ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学

文字の大きさ
52 / 71

52 二つのギルド

しおりを挟む
 ギルド本部を退散した俺はテレンザ王国に跳び、国王のアルカートに面会を求めた。
 
 「どうした、ダンジョンの場所が解ったのか」
 
 「いや、冒険者ギルド本部の方をつけて来た」
 
 そう言って一枚の用紙を差し出す。
 
 ・ダンジョン生成、誕生、崩壊の経緯・・・
 ・責任の所在を明確にし、その処分・・・
 ・他国の内政を無視し住民と国家を危険・・・
 ・ダンジョン誕生と崩壊により発生・・・
 ・テレンザ王国よりヤマト公国に・・・
 ・ヤマト公国テレンザ王国に設置・・・
 ・冒険者ギルド本部にヤマト公国及び・・・
 
 差し出された用紙を受け取り読んで行くアルカートの顔が、飽きれ顔になって行く。
 
 「方をつけたと言うより、何だこれは? 冒険者ギルドの無条件降伏か」
 
 「事後報告だが、サランガの冒険者ギルドのギルマスを役員に押し込んで来た。5年間の約束で受けて貰ったので、5年後の人選は任せた」
 
 「これだと、俺達は直接冒険者ギルドに口を挟め無いが、役員を通して国内の冒険者ギルドをコントロールする事になるな」
 
 「その方が面倒事を避けられて良いだろ。それと、王都冒険者ギルドのギルマス、フリックスを解任したいのだが」
 
 「理由は」
 
 「今回ギルド本部に行った時に、フリックスの阿保が役員に俺の事を聞かれて、人より少し魔法が使える程度と吹き込んだんだ。結果本部役員はプラチナランカーやゴールドランカーをわんさか集めて、俺を待ち受けていたって事よ」
 
 「待て! まさか逸れを」
 
 「サランガのギルマス、ドルーザが相当止めた様だが、阿保の口車に乗った役員と待ち受けていた冒険者には死んで貰った。王都の冒険者ギルドには人材がいないからなサブマスも貴族にへいこらする弱腰だし」
 
 「ではそのドルーザに王都のギルマスになって貰えば良かろう。サランガのサブマスは使えるのか」
 
 「エメルガかギルマス代行を遣らせるよりギルマスにした方が良いかな。ドルーザに王都のギルマスに納まるまでの繋ぎに誰か指名させるよ。逸れで良いかな。ちょっと呼んで来るか」
 
 「おお一度会っておきたいな」
 
 冒険者ギルド本部のドルーザの部屋に跳ぶとドルーザが退屈そうに椅子に踏ん反り返りお茶を飲んでいた。
 
 「悪い、ドルーザさんちょっと付き合って」
 
 有無を言わせず、ドルーザを連れてサランガ国王の部屋に跳ぶ。
 
 「連れて来たぞ、彼がドルーザだ。あーとサランガ王国アルカート・オルク・テレンザ国王だ」
 
 「はっ???」
 
 慌てて跪こうとするのを、アルカートが止める。
 
 「必要無いドルーザ殿、ユーヤの無茶に付き合わせて申し訳無いが、5年間頼む。5年後には、この王都の冒険者ギルドのギルマスになって貰いたいのだ。フリックスはドルーザ殿の権限で早いうちに解任して代理を立ててくれ」
 
 「ははぁ、そういう事ですか」
 
 「我々が、ギルドを支配下に置いたとなれば他国が黙って無いからな。勿論拒否出来るが」
 
 ドルーザさん、肩を竦めて苦笑い。
 
 「でドルーザさん、王都のサブマスも弱腰なので留守の間ギルマス代行を指名してね。エメルガはサランガのギルマスになって貰う事になったから」
 
 「やれやれ、お前が初めてサランガに来た時から、俺は振り回されっぱなしだよ」
 
 「ドルーザ殿が役員を終えて王都のギルマスになれば、口約束だが子爵として年金貴族の地位を約束しよう」
 
 「クルフと同格か、でも無理して貴族に成らなくても良いからね。後でギルド役員就任祝いに蜥蜴のお肉とエビ蟹の詰まったマジックポーチをプレゼントするね」
 
 ドルーザさん、首を振りふりため息を吐いている。
 
 「おいユーヤ、俺も在庫が無くって困ってるんだ」
 
 「解ったよ、たくヨークス様に似てきてるぞ。秘蔵の酒と交換な」
 
 ドルーザさんを再びギルド本部の部屋に送ると、ミズホの屋敷に戻ってクルフにお願いだ。
 忙しいねー、気楽で平穏な生活の約束はどうなってしまったんだろう、ヨークス様。

 * * * * * * * *
 
 シャイニー、クルフ、セルーシャ、ボイスの四人は、居間でのんびり寛いでいた。

 「ただいまー、疲れたよ」
 
 「で結果は」
 
 「ヤマトとテレンザが、それぞれの国に在る冒険者ギルドを支配下に置く事になったよ。冒険者ギルド本部に、ヤマトとテレンザから役員を一人ずつ送り込む。テレンザはドルーザさんを送り込み、ヤマトはクルフを送る事になった。クルフには事後承諾で悪いけど、5年間だけギルド本部の役員をしてよ。クルフの役員室に転移魔法陣を設置しているので、息抜きに此処に来れば良いよ。勿論ドルーザさんもね。此処の転移陣の名前は秘密でお願い、聞かれたら総合政務庁舎に繋がってると言っておいて」
 
 「先に相談してよユーヤ。ギルド本部の役員なんて体験は、おいそれと出来るものでもないので良いけどな」
 
 「ヤマト国内の冒険者ギルドは、ヤマト公国の支配下に成るので現在の手数料2割を1割に下げて、冒険者の実入りを良くするよ。逸れで良いだろボイス」
 
 いきなり話を振られてキョドっているが、嬉しそうだ。
 
 「は、はい。実入りが良くなるのは皆喜ぶと思います。ヤマトとテレンザはギルドは別にして。周囲のホテルや食堂、酒場等が安くて清潔で、冒険者の為に作られているので他国の冒険者から羨ましがられています。逸れで手数料が1割になったら、他国から冒険者が相当流れて来ますね」
 
 「そこだ、ダンジョンが出来たし防壁が完成したらダンジョンの出入りを許そうと思う。魔物が溢れスタンピードを防ぐ意味でもな。他国からも相当数の冒険者が集まると思うのだが、シャイニーとボイスとセルーシャの三人で治安の維持と犯罪者の摘発の組織を作ってくれないか。ミズホの冒険者ギルドのギルマスもシャイニーがクルフと相談して決めてね」
 
 「うっわー、いきなり遣る事が山ほど出来たよ」
 
 「シャイニー諦めろ、ユーヤと関わったのが運の尽きだ。他人様が見たら幸運だけどな」
 
 「何か凄い言われよう何だけど」
 
 「ユーヤが規格外過ぎるのさ、気にするな」
 
 「へいへい。んじゃ一度ギルド本部に行こうか、向こうの役員を紹介するよ」
 
 クルフと二人ギルド本部のクルフの部屋、ギルド本部ヤマトの転移魔法陣に跳ぶ。
 隣のドルーザの部屋に行くと4人の役員達と今後について協議していた。
 
 「いよー、クルフ子爵閣下」
 
 「ヤマトで役職に就いている間だけの子爵ですよ、ドルーザさん」
 
 「冗談はさておき、俺達二人と4人の役員以外の6人の役員選出だが、当分は6人で運営しながら徐々に増やしていくしかないな」
 
 「俺はヤマトとテレンザが任命した二人の権利を認めて貰えれば、ギルド本部の運営に口を出す気はないよ。ドルーザさんとクルフで勝手に遣ってよ、テレンザの国王陛下も同じだと思うよ。ヤマトとテレンザ国内の冒険者ギルドの運営はこちらで遣るけど、クルフやドルーザさんの名前で遣るから文句は無いね」
 
 最後は生き残り4人の、役員に問いかけると、無言で4人が頷く。
 
 「基本的にはギルド本部の規則に従うから安心して。クルフ、俺は先に帰るから、後はドルーザさんから聞いてね」

 * * * * * * * *

 俺はドルーザさんの部屋から、さっさとミズホの屋敷に転移してしまった。
 残ったドルーザとクルフのぼやきが聞こえる様だ。
 
 「やれやれ、相変わらず面倒事は人に押し付けるな」
 
 「諦めて下さい、ユーヤと関わった事を」
 
 「お前達がユーヤを連れて来たのが始まりだからな。お前と俺とユーヤの腐れ縁だな」
 
 「シャイニーも居ますよ。下手すりゃ俺の後釜に、シャイニーを送り込んできそうですよ。逸れでは、役員の方々を紹介して貰えますか」
 
 ドルーザがヤマト公国からの役員として、クルフが指名された事を4人の役員達に伝え、役員達の挨拶を受ける。
 同時に役員達から紹介されたそれぞれの秘書から、仕事内容の説明を受けて二人の冒険者ギルド本部役員の生活が始まった。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

処理中です...