“元“悪役令嬢は二度目の人生で無双します(“元“悪役令嬢は自由な生活を夢見てます)

翡翠由

文字の大きさ
71 / 504

落ちたい受験②

しおりを挟む
「先生も大剣使いでしょう?早く武器を出してください」

 目の前にいるこの人も大剣使いということは明白。
 背中にでかい剣を背負っているのだ。

 大きさ的には、私の剣よりもでかいと思う。
 当たり前だ。

 大人用に作られた剣なのだから。
 私の場合は扱いやすいように大きさを調整してあるため、リーチは短い。

 だからこそ、スピードがある攻撃を繰り出せると思う。

「おっと、これは失礼」

 大剣を背中からゆっくりと抜く様子を確認する。
 それと同時に私も構える。

 そして、合図もなしにその戦いは始まる。
 というか、私が勝手に始めた。

 だって、これって実戦試験らしいからね。
 実戦なら実戦らしく、合図なしで始めないと。

 相手も多少驚いた様子だったが、すぐに切り替えガードに移る。

 私の振った大剣は相手の大剣に激突し——

「は?」

 相手の大剣を砕く。先端からは文字通りの木っ端微塵となり、切断面から持ち手側はきれいにスパッと真っ二つ。まるで豆腐を包丁で切ったかのような感触だった。

「あー……、私の勝ちですね」

「え、いや、ちょっと待てよ!」

「なんですか?」

「なんですかって……どうやったら武器が砕けんだよ!」

 大剣は文字通りでかい。
 一点に力を加えればすぐに折れてしまうことは分かりきっているだろうに……。

「ちょっと、その武器を見せてもらってもいいか?」

「別にそれはいいですけど……」

 私は渋々武器を渡した。
 それを持ってその先生は別に試験監督のところにまでいくと、それを見せる。

 その監督が何やら魔法で何かを調べている様子。
 それを視認した次の瞬間、

「な、なんだこれは!?」

 監督の絶叫が聞こえる。

「なんという強度なんだ!?こんな武器が存在するのか!?」

「だよな!めっちゃ固いと思ったよ!」

 何やら二人で武器の強度について語り合っている。

「おい、嬢ちゃん!」

「なんですか?」

「この武器、なんて言う素材でできてるか知ってるか?」

「え、普通の素材ですよ?」

「んなわけあるか!」

 全く、疑い深いったらありゃしない。

「ドラゴンの卵の鱗です」

「「「どこが普通なんだよ!?」」」

 いつの間にか試験そっちのけで話を聞いていた受験生と監督たちの声が揃う。

「ドラゴンの卵の鱗って……ドラゴンの巣まで侵入したのか?誰がこんなものをとってこれるんだ……」

「とってこれる人物なんて、有名な冒険者……それもSランクパーティとか、そこら辺りじゃないですか?」

「あ、すみません。それ私がとってきた素材で作ったんですけど?」

「「「は?」」」

 再び揃う声。
 仲良いのかな……なんだ、このシンクロ率は?

「その……親ドラゴンは倒したのか?」

「いいえ?」

「ああなるほど、つまり親がいなかったからとってこれ——」

「親ドラゴンから全力疾走で逃げましたね」

「あのなぁ……まあいい。とりあえず、武器は返す」

「あ、どうも」

 手元に大剣が戻ったことを確認すると、私はそれをしまう。
 一瞬にして現れた黒紫色の穴にびっくりした様子の一同だったが、何か思ったのか、みんな気にしないようにしているのがうかがえた。

「とりあえず、合格でいいですか?」

「まあ、俺に勝ったんだ。合格ってことだろうよ」

 ああ、それ合格になんのね。
 あわよくば、教師の私物を壊したと言うことで退学……にはならないか。

「やったねベアちゃん!」

「いやぁ、ギリギリだったなぁ!」

「余裕の圧勝じゃん!」

「それは言わないお約束よ」

 辺りの視線で見る。
 ほぼ全員と視線が合い、一瞬にして避けられる。

(どうしてこうなるの……)

 まあよしとしよう。
 どうせ、すぐに退学するつもりだ。

 どうやって退学するかは決めてないが……。
 退学するから気にしてない。

 気にしてないんだから!

 まあ、いい。
 最初から、受験で落ちるとは思ってはいなかった。

 私は編入試験に無理やり、国王にねじ込まれた身だ。
 つまり、いくら貴族たちの権力が関係ないとは言ってもあくまで貴族の話。

 結局、我が国の国王の命令には逆らえないのである。
 つまり、ほぼ確定で受かってしまうというね。

 だから試験は適当に受けると決めたのだ。

 中途半端な成績を目指して……!

「ベアトリスさん」

「はい!」

 試験監督に名前を呼ばれる。

「次の魔法試験に移ってください」

「わかりました」

「では、こちらまでお越しください」

 私はその試験監督についていく。


 ♦︎♢♦︎♢♦︎


「こちらです」

 私は目の前に並べられた人形を眺めながら、説明を聞く。

「先ほどもいましたが、ご自分が一番得意な魔法であの人形を攻撃してください。補足なんですが、あの人形はオリハルコン製なので、壊れなくても落ち込まないでくださいね」

 あれにかすり傷すら与えられずに落ち込む生徒が年々多いので……、と試験監督は頭を振ってやれやれと苦笑いをする。

 といいますか、それ以前に私の一番得意な魔法が攻撃魔法じゃない件について……。

「あの、すみません」

「はい、なんですか?」

「私が得意な魔法は空間系の魔法なんですけど……」

「く、空間系……ですか?」

 一応攻撃にも応用できるが、基本的には転移とかがメインとなる系統である。

「あのどうすれば……」

「それで攻撃魔法みたいなのは放てますか?」

「それはできます」

「なら、それでやってみください。無理そうならもう一回別の魔法でやってみてもらって結構です」

 案外ゆるいんだな。
 もっと鬼畜な試験が来るかと思っていたが……。

「ま、いっか」

 私は腕を前に突き出す。

「『空間破裂スペースバースト』」

 こういう時のオリジナル魔法!
 惜しげなく私はそれを放つ。

 一見すると何も起こっていないように見える。

 だが、次の瞬間にそれは起こる。

 空間が若干歪み、一瞬にして的を木っ端微塵にする。
 ついでと言わんばかりに、地面と後ろの壁が少しえぐれるが許容範囲だろう。

「はい?」

「あの、これでいいですか?」

「あ、あの今の魔法は一体……私の知識にはない魔法なのですが?」

「まあそうでしょうね。私のオリジナルですもの」

「オリジナル!?」

 何を驚く必要があるというのか?
 今までにある魔法……既存の魔法だって誰かのオリジナルだろうに……。

「あの、先生?」

「あ、ひゃい!」

 かんだ……。
 いや、ここは先生の尊厳を守るために気にしないでおこう。

「えっと、試験は終了ということでいいですか?」

「もちろんです!」

「じゃあ、私は帰りますね」

「え?帰るってどこに——」

 最後まで先生が言い切る前に私はさっさと転移していくのだった。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

処理中です...