猫の魔術師〜その猫がいずれ最強になるまでの話〜

翡翠由

文字の大きさ
57 / 62

特別訓練

しおりを挟む
「さて、君たちの訓練を担当するグレンだ。みんな知ってるだろうが、俺は特級魔術師でな、この一か月でお前らは最低でも上級魔術師クラスになってもらおうじゃないか」

「グレンさん、それはあまりにも酷なのではないでしょう?」

「うるせえ、天才は黙ってろ。お前は別に訓練を受けなくても負けることはないだろうがこいつらはそうじゃねえんだよ」

 拾いグラウンドに集められたのは一年生だけではなく、三年生までの約二十人近く。毎年毎年、大会メンバーが学年関係なく実力で区分されて訓練を行うことになる。

 大体の場合は上位は三年が独占しているものだが、今回は訳が違う。担当する教官がグレンということだけあって、いちいち区別はされない。全員平等に上級魔術師レベルを目指すことになる。

 とはいえ、一か月で上級魔術師レベルになるには少々骨が折れるとは思う。レインの目から見ても上級魔術師のレベルに達しているのは半分もいなかった。そのなかにはもちろん一年生は入っていない。

「帝都魔術学校は魔術大会において毎度いい成績を残している。お前たちの代でそれを切らさないように俺はとことん教育してやる。喜べ、現役特級魔術師から学べる機会など早々ないだろうな……その点、一年生は特にありがたいと思ったほうがいい」

「「「……?」」」

 グレンはレインという現役特級魔術師が同級生にいて、教えを乞うことが出来ることに感謝をしろといっているのだ。ヒヤヒヤしてしまう……。

「で、レイン。お前はどうするんだ?」

「何がですか?」

「俺の訓練を受けるのかって意味だ。ああ、先に言っておくが、俺から教えられることはないぞ?」

「ええ?なんでですか」

「正直お前にはアドバイスのしようがない。魔術のバリエーションを増やせとしか言えない。ただ、そんなのお前はどうせすぐに習得できるだろう?」

「まあ、頑張れば一か月以内で全部覚えてきますよ」

「ほら見ろ。戦闘に置いての技術と立ち回りに関しては経験をつめとしか言えない。それぐらいしかお前はすることがない」

 グレンという特級魔術師に戦った時、レインは自分の魔術の少なさを実感した。レインが使う魔術など初級魔術と中級魔術のみだ。

 それも、『水球』やら『水槍』など扱いやすいからと言ってレインが気に入っている魔術師か使ってこなかった。だからこそ、もっといろんな魔術を学んだ方がいいのは分かっているのだが……。

 時間が足りないのだ。

 無属性魔術で索敵魔術を完成させるのにもまだ至っていないのに……時間が足りない。きっとそれが魔術師としての宿命なのだろう。死ぬまでやりたい研究が山積みで、寿命で死ぬ最後の時まで僕たちは研究を止めることはないだろう。

「まあ、見学でもしてますよ。水属性以外の魔術で使えそうなテクニックがあればそれをコピーしてみます」

「よろしい、訓練から抜けることがあれば俺に言え。ああ、そうそう。もちろんレイン以外の奴は訓練から抜け出せるなんて思うなよ?」

 そうグレンが他の生徒たちを煽る。

 レインは気づいていなかったが、グレンはわざとレインを特別扱いしていた。レインが考えている以上に特級魔術師という肩書はすごいのだ。

 この広い世界でたった七人しかその称号を名乗ることが許されていない。ただの一人の学生として見れば、目の前にいるグレンという男は魔術界の神にも等しい存在であるのだ。

 そんな男に実力を認められ特別な扱いを受けているレインは非常に嫉妬心を煽るのに使える。その嫉妬心が訓練で強くなろうとする意志につながるかどうかはさておき、少なくとも少しはその効果が見込めると思ったのだ。

 ただ、グレンが言っていたことはすべて本当のことであり、グレンは何一つとして嘘はついていなかった。レインを認めているのも確かであるし、教えることがほとんどないのも事実だ。

(流石は〈虹の魔女〉の弟子なだけあるな)

 〈虹の魔女〉

 全属性を操り、すべての魔術を習得し魔術界最強の存在。この世界を司っている〈賢人〉の一人であり、その知識は何百年分にも及ぶ。

 世界最強ともいえる存在に可愛がられている弟子に教えるようなことはない。

(っていうか、俺より強くなられたら俺の立つ瀬がないからな)

 以前戦った時、グレンは手加減こそしたが何度か負けるという単語は頭に流れていた。手加減をしていたとはいえ、窮地に追いやられたのだ。

 今更、学生の訓練に付き合わせても時間の無駄だろう。

「それじゃあ、まずは走り込みだ。10キロマラソン、10セット。インターバルは30秒だ」

「「「え?」」」

「なんだよ、お前たち。さっさと走れ!」

 グレンの号令と共に、生徒たちは一斉に走り出すのだった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 2025/04/14(月)4巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

処理中です...