に通れるが中型なら無理すれば通れると様々な幅のゲートを設ければ」
 
 「成るほど、ゲートを通過する時に内部から安全に魔物を攻撃出来るな。ユーヤ、この御婦人はお前と関係在りそうだな」
 
 「たく、油断のならない王様だよ」
 
 「お前が紹介もせずに同席させ、意見を聞くだけならまま在ることだ。だが言葉使いや態度が、昔のお前に似た所がある。お前は桁外れだが、この御婦人は普通の者の様なのに、俺に対する畏怖が無い。隣の男は、俺を国王と畏怖しているのにな」
 
 「この場に居る者は全員、ヨークス様に会った事がある者達だ。彼女は嘗て俺がいた世界からの転生者だ」
 
 「てんせいしや?、俺のいた世界?」
 
 「このフルミナの世界とは別の世界の事だ。右手をフルミナとすれば左手が俺が元居た世界だ、左手の世界で死んで元の世界又は右手の世界に産まれる。それが転生だ。簡単に言えば再び生を受け、新たな人生を歩んでいる者だ。フルミナでは人は死ねばどうなると教えられている」
 
 「・・・人は、死ねば創造神様の下に帰ると。再び生を受けて生まれるなぞ聞いたことが無い」
 
 「以前俺が居た世界の一部では、人は何度も生まれ変わると言われ信じられていた。そして生まれ変わる度に前世の記憶を無くし、新たな人生を生きるとな」
 
 「では彼女は、まさか」
 
 「僅かだが在る。その記憶に依って俺を尋ねてきた」
 
 「お前は以前の記憶を持って産まれた様に聞こえるが」
 
 「確かに、俺は一度死んだが輪廻の輪つまり転生から外れた者だ。詳しい事は省くが俺の居た世界の神様とヨークス様の取り決めにより、フルミナの地に降りた者だ。この地に降りた時ヨークス様より新たな身体を授かり25才で死んだ続きを始めたのさ」
 
 「何とまぁ突拍子も無い話だ、と言いたいがついていけんわ。然し良くユーヤと出会えたな」
 
 「摺り板版を見て、ユーヤ様のお屋敷を尋ねました」
 
 「摺り板版を・・・」
 
 「はい摺り板版の冒頭に(この文字が読めるなら巻末の指示に従え)と書いて在りました。そして巻末の文字は(読めるなら訪ね来てみよ大和なる瑞穂の街の神の座す碑に)と書かれてました」
 
 「あの碑の文様は文字だったのか。以前摺り板版の文様を、見る者が見れば解るとか言っていたな」
 
 「良く覚えているな。俺がこのフルミナに来たということは、他にも俺の世界からこの地に降り立った者がいると思っていたんだ。だからあれを作った時に招き寄せる文言を入れたのさ」
 
 「他にも現れる可能性が在ると」
 
 「多分無いな。ヨークス様に尋ねたら、俺の世界の言い伝え通り前世の記憶は無くなるはずだと言われたよ。彼女は神の手から零れた一雫だな」
 
 「ところで、もう一つのダンジョンの場所だが解るか」
 
 「未だ聞いて無い、というかその暇が無かったんだ。次回の祈りの折りに聞いておくよ。どうせダンジョンの兆候が出てからでないと、木の棒一本立てられないぞ。それよりダンジョンが出来ても都合の良い場所を探しておけ、ヨークス様の口振りではある程度位置を決められる様子だからな」
 
 「それが本当なら人里離れた場所にすれば」
 
 「そりゃ駄目だヨークス様にも止められた。人里離れた場所に防衛拠点を作るのは大変だし、魔物が溢れても対処出来ないだろう。止められなければ魔物が溢れ、街や村が襲われる事になる。ダンジョンが出来た時に資材や人材の投入に便利で、尚且つ後々冒険者ギルドの設置や冒険者達に便利な場所だな」
 
 「王都の近くにか」
 
 「別に王都の近くでなくてもよい。人が集まり易く大人数の人間が居着いても耐えられる場所が望ましいな。転移魔法陣を設置しても良いが普通の者は利用出来ないからな。今回魔力石をバカスカ使ったぞ」
 
 「ならテレンザとエケランの間かエケランの近くなら水も有るし拡張もし易い。街道から離れた場所なら文句は言わんぞ」
 
 「ヨークス様に希望として伝えるよ。何せ神様の領域だが、人の悪意や妬み嫉みが種というか核になって出来ると言ってたからな」
 
 「ではエケラン周辺に注意を払っておこう」
 
 「今回のダンジョン騒動だが、俺に知らせず自分達で仕切り見張っていたんだが、ギルマスを問い詰めたら冒険者ギルドが街の安全を守っているとほざきやがった」
 
 「おいそれは問題だぞ、ギルドにそんな権利は無い。お前と一戦交える気なのか」
 
 「知らん!、お陰で緊急で造った柵も完成前に魔物が溢れて被害が出た。俺一人で何もかもは出来ないし後進の育成も必要なので人をかき集めてやっている。然し、防壁が完成したら、冒険者ギルド本部の話し次第で潰すつもりだ。そのつもりでいてくれ」
 
 「そのギルマスは」
 
 「柵の内側に埋めた、首だけ出せる様にしてあるので運が良ければ生きているだろう。奴には今回の責任を取らせるつもりだ」
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