猫の魔術師〜その猫がいずれ最強になるまでの話〜

翡翠由

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プロローグ

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 その日、とある猫は死にかけていた。小さな身体はすでに限界を当に超えて、動くことを許してはくれない。路地の裏で餌を求めて彷徨い続け、生まれてこの方自分自身の親という存在を一切認識しない生活。

 探しても探してもなかなか得られない餌、食べたところで腹は膨れず、また同じことを繰り返して約八年ほど。八年間で営んできた生活は小さな猫には厳しすぎた。そこらに寝転んでいるホームレスよりも極貧の生活を送っている。

 猫は思う、人に生まれて来れたらと。人は少なからず周りの環境が助けてくれる。他人からの優しい好意であったり、教会からの援助であったり。なぜ、猫にはそのようなものがないのかと周りの環境を恨んだこともあった。

 だがしかし、すでにあの世への片道切符を購入してしまったその猫にとってそれはすでに問題ではなくなっていた。この時、ついぞ訪れたかと現世に特に何のしがらみもなく切符を使おうとしていた時、小さな身体を覆うほど大きな影が現れた。

「身体から魔力が漏れ出している猫?通常ではありえない……だが魔術は使えないはず……いや、教えればよいか」

 優しい光に包み込まれる。その光は腹を膨らませたり、太らせたりしてくれることこそなかったものの、最悪だった体調を治し痛覚を麻痺させてくれた。ぼやけている視界には人の形をした『何か』がいることだけ認識できた。

「『猫の魔術師』よ、私の元へ来なさい」

 猫は、あの世への片道切符を殴り捨て、意識を夢の中へと落とす。身体を持ち上げられる感覚がしたが、すでに猫は久しぶりの熟睡を満喫していた。
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