“元“悪役令嬢は二度目の人生で無双します(“元“悪役令嬢は自由な生活を夢見てます)

翡翠由

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観光する②

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 ターニャを置いて一人歩きだす。
 もちろんのことながら、二人とも私の後をついてくる。

 ターニャが先頭に立ち、私たちを案内する。
 当然のことながら人目……獣人目?にはつくが、そこは許容範囲。

 意外とこの私の変装もバレずに、逆に、

「どこのお貴族さまかしら?」

 とか、近くにたまたまいた見知らぬ人に言われる始末である。

「ターニャさまと一緒にいるなんて相当な家系だな」

 ターニャも貴族の仲間。
 それと一緒にいる私たちのことも、貴族に見えているのだろう。

 私は貴族(本物)だが、よくもまあ男装がバレないものだ。
 自分でやっておいてなんだが、結局学院の錬金クラブのメンバーにもバレず、豚は私を狙ってこないほどだった。

 だから、嬉しくはないがバレない自信はあった。

 だが、

「ん?あの子、本当のオスか?」

 なんでバレてんの!?
 いや、落ち着け……たまたま通りすがったあの人がそう感じただけで私はまだ女だとバレていないはず。

「あら、ほんとね」

「なんで男装しているのかしら?」

 バレてましたー!
 今、私たちが歩いているのは街の街道ど真ん中である。

 そんな中を貴族っぽい格好をして、闊歩するのは目立つ。
 だが、流石に一番自信のあった男装を見破られるとは思わなかった。

 前回遊びに行った時はバレなかったのに……。

(ふん!この際気にしてもしょうがないわ!私は私よ!)

 だから、お願いだから偽耳と偽尻尾だけは気づかないでくださいお願いします。

 別にバレても良いけど、ワンチャン国際問題じゃね?
 それは自国にも迷惑かけるかもなので避けたい……。

 というわけで。じろじろみんなや婦人たち!

 主に、私たちを見ているのはご婦人の方々が多い。
 なんでかは知らないけど、男性はみんな私たちを一目見てスルーしている。

 何がどうなってそうなったのかは知らないが、男性にじろじろ見られるという事態を避けられたのは重畳だった。

「今度のおすすめはここ!」

 そう言って、街道の途中で立ち止まるターニャ。
 何があるのかと思い、その指差す方向を見れば、

「酒場?」

「そう!前回は絶景ポイントを紹介したけど、こういう観光もありかなって!」

 前回見させてもらったのは眺めがいい場所とかだった。
 それはじきに話すとして……。

 看板に書かれる酒場の名前は『溺れ酒亭』だって……。

 え?

 ここ大丈夫なの?
 こんな名前の酒場があるんなら私絶対入らないよ?

 絶対に寄った客が大繁殖してるだろ!

「さ!入ろ!」

「え!?本当に入るの!?」

 真面目に私は嫌なのだが?
 前世ですらお酒には数えるほどしか手をつけていない。

 匂いだけで酔っ払ってしまうかも……。

「大丈夫だって!何回も入ったことあるし」

「そういう問題じゃないって!ほら、獣人君もなんか言ってあげて?」

「久しぶりの酒……」

 ジュルリと垂れるよだれ。
 なんでだよ!

 久しぶりの酒ってあんた私のと近い年齢だろどう考えても!
 どんな教育を受けて育ったのか?

 って、普通に野生剥き出しの生活か……。
 なら仕方ない、とはならないがね!

「ほら、行くよー」

「ちょっと!?引っ張らないで!」

 酒場のドアをバタンと開けて、ターニャが中に入る。
 その横からひょいと顔を出す獣人君と、ターニャに引きずられる私の姿はそぞかし中にいる人物には目立っただろう。

「おひさー!遊びにきたよー!」

「ちょ、ターニャ!」

 小声で叱るが、それは無視される。
 なんで、この子は人の言うことを聞かないのだ!?

 正直、私が一番常識人じゃね?
 前世、『悪役令嬢』とか異名で呼ばれていた私が常識人ポジション!

 この意味、お分かり?

 沈黙が流れる。
 中にいるのは数人の若い?男性と、店主と思しき人……いや、獣人。

 それらがこちらを凝視してくる。
 こんなおしゃれな若干醸し出してるアンティークな雰囲気ならいざ知らず、騒いで飲みまくるような酒場でこの沈黙は堪える。

 そう、私が感じていた次の瞬間だった。

「久しぶりだな!ターニャ!」

「最近は来ないから心配したぞ?」

「またおもしれー話はないか?」

 一気に沈黙が崩れ去り、嘘だったかのようにお客さんがターニャに聞いてくる。

「あはは!今日は適当に遊びにきただけだから、特別面白い話はないよ!」

「そうか……でも、そっちの二人は面白そうだな!」

 一人のクマっぽい獣人……が私たちの方を見て答える。

 見られていることを今更ながら思い出し、ターニャの拘束を解く。

「ほう?猫獣人なのに首根っこを掴まれても逃げ出せるのか」

 どんなところに感心してるのよ!

「んで、そっちの突っ立っている方は?」

「狼獣人だ」

 獣人君は自分の種族名を答える。

「なかなか肝の座ったやつじゃねーか!」

 代表してクマ獣人の人が私たちの前に立つ。

「ま、とりあえず座れよ」

 そう言って、近くのテーブル席を指差す。

「おっちゃん!こいつらにオレンジジュースでも出してくれ!」

「はいよ!」

 お酒以外もあるんかい!

 そう一人でツッコミながらも、私は警戒を怠らない。
 何せ、歳の離れた獣人さんと話すのはこれが初めてだからだ。

「そこの猫獣人。緊張しないで良いんだぞ?」

「それは流石に無理」

 何回も『猫獣人』と言われると思わずシャーと鳴きたくなってしまう。
 当たり前だけど、しないよ?

「それで、ターニャ。今日はなんでまた友達なんか連れてきたんだ?」

「いやー!実はさ、おいらんとこに遊びにきたついでに観光させてくれって言うから、とりあえずここに連れてきたんだ」

 もちろんターニャも私が人間ということを言うのはまずいと理解しているのか、若干真実とは異なる情報をクマ獣人に伝える。

「そうかそうか!俺は見ての通りクマ獣人のゴルだ!よろしくな!」

 そう言って自己紹介をするゴルさん。

「改めて、おいらはターニャだ!」

 ほれ、早くと言わんばかりにゴルさんとターニャの視線がこちらに集まる。

「わかったわかった。えっと……ベア、です」

 ここで名前をいうと、完全に女って思われそうだし……偽名を使うことにする。

「ベアか?クマみたいな名前だな!」

 機嫌よく大笑いをするゴルさん。
 ウケているなら、まあ……よしとしよう。

「それで?お前の方は?」

「あ」

 しまった!
 獣人君の番になってしまった。

 実を言うと、獣人君名前がないのだ。
 メアリ母様がそう言うのを考えるのがヘタクソというのもあってか、名前“なし“状態のまま一緒に過ごしてきた。

 私は勝手に獣人君と呼んでいるし、何も不便はなかったから決めてなかったのだ……。

「え、えっと……」

「どうしたんだ?」

 困ったように獣人君はキョロキョロする。

「名前、は……」

「もしかして……お前……」

 ゴルさんが、何かを察したかのような表情に変わる。

「お前——」
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