“元“悪役令嬢は二度目の人生で無双します(“元“悪役令嬢は自由な生活を夢見てます)

翡翠由

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「ほんとどこ行ったのよ……」

 色欲と少年を置いて、憤怒さんたちとネルネを探しに来たわけだが、どこに行ってもいないじゃないか!

「はあ、どこ行ったのよ……って、憤怒さんもどこに行った!?」

 いつの間にか、憤怒さんの姿も見えなくなったではないか!?

「あ、憤怒って人なら、『見つけたからあとヨロ!』って言ってたよ?」

「見つけた!?ま、まあ憤怒さんが見つけてくれたんなら安心だけど……」

「あ、それと、色欲って人からもボイスメモをもらってます!」

 とユーリ。
 久しぶりにユーリが頼もしく見えてところで、そのボイスメモとやらを聞かせてもらうとしよう。

 まあ、離した内容を記録するだけの単純な魔法だから、ユーリが保存しておいてくれたのだろう。

「『ベアトリス……不本意かもだけど、傀儡が作った時間を使って早く逃げたほうがいいわ。水晶には、悪魔の影がちらほら映ってるから』だそうです」

「傀儡が作った時間ってのが納得いかないけど、確かにそうね」

 あの男はなんで、私たちに逃げる時間を与えたんだ?
 わざわざ組織に連れていく必要なんてなかったのに。

 ほんとは色欲の身を案じていたとか?
 よくわからないけど、このチャンスを逃さない手はない。

「ネルネは憤怒さんに任せよう。見つけてくれたんなら、もう安心だからね」

「じゃあ僕らはどうするの?ご主人様、もう行き先決めてる?」

「うっ……それは決めてないけど……でも」

 ここから一番近い場所はもちろんのことながら、元公爵領だろう。
 その後の惨状をこの目で見ておきたいし、それに、ミサリーが私を探しているとの情報もある。

「一度、公爵領に戻ろう」

「そうと決まったら、準備しなくちゃね」

 レオ君がそう言って、宿においた荷物を取りに行こうとする。

「と、その前に!」

「ん?」

 レオ君が振り向く隙に、私はこっそり近づき、

「おら!ご飯をくらえ!」

「!?」

 と、血液が入った瓶を口に押し込んだ。

 いや、だってこうでもしないと絶対レオ君飲もうとしないし?
 しょうがなくだよ!

 私が馬乗りで押さえて、飲ませてるところを見て、横から「鬼だ……」という声が聞こえたような気がするので、ユーリにもあとで飲ませてあげようと思った。

 レオ君も少し飲んだようなので、離してあげる。
 中身は半分くらいしか減ってないけどね。

 許容範囲だろう。

「うへ……哺乳瓶とか、公開処刑じゃん……」

「いいじゃない、飲みやすいから」

「ぷはははは!レオ!もっかい飲んでみてよ!」

「……ユーリ、バラすよ?」

「スミマセンでした」

 負けちゃってんじゃん……。

「っていうか、あの事ってのはなに?」

「ああ、ユーリがね、ベアトリスが目覚める前に……」

「だーまーれー!」

 と言いかけた時にはユーリがレオ君の口を封じてしまったので、結局わからなかったとさ。


 ♦♢♦♢♦


 霧がかかった平原は意外にも不気味で、何度見ても恐ろしい。
 まあ、それ以上に恐ろしい体験をしているので、今更だとは思うけど。

 そして、三人は崖をのぼって進んでいく。
 一本だけ木が生えている場所があり、そこも横ぎって先に進もうとした瞬間、木が急に光り出した。

「ベアトリス様。この先には、行ってはなりません」

「あ、精霊さん?」

 光った木は、そこから人の形を作ってやがてよく知る精霊さんが姿を現した。

「出れるようになったの?長老さんたちは?」

「ああ、そのことでしたらご心配なく。悪魔はあなた様の手によって退治されたので、安心してくれたようで……って、そうじゃないですよ!ですから、この先、公爵領へ行くのはお止めください!」

「な、なんでよ?」

 無論精霊を信じていないわけではないけど、理由がわからなかったら納得のしようがないから、ね?

 私の質問に対し、精霊はまじめな顔をした。

「この先にはすでに悪魔が待機しております!」

「は?」

「ですので……」

「ちょっと待ってよ!じゃあ、ミサリーはどこにいるの!」

「それは……」

 精霊がうつろな顔をした。

「わからないの?」

「はい……お役に立てずに申し訳ありません」

「謝罪はいいよ……それよりも、悪魔がこの先にいるんだったら、ミサリーの安否が心配だな」

 ミサリーは私の記憶の中では元Bランク冒険者だった気がする。
 Bランク冒険者に悪魔の開いては厳しいはずだ。

 もし、ミサリーがこの先で私の帰りを待っているのだとしたら……。

 嫌な妄想が頭の中でいっぱいになりそうだった。
 頭を振ってその妄想を追い払う。

「ミサリーさんの件については私の方からも調査をさせていただきます。ですので、別ルートへどうかお進み願います」

「じゃあ、私たちはどこへ行けばいいの?」

 行き先がなくなったのだが……このまま引き返すわけにもいかないし。

「それについては、私から、提案があります」

「提案?」

「とある大学院に確か、教師の空きがありました」

「……………ん?」

「あ、大丈夫です。免許の方は理事長が偽装してくれることになっているので」

「はあ!?」

 どうやら、私……教師にならせられるようです。
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