猫の魔術師〜その猫がいずれ最強になるまでの話〜

翡翠由

文字の大きさ
41 / 62

魔力感知

しおりを挟む
 魔術というものは一日にしてならず。魔術とは長年の積み重ねであり、その積み重ねを学ぶことである。故に、魔術は基本遅咲きなのだ。

 魔術と呼べるような技が使えるようになるまでかなりの時間がかかり、そこで辞めて仕舞えばそれ止まり。だがしかし、その後も継続して訓練すればしっかりとした技が身につくのだ。

 忍耐力が大事になる。

「これどこまでやるの?」

「魔力をはっきりと感じることができるまでだよ」

 早速、レインとアルフレッドの修行は始まった。一刻でも早く訓練を始めたいというアルフレッドの希望により、放課後を使って毎日訓練を行うことになった。

 ああ……研究の時間がどんどんと溶けていく。まだ作りたい魔術がいくつもあるんだ。早く研究に戻りたいという気持ちを心のどこかに抑えつつ、レインはアルフレッドとの訓練のことだけに集中することにした。

 アルフレッドは他の生徒と比べても魔術の理解度が圧倒的に悪かった。まず、基本である魔力を感知するというのができていない。なんとなく感じたような魔力をぼんやりと使っていたに過ぎない。

 だからこそ、今は魔力を完璧に感知するまで座禅を組んでもらっている。だあ、これもかなり苦戦しているようだった。

「うーん……全然わからないよ」

「まさか、諦めないよね?魔術大会に出るんだよね?」

「も、もちろん!」

 アルフレッドのやる気は十分であるが、まだ完全に魔力というものを理解していない。

 魔術大会まで日にちはまだあるが、選考までの日にちは短いから早めに次のステップに入りたいのだが……。

 このままのペースだと間に合わないな。

 レインは悩んだ。『これ』をアルフレッドにやっていいのかどうかわからなかった。だが、少なくともレインはこれをやることで魔力について学んだのだ。

『師匠』のようにやるならば、きっとこうなる。

「水よ……」

 レインの力によって生み出された『水球』は瞬く間に大きく膨れ上がり、レインの持てる膨大な魔力はその一つの『水球』に収縮されていく。そして、それは素早い軌道を描くながら、アルフレッドのすぐ近くを通過した。

「うわ!?」

 当然、瞳を閉じて集中していたアルフレッドは驚き飛び上がった。

「何してんだよ!」

「もちろん訓練のためだよ」

「当たってたらどうなる!?」

「絶対に当てないから安心して。それより……目を瞑っていても今『水球』が見えてたよね?」

「……え?」

 アルフレッドは確かに反応していた。瞳を閉じて、見えるはずのない『水球』が自身の近くに向けて飛んできていることに気がついていたのだ。それこそ、接近する魔力を感じたからに他ならない。

「ほ、ほんとだ!今、目を閉じててもなんかわかったぞ!」

「それが魔力を見る感覚だ。もう一度やる?」

「うぐ……」

 少なからず、これは術者の魔術のコントロールがいかに優れているかで危険度が変わってくる。膨大な魔力を用いる魔力はたとえそれが初級魔術であろうとも、人を簡単に吹き飛ばす力を持っている。

 ぶつかれば大怪我。だが、今回の場合、術者は他の誰でもない、レインなのである。魔術界で七人いる特級魔術師の一人なのだ。術者のコントロールについてはなんの心配もいらないのである。

「大丈夫、僕に任せて」

「うわっ、びっくりした……驚かすなよ」

 深く考えている様子だったアルフレッドお耳に囁くと、囁かれた耳を押さえながら文句を言う。

「……耳が弱いのか?」

「ち、違うからな!?」

 顔がみるみる赤くなる。図星か。

「と、とにかく……もう一回お願いできるか?」

「もちろん」

 危険ではあるものの、これは大変有効な術であった。少なくとも「水の中で一週間暮らす」という訓練よりも圧倒的に簡単なのは間違いなかった。

 今更であるが、アルフレッドの魔術属性は『風』である。

 レインの場合、水の感覚を掴むために溺れさせられた。なら、風の感覚を掴むには何をしたらいいだろうか?

「そうだ……いいこと思いついた」

「?」

 ニヤリと笑うレイン、これからやってくる地獄を全く知らないアルフレッドはただただ魔力を感じる訓練に時間を費やすのであった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...