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三国緊急会議 ④
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「なぜ、オルトリンデ監理官殿は目が死んでおるのだ?」
ベルトリア共和国の代表として来国したライゼンを出迎えたオルトリンデは真っ白だった。つい数十分前のやり取りなど知らない側からしたら恐怖しかない。
「いつもの事よライゼン坊や。随分と風格が出てきたんじゃない?」
「げ、フィヨルギュン……殿」
「やっほ~」
弥生の後ろからひょっこりと顔を出したフィヨルギュンにあからさまに顔を顰めるライゼン。
「お久しぶりです。ライゼン首相、少し顔色良くなりましたね」
いまだにフリーズしたままのオルトリンデに任せるわけにはいかないので弥生が話しかける。すでに一か月前に顔を合わせているのでハードルが低いのがせめてもの救いだった。
「ああ、その節は世話になった弥生秘書官殿。で、いきなりで済まぬが三国代表のウェイランドの監理官殿はなんで仕事をやり終えた時のアルベルト国王みたいな感じに?」
「なんでもこの国最強戦力組、野暮用で全員出払ってるのをついさっき知ったらしいわよ? 攻め込んでみたら? 多分負けると思うけど」
一足先に来ていたフィヨルギュンが弥生から聞いた通りの事を暴露する。普通に考えればとんでもない事ではあるのだが友好国相手に隠してもなぁ、と弥生さんまったく気にしない。
「しない!! なんで友好国相手に!! 大体正規の騎士団が我が国より段違いに精鋭ぞろいじゃないか、模擬戦でも全戦全敗善戦できたの前線全体だけじゃないか!!」
「……伝わりにくいし自虐ネタだから30点」
「フィンさんが煽ったからだと思うので90点」
「私は漫才をしに来たんじゃないんだがっ!?」
先日綺麗に掃除したばかりの迎賓室で地団太を踏むライゼン首相、ちなみに彼は何も悪くない。
ただ単に久しぶりに会った各国のお偉いさんたちは幼少期を一緒に過ごした幼馴染だというだけの事である。
「相変わらず元気ね、もういい年なんじゃないの?」
「おかげさまで今年で60だ。うちの孫が世話になってるらしいじゃないか」
「あんたと違って才能あり、まあ。世間話はこれぐらいにして会議よ会議……こんな所弥生は良いけどお互い部下には見せられないでしょ?」
「確かに……と言いたいのだが、本当に大丈夫なのかオルトリンデは」
「弥生がいるから良いわよ、上座に置いておきましょ……しばらく放心してるから」
「だなぁ、右側持ってくれ。私は左側だ」
「はいはい」
そうして場が整えられる。なんか口からふんわりと何かが漂っていそうなオルトリンデを上座に設置して弥生がその隣に座る。
今回は会議と言う事で大きな丸テーブルが運ばれて綺麗にテーブルクロスがかけられていた。
ライゼンが何気なく触るとそのテーブルクロスはさらりと指が滑る。見た目にも艶があり高級品だということは分かるのだが……何の布かどうかまでは彼にもわからない。
「弥生秘書官、この布は何なのか材質を聞いてもよろしいかな? 随分としなやかできめが細かい生地だが」
きっとこの生地で織られた服やベッドシーツで寝たら気持ちいのだろうなぁ……あわよくば少し仕入れたい。そんな打算も込みである。
「あ、それ私も気になる。下着に使いたい! ぜひ使いたい!」
フィヨルギュンもライゼンと同じ考えだったのだろう、便乗して弥生に挙手しながら質問する。
そんな二人に弥生は困ったように笑う。言っちゃっていいのかどうか判断しかねていた。
――こんこん
丁度良いタイミングで迎賓室の扉がノックされる。
弥生がこれ幸いにと入室を許可した。
「しつれいしますねぇ」
きい、と小さなワゴンをゆっくりと押しながら栗色の髪をした女性が入ってくる。その頭にはちょこんと純白のプリム、そしてはちきれんばかりの胸を何とか保持しているメイド服。城内にこれ以上大きいサイズが無いという理由で無理やりボタンを留めているが……エプロンドレスの上からでもその魅惑的な身体をしっかりと主張できている。
「紅茶をお持ちいたしましたぁ」
ほんわかとした語り口で聞き取りやすい高さの声は聴いていて耳に心地よい。
所作も控えめだが決して動作が遅いわけではなかった。一目でベテランだと解るメイドさんである。
「糸子さん、ありがとうございます。ちょうどよかったぁ」
「はいぃ?」
手を止めないまま小首をかしげる糸目の糸子と呼ばれたメイドさん。
「このテーブルクロスの生地が欲しいって言われたんですけど、作れます?」
「ああ、そんな物でよければいくらでも良いですよ~。量が多いとお時間いただきますけど~」
のんびりした口調で請け負う糸子、そのやり取りでライゼンもフィヨルギュンも彼女がこの生地の保有者だと理解できるが……一点だけ気になる。
「「そんな物?」」
そう、これだけ上等な生地が糸子にかかるとそんなもの扱いである。
俄然興味が湧いてくるのは当たり前だった。
「はいぃ、これ私の糸ですからねぇ」
私の糸? その言葉にライゼンたちは目を見合わせた。開発力が高いウェイランドならこんなに上等なものでも一般的に普及してるのかと思ったのだが……。
「私蜘蛛なんですぅ……」
――ぼふん
と糸子が言うが早いか本当の姿を現す。
上半身がメイド服の女性、下半身は通常の蜘蛛のサイズとは逸脱した巨大な胴体。
「「うおあっ!!」」
エキドナさんが無断旅行に踏み切った原因が彼女だったりする。
ベルトリア共和国の代表として来国したライゼンを出迎えたオルトリンデは真っ白だった。つい数十分前のやり取りなど知らない側からしたら恐怖しかない。
「いつもの事よライゼン坊や。随分と風格が出てきたんじゃない?」
「げ、フィヨルギュン……殿」
「やっほ~」
弥生の後ろからひょっこりと顔を出したフィヨルギュンにあからさまに顔を顰めるライゼン。
「お久しぶりです。ライゼン首相、少し顔色良くなりましたね」
いまだにフリーズしたままのオルトリンデに任せるわけにはいかないので弥生が話しかける。すでに一か月前に顔を合わせているのでハードルが低いのがせめてもの救いだった。
「ああ、その節は世話になった弥生秘書官殿。で、いきなりで済まぬが三国代表のウェイランドの監理官殿はなんで仕事をやり終えた時のアルベルト国王みたいな感じに?」
「なんでもこの国最強戦力組、野暮用で全員出払ってるのをついさっき知ったらしいわよ? 攻め込んでみたら? 多分負けると思うけど」
一足先に来ていたフィヨルギュンが弥生から聞いた通りの事を暴露する。普通に考えればとんでもない事ではあるのだが友好国相手に隠してもなぁ、と弥生さんまったく気にしない。
「しない!! なんで友好国相手に!! 大体正規の騎士団が我が国より段違いに精鋭ぞろいじゃないか、模擬戦でも全戦全敗善戦できたの前線全体だけじゃないか!!」
「……伝わりにくいし自虐ネタだから30点」
「フィンさんが煽ったからだと思うので90点」
「私は漫才をしに来たんじゃないんだがっ!?」
先日綺麗に掃除したばかりの迎賓室で地団太を踏むライゼン首相、ちなみに彼は何も悪くない。
ただ単に久しぶりに会った各国のお偉いさんたちは幼少期を一緒に過ごした幼馴染だというだけの事である。
「相変わらず元気ね、もういい年なんじゃないの?」
「おかげさまで今年で60だ。うちの孫が世話になってるらしいじゃないか」
「あんたと違って才能あり、まあ。世間話はこれぐらいにして会議よ会議……こんな所弥生は良いけどお互い部下には見せられないでしょ?」
「確かに……と言いたいのだが、本当に大丈夫なのかオルトリンデは」
「弥生がいるから良いわよ、上座に置いておきましょ……しばらく放心してるから」
「だなぁ、右側持ってくれ。私は左側だ」
「はいはい」
そうして場が整えられる。なんか口からふんわりと何かが漂っていそうなオルトリンデを上座に設置して弥生がその隣に座る。
今回は会議と言う事で大きな丸テーブルが運ばれて綺麗にテーブルクロスがかけられていた。
ライゼンが何気なく触るとそのテーブルクロスはさらりと指が滑る。見た目にも艶があり高級品だということは分かるのだが……何の布かどうかまでは彼にもわからない。
「弥生秘書官、この布は何なのか材質を聞いてもよろしいかな? 随分としなやかできめが細かい生地だが」
きっとこの生地で織られた服やベッドシーツで寝たら気持ちいのだろうなぁ……あわよくば少し仕入れたい。そんな打算も込みである。
「あ、それ私も気になる。下着に使いたい! ぜひ使いたい!」
フィヨルギュンもライゼンと同じ考えだったのだろう、便乗して弥生に挙手しながら質問する。
そんな二人に弥生は困ったように笑う。言っちゃっていいのかどうか判断しかねていた。
――こんこん
丁度良いタイミングで迎賓室の扉がノックされる。
弥生がこれ幸いにと入室を許可した。
「しつれいしますねぇ」
きい、と小さなワゴンをゆっくりと押しながら栗色の髪をした女性が入ってくる。その頭にはちょこんと純白のプリム、そしてはちきれんばかりの胸を何とか保持しているメイド服。城内にこれ以上大きいサイズが無いという理由で無理やりボタンを留めているが……エプロンドレスの上からでもその魅惑的な身体をしっかりと主張できている。
「紅茶をお持ちいたしましたぁ」
ほんわかとした語り口で聞き取りやすい高さの声は聴いていて耳に心地よい。
所作も控えめだが決して動作が遅いわけではなかった。一目でベテランだと解るメイドさんである。
「糸子さん、ありがとうございます。ちょうどよかったぁ」
「はいぃ?」
手を止めないまま小首をかしげる糸目の糸子と呼ばれたメイドさん。
「このテーブルクロスの生地が欲しいって言われたんですけど、作れます?」
「ああ、そんな物でよければいくらでも良いですよ~。量が多いとお時間いただきますけど~」
のんびりした口調で請け負う糸子、そのやり取りでライゼンもフィヨルギュンも彼女がこの生地の保有者だと理解できるが……一点だけ気になる。
「「そんな物?」」
そう、これだけ上等な生地が糸子にかかるとそんなもの扱いである。
俄然興味が湧いてくるのは当たり前だった。
「はいぃ、これ私の糸ですからねぇ」
私の糸? その言葉にライゼンたちは目を見合わせた。開発力が高いウェイランドならこんなに上等なものでも一般的に普及してるのかと思ったのだが……。
「私蜘蛛なんですぅ……」
――ぼふん
と糸子が言うが早いか本当の姿を現す。
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追記:2025/09/20
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