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71 セルーシャとクルフ
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マザルカ領内での転移魔法陣調整を済ませ、当分マザルカ国内は放置する事にした。
残る問題はしょぼくれた爺さんだ。
神殿を参拝する者や巡礼と称して訪れる人々が、ヨークス様の姿が消えたままなのを不安がり始めているとセルーシャが伝えてきた。
確かに神様の総元締めである、創造神ヨークス様の姿が消えたままなのは不味いと思う。
久々にご機嫌伺いに行く事にし、手土産を用意する為にスタートゲートへ跳びご馳走の材料を仕入れてきた。
問題は酒だが、酒癖の悪い爺さん用に少し水で薄めた物を二本用意し、他の神々にも二本ずつ用意する。
* * * * * * * *
日暮れて人も疎らな神殿へ行き、多くの人々が祈ると聞いた碑に跪く。
《ウブナ様、スクナ様、お久し振りです》
《ユーヤ様》
《お久し振りで御座います。ユーヤ様》
《お二方・・・何か凄く後光が射して見えるんですが》
《生まれ来る子の母や親族達が祈りを捧げてくれますので》
《生まれる前も生まれた後も、健やかな成長を願ってよく訪れてくれます》
そりゃそうか。
ヨークス様には年に一度祈れば良い方だが、我が子の無事な誕生や成長を願えば度々訪れる事になる。
其れも一人の子に対し、両親とその親たちと祈りの数が多いので当然か。
《他の神様達もお呼びしても良いですか》
《ユーヤ、良く呼んでくれた》
《久しいのう》
《息災かのう》
《ウブナとスクナの祈りが多くて、我々の所は暇でのう》
《まぁ、この神殿で祈れば我々にもお裾分けが来るので神力は増える一方だぞ》
《その分、ヨークス様が拗ね気味だがな》
《あれはユーヤが一向に現れず、酒が飲めないので拗ねているだけだ》
《そんなに拗ねているのですか?》
《おお、酒の空樽を覗き込んでは、溜息交じりの日々よ》
《じゃあ、もう少し反省させておきましょうか》
《待て! まてまて! せっかく祈りの場に来たのに、我を無視するとは酷いぞ!》
《あれっ、見掛けによらずつややかなお顔ですね》
《まぁな。ウブナとスクナに対する祈りは、二人を産みだした我に対する祈りでもあるのでな》
《ふぅ~ん。それじゃ酒は必要ないし、神像も消したままで良いかな》
《ユーヤ、もう勘弁してくれ。酒の無い日々は辛くてのう。我に対する祈りは直接届くので、心地よさが段違いなのじゃ》
《少しは反省したのですか》
《した! 地の底に沈むほど深~く反省しておるぞ》
《皆様方、どう思います? 又騒ぎを起こされると困るんですよねぇ》
《今回のお仕置きは大分効いた様だぞ》
《うむ、日々お前の名を呼ばぬ日はなかったからな》
《多分に酒目当てと思われるが、今後は我等が目を光らせておるので》
《おお、暴走はさせないので安心しろ》
《ヨークス様、次はありませんよ》
《判っておる。我は創造神なのじゃ、信用しろ》
《それでは神像の復活を許しますが、一気にお姿を表さずに、4、5日に一度少しずつ神像を浮かび上がらせて下さい》
《判っておる。今度は我の真の姿を見せつけてやるからのう》
《却下!》
《何故じゃ?》
《ヨークス様お忘れですか『若かりし頃を少しデフォルメして、威厳を付けた』お姿がヨークス様のお姿ですよ。今更しょぼい爺さんの姿になれば、祈りを捧げに来る人々はどう思います。詐欺だと石を投げられても知りませんよ》
聞いていた神様達が爆笑して、ヨークス様が又々拗ねちゃった。
《ヨークス様にお供物を・・・》
《持ってきてくれたのか! 流石は我が招いた男よ。ほれ、出せ! 遠慮せずにどんと出せ!》
即座に復活するヨークス様の前に、水で薄めた酒のボトルを二本差し出す。
《・・・ユーヤ! これっぽっちか? 何時もの様な樽はどうした》
《ヨークス様を信頼して樽でお渡ししていましたが、前回の事で私も反省致しました。酒は少しずつ呑むもので、樽を抱えて浴びる様に飲むものでありません。以後はボトル二本だけです》
《そんなぁ~》
あ~あ、神様が膝から崩れ落ちるのを初めて見たぞ。
《何時もの様に、酒のつまみとお食事はたっぷりご用意いたしましたのでお楽しみ下さい》
集まってくれた神々にお配りし、酒も二本ずつ配る。
お暇する前に《ヨークス様、酒はほんの一口を口に含み、舌の上で転がして味わうものですよ。そうすれば酒もつまみの味も増すってものです》
薄めた酒の味を誤魔化す為に、ちょいと講釈を垂れて神殿を後にした。
まぁ、ウヰスキーの水割りって飲み方もあるので、一概に嘘ではないしね。
* * * * * * * *
ヨークス様のお姿が復活し始めたと噂になり、創造神であるヨークス様に祈りを捧げる人々が増え始めた。
セルーシャがタイミングを合わせて、神殿は祈りの場であり噂を流す場ではないと、騒ぎ立てた者達を軽く咎めて口封じをする。
摺り板版を読んだ者達も、タカツカ公爵が建立した神殿だと思いだし口を閉ざす。
元々評判の良い大神殿は参拝者が引きも切らずに賑わっているが、神殿で騒ぐものはいなくなった。
* * * * * * * *
時々神殿を訪れては供物を提供し、神様達と交流を深めながら平穏な日々が続いた在る日、久々にクルフの訪問を受けた。
《ユーヤ、後釜は決まっているのか? ドルーザさんは、テレンザの王都バルザックのギルマスに決定しているし、後任をテレンザの国王陛下と相談して決めたそうだぞ》
《あー、シャイニーは・・・》
《多分断られるだろうな》
《だよなぁ~、伯爵にした時も相当ごねられたからな。公国の魔法使い達を育て束ねる立場なのでと、納得させるのに苦労したよ》
《俺だって、子爵様と呼ばれるのは未だになれないよ》
《冒険者ギルド本部の役員を降りたら、伯爵になってもらうからな》
《俺もかよう~》
《当然だ、ヤマト公国の礎を築いた一員だ、重職を担っていないとはいえその資格は十分に有る。それよりも、ドルーザさんと相談して後任を決めてくれないか。条件は冒険者で地位に逆上せ上がらない者だな》
《それが一番難しい人選だぞ》
顔を顰めてブチブチ言っているが、冒険者ギルドに関わる気がないので丸投げする。
《ドルーザさんと相談して何とかするよ。それよりも、役員を交代したら相談がある》
《今言えば良いだろう》
《まぁ私的な事だし、役員を降りてからにするよ》
* * * * * * * *
春夏秋冬、年に四回ヨークス様のご機嫌伺いと供物提供を提案したら、即座に拒否された。
《何故ですか?》
《お前でなければ、他の神々には聞こえないのじゃ》
《でも、祈りに応えて加護を授けていますよね》
《当然じゃよ。それぞれの神を敬う心に対して、ときには応えてやらねば誰も祈らぬからのう》
《ヨークス様は祈りに応えて、何度か姿を現しているじゃないですか》
《あぁ儂の碑の前で呼びかけられた時にだが、この姿で声を掛けてものう・・・》
《しょぼい爺さんと思われたり、消えろと言われるのですか》
《そうじゃ。見る目のない奴等じゃ》
《お得意のデフォルメをして、威厳を付けた姿になれば良いじゃないですか》
《それが出来れば苦労はしない。一度定まったものは、そうそう変えられないのだ》
《俺の時には、他の神々も姿を現しているのはどうしてです?》
《お前は我が招いた者だからじゃよ。我の力を直接受けた者にして、力を与えておる。故に他の神々とも通じるし、供物も届けられるのじゃ》
《それって、他の者では・・・》
《我を敬う神殿でのみ、呼びかけに応えられるのじゃ。お前以外に供物を送り届ける力を持っていない》
《それって、ヨークス様と繋がっているって事ですか》
《お前の魂に身体を与え、フルミナの地に降ろしたからのう》
なんてこったい。俺って、健忘症のすちゃらか爺さんの紐付きかよ。
《お前・・・何か不遜な事を考えてないか?》
《俺は神官になるつもりは在りませんよ。漸く気楽な人生を楽しめる様になったのに・・・》
《春夏秋冬だけとは言わず、その間に時々で良いから頼む》
《まぁ、気が向いた時で良ければ。ただし、羽目を外したりするとどうなるのか判っていますよね》
《我を信じよ!》
一番信用ならない爺さんに胸を張られてもねぇ。
* * * * * * * *
冒険者ギルド本部役員の任期を終えたクルフが、ボイスとセルーシャを伴ってやって来た。
「三人揃ってとは珍しいな」
「やっと役員の任期も終わったし、セルーシャ殿と結婚したいのでユーヤの許可を貰いにな」
「ん・・・?」
「勿論、ボイス殿の許しも得ているが、セルーシャ殿はユーヤの片腕でもあるので」
「はぁ~、結婚! 何時の間に・・・俺はてっきりシャイニーとばかり」
「シャイニーは冒険者仲間として長い付き合いだけど、オルガキとな」
オルガキか、大きさが大分違うけど同じ猫科同士で付き合っていたのか。
「最初に魔法の指導をして以来、彼此と相談に乗っていたし転移魔法を使えば何時でも会えるだろう」
二人の身分証なら無料で跳び放題だものなぁ。
* * * * * * * *
二人は派手なことはしないと言い、ボイスも自分は冒険者なので二人に任せると丸投げ。
此の世界、貴族でなければ身内だけで披露目をして終わりだし、二人は伯爵だが他の貴族との付き合いは少ない。
少ない貴族を招くとなれば、テレンザ国王や王太子にセナルカのドワール全権代理を呼ばねばならなくなり・・・考えるのを止めよう。
* * * * * * * *
セルーシャが俺の屋敷に住まう関係から、シャイニーや気心の知れた者少数を家に招き、二人の結婚パーティーを行った。
然し翌日には、テレンザ国王アルカートと王太子のアルホークが祝いの品を抱えてやって来た。
まったく、長い付き合いだし隠す様なことでもないのだが、何処から嗅ぎつけてくるのか素速いことで。
テレンザ国王と王太子が祝福したとなると・・・後の事は考えたくない。
俺の家に住まう限り祝いの客が押し掛けて来る事はないだろうが、一歩出た時の事を考えて二人とも憂鬱げだ。
二人に伯爵用の私邸に帰るのは暫く諦めろと言いおき、1~2年は俺の家で過ごす様に言うと、クルフも諦め顔だ。
「私の時はどうなることやら」
「シャイニーも結婚するのか?」
「申し込みは山程来るけど・・・私の後ろに、あんたを見ているのが丸わかりよ」
「無駄な事なのになぁ」
「そう、それを理解出来ない、貴族や豪商達が多くてウンザリよ」
* * * * * * * *
二年後、庭ではセルーシャの娘が遊び、時々俺とルーシュがお相手をする平和な日々に満足。
* ** 〔完〕(強制終了) ** *
長らく放置していたので完結させようと思ったのですが、覚え書きが残っていたものから続けるつもりでしたが・・・無理!
放置期間が長くて妄想力が発揮できないので断念し、強制終了させる事にしました。
(^.^)ご(-.-)め(__)ん(-。-)ね(^.^)
残る問題はしょぼくれた爺さんだ。
神殿を参拝する者や巡礼と称して訪れる人々が、ヨークス様の姿が消えたままなのを不安がり始めているとセルーシャが伝えてきた。
確かに神様の総元締めである、創造神ヨークス様の姿が消えたままなのは不味いと思う。
久々にご機嫌伺いに行く事にし、手土産を用意する為にスタートゲートへ跳びご馳走の材料を仕入れてきた。
問題は酒だが、酒癖の悪い爺さん用に少し水で薄めた物を二本用意し、他の神々にも二本ずつ用意する。
* * * * * * * *
日暮れて人も疎らな神殿へ行き、多くの人々が祈ると聞いた碑に跪く。
《ウブナ様、スクナ様、お久し振りです》
《ユーヤ様》
《お久し振りで御座います。ユーヤ様》
《お二方・・・何か凄く後光が射して見えるんですが》
《生まれ来る子の母や親族達が祈りを捧げてくれますので》
《生まれる前も生まれた後も、健やかな成長を願ってよく訪れてくれます》
そりゃそうか。
ヨークス様には年に一度祈れば良い方だが、我が子の無事な誕生や成長を願えば度々訪れる事になる。
其れも一人の子に対し、両親とその親たちと祈りの数が多いので当然か。
《他の神様達もお呼びしても良いですか》
《ユーヤ、良く呼んでくれた》
《久しいのう》
《息災かのう》
《ウブナとスクナの祈りが多くて、我々の所は暇でのう》
《まぁ、この神殿で祈れば我々にもお裾分けが来るので神力は増える一方だぞ》
《その分、ヨークス様が拗ね気味だがな》
《あれはユーヤが一向に現れず、酒が飲めないので拗ねているだけだ》
《そんなに拗ねているのですか?》
《おお、酒の空樽を覗き込んでは、溜息交じりの日々よ》
《じゃあ、もう少し反省させておきましょうか》
《待て! まてまて! せっかく祈りの場に来たのに、我を無視するとは酷いぞ!》
《あれっ、見掛けによらずつややかなお顔ですね》
《まぁな。ウブナとスクナに対する祈りは、二人を産みだした我に対する祈りでもあるのでな》
《ふぅ~ん。それじゃ酒は必要ないし、神像も消したままで良いかな》
《ユーヤ、もう勘弁してくれ。酒の無い日々は辛くてのう。我に対する祈りは直接届くので、心地よさが段違いなのじゃ》
《少しは反省したのですか》
《した! 地の底に沈むほど深~く反省しておるぞ》
《皆様方、どう思います? 又騒ぎを起こされると困るんですよねぇ》
《今回のお仕置きは大分効いた様だぞ》
《うむ、日々お前の名を呼ばぬ日はなかったからな》
《多分に酒目当てと思われるが、今後は我等が目を光らせておるので》
《おお、暴走はさせないので安心しろ》
《ヨークス様、次はありませんよ》
《判っておる。我は創造神なのじゃ、信用しろ》
《それでは神像の復活を許しますが、一気にお姿を表さずに、4、5日に一度少しずつ神像を浮かび上がらせて下さい》
《判っておる。今度は我の真の姿を見せつけてやるからのう》
《却下!》
《何故じゃ?》
《ヨークス様お忘れですか『若かりし頃を少しデフォルメして、威厳を付けた』お姿がヨークス様のお姿ですよ。今更しょぼい爺さんの姿になれば、祈りを捧げに来る人々はどう思います。詐欺だと石を投げられても知りませんよ》
聞いていた神様達が爆笑して、ヨークス様が又々拗ねちゃった。
《ヨークス様にお供物を・・・》
《持ってきてくれたのか! 流石は我が招いた男よ。ほれ、出せ! 遠慮せずにどんと出せ!》
即座に復活するヨークス様の前に、水で薄めた酒のボトルを二本差し出す。
《・・・ユーヤ! これっぽっちか? 何時もの様な樽はどうした》
《ヨークス様を信頼して樽でお渡ししていましたが、前回の事で私も反省致しました。酒は少しずつ呑むもので、樽を抱えて浴びる様に飲むものでありません。以後はボトル二本だけです》
《そんなぁ~》
あ~あ、神様が膝から崩れ落ちるのを初めて見たぞ。
《何時もの様に、酒のつまみとお食事はたっぷりご用意いたしましたのでお楽しみ下さい》
集まってくれた神々にお配りし、酒も二本ずつ配る。
お暇する前に《ヨークス様、酒はほんの一口を口に含み、舌の上で転がして味わうものですよ。そうすれば酒もつまみの味も増すってものです》
薄めた酒の味を誤魔化す為に、ちょいと講釈を垂れて神殿を後にした。
まぁ、ウヰスキーの水割りって飲み方もあるので、一概に嘘ではないしね。
* * * * * * * *
ヨークス様のお姿が復活し始めたと噂になり、創造神であるヨークス様に祈りを捧げる人々が増え始めた。
セルーシャがタイミングを合わせて、神殿は祈りの場であり噂を流す場ではないと、騒ぎ立てた者達を軽く咎めて口封じをする。
摺り板版を読んだ者達も、タカツカ公爵が建立した神殿だと思いだし口を閉ざす。
元々評判の良い大神殿は参拝者が引きも切らずに賑わっているが、神殿で騒ぐものはいなくなった。
* * * * * * * *
時々神殿を訪れては供物を提供し、神様達と交流を深めながら平穏な日々が続いた在る日、久々にクルフの訪問を受けた。
《ユーヤ、後釜は決まっているのか? ドルーザさんは、テレンザの王都バルザックのギルマスに決定しているし、後任をテレンザの国王陛下と相談して決めたそうだぞ》
《あー、シャイニーは・・・》
《多分断られるだろうな》
《だよなぁ~、伯爵にした時も相当ごねられたからな。公国の魔法使い達を育て束ねる立場なのでと、納得させるのに苦労したよ》
《俺だって、子爵様と呼ばれるのは未だになれないよ》
《冒険者ギルド本部の役員を降りたら、伯爵になってもらうからな》
《俺もかよう~》
《当然だ、ヤマト公国の礎を築いた一員だ、重職を担っていないとはいえその資格は十分に有る。それよりも、ドルーザさんと相談して後任を決めてくれないか。条件は冒険者で地位に逆上せ上がらない者だな》
《それが一番難しい人選だぞ》
顔を顰めてブチブチ言っているが、冒険者ギルドに関わる気がないので丸投げする。
《ドルーザさんと相談して何とかするよ。それよりも、役員を交代したら相談がある》
《今言えば良いだろう》
《まぁ私的な事だし、役員を降りてからにするよ》
* * * * * * * *
春夏秋冬、年に四回ヨークス様のご機嫌伺いと供物提供を提案したら、即座に拒否された。
《何故ですか?》
《お前でなければ、他の神々には聞こえないのじゃ》
《でも、祈りに応えて加護を授けていますよね》
《当然じゃよ。それぞれの神を敬う心に対して、ときには応えてやらねば誰も祈らぬからのう》
《ヨークス様は祈りに応えて、何度か姿を現しているじゃないですか》
《あぁ儂の碑の前で呼びかけられた時にだが、この姿で声を掛けてものう・・・》
《しょぼい爺さんと思われたり、消えろと言われるのですか》
《そうじゃ。見る目のない奴等じゃ》
《お得意のデフォルメをして、威厳を付けた姿になれば良いじゃないですか》
《それが出来れば苦労はしない。一度定まったものは、そうそう変えられないのだ》
《俺の時には、他の神々も姿を現しているのはどうしてです?》
《お前は我が招いた者だからじゃよ。我の力を直接受けた者にして、力を与えておる。故に他の神々とも通じるし、供物も届けられるのじゃ》
《それって、他の者では・・・》
《我を敬う神殿でのみ、呼びかけに応えられるのじゃ。お前以外に供物を送り届ける力を持っていない》
《それって、ヨークス様と繋がっているって事ですか》
《お前の魂に身体を与え、フルミナの地に降ろしたからのう》
なんてこったい。俺って、健忘症のすちゃらか爺さんの紐付きかよ。
《お前・・・何か不遜な事を考えてないか?》
《俺は神官になるつもりは在りませんよ。漸く気楽な人生を楽しめる様になったのに・・・》
《春夏秋冬だけとは言わず、その間に時々で良いから頼む》
《まぁ、気が向いた時で良ければ。ただし、羽目を外したりするとどうなるのか判っていますよね》
《我を信じよ!》
一番信用ならない爺さんに胸を張られてもねぇ。
* * * * * * * *
冒険者ギルド本部役員の任期を終えたクルフが、ボイスとセルーシャを伴ってやって来た。
「三人揃ってとは珍しいな」
「やっと役員の任期も終わったし、セルーシャ殿と結婚したいのでユーヤの許可を貰いにな」
「ん・・・?」
「勿論、ボイス殿の許しも得ているが、セルーシャ殿はユーヤの片腕でもあるので」
「はぁ~、結婚! 何時の間に・・・俺はてっきりシャイニーとばかり」
「シャイニーは冒険者仲間として長い付き合いだけど、オルガキとな」
オルガキか、大きさが大分違うけど同じ猫科同士で付き合っていたのか。
「最初に魔法の指導をして以来、彼此と相談に乗っていたし転移魔法を使えば何時でも会えるだろう」
二人の身分証なら無料で跳び放題だものなぁ。
* * * * * * * *
二人は派手なことはしないと言い、ボイスも自分は冒険者なので二人に任せると丸投げ。
此の世界、貴族でなければ身内だけで披露目をして終わりだし、二人は伯爵だが他の貴族との付き合いは少ない。
少ない貴族を招くとなれば、テレンザ国王や王太子にセナルカのドワール全権代理を呼ばねばならなくなり・・・考えるのを止めよう。
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セルーシャが俺の屋敷に住まう関係から、シャイニーや気心の知れた者少数を家に招き、二人の結婚パーティーを行った。
然し翌日には、テレンザ国王アルカートと王太子のアルホークが祝いの品を抱えてやって来た。
まったく、長い付き合いだし隠す様なことでもないのだが、何処から嗅ぎつけてくるのか素速いことで。
テレンザ国王と王太子が祝福したとなると・・・後の事は考えたくない。
俺の家に住まう限り祝いの客が押し掛けて来る事はないだろうが、一歩出た時の事を考えて二人とも憂鬱げだ。
二人に伯爵用の私邸に帰るのは暫く諦めろと言いおき、1~2年は俺の家で過ごす様に言うと、クルフも諦め顔だ。
「私の時はどうなることやら」
「シャイニーも結婚するのか?」
「申し込みは山程来るけど・・・私の後ろに、あんたを見ているのが丸わかりよ」
「無駄な事なのになぁ」
「そう、それを理解出来ない、貴族や豪商達が多くてウンザリよ」
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二年後、庭ではセルーシャの娘が遊び、時々俺とルーシュがお相手をする平和な日々に満足。
* ** 〔完〕(強制終了) ** *
長らく放置していたので完結させようと思ったのですが、覚え書きが残っていたものから続けるつもりでしたが・・・無理!
放置期間が長くて妄想力が発揮できないので断念し、強制終了させる事にしました。
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