長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ

文字の大きさ
108 / 255

ギルド祭の準備をしよう! ②

しおりを挟む
「という訳で今期のギルド祭、企画運営は弥生秘書官に一任します。反対はありますか? ありませんね? あるならお前が発案しやがれ、以上」

 暗黒がそこに在った。
 会議が始まって一時間、秘書官と書記官の反乱によりギルド祭の舵を切っていたオルトリンデ管理官はその任を追われた。だって……

「反対意見はありません、オルトリンデ管理官。いくら何でも料理士ギルド以上に美味しいメニューと王城の夜間メイドを招集した挙句、空挺騎士団の飛竜を使ってベルトリア共和国、ミルテアリア魔法国から食材を調達とか……職権乱用も良い所ですよ」

 そう、オルトリンデはある一定の時期だけ使い物にならない、と言うか去年まで統括ギルドは散々な目にあっていたのだ。普段は頼れて強い、ついでに可愛い最高の上司なのにギルド祭の時期だけは面倒くさい、暴走する、大体めちゃくちゃになる壊れ幼女となる。
 しかし今年は違った。女神が居た。オルトリンデ自身が認め、彼女に物を申せる新鋭気鋭のぶっ壊れ秘書官。

「きちんと判断できる弥生秘書官に、今だけは管理されてください監理官。我々もせっかくですから楽しみたいのは同じなのです」

 長年各ギルドの申請作業やら管理やらでこの時期は統括ギルドが繁忙期、大した出し物ができていない現状だ。せいぜい普段あまり使ってない来賓室や、新人のギルド員に勉強も兼ねて統括ギルドツアーなる面白みのないイベントに終始している。
 
「何か楽しい出し物にできるよう、書記官一同で弥生秘書官をサポートしますから!!」
「お願いですから純粋に祭りを楽しむ側に回ってください!!」
「僕らの成長を見てください!!」

 彼らは必至だった、本来であれば不運にも先輩方に押し付けられた新人書記官……弥生の同期である彼ら彼女らがオルトリンデの暴走に巻き込まれると冷や冷やしていたのに。希望の星、日下部弥生秘書官がついているのだ。

「しかし、今期はギルド祭50周年記念……私だって特別な思いが……」

 ぷう、とほほを膨らませ仕草は可愛いのに瞳は闇色に染まりある種の狂気がにじみ出ている監理官を打ち砕く勇者はここにいる。

「オルちゃん。よく聞いて」
「何ですか裏切者」
「現場を知る事は良い事だよね?」
「ええ、そうですよ。例えどんなに机上で優秀な働きができても現場の気持ちを知らない者に現場は任せられません」
「そうそう、だったらやっぱりこのの『現場監督』はがやるべきだと私は思うの」
「……一理ありますね」

 ねぇよ、現場の人間に卒倒レベルのストレスかかるじゃねぇかよ。とキズナが会議室の隅っこでつぶやくが誰もその言葉は拾わない。

「だからこそ、今回は私が企画運営の総監督をするの。でも私は初めてのギルド祭、とても現場までは目が行き届かないんだよ」

 そんな事ねぇよ、あんたどんな現場にもいるじゃねぇかよ。
 ベテラン書記官が弥生の言葉に思わず突っ込みを入れたくなるが、ぐっと我慢だ。
 今の所弥生が上手く監理官を光の道に戻せるかどうかの瀬戸際、余計な事は出来ない。

「そうですね……」
「そんな時、大ベテランの熟練者が縁の下を支える。これこそ理想な新人育成じゃないかと私は思うんだよ」

 言葉だけを聞くと大変ホワイトだが、そもそも弥生が原因で働き方を望んでブラックに染めた職人書記官何人出たんだろう。と言う事実は蓋をされる。

「……弟子に教わるとはこのことですね」
「オルちゃん!!」

 ふっ……と物憂げに吐息を吐くオルトリンデだが、ただ単に雰囲気に流されているだけである。普段から彼女は実践している事ばかりなので、何をいまさら……と本来なら笑い飛ばされるのがオチだ。

「では『美人どころを揃えて見えるか見えないかギリギリのスカートで給仕をするメイドカフェ。メニューは一律! 王城でふるまわれる美味にメイドさんの愛がトッピング!! 透けてる不死族メイドさんが貴方の眼前に来るかも!』はあなたに託します」
「しないからね?」
「なんでよりによって50周年でそんな特定の客層にしか受けない上に、運営の権力でごり押ししたかのような企画なんです」

 弥生を旗頭にした年配の書記官が頭を抱える。
 ちなみにこの発案者は牡丹であり、よりによって一番参考にしてはいけない相手に意見を求めた結果だった。

「お色気は強いんです」
「弥生秘書官! オルトリンデ管理官がご乱心だ!! 施療院にぶち込んできてくれぇ!」

 不退転……オルトリンデの眼にそう書いてあったのをベテラン書記官は見えた気がした……気がしたので速やかにご退場願う。素晴らしい連携のもとに書記官達はオルトリンデの両手を引いてずーるずる、と外へ連れて行って文香の元へと連行した。なんでって? 文香に叱ってもらうためである。

「という訳なのだ」
「一切合切、承知……」

 これはあかん、確かに一番の新人の弥生に白羽の矢が立つ訳であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する

ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」 ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。 ■あらすじ 聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。 実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。 そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。 だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。 儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。 そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。 「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」 追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。 しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。 「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」 「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」 刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。 果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。 ※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

処理中です...