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本編
第十話オーディルルド
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騎馬会の定例会から一週間後、わたしは、天照にまたがって田んぼの間の道を疾走していた・・・・・と言っても、ちょっと早めなだけだけど。
「あの家かな?」
田んぼの向こうに、ちょっと大きめの家が見えている。敷地の周りには、生け垣がめぐらされていた。
「ホーホー」
ちょっと手綱をしぼって、天照の速度を抑える。家の門は開け放されていて、騎乗したまま中に入れた。
「そうそう、ゆっくりゆっくり・・・」
天照の歩様を並足におさえて、門をくぐる。
「ヒヒヒヒヒヒヒヒーン!」
門から中に一歩入った瞬間、馬のいななきが耳に入った。
庭の馬繫柱には、一頭のサラブレッド。毛色は黒鹿毛と聞いてたけど、どっちかと言うと濃いグレー。顔にはズバッと大白が入り、大勒ハミと将校鞍をつけている。
「ルル、静かにしなさい」
母屋から出てきた友里恵が、こっちに気づいて手を振った。
「おはよー、あさひ。今日はいい天気だね」
「おはよう、先輩に言われたとおり、迎えに来たよ」
わたしも天照の背中から降りて、手を振り返す。
「この子がルル?」
「そう!わたしの馬。かっこいいでしょ?」
たしかに、かっこいい。つい最近まで競馬に出ていたとあって、全身の筋肉がたくましく盛り上がっている。
「ちょっとごめんね・・・」
脚に触ってみた。足の筋肉は固く締まっている。毛の艶もすごい。どんなエサあげてるんだろう・・・・
「普通に干し草と配合飼料だよ。あさひのとこはそうじゃないの?」
わたしは首を横に振る。
「野馬追部はほとんど干し草とおから。まあ、濃厚飼料もあげるけどね」
「へぇ、おから・・・・」
「近くの豆腐屋さんが安く売ってくれるの」
そんなこんな話してるうちに、そろそろ出ないとヤバい時間になっちゃった。
「そろそろ行かないとね」
友里恵は制服のままルルの鐙に足をかけると、ひらりと飛び乗った。
「ちょ・・・・・制服で大丈夫なの?」
いくら乗馬用の長靴をはいてると言っても、制服のひざ丈のスカートじゃちょっときついんじゃないかな・・・・・・まぁ、登下校は制服でするっていう校則だけど。
「大丈夫大丈夫、いつもこんな感じで乗ってるから」
「そ、そう?」
わたしも、天照の背中にまたがる。
「じゃ、学校の校門まではわたしが先行くね」
友里恵はそういうと、ルルの腹を蹴った。
「わかった」
わたしの乗った天照は、二馬身ほど差をつけて、うしろを行く。
カポッ、カポッ、カポッ
のどかな田んぼ道に、二頭の馬のひづめの音が響く。朝の人通りが多い時間帯で、自転車とか歩行者もいるから、要注意だ。
速足で四十分くらい。学校の正門が見えてきた。騎乗したまま校内に入る。
「南相~ファイッ」
『応!』
校庭では、野球部が練習中。二頭とも、ちょっと耳を動かしたけど、特に気にしてない。
「これはいけるかもね」
「そうだね」
野馬追馬には、たくさんの観客のざわめきや吹き鳴らされる法螺貝の音、打ち上げられる花火の音など、たくさんの音に耐えなければならない。あんまりナイーブだとダメなんだよね。
厩舎前、いつものごとく、狼森先輩が出てきて待っていた。
「おつかれ~」
「ただいま帰りました~」
天照を洗い場につないだ。友里恵も、となりの洗い場にルルをつなぐ。
案の定、部員たちが寄ってきた。
「これがルル?変わった鞍つけてるね~」
このすっとぼけたような声は、結那だな。
「そう、元大日本帝国陸軍騎兵隊の将校鞍だよ」
ルルは、ちょっと耳を動かして、みんなのやり取りを聞いていた。
「う~、ちょっと蹄が伸びてるな。蹄鉄も取り換えてやらないと」
ルルの足元をのぞき込んでた先輩が、ちょっと顔を上げて言った。
「装蹄師さんでも呼ぶか。ちょうど池月と摺墨も装蹄が必要なころだしな」
「呼ぶんですか?」
小梅ちゃんが、電話の子機を持ってくる。
「大丈夫だよ、自分がかけるから」
先輩は、ポケットからスマホを取り出し、ちょっと画面をタップした後、耳に当てた。
「あ、もしもし、狼森です~。ちょっと削蹄と装蹄をお願いしたいんですが、大丈夫ですか?・・・・あ、はい、じゃあお願いします」
狼森先輩は、こっちを向くと、テキパキと指示を出した。
「友里恵さん、ルルの鞍を外して、ハミを無口に付け替えて。あさひは、天照の馬装を解いて、馬場に放してきて。光太は、摺墨を馬場から出して、洗い場につないで。あと三十分くらいで装蹄師さん来るから、それに間に合うようにお願い」
『はい!』
「あの家かな?」
田んぼの向こうに、ちょっと大きめの家が見えている。敷地の周りには、生け垣がめぐらされていた。
「ホーホー」
ちょっと手綱をしぼって、天照の速度を抑える。家の門は開け放されていて、騎乗したまま中に入れた。
「そうそう、ゆっくりゆっくり・・・」
天照の歩様を並足におさえて、門をくぐる。
「ヒヒヒヒヒヒヒヒーン!」
門から中に一歩入った瞬間、馬のいななきが耳に入った。
庭の馬繫柱には、一頭のサラブレッド。毛色は黒鹿毛と聞いてたけど、どっちかと言うと濃いグレー。顔にはズバッと大白が入り、大勒ハミと将校鞍をつけている。
「ルル、静かにしなさい」
母屋から出てきた友里恵が、こっちに気づいて手を振った。
「おはよー、あさひ。今日はいい天気だね」
「おはよう、先輩に言われたとおり、迎えに来たよ」
わたしも天照の背中から降りて、手を振り返す。
「この子がルル?」
「そう!わたしの馬。かっこいいでしょ?」
たしかに、かっこいい。つい最近まで競馬に出ていたとあって、全身の筋肉がたくましく盛り上がっている。
「ちょっとごめんね・・・」
脚に触ってみた。足の筋肉は固く締まっている。毛の艶もすごい。どんなエサあげてるんだろう・・・・
「普通に干し草と配合飼料だよ。あさひのとこはそうじゃないの?」
わたしは首を横に振る。
「野馬追部はほとんど干し草とおから。まあ、濃厚飼料もあげるけどね」
「へぇ、おから・・・・」
「近くの豆腐屋さんが安く売ってくれるの」
そんなこんな話してるうちに、そろそろ出ないとヤバい時間になっちゃった。
「そろそろ行かないとね」
友里恵は制服のままルルの鐙に足をかけると、ひらりと飛び乗った。
「ちょ・・・・・制服で大丈夫なの?」
いくら乗馬用の長靴をはいてると言っても、制服のひざ丈のスカートじゃちょっときついんじゃないかな・・・・・・まぁ、登下校は制服でするっていう校則だけど。
「大丈夫大丈夫、いつもこんな感じで乗ってるから」
「そ、そう?」
わたしも、天照の背中にまたがる。
「じゃ、学校の校門まではわたしが先行くね」
友里恵はそういうと、ルルの腹を蹴った。
「わかった」
わたしの乗った天照は、二馬身ほど差をつけて、うしろを行く。
カポッ、カポッ、カポッ
のどかな田んぼ道に、二頭の馬のひづめの音が響く。朝の人通りが多い時間帯で、自転車とか歩行者もいるから、要注意だ。
速足で四十分くらい。学校の正門が見えてきた。騎乗したまま校内に入る。
「南相~ファイッ」
『応!』
校庭では、野球部が練習中。二頭とも、ちょっと耳を動かしたけど、特に気にしてない。
「これはいけるかもね」
「そうだね」
野馬追馬には、たくさんの観客のざわめきや吹き鳴らされる法螺貝の音、打ち上げられる花火の音など、たくさんの音に耐えなければならない。あんまりナイーブだとダメなんだよね。
厩舎前、いつものごとく、狼森先輩が出てきて待っていた。
「おつかれ~」
「ただいま帰りました~」
天照を洗い場につないだ。友里恵も、となりの洗い場にルルをつなぐ。
案の定、部員たちが寄ってきた。
「これがルル?変わった鞍つけてるね~」
このすっとぼけたような声は、結那だな。
「そう、元大日本帝国陸軍騎兵隊の将校鞍だよ」
ルルは、ちょっと耳を動かして、みんなのやり取りを聞いていた。
「う~、ちょっと蹄が伸びてるな。蹄鉄も取り換えてやらないと」
ルルの足元をのぞき込んでた先輩が、ちょっと顔を上げて言った。
「装蹄師さんでも呼ぶか。ちょうど池月と摺墨も装蹄が必要なころだしな」
「呼ぶんですか?」
小梅ちゃんが、電話の子機を持ってくる。
「大丈夫だよ、自分がかけるから」
先輩は、ポケットからスマホを取り出し、ちょっと画面をタップした後、耳に当てた。
「あ、もしもし、狼森です~。ちょっと削蹄と装蹄をお願いしたいんですが、大丈夫ですか?・・・・あ、はい、じゃあお願いします」
狼森先輩は、こっちを向くと、テキパキと指示を出した。
「友里恵さん、ルルの鞍を外して、ハミを無口に付け替えて。あさひは、天照の馬装を解いて、馬場に放してきて。光太は、摺墨を馬場から出して、洗い場につないで。あと三十分くらいで装蹄師さん来るから、それに間に合うようにお願い」
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