45 / 62
気が狂ってる
しおりを挟む
圧倒的なまでの跳躍力は警備の視界を遥かに超えて、帝城を囲う壁も超え、その先まで飛ぶ。強化された足にはとてつもない負担がかかっているのが魔力を通じて感じられる。
レインが行う『身体強化』とは、肉体に直接強化魔術を付与することで成功する技である。
強化魔術とは、通常では特定の魔術を強化してして威力を増大させる目的で使用される。それには多大な魔力負荷が生じるのであるが、これはあまりにもコスパが悪いのだ。
強化魔術を使用するくらいなら数秒の時間を消費してもう一発同じ魔術を放った方が効率がいいと言われるくらいには悪い。だが、レインはその強化魔術を肉体に付与した。
当然、肉体の魔力は強化魔術により強化され、魔力は肉体に作用して身体能力を強化する。無理やり引き上げられた身体能力に肉体は耐えきれず、破裂する。
普通の肉体で行えばこうなり、最終的に死に絶えると学会で結論が出てた気がする。やはり長年魔術師は接近戦での闘い方も学ぼうとしてきたのだ。
不可能かとも思われるが、レインにはこれが可能だ。なぜなら、レインの肉体は魔力体でできているからだ。
肉体からそれにできる影までがレインの魔力体範囲内であり、影がない場所では人間の体の中に本体を隠すことで、人に見せる。
当然『身体強化』により乗っかっているとてつもない負荷は全てレインの魔力に乗せられており、レイン自体には一切の負荷はかかっていない。ノーリスクというわけではないものの、リスクを極限まで減らして肉体を強化できるというのはレインにしかできない芸当であった。
原理は簡単であるが、それは誰にも理解できるものではない。まず常識を疑うところから始めなくては気づけないからだ。
強化されたのはジャンプ力だけではない。壁を飛び越えて、広い敷地内の草むらに飛び込んだレインはそのまま走り出す。凄まじい速さは降り落ちる木の葉を再度吹き上げ、レインが通過した場所には強い風が吹いた。その速度を維持したままジャンプをすれば先ほどよりも飛距離は高く、中空時間も長い。
なんという力技。だけど、それでいいのだ。
「~~~~!」
アルフレッドは驚きのあまり声も出せなくなっている。いや、風圧で口が開けないようだ。下手に口を開いても舌を噛むかもしれないからそれでいいのだけど。
「うおっと」
飛び上がった時、帝城を警備する騎士に見られかけた。流石に、いきなり不自然に木の葉が舞ったらそりゃあ警戒するだろう。だが、騎士の視線を動かす前にレインの体はその場から離脱できるのが救いである。
「帝城って足場が少ないな」
肝心の帝城の外壁には腰を下ろして休めるような広いスペースはなかった一人分が立てるくらいの狭い隙間を少しずつ登っていく。落ちたら終わりという緊張感の中、レインは躊躇せずにそんな帝城の壁を登って行った。
「はあ……ああ、長いな」
疲れはしないが、道のりが長い。なんせ数百メートルもある建物なのだからそれはそれは精神的に疲れる。
ただ、それももう終わりだ。
「ほっそ!?」
帝城の頂上に到着すると、そこはもはや足場とすら呼べないようなところだった。本来人が登るようにできていないのだからそれで当たり前なのだが、バランスを取るのが非常に大変。
「アル君、ついたよ」
「ぇえ?え、ええええええええ!?」
「うわあ!ちょっと動かないで!」
取り乱すアルフレッドをどうにか押さえつけて落ち着かせる。
「たけええええ……」
「よし、じゃあ早速訓練を始めようか」
「訓練できるかぁ!足場狭すぎだろ!」
片足で細い足場にバランスを取っているが、いつ倒れてもおかしくない。確かにこんなところで訓練とか、頭がおかしいと思わなくもないが、
「別にここで訓練するわけじゃないよ」
「じゃあなんで登ったんだよ」
「こっから、飛び降りるんだ」
「……………は?」
「あれ?聞こえなかった?こっから飛び降りてその身で風を感じてもらうの。どれくらい強くて、どれくらいの冷たさで、どれくらいの魔力を含んでいるのか」
レインの場合は水中で一週間も暮らす羽目になった。そんなことになるくらいなら一瞬の命の危機で覚えてしまった方が早いだろう?
「レイン、ついに気が狂ったのか?」
「え、別に狂ってないけど?」
「こんなことをやろうと思うのは絶対に狂ってる」
「そうかなぁ?別に僕もやられたし」
「やられたの!?」
「話す余裕があるんだったら、早速飛ぶよ?」
「え、ちょっとま……」
「地面ギリギリでキャッチしてあげるから、できるだけ遠くまで飛んで!」
「あっ……」
そして、レインはアルフレッドを思いっきり空中へと投げ飛ばした。アルフレッドの涙が空中に浮かび上がってすぐに散っていく。
「ふう……じゃあ、追いかけますか」
そう言いながら、レインもアルフレッドの元へとジャンプする。
レインが行う『身体強化』とは、肉体に直接強化魔術を付与することで成功する技である。
強化魔術とは、通常では特定の魔術を強化してして威力を増大させる目的で使用される。それには多大な魔力負荷が生じるのであるが、これはあまりにもコスパが悪いのだ。
強化魔術を使用するくらいなら数秒の時間を消費してもう一発同じ魔術を放った方が効率がいいと言われるくらいには悪い。だが、レインはその強化魔術を肉体に付与した。
当然、肉体の魔力は強化魔術により強化され、魔力は肉体に作用して身体能力を強化する。無理やり引き上げられた身体能力に肉体は耐えきれず、破裂する。
普通の肉体で行えばこうなり、最終的に死に絶えると学会で結論が出てた気がする。やはり長年魔術師は接近戦での闘い方も学ぼうとしてきたのだ。
不可能かとも思われるが、レインにはこれが可能だ。なぜなら、レインの肉体は魔力体でできているからだ。
肉体からそれにできる影までがレインの魔力体範囲内であり、影がない場所では人間の体の中に本体を隠すことで、人に見せる。
当然『身体強化』により乗っかっているとてつもない負荷は全てレインの魔力に乗せられており、レイン自体には一切の負荷はかかっていない。ノーリスクというわけではないものの、リスクを極限まで減らして肉体を強化できるというのはレインにしかできない芸当であった。
原理は簡単であるが、それは誰にも理解できるものではない。まず常識を疑うところから始めなくては気づけないからだ。
強化されたのはジャンプ力だけではない。壁を飛び越えて、広い敷地内の草むらに飛び込んだレインはそのまま走り出す。凄まじい速さは降り落ちる木の葉を再度吹き上げ、レインが通過した場所には強い風が吹いた。その速度を維持したままジャンプをすれば先ほどよりも飛距離は高く、中空時間も長い。
なんという力技。だけど、それでいいのだ。
「~~~~!」
アルフレッドは驚きのあまり声も出せなくなっている。いや、風圧で口が開けないようだ。下手に口を開いても舌を噛むかもしれないからそれでいいのだけど。
「うおっと」
飛び上がった時、帝城を警備する騎士に見られかけた。流石に、いきなり不自然に木の葉が舞ったらそりゃあ警戒するだろう。だが、騎士の視線を動かす前にレインの体はその場から離脱できるのが救いである。
「帝城って足場が少ないな」
肝心の帝城の外壁には腰を下ろして休めるような広いスペースはなかった一人分が立てるくらいの狭い隙間を少しずつ登っていく。落ちたら終わりという緊張感の中、レインは躊躇せずにそんな帝城の壁を登って行った。
「はあ……ああ、長いな」
疲れはしないが、道のりが長い。なんせ数百メートルもある建物なのだからそれはそれは精神的に疲れる。
ただ、それももう終わりだ。
「ほっそ!?」
帝城の頂上に到着すると、そこはもはや足場とすら呼べないようなところだった。本来人が登るようにできていないのだからそれで当たり前なのだが、バランスを取るのが非常に大変。
「アル君、ついたよ」
「ぇえ?え、ええええええええ!?」
「うわあ!ちょっと動かないで!」
取り乱すアルフレッドをどうにか押さえつけて落ち着かせる。
「たけええええ……」
「よし、じゃあ早速訓練を始めようか」
「訓練できるかぁ!足場狭すぎだろ!」
片足で細い足場にバランスを取っているが、いつ倒れてもおかしくない。確かにこんなところで訓練とか、頭がおかしいと思わなくもないが、
「別にここで訓練するわけじゃないよ」
「じゃあなんで登ったんだよ」
「こっから、飛び降りるんだ」
「……………は?」
「あれ?聞こえなかった?こっから飛び降りてその身で風を感じてもらうの。どれくらい強くて、どれくらいの冷たさで、どれくらいの魔力を含んでいるのか」
レインの場合は水中で一週間も暮らす羽目になった。そんなことになるくらいなら一瞬の命の危機で覚えてしまった方が早いだろう?
「レイン、ついに気が狂ったのか?」
「え、別に狂ってないけど?」
「こんなことをやろうと思うのは絶対に狂ってる」
「そうかなぁ?別に僕もやられたし」
「やられたの!?」
「話す余裕があるんだったら、早速飛ぶよ?」
「え、ちょっとま……」
「地面ギリギリでキャッチしてあげるから、できるだけ遠くまで飛んで!」
「あっ……」
そして、レインはアルフレッドを思いっきり空中へと投げ飛ばした。アルフレッドの涙が空中に浮かび上がってすぐに散っていく。
「ふう……じゃあ、追いかけますか」
そう言いながら、レインもアルフレッドの元へとジャンプする。
10
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした
渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞!
2024/02/21(水)1巻発売!
2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!)
2024/12/16(月)3巻発売!
2025/04/14(月)4巻発売!
応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!!
刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました!
旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』
=====
車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。
そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。
女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。
それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。
※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる